アイドルが大好きなヲタクたちと、宝塚が大好きなショーパブのママが大暴れするという、方南ぐみ恒例作品である「伊賀の花嫁」。新型コロナウイルス蔓延の影響で2021年1月の公演が延期となり、同年10月に朗読劇として上演。満を持して2022年1月29日(土)に「伊賀の花嫁 THE FINAL ここにいるぜぇ」編として東京・俳優座劇場にて開幕した。
ダンス、笑い、ヲタ芸、ヅカ芸…と、とにかく多様なエンターテインメントが詰め込まれた本作のゲネプロレポートをお届けする。
魅力あるキャラクターが多過ぎて…
主人公・伊賀三四郎(演:町田慎吾)は「お嫁さんを探すため」に故郷である伊賀の里からはるばる上京してきたにもかかわらず、アイドルヲタクになっていた。ショーパブを経営する涼風せいらママ(演:瀬下尚人)やトップ・ヲタ=TOこと鳳ランラン(演:水谷あつし)のほか、パブの従業員たちと面白おかしく、ときに刺激的(?)に過ごす中、突然、北岡スズオ(演:稲垣成弥)というヲタの青年が現れたことでその日常は変化し始める。
冒頭の三四郎の殺陣シーンは見ごたえたっぷり。バッサバッサと敵をなぎ倒す容赦のなさや、目つきの鋭さから堅く張り詰めた空気が伝わってくるだけに、その後にパブでヲタトークを繰り広げる彼とのコントラストに脳が一時停止する。
町田が作り出す三四郎は、温和で優しくツッコミどころも満載だが、本作の異次元すぎる世界観と観客をまるでチャンネルを合わせるかのように繋げてくれる。
物語に変化をもたらす男・北岡スズオは登場直後からフルスロットル! もはや、三四郎以上にどうツッコめばいいの分からない、超取り扱い注意な青年という印象。ピュアでいつもニコニコし人畜無害そうなのだが、スイッチが入ると色々と怖いのだ(笑)。そんな彼も、三四郎と少し角度は違うもののヲタ活と故郷の恋人との今後について悩み苦しんでいた。
この作品で稲垣の予想の斜め上を行くヲタ姿に驚いた人も多いのではないだろうか。長身かつ端正な顔立ち、落ち着いた声のトーンの持ち主である彼は、そのイメージに付随した役柄も少なくはない。だからこそ本作ではいい意味で「してやられた!」感でいっぱいだ。
稲垣を含めた加藤良輔、横尾瑠尉、土井一海、葉山昴といった若手俳優陣の新たな姿や能力を次々と引き出す『方南ぐみ』。ひいては作・演出の樫田正剛の手によって毎公演ごとに多種多様な化学反応が巻き起こされ、観客の爆笑と感動を誘う。
* * *
モーニング娘。から太田裕美の楽曲など、懐かしのヒットチューンとともに様々な角度から楽しませてくれる「伊賀の花嫁 THE FINAL ここにいるぜぇ」編。初日公演後からスタンディングオベーションが捧げられたというもの大納得!
さらに2月2日(水)・3日(木)には昨年10月に実施された「伊賀の花嫁」や「三四郎のお見合い」といった朗読劇の再演も予定している。
物語や俳優陣の演技はもちろんだが、劇中に登場する痛バッグやヲタグッズの本気度合いも注目してみてほしい。
取材・文:ナスエリカ/写真:方南ぐみ Official Photo
広告
広告