“シュガー”と“パトロン”とが2人で1つのヒーロー“パトレイサー”として、ココロが停まった人々を救う動画コンテンツ『おねがいっパトロンさま!』。その舞台化シリーズ第2弾となる『おねがいっパトロンさま!The Stage ~ココロを詠え~』が、1月26日(木)に初日を迎えた。
2.5ジゲン!!ではゲネプロおよび囲み会見の様子をレポート。ネタバレは避けて、本作の魅力や各キャラクターの見どころなどを撮り下ろしショットとともに紹介する。
シリーズ第2弾となる本作は、完全オリジナルストーリー、原作で活躍するパトレイサーたちが生まれる前を描く前日譚となっている。
東京・新宿FACEという自由度の高い空間を生かした世界観づくりによって、キャストのココロと観客のココロが共鳴。ストーリーが進むにつれ、会場がまるで“ひとつのココロ”になったかのように、ステージ上の熱が客席に、客席の熱がステージ上へと伝わり広がっていく。
そんな鼓動の伝播(でんぱ)を感じられる熱い作品に仕上がっていた。
物語の中心となるのは、売り出し中の4人組アイドル音楽ユニットRALLUS(ラルス)。彼らが、メンバーのアサキ(演:岩城直弥)とさくたろー(演:TAKA(CUBERS))、そしてねむる(演:白石康介)の母校である浮巣谷(うきすだに)小学校にライブにやってくるというところから物語は始まる。
ライブの説明という形で同校の教師である呼鳥先生(演:松村泰一郎)や葦切先生(演:小林涼)、ライブの音響スタッフ・道上清次郎(演:早乙女じょうじ)らが前説に登場するので、開演より少し早めに着席しておくことをおすすめする。
やがてRALLUSのライブがスタート。自己紹介ソング「RALLUS」で一気に会場の温度が上がるが、歌いながら客席を眺めるアサキはなにかに意識を囚われ、独断でライブのセトリを変更してしまう。その理由は、観客のなかにココロが停まっている生徒の気配を感じたからであった。
この1件をきっかけに意見がぶつかりあうアサキとさくたろー、一方で2人のフォローに回る標(演:結城伽寿也)と、ねむるも何か思うところがある様子を見せていて…。
道上清次郎とその息子・コウキの親子関係を軸に、4人の出会い、幼馴染であるアサキとさくたろーの関係、標とねむるの過去などが描かれていくことになる。
稽古開始前のインタビューで、脚本・演出のキムラ真は「ザ・エンタメ!」を目指したいと意気込みを語っていた。その言葉通り、支援される者(シュガー)と支援する者(パトロン)の2人1組で初めて力を発揮するココロのヒーロー“パトレイサー”という原作の軸となるテーマを内包しながらも、舞台オリジナルならではのおもしろみをふんだんに盛り込んでいたのが印象的だ。
なかでもパトレイサーの活動シーンは、イレギュラーなL字型ステージを駆使した、まるでアトラクションのような演出が次々と登場して見ごたえ抜群。“ココロの劇場”という原作の設定を余すことなく調理しきった演出となっていた。本作はオリジナルストーリーではあるが、原作の持つ舞台との親和性も手伝って、原作ファンも違和感なく楽しむことができるだろう。
ストーリーはせっかくのオリジナルなので、ここではこれ以上深くは触れずにおこうと思う。RALLUS4人のバックボーンや随所に散りばめられている多様な絆の形を感じ取りながら、サブタイトルにある「ココロを詠え」の意味を、ぜひ劇場で目と耳と肌とで味わってもらいたい。
ここからは、各キャラクターの見どころをネタバレなしで紹介していこう。
まずはRALLUSのメンバーから。楽曲制作も担当するアサキは天才肌で不器用な人物。胸に熱いものを持っているのだが、それを周りに理解されないことにもどかしさと諦めとを抱いている様子を、本作が初主演となる岩城が好演する。パトレイサーとして他人のココロを知ることで、自身のココロのあり方とも向き合っていく姿に胸が熱くなった。
そんなアサキの相棒を務めるのがTAKA演じるさくたろーだ。ライブでもそれ以外でも存在感がある人物で、思わず視線で追ってしまう。アサキとの関係に思うところがあり、不意に表情をかげらせる切なげな瞬間をお見逃しなく。
2人は、パトレイサー変身時の和ロックな衣装にも注目だ。ゲネプロ後の囲み会見では、岩城は裾(すそ)にあしらわれた全刺繍の柄や、細部までこだわり抜かれた裏地などをお気に入りポイントとして挙げていた。TAKAはとくにシースルー素材な右袖(そで)がお気に入りだそうで、ぜひセクシーな右腕を堪能して帰ってほしいと豪華な衣装と美しい右腕に自信をのぞかせていた。
パトレイサーとしてアサキとさくたろーがタッグを組むのだが、結城演じる標と白石演じるねむるのタッグも絆とコンビネーションでは負けていない。
ムードメーカーなねむるが場を盛り上げ、心優しい標がメンバー間や関係者のフォローに回る。どちらかというとグループ内の調整役に回っている2人だが、回想シーンではそんな2人の過去にもスポットが当たっており、細部まで脚本・キムラ真の愛が感じられた。
駆け出し中の彼らを支える猫屋敷能世(演:笠原紳司)は、長身&スリーピーススーツで目を潤してくれるとともに、たくましいココロで次々とギャグを披露。そのガッツあふれる闘志を目に焼きつけてほしい。
舞台が学校ということもあって、2人の先生も重要な役割を担う。
松村演じる熱血漢な呼鳥先生と、小林演じる真面目タイプな葦切先生は、どちらもとてもリアルだったのが印象的だ。舞台のキャラとして個性が立ちつつ「こういう感じの先生たしかにいたな~」とも思わせてくれる役作りが、観客をさらに一歩ステージの世界へと近づけてくれたように思う。
最後に紹介するのは、早乙女演じる道上だ。作中で描かれる親子の絆というテーマを、そのたしかな演技力で表現。観客のココロを震わせてくれた。育児の葛藤や親子の関わり方などに苦悩する彼の姿は、自身が親の立場であっても子の立場であっても、共感できる部分がきっとあるだろう。
各キャラも魅力的だが、なんといってもライブが本作の醍醐味の1つだ。本作は本編とライブパートの2部構成となっていて、音波制御ペンライトを導入した一体感あるライブが楽しめる。
ライブパートのいずれの楽曲も劇中に登場してからライブパフォーマンスとして再度披露されるので、各シーンを思い出しながら聴いていると、自然とココロ揺さぶられるはずだ。
ココロを動かすことは、言葉にすればとてもシンプルだが、実はかなりエネルギーがいる行為だろう。下手をすれば、頑張って動かすよりも、停めてしまったほうが楽なのかもしれない。それでも観客は劇場へと足を運び、ステージ上で演じられる物語からなにかを受け取ろうとココロを動かす。同時にキャストも自分たちの芝居で観客のココロを動かそうと全身全霊で演じる。
そう考えると、私たち観客と役者は、互いにどちらも“シュガー”であり“パトロン”なのかもしれない。対象のココロを動かそうと必死に頑張るRALLUS、そしてパトレイサーたちの姿に、そんなことが頭をよぎった。
全力でエンタメで真正面からココロを動かそうという熱意に満ちた『おねがいっパトロンさま!The Stage ~ココロを詠え~』は1月26日(木)~2月5日(日)、新宿FACEにて上演。1月26日(木)の2公演と千秋楽の2月5日(日)14:00公演は、ライブ配信も予定されている。
会場では公式ペンライトの貸出もあるので、まずは気軽に劇場に足を運んでみて、そのココロがどう動くかを感じてみてはどうだろうか。
会見レポート
ゲネプロ終了後、RALLUSのメンバーを演じる岩城直弥、TAKA、白石康介、結城伽寿也が登壇して囲み会見が実施された。
――ゲネプロが終了し、いよいよ本番です。現在の心境はいかがですか。
TAKA(さくたろー役):純粋に楽しみです。お芝居もあるしライブもあるということで、お客さまのココロを動かせるチャンスがたくさんあるので、そのチャンスをしっかり生かして素敵な作品にしていきたいと思っています。
白石康介(ねむる役):TAKAくんと同じく楽しみな気持ちでいっぱいです。劇場入ってから見えてきた部分はしっかり修正して、初日によいものをお届けできるよう精一杯努めたいとと思います。
結城伽寿也(標役):ゲネを終えて、よかった点・直すべき点、いろいろ見えたので、初日に持っていく前にしっかり確認して本番を迎えたいと思います。今作は「バードマン」という曲を筆頭に、熱い作品になっていますので、お客さまのココロが震えるポイントはそれぞれ違うかもしれませんが、どこかしらでココロを震わせられるように、ステージ上から熱く演じますので、応援のほどよろしくお願いいたします。
岩城直弥(アサキ役):ゲネを通して課題なども見えましたが、それは修正するとして。本作のテーマとしてキムラ真さんがおっしゃっている「エンタメの再興」であったり、「パトロン」という言葉の持つ本来の意味のすばらしさだったりを伝えられる、そういう地点までこのカンパニーはこれたんじゃないかと、ゲネを通して確信しました。寒いなかではありますが、これから迎える公演期間にたくさんの人にきていただけたらうれしいなと思います。
――本作の見どころを教えてください。
TAKA:花道がある変形ステージで、その作りを最大限に生かせる演出になっているので、ぜひワクワクしながら観ていただきたいです。本作は“シュガー”と“パトロン”が2人で1つという設定ですが、「僕たちとお客さんで一緒に素敵な作品を作る」という意味も込めたいと思っているので、ぜひ一緒に楽しんでください!
白石:歌がテーマになっている作品で、なかでも僕はラップが好きなのですが。「RALLUS」という曲を通じて、僕らが煽って、みなさんがそれにノッて熱くなっていく関係性というのを、このゲネプロでも感じることができました。本番ではさらに熱く皆さんを盛り上げられたらなと思っています。
結城:僕たちRALLUSは実はバンドです。ですが、楽器は一切持ちません(笑)。バチバチの楽曲とダンスから始まり、バラードあり、ヒーロー曲ありとてんこ盛りな素敵な作品に出会えましたので、あとはそれを皆さんに伝えるのみです。ステージの構成含めて、ぜひいろんな角度から楽しんでもらえたらと思います。
岩城:リアルな話をすると、(さくたろーの衣装を指さして)TAKAくんのスケスケなココです。
TAKA:そうですね、ここ見どころです!
岩城:以上です!
TAKA:お~本当に!?
岩城:あ、はい。あとは…全部です。あ! 猫社長(猫屋敷能世)の毎回変わる新作ギャグも見どころです。
TAKA:勝手に新作って言っちゃって大丈夫?
岩城:はい! あと、本当のお気に入りポイントは暗闇のなか、光る棒を持って殺陣をするところがあるのですが、そこはすごくおもしろいんじゃないかなと思っています。
――岩城さんは本作が初主演となりますが、いかがですか。
岩城:最初は責任感とかプレッシャーがあったのですが、このメンバーをはじめ皆さんがとても優しくて、僕の性格をわかった上で受け入れてくれたので、無理に座長らしく振る舞わなくてもいいんだと思うことができました。そこからはのびのびと楽しくやれている感じがします。もちろん決めるところはバシッと決めていきたいですが、みんながいてくれるので不安はないです!
――お三方の目には、稽古を終えたいま、改めて岩城座長の姿はどう映っていますか。
TAKA:まあ天然ですよね。頼もしさもありつつも、いつ何をやりだすかわからないタイプの人間なので、僕らもちょっとドキドキしているところはあります。引っ張ってもらうところはありながらも、僕らも支えていくという力関係でやっていこうと思います。
結城:座長として1番長く稽古場にいたんじゃないかと思います。そうなるとやっぱり人間って疲れると思うんですよ。人によってはネガティブになるところを、彼はずっと笑顔なんですよ。いつもニコニコ前向きに取り組んでいたので、僕もこういう人間になろうと思いました。
岩城:(声にならない照れ笑い)
白石:見ての通りふわふわしているんですが、いざお芝居に入ったときとか、演出家さんからダメだしをもらったことを咀嚼(そしゃく)して次の芝居にぶつけるときの力がすごいなと思います。稽古を重ねる度に変わっていく芝居を見て、この背中についていけば間違いないんだなと確信しました。しっかりと最後までついていって、ときには支えてあげられたらと思います。
――最後に公演を楽しみにしているファンへのメッセージをお願いします。
TAKA:僕たちは皆さんが楽しめるように全力でお届けしますので、皆さんからも力をいただきたいです。一緒にいいものを作っていきましょう! なので、温かい応援をよろしくお願いいたします。
白石:この作品に限らずですが、演劇というのは僕たちが魂を震わせたぶんだけ、さらに輝くものだと思います。なので、最後まで本気でぶつかっていくというのを目標に、細かな1つひとつにも魂こめて演じようと思いますので、最後までどうぞよろしくお願いいたします。
結城:タイトルにある“パトロン”って誤解されやすい言葉だと思います。だけど本来はとっても素敵な意味が込められている言葉で。この作品を観た方には、少しでも「“パトロン”っていいじゃん」って思ってもらえばいいなと思っていて。言葉の意味を変えるって大変なことだと思うのですが、そのためにも僕たちがステージ上から熱く届けますので、応援しにきていただけたら嬉しいです。
岩城:舞台はお客さまがいて成り立つものだと思います。幸いこの作品ではライブパートがあってペンライトを振ったり拍手したりとリアクションしてもらえるので、そのパワーをもらってさらに僕たちがエネルギーあふれるパフォーマンスをして…と、一緒にエネルギー満ち溢れた空間を作れたらと思っています。なので、横に花道もありますので、首と肩の体操をしてから来ていただけたらと思います!
取材・文・撮影:双海しお
(C)Happinet/Happinet Media Marketing
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