4月18日(木)より開幕を迎える「舞台 PSYCHO-PASS サイコパス Virtue and Vice」。開幕に先駆けて行われた、囲み取材と公開ゲネプロの様子をお届けする。
本舞台は、「PSYCHO-PASS サイコパス」シリーズが手がけるNext Projectの一環として制作されたもの。
2019年1月25日から3ヶ月連続上映の第一弾となる、劇場版アニメ「罪と罰」、2月15日には第二弾「First Guardian」が公開。現在アニメ第3弾も放送中だ。
初の舞台化となる本作は、アニメ「PSYCHO-PASS サイコパス」シリーズの脚本家・深見真が舞台用に書き下ろしたという、完全オリジナルのスピンオフ・ストーリーだ。
舞台は公安局刑事課三係のオリジナルキャラクターたちがメイン。
鈴木拡樹演じる監視官の九泉晴人(くせんはると)と、和田琢磨が演じる監視官の嘉納火炉(かのうひろ)を中心に、シビュラシステム※の「とある欠陥」がもたらした事件解決に向けて奮闘する。
※シビュラシステム……人間のあらゆる心理状態や性格傾向を数値化し計測する包括的生涯福祉支援システムのこと。
職業適性や犯罪係数(犯罪者になる危険性)などもシビュラシステムによって解析され、人々はこの計測結果こそが「理想的な人生」を送るための指標として信じて生きている。
あらすじ
公安局刑事課三係に所属する監視官の九泉晴人(くせんはると)は、公安局局長・禾生(かせい)からの命で連続殺人事件を捜査することになる。遺体は18ものパーツに細かく切断、その一つ一つにナンバリングがされていた。そして、繁華街の路地裏、四箇所に派手に飾り付けるという、いずれも同じ手口で犯行が繰り返されていた。「どうしてバラバラにしたのか、どうして四箇所に死体をばらまいたのか、ナンバーをつけた理由は何か。」
九泉は同じ三係に所属する監視官・嘉納火炉(かのうひろ)や執行官たちと、捜査を進める。被害者の身元を調べていくうち、「中国語の部屋」と名付けられた、とある装置が事件に関わりがあることに辿り着く。
その矢先、街中にバラバラ死体がばら撒かれるという、市民の色相悪化を狙ったサイコハザードが発生。「ヒューマニスト」と名乗る武力闘争組織がテロの犯行声明を上げ、シビュラシステムには重大な欠陥があると批判、さらに大きな事件を予告する。
そして、捜査を進める中、公安局内部に裏切り者の存在が浮かび上がる。事件の鍵を握る「中国語の部屋」とは、ヒューマニストの狙いとは、そして、“裏切り者”は誰なのか―――
「PSYCHO-PASS サイコパス」では、シビュラシステムがまるで神のように信仰されている社会が描かれる。
そんな中、とある歪みによって信じていた「正義」が揺らいだとき、人々はどう生きていくべきなのか。そもそも「人間らしく生きる」とは何なのか――。
誰も知らない正解を求めて、彼らは葛藤を続ける。
「人間の仕事がAIに奪われる」と取り沙汰されるほど、機械がもたらす存在感が大きくなっている昨今。だからこそ本作は多くの人の心に響き、愛される作品になっているのだろう。
▲鈴木拡樹演じる、監視官の九泉晴人(くせんはると)
▲和田琢磨演じる監視官の嘉納火炉(かのうひろ)
囲み会見で主演の鈴木拡樹が「テーマパークの中にいるような世界観の舞台」と話していた通り、本作における映像と舞台の融合は、まさに圧巻だった。
映像が作り出す迫力と、舞台が作り出す臨場感があいまって、現実世界に生きている感覚を忘れるほど。
「PSYCHO-PASS サイコパス」の世界に入り込み、シビュラシステムに支配された社会に巻き起こる事件の目撃者になった気分だった。
▲三係の個性豊かなメンバーも見どころ
あなたにとっての「正義」とは、「人間らしさ」とは何だろうか。守りたい、守らなければいけないものとは何だろうか。
最新技術を駆使した演出と、舞台ならではのライブ感の素晴らしさもさることながら、心にズシンとくるストーリーの奥深さも魅力の本作。
「PSYCHO-PASS サイコパス」シリーズに新たな歴史を刻んだこの舞台を、ぜひあなたの目に焼き付けてほしい。
「真っ白なキャンバスに絵を描いていた感覚」囲み取材コメント
囲み取材には主演で九泉晴人役を演じる鈴木拡樹と嘉納火炉役の和田琢磨の2名に加え、TV1期、劇場版では総監督を務めた演出家の本広克行の3名が登壇。
人気作品をオリジナルストーリーで舞台化するにあたり苦労したことや見どころ、キャラクター作りの際に意識していたことなどについて語った。
――本作の見どころについて教えてください。
鈴木拡樹(九泉晴人役):稽古場でも早く舞台に上がりたいなと思っていました。
本作ではたくさんの照明と映像を駆使しているので、稽古中は想像するしかなかったのですが、その部分が劇場に来て新しい発見がたくさん出てきました。
来ていただいたら、テーマパークの中にいるような「PSYCHO-PASS サイコパス」の世界観が広がっていると思います。
皆様にはサイコパスの世界観を360度体感してもらうだけじゃなくて、ひとつのアトラクションを一緒に体験できる舞台に仕上がっていると思いますね。
和田琢磨(嘉納火炉役):「PSYCHO-PASS サイコパス」というエネルギーを持った作品に一人ひとりの役者が魂を吹き込んで、その世界観に生きるキャラクターを作り上げています。
たくさんの2.5次元作品がある中で、それとは別物というか原作の力を借りながらも役者が本来持っている力を注いで、新しい作品に仕上げているのが、この「舞台 PSYCHO-PASS サイコパス」なんじゃないかな、と思います。
僕らも早く本番にならないかな、とワクワクしています。
本広克行(演出家):演劇なんですけど、映画を見ているような感じとか、映画だと思ってみてみると飛び出ている感じがあります。
今まで培ってきた演出のすべてをこの作品で応用できているかなと思います。
ふたりの力をお借りして、無理難題を言って、アクションも尋常じゃないくらいやっています。
これをお客さんがどう反応してくれるのか、楽しみですね。スタッフはかなりテンションが上がっていたと思います。
――今回はスピンオフ作品ということで、オリジナルキャラクターの役作りで苦労したことがあれば教えてください。
鈴木:苦労した点と言いますか、キービジュアルを撮っていたころに受けた雑誌インタビューを読んでいた方には謝りたいですね(笑)。
性格が180度変わりまして。とても爽やかな感じでもないですし、新人っていう感覚もない状態で仕上がっています。
それがかなり楽しくて、このキャラクターを演じていて笑ったのはキービジュアルのときだけですね。それ以来初めていま笑っております。
そんな新鮮な気分を感じさせてくれたのが嬉しいです。
ひとつ変わっていないことが、シビュラへの信仰心ですね。もともと描いていたものよりも強くなっているという印象を感じています。
和田:脚本家と演出家のお力の元、オリジナルキャラクターを作ったというよりも、周りの三係のみんなに嘉納火炉というキャラクターを作ってもらいました。
一人ひとりがどう、というよりも三係のメンバーでひとつのチームを作り上げたという感覚が強いです。
アニメ「PSYCHO-PASS サイコパス」の中にはいないけれど、アニメにも三係のメンバーがいたらいいな、こういうチームありそうって期待してもらえる公安局になったんじゃないかな、と思います。
全体でこの「PSYCHO-PASS サイコパス」という作品を作った、という気持ちがとても強いです。
――演出家の本広さんにお伺いします。今回初めて和田さん鈴木さんと舞台を作り上げてみて、いかがでしたか?
本広:お二人ともかなり人気の俳優さんとお伺いしていたので、超嫌なやつなのかと思ったら……真っ白で来てくれましたね(笑)。
言ったこと何でもやってくれました。「じゃあここで踊ってくれますか?」って言ったら踊ってくれるし(笑)。
鈴木:それだけ本広さんがどういう方なのかってとても興味があったので「真っ白な状態で行こう」というのはテーマでもありました。
本広:びっくりしましたよ、本当。真っ白なキャンバスに絵を描いている感じでした。
映像とマッピングと芝居と舞台とか全部ごちゃ混ぜにしたのは初めてだったので……これは続編あるんじゃないかなって思うくらいです。
やればやるほど楽しくて楽しくて、これはお二人の力だと思いますね。
和田:稽古場楽しかったですよね。ものづくりしている感じがあって。
――本広さんの印象はいかがでしたか?
鈴木:本広さんとご一緒するのが初めてだったので、どんな演出をされる方なのかとても楽しみにしていました。
自分の目標としては、本をみて役のベースとかは持っていくけれど、あとは現場で他の役者さんと一緒に作る中でどのように導いてくれるのか楽しみにしていたので、かなり真っ白な気持ちで飛び込んだといいますか。
本広:まったく別人だったよね。
鈴木:ある意味そこも白紙になったので、真っさらになったというか(笑)。
本広:最初「百鬼丸来た!」って思った(笑)。だんだん九泉晴人になっていくのが面白かったね。
和田:結構ビビって稽古場に入ったのですが……じつは稽古初日を間違えて1日早く入ったんですよね。
そうしたら本広さんとかスタッフさんが会議している最中で、入った途端「こいつきた!」って雰囲気になりました(笑)。
あの時に初めて本広さんにお会いしたんですが、ものすごく役者の言葉に耳を傾けてくださって。
僕らに挑戦する環境も与えつつ、ご自分の世界もお持ちなので、お互いのすり合わせをしていく作業が楽しかったです。
――ちなみに3日くらい早く来てましたね。
和田:そうなんですよ。気合い入れすぎましたね。
本広:あのエピソードもあの時の衝撃もキャラクターに影響しています。
――最後にお客様へのメッセージをお願いします。
鈴木:もともと原作ファンの多い作品で、かつ現在アニメ第3弾も放送されていて、期待度もどんどん高まる中での舞台化です。
改めて、「PSYCHO-PASS サイコパス」という世界観の大きさを出演する僕たちも感じています。
2.5次元作品といえば原作で予習ができるものですが、舞台版サイコパスのキャラクターは、どの作品にも出ていないので、今回はまっさらな状態で観てもらえるのがひとつの魅力です。
新たな可能性を秘めた「PSYCHO-PASS サイコパス」を楽しんでいただければと思います。
和田:東京・大阪公演に加えて、ライブビューイングも行われるということで、全国の「PSYCHO-PASS サイコパス」ファンの人にこの作品を届けられると思うと楽しみです。
オリジナルストーリーだからこそ、原作ファンの方にも「PSYCHO-PASS サイコパス」の新しい魅力を僕らから発信できれば本望です。
千秋楽まで走り切りますので、どうぞよろしくお願いいたします。
本広:ライブビューイングに対応できるようにカット割りとかも考えたので、ぜひ楽しんでほしいですね。
――今回舞台にした理由を教えてください。
本広:「PSYCHO-PASS サイコパス」はアニメだけでなく、ノベライズも漫画もラジオドラマも取り組んできたので、その中の一環としての舞台化でした。
ずっとやりたいなって思っていたのですが、ここで失敗すると「PSYCHO-PASS サイコパス」プロジェクトが途絶えてしまうので絶対に面白いものにしようと思って、思いの丈を全部詰め込みました(笑)。
――誰か共演者の中で色相が悪いなって感じる人はいますか?
鈴木:それ誰かの名前あげた時点で一番自分が色相濁ってますよね(笑)。怖い質問来ますね〜、どうしましょうねえ。
和田:罠ですね、これは。
本広:スタッフ同士で励ましあって色相濁らないように頑張りました。
鈴木:観てもらうことで僕たちのメンタルケアになるというか。治療の一環としてみてご協力いただけるとありがたいですね。
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