舞台「オッドタクシー 金剛石(ダイヤモンド)は傷つかない」が、1月25日(水)に初日を迎えた。昨年7月に上演される予定だったが、全公演中止となった待望の延期公演だ。
2.5ジゲン!!では、公演に先立ち実施された公開ゲネプロの様子を、ネタバレに配慮しつつレポートする。
本作は、原作であるアニメ『オッドタクシー』に登場するアイドルグループ「ミステリーキッス」に焦点を当てた作品。原作では2年の地道な活動を経てメジャーデビューを迎えるグループで、人気が上がっていく過程で、女子高生失踪事件に巻き込まれていく。そんな彼女らのメジャーデビューまでの前日譚が描かれる。
原作のスピンオフ作品的立ち位置なのだが、原作・脚本の此元和津也が書きおろしたストーリーとなっているため、アニメファンも十二分に楽しめるだろう。原作同様にしっかりと不明な点や謎が提示され、物語が進むにつれてその謎が解き明かされていく快感もまた心地よい。キャラクター同士のテンポよい掛け合いやウィットに富んだ会話も、『オッドタクシー』の世界観を存分に体験できる。
何よりも、原作で描かれていなかったミステリーキッスがメジャーデビューするまでの騒動、必死に頑張る山本、今井がミステリーキッスにハマっていく描写、ホモサピエンスの関係性の動向、大門兄弟のほのぼのとしたやりとりなども原作ファンにはうれしい。
おなじみのキャラクターが脇を固め、初登場となるキャラクターが新事実を彩り、原作の確信的な部分に迫る内容までが描かれている今作。原作を補完する意味でも必見だ。
ミステリーキッスのオーディションから物語は始まる。オーディションを担当していた山本(演:吉田宗洋)が思わず指をさしてしまうほどの存在感を放つ二階堂ルイ(演:小栗有以)。ほかが消化試合になるくらいの圧倒的支持を得て、オーディションに合格する。
ほかメンバーは2人。
三矢ユキ(演:山口乃々華)は、勝気な二階堂より1歩引いた目線で行動しているクールビューティー。笑風亭呑楽という著名な落語家の娘だが、そのことは事務所には言わず活動をしている。
上昇志向はそこまで持ち合わせていないものの、ビジュアルと実力を持ち合わせ、さらにアイドルらしいオーラをも持つ彼女は、新プロデューサーの目に止まりメジャーデビューの新センターとして任命されてしまう。それが彼女の運命を大きく変えることになるとは、その時は誰も予想しなかった。
市村しほ(演:鈴木瞳美)は自分に自信がなく、ほか2人よりは引け目のあるタイプだ。「手が届きそうな」アイドルとして、また、二階堂の引き立て役として抜擢された彼女だが、彼女自身には「家族のために稼ぐ」という夢があった。実力が伴わないなりにも、定期的に個人でライブ配信を行ったりと奮闘し、懸命にアイドル活動に身を投じていく。
集められた3人で活動を始めるが、自信があり強気な二階堂は周りのメンバーを足手まといのように思い、確執が生まれる。恵まれない環境と待遇に不満が爆発し、メンバー同士での言い争いも頻発してしまう。
そんな周りに攻撃的な態度を取り孤立する二階堂だが、お笑いコンビのホモサピエンスの馬場(演:中村ヒロユキ)と出会い、心境が変化していく。馬場との交流で心を休め、メンバーとの絆も深めていく中でメジャーデビューも決まり、順風満帆なように見えた。しかし、新プロデューサーからの三矢ユキとのセンター交代宣言で雲行きが怪しくなってくる。その絶望的な宣告を受け二階堂が取った選択は、深夜に三矢を呼び出して直談判することだった…。
3人は無事にメジャーデビューできるのか、これ以降は、アニメ『オッドタクシー』の大きなネタバレにもなるので、ぜひ観劇して一部始終を見届けてほしい。
本作のキャストは、実際にアイドルである方たちである。設定上もアイドルとして舞台に立ち演技をするのは、現実と虚構がクロスオーバーして興味深い。本編には、ミステリーキッスとしてのライブシーンもあるので、リアルに楽しめるはずだ。
キャストコメント
二階堂ルイ役:小栗有以
二階堂ルイはすごくクールなアイドルを目指す真面目な女の子なんです。まわりを寄せ付けずツンケンしてるんですけど、お笑い芸人の馬場さんに出会ったり、ミステリーキッスが仲良くなっていくことで、段々と二階堂の弱いところや可愛らしさが見えてきます。今回はミステリーキッスがメインということで、アニメとはまた違う「オッドタクシー」をお届けできた舞台になったんじゃないかなと思いますし、二階堂のかわいらしさが詰まってると思います。アニメ原作のものがこうして舞台化されるということで、私たちも待ちに待った舞台初日なので、すごく気合も入っていますし、みんなで一致団結して作っておりますので、千秋楽まで来ていただければと思います。みなさんの心に残る舞台をお届けできたらと思います。
和田垣さくら役:濱岸ひより
和田垣さくらは、「自分が欲しいものは必ず手に入れる」という子で、唐揚げが大好きな子です。初めて舞台に出させていただくのですが、みなさんにアドバイスをいただきながら稽古をしてきたので、今日を迎えてうれしいです。
市村しほ役:鈴木瞳美
市村しほは、めちゃくちゃ「やば」っていう口癖を言う子なんですけど、そのせいで自分のプライベートでも「やば」って言う機会が増えたなって思います。大人しいというか自分に自信がない子なんですけど、二階堂さんと三矢さんと一緒に売れるために、自分にできることを一生懸命頑張る素敵な女の子です。演技をたくさんやってきたわけではないので、不安なことがたくさんあったのですが、稽古がとても楽しくて。皆さんが声をかけてくださったりとか、優しい方々に囲まれて舞台ができてうれしいです。
公演は、31日(火)まで、東京・大手町三井ホールで上演される。
取材・文:木皿儀隼一/撮影:ケイヒカル
(C)P.I.C.S. / 舞台小戸川交通パートナーズ
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