『ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-』Rule the Stage -track.5-が大阪公演を終え、東京へー。1月27日(木)からついに東京公演が幕を開けた。2.5ジゲン!!では東京公演初日に先立ち実施されたゲネプロをレポート。TOKYO DOME CITY HALLを埋め尽くした圧倒的な力感じる公演の様子をお届けする。
交錯する、絆と過去
H歴前から始まる過去を描く『ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-』Rule the Stage -track.5-。原作ファンやシリーズファンが知るH歴3年という未来に向けての彼らの足跡が、本作でついに明かされることになる。
過去の語り部であり、舞台シリーズ初登場となる神奈備 衢(演:糸川耀士郎)は、大切な宝物を慈しむようでいて痛切な面持ちで過去についての言葉を紡いでいく。彼が未来へ届けたい4人の男たちとの物語とは、一体どんなものなのか。衢に手を引かれるようにして、観客は過去へと飛び込むことになる。
ここから伝説のチームと謳われた”The Dirty Dawg”が結成されるまで、そして絶頂だった彼らの前に現れる舞台オリジナルキャラクター”D4”との対峙が描かれていく。
冒頭ではH歴3年の今の彼らの姿や関係性も描かれる。観客は視覚的に、これから描かれていく過去のあとに待つ未来=今を改めて確認することになる。その未来の姿を目に焼きつけた上で、決して覆すことができない過去を観るという行為は、いとも簡単に観る者の心を締め付けることだろう。
過去の山田 一郎(演:高野洸)と碧棺 左馬刻(演:阿部顕嵐)は、互いに背中を預けあう。そして飴村 乱数(演:安井謙太郎)と神宮寺 寂雷(演:鮎川太陽)は共に隣に並び立つ。そんな関係値を築いていた彼らは、なぜ今袂を分かち、犬猿の仲となっているのか。その過程が、ある目的を持つ”D4”との衝突と対比という舞台オリジナル要素を加えることで、より深く濃く掘り下げられていたのが印象的だ。
映像出演となった白膠木 簓(演:荒牧慶彦)と波羅夷 空却(演:廣野凌大)の演出や登場するタイミングにも唸らされた。映像であると分かっていてもそこに体温を感じさせるリアルさが、最新技術と演出の融合により見事に表現されていた。空却との過去を過去として割り切れない一郎、夢うつつの中で簓に言葉をぶつける左馬刻。映像とリアルが融合した演出は、まるで過去と今が混ざり合い乱れている2人の心を表しているようでもあり、過去の点と点が全て、今へと繋がっていることを痛感させられる。
今作もリリックと演出に仕掛けが満載。5作目でも決して進化のスピードを緩めることはしないという、制作陣の強い思いがステージ上の至るところから伝わってきた。刻み始めたビートはもう誰にも止められない、とでも言うように淀みなく物語は流れ、畳み掛けるように熱い音と芝居を浴びることになる。初見はステージから伝わる勢いの波に乗って楽しんで、二度目以降はリリックに連動するセリフや芝居といった細かな部分を楽しむのもいいのではないだろうか。
シリーズ初の過去編だからこそ、この先に待つ未来のヒプステに向けて、ぜひとも観ておきたい一作と言えるだろう。
“T.D.D VS D4” 構図が生み出す闇の対比
一郎と左馬刻については安定感が抜群。これまで散々吠えあってきた一郎と左馬刻のバディが観られるのはこの作品ならでは。高野と阿部はそれぞれのキャラクターの芯の部分は変わらず持ちながらも、時系列を意識した芝居の変化が見事で、肩を組む2人をいつまでも眺めていたいと思うファンも続出するだろう。
一歩引いて見守る保護者のような寂雷は、”D4”の登場により過去の生業がさらに掘り下げられ、抱える苦悩が垣間見えたように思う。髪の乱れを直す仕草一つとっても、徹底的にキャラクター研究をする鮎川らしいこだわりを感じられた。
今作から乱数を演じる安井は、持ち前の身体能力とダンスで乱数の軽快さを好演。あまりに複雑すぎる身の上と立場を持つ難しいキャラクターだが、ときに軽くときに重さを感じさせる芝居で、乱数の二面性を表現していた。
そしてそんな”The Dirty Dawg”の仄暗い感情を引き出したのが、オリジナルキャラクターの”D4”だ。ある復讐心と苦悩を抱えるリーダー格の谷ケ崎 伊吹(演:高橋駿一)、ただ貪欲に強さを求める有馬 正弦(演:福澤侑)、柔らかな言動の中にただならぬ気配が見え隠れする阿久根 燐童(演:岡野海斗)、自身に眠る本能に忠実な時空院 丞武(演:後藤大)。圧巻のパフォーマンスと芝居を楽しんでもらいたい。
“D4”メンバーの生い立ちや過去は、どこか”The Dirty Dawg”に似ている部分がある。”The Dirty Dawg”の4人が一つ違う道を選んでいたら、もしかして”D4”の4人のようになっていた未来もあるのかもしれない。そんなことを考えると、より両者が対峙するシーンでこみ上げるものがあるのではないだろうか。
激しく火花を散らす両者の間で、糸川演じる衢はまるで清涼剤のようだ。ニコニコとしながらも、強い意志の灯る瞳で過去と未来の架け橋役を好演。ラップで胸中を歌い上げるシーンも必見だ。
時間は過去に遡りながらも、さらなる進化を遂げた『ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-』Rule the Stage -track.5-。東京公演は1月27日から2月6日までTOKYO DOME CITY HALLにて上演される。ディビジョン・ダンス・バトル “D.D.B”として出演するダンサーたちの圧巻のパフォーマンスと共に、一時だけ瞬いて消えた“伝説”の軌跡を目に焼き付けてほしい。
取材・文:双海しお
(C)『ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-』Rule the Stage製作委員会
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