前作から3年、ついに舞台『機動戦士ガンダム00-破壊による覚醒-Re:(in)novation』が2月7日(月)、幕を開けた。
2.5ジゲン!!では初日公演の観劇レポートをお届け。初日からスタンディングオベーションが起きるほどの熱気を届けてくれた本作の見どころを振り返る。
波紋は広がり、やがて“再生”へと至る
命をやり取りしながら、生きて未来を切り拓くために戦う者たちの魂の飛沫がほとばしる、戦場さながらの熱さがステージ上を覆い尽くしていた。
前作でお披露目となり、舞台という制限と枠の中で生まれた革新的なコックピット演出は本作でも健在。より激化し、刻一刻と動き続ける戦況をダブステ独自の演出で、息つく暇のない展開を描き出した。
原作アニメ1期に相当するストーリーを前作で描き、本作はそれに続くソレスタルビーイングの戦いを描く。地球では対立していた3大勢力が、ガンダムの登場を機に地球連邦アロウズとして結束。反政府組織カタロンも組織され、勢力図はさらに混乱を極めていく。そのなかで一時戦線を離脱していた刹那・F・セイエイ(演:橋本祥平)は……というところから物語が動き始める。
ソレスタルビーイングが国家間の紛争に介入、武力による戦争根絶を目指し人類vs人類の戦いが描かれた前作に対し、本作は人類と人類の革新を促す存在イノベイターとの対立がメインとなる。本作から登場する新キャラクターも一気に増え、迫力に気圧された前作をさらに勝る気迫が渦巻いた。
刹那・F・セイエイとリボンズ・アルマーク(演:赤澤燈)という象徴的な2人に加え、新たに沙慈・クロスロード(演:前川優希)という別ベクトルの存在が加わる。ただの一般人として普通の人生を歩んできた彼の存在が、刹那と交わるとき、一つの波紋を生み出す。
なぜ争うのか、争いは平和をもたらすどころか争いしか生まないのではないのか――沙慈の無垢な問いかけは刹那の心とぶつかり、刹那から生まれた波紋が今度は沙慈の心を揺らす。
目指す世界はありながらも、そこへ続く絶対的な道がない中、それぞれの信念から発せられた波紋が調和しぶつかり合っていく。その寄せては返す衝突の中で、それぞれの生きる意味が色濃く浮かび上がってくる。機動力抜群の戦闘シーンの迫力に負けないほど、重層的で胸にズシリと沈む人間ドラマが、「機動戦士ガンダム00」という作品が持つテーマの奥深さを感じさせてくれた。
「戦う意味」「生きる意味」を、ある者はまっすぐに信じ走り抜き、ある者は戸惑い道を探し、またある者はその意味を過去に探す。登場人物は多いものの、胸に宿す意味は千差万別だ。一つとして同じ形のものはない。しかしそこには必ず、他者との関わりが生じる。その関わりを丁寧に描き出しているからこそ、本作は痛快なアクション作品で終わらない面白さがあるのだろう。
自分にとっての生きる意味や存在意義はどこにあるのか。人々の生き様が交錯する本作は、進むべき道がわからずふと立ち止まったとき、その破壊的な熱量で“再生”の道を指し示してくれる。そんな希望に満ちた作品になってくれるのではないだろうか。
新キャラ多数登場!各キャラの見どころは?
初演から約3年ぶりの再集結となったソレスタルビーイング。橋本祥平演じる刹那をはじめ、ティエリア・アーデ(演:永田聖一朗)、ロックオン・ストラトス(演:伊万里有)は安定感抜群。
決して感情豊かなわけではないが、その瞳に信念を宿らせた刹那は、迷いをふりきる戦いっぷりで主人公としての存在感を発揮する。
永田はティエリアの揺らぎを繊細に表現し、伊万里はロックオンでありながらロックオンではない難しい役柄を好演。今作で初めてアレルヤ・ハプティズムを演じた小坂涼太郎は、ソーマ・ピーリス(演:希代彩)やセルゲイ・スミルノフ(演:加藤靖久)との関わりの中で、彼が持つ優しさや矛盾を丁寧に作り上げていた。
リボンズ・アルマーク率いるイノベイター陣は、リボンズとネーナ・トリニティ(演:伊藤 優衣)を除き本作が初登場。怪しげな雰囲気漂うリジェネ・レジェッタ(演:田口涼)にリヴァイヴ・リバイバル(演:北村健人)、好戦的なヒリング・ケア(演:花奈澪)とイース・イースター(演:深澤大河)。4人が加わったことで、戦闘シーンはより苛烈なものへと進化。彼らはまさに作品に革新をもたらす存在だったと言えるだろう。
本作ではミスター・ブシドーとして登場するかつてのグラハム・エーカーは佐々木喜英が好演。ほぼ執念とも憎悪ともとれる深い愛の力で戦局を動かしていくミスター・ブシドーは、観る者を惹きつける佐々木の空気感とマッチ。得も言われぬカリスマ性を醸し出していた。
そして本作からのキーパーソンとなるのが、前川演じる沙慈・クロスロードと、その想い人であるルイス・ハレヴィ(演:本西彩希帆)だ。普通の一般人だった2人のたどる運命はあまりに過酷。観客の感覚に一番近い登場人物なだけに、前川と本西の熱演に心揺さぶられる観客が続出するだろう。
決着に向けて初演よりもさらに重いストーリーが展開した本作。その中でも初演同様に笑いをもたらしてくれたのが、パトリック・コーラサワー(演:瀬戸祐介)だ。彼の愛するカティ・マネキン(演:平湯樹里)との、思わずニヤニヤするやり取りはさらにパワーアップ。シリアスな展開が続くが、パトリック・コーラサワーのターンは存分にニヤニヤできることだろう。
最後に本作に欠かせないのがアンサンブルの面々だ。前作を圧倒する数の戦闘シーンを、コックピットとともに滑走。まさにガンダムの動力源であるGNドライブそのものとして存在し続けていた。
またガンダムがトランザムで進化を遂げたように、演出面も進化。コックピットに取り付けたカメラの映像が映し出されるという、まるでアニメのような演出も登場。その様子は劇場での観劇はもちろん、配信やBlu-ray&DVDでも楽しんでみてほしい。
延期を経てついに上演された舞台「機動戦士ガンダム00 -破壊による覚醒-Re:(in)novation」。それぞれがたどり着いた覚悟の物語を、迫力満点のコックピット演出とともに体感してみてはどうだろうか。
取材・文:双海しお
撮影:HARLY、ナスエリカ/(C)創通・サンライズ
広告
広告