舞台「東京リベンジャーズ」―血のハロウィン編―が3月18日(金)、大阪・COOL JAPAN PARK OSAKA WWホールで開幕。2.5ジゲン!!では、東京公演初日に行われたゲネプロの様子をお届けする。
和久井健の漫画「東京卍リベンジャーズ」を原作とした同舞台。2021年8月に上演された第1作目に続く今作では、東京卍會と芭流覇羅(バルハラ)の間で起こった抗争、通称『血のハロウィン』が描かれる。
主人公の花垣武道(タケミチ)役の木津つばさ、東京卍會の総長・佐野万次郎(マイキー)役の松田凌、マイキーを支える副総長・龍宮寺堅(ドラケン)役の陳内将らが続投。新たに、今回のキーパーソンとなるタケミチの相棒・松野千冬役の植田圭輔、壱番隊隊長・場地圭介役の上田堪大、羽宮一虎役の赤澤燈らが出演している。
幕が上がり、最初に舞台に登場するのは大人になったタケミチと恋人の橘日向(ヒナ/演:花瀬琴音)だ。
前作で『8・3抗争』を終わらせ、ドラケンの死を回避したタケミチ。しかし現代に戻っても東京卍會は変わらず巨悪な組織のままで、ヒナはタケミチの目の前で友人の千堂敦(アッくん/演:中尾暢樹)に殺されるという最悪の展開を迎えてしまう。
アッくん自身も命を落とす直前に残した言葉、――「怖ぇんだよ。ただひすら、稀咲が」。どうやら稀咲鉄太(演:結城伽寿也)が、この最悪の状況を作り出し、ヒナを殺し続けている黒幕らしい。
さらに今回の未来では、救ったはずのドラケンが死刑囚になっていた。マイキーも血のハロウィンで一虎を殺害、本来は逮捕されるところを稀咲鉄太に助けられ、これ以降、稀咲の手に堕ちてしまったのだという。
未来は、以前にも増して悪い方向へと進んでいた。
ヒナを救うため、未来を変えるため、タケミチは再び12年前へとタイムリープを決意する。今回のミッションは、「血のハロウィンでマイキーが一虎を殺すのを阻止すること」「そのきっかけとなった一虎による場地の殺害を阻止すること」。
同時に、稀咲による東卍乗っ取りの足掛かりとなる「芭流覇羅との合併阻止」も必須となってくる。多くの謎と試練を抱えたタイムリープは、前回にも増して厄介そうだ。
血のハロウィンは、場地とマイキー、一虎たちと、東京卍會の創設メンバーたちの過去にも関わってくる重大な事件だ。マイキーの親友であるはずの場地が、なぜ東卍會を抜け芭流覇羅に入ったのか? 一虎がマイキーを恨むようになった理由とは?
――様々な感情が複雑に絡み合った先に迎える事件の結末は、その目で見届けてほしい。
前作に続き、主人公の花垣武道を演じるのは、木津つばさ。稀咲に殴られ、場地に殴られ、抗争シーンではモブにまで殴られと、相変わらず負けてばかり。“泣き虫のヒーロー”と呼ばれるだけあって、よく泣きもする。しかしヒナや仲間を助けるために走り続ける姿はいつだって真っ直ぐで、まぶしい程の主人公パワーに満ちている。時折見せる表情も凛々しくカッコいい男の顔になっており、タケミチの成長を感じることができる。
そんなタケミチにも、相棒と呼べる存在ができた。植田圭輔が演じる松野千冬だ。東卍の壱番隊副隊長であり、場地の腹心だった千冬。場地が芭流覇羅に鞍替えした際にも、場地の真意を一早く見抜いており、その後も場地を取り戻すために手助けをする。表情や視線の動き、一挙手一投足から伝わる場地への信頼と思いは、多くの観客の胸を打つだろう。特に終盤での場地との回想シーンは、涙なしには観られない。
東卍の創設メンバーであり、マイキーの親友であり、千冬が唯一尊敬する男、場地圭介を演じるのは上田堪大。ぶっきらぼうで荒っぽく、破天荒ともいえる場地だが、それでも周囲から信頼は絶大だ。上田が演じる場地は喧嘩の強さに加え、仲間のために自分を顧みずに戦ったりと、「これぞ男の中の男」という圧倒的漢気に溢れていた。単身敵陣に突っ込む前、髪を結ぶその背中に「一生ついていきます!」と言いたくなったファンも多いのではないだろうか。
場地と同じく、今回初登場の羽宮一虎を演じるのは赤澤燈。かつて東卍の創設メンバーとして皆と肩を並べていたが、ある事件をきっかけに少年院に入っていた。歪んだ感情をマイキーにぶつける姿は凄まじい迫力で、同時に危うさも感じられる。この繊細さと狂気のバランスも、赤澤の演技力があってこそだろう。静と動のスイッチが切り替わる際の表情づくりにも注目したい。
新しいキャストが多く加わり益々盛り上がりを見せる今作だが、もちろん前作から続投しているキャストたちからも目が離せない。松田凌が演じる無敵のマイキーは、今作でも圧倒的な強さを見せてくれた。しかし今作では強さだけではなく、壮絶な過去や自分自身で抑えることのできない“黒い衝動”など、マイキーが抱える闇が垣間見える。
マイキーに寄り添う東京卍會の副総長、ドラケンは陳内将が前作に引き続き熱演。マイキーの精神的支柱でもあるドラケンは、舞台にとっても欠かせない存在だ。安定感のある芝居で、舞台全体を支えていた。
芭流覇羅の総長代理・半間修二を演じるのは菊池修司。前作では終盤に少しだけ登場していたが、今作では長い手足を活かした殺陣を惜しみなく魅せてくれる。また、結城伽寿也が演じる稀咲鉄太も敵側のキャラクターとしてタケミチの前に立ちはだかる。稀咲の武器は、腕っぷしの強さではなく人心掌握に長けているところだ。いつの間にか周囲を操り人の心を浸食していく姿からは、底知れない不気味さを感じる。
「東京リベンジャーズ」は、タケミチがヒナを助けるために戦い続ける話だ。しかしそれだけではなく、一人一人の登場人物たちの過去や感情が複雑に絡み合うことによって生まれる物語も重要である。一筋縄ではいかない事情を抱えた登場人物たちばかりだからこそ、全員から目が離せなくなってしまうのだ。
「血のハロウィン」が終わっても、まだまだ解決しなければいけないことは山積みだ。何度タイムリープをしても、タケミチの前には新たな試練が立ちはだかる。次もとんでもない事件が待ち受けているに違いない――そんな緊張感を残し、約2時間半の舞台は幕を下ろす。
幕が下りる直前、初めて特攻服をまとったタケミチは真っ直ぐと前だけを見ていた。人生のどん底を生きていたダメフリーターの姿は、もうそこにはない。“泣き虫のヒーロー”が本物のヒーローになる日が、いつか必ずくるだろう。
公演は4月3日(日)まで、東京・サンシャイン劇場で行われる。
取材・文:水川ひかる
(C)和久井健・講談社/舞台「東京リベンジャーズ」製作委員会
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