レポート

青春時代を共にした4人たちの今は… 加藤将ら出演「グローリー・デイズ」公演レポート

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ブロードウェイミュージカル「グローリー・デイズ」が9月17日に開幕した。

2008年1月に誕生し、日本では2009年6月に初公演が行われた「グローリー・デイズ」。最新作となる本公演では、元吉庸泰の演出のもと若手俳優・アーティスト8人が集結した。

8人のキャストのうち4人が回替わりで出演する本作で、2.5ジゲン!!では日野真一郎(LE VELVETS)、加藤将、石賀和輝、エリック・フクサキによるWEST回をレポート。毎日が輝いて見えた青春時代。もうあの頃には戻ることのできない4人の、等身大の人間模様をお届けする。

人は時を重ねて変わっていく

高校の同級生である、ウィル(演:日野真一郎)、スキップ(演:加藤将)、アンディ(演:石賀和輝)、ジャック(演:エリック・フクサキ)の4人は数年ぶりに母校のグラウンドで再会した。きっかけを作ったのはウィルで、ある計画を持ちかけるためだ。学生時代、4人は同じフットボールチームの落ちこぼれ組で、その境遇から徐々に仲が深まり、励まし合いながら青春を謳歌していた。

当時自分たちをバカにしていたチームメイトたちの卒業生対校試合の噂を聞きつけたウィルは、彼らの鼻をあかすため、前夜にスプリンクラーを作動させてずぶ濡れにしてやろうと企て、3人を呼び出したのだった。しかし再会した現在、それぞれを取り巻く環境は様変わりしていて…。

最初のナンバー「My Three Best Friends」を歌い出すのがウィルであるように、この物語は彼から始まり、他の仲間を繋いでいく。なお、全曲のセットリストは後述する。

ウィルは、人間の弱さや都合の良さ、それでも自分の中で折り合いをつけて前に進めなければいけない強さを持っている。特に、ジャックのある告白でジャック本人とアンディに角が立たないように、2人に対して自分に“都合良く”動いてしまう状況は、我々の実生活でも珍しくはない。

関係性を壊したくないというのはつまり、彼にとって居心地のいい、理想の世界を壊したくない、ということではないだろうか。だからこそ彼は、ノートに自分の理想の世界を書き連ねていたのかも知れない。そして後半の、そのノートをアンディに破り捨てられるシーンは理想の世界の崩壊を意味している。

そんな脆いウィルを日野はピュアで真っ直ぐに表現する。他の3人から与えられるものを一生懸命に受け取り、悩み、リアルに返していた。それは歌唱時にも表れ、歌詞の一言一言を大切に噛み締めながら、感情をこれでもかと声にのせてくる。おそらく毎公演違ったウィルを舞台上に出現させてくれるはずだ。

ジャックのある告白、それは旅に出て自分の恋愛観に気づいたというものだった。4人の中で一番精神的に成熟している彼の恋愛対象は同性。落ち着きがあるからこそ一瞬見落としてしまいそうになるほど、なめらかにそのことを告白する。

エリック・フクサキという人間がまとう雰囲気はとても神秘的で、歌声の透明感と合わさることで何となく心を見透かされているような気さえしてくる。ただ、もちろんジャックの中にも弱さがある。告白の後ウィルと2人きりになったとき、糸が切れたように人間らしい陰りが見えるのだ。

スペイン語・英語・日本語と3カ国語が堪能なエリックはさすがで、英歌詞の運びが美しくいつまでも聞いていたくなる。これがエリックにとって3度目のミュージカル出演というのだから驚きだ。これからさらに高みに登って行くに違いない。

普段はムードメーカでお調子者、いつも真っ先にふざけ出すアンディ。しかしジャックの告白から急に態度が変わる。LGBTというものを受け入れることができないようだった。それでも一度はウィルの説得で何事もなかったように3人とつるむのだが、ウィルが良かれと思って取ってしまった行動のせいで、我慢していたものをぶちまけてしまう。

粗野な言動が多いと思いがちなアンディだが、振り返ってみると頭の出来が悪いことを何度からかわれても怒らず、感情を外に出さずに留めておける思いやりがあった。

アンディという役どころは物語を動かしていく人間であり、舞台上で停滞できないため、おそらくとてつもなく体力を使うはずだ。石賀は圧倒的な表現力でその難しい立ち位置をみごとに演じきった。

アンディは個性も喜怒哀楽も強く、それが前に出るため歌唱もまた一筋縄ではいかないはずなのだが、石賀はそこをテクニックでしっかりとカバー。実はキャスト陣の中では最年少だがその存在感はとても大きかった。

アンディの独白を皮切りに、4人の仲は壊れ始めジャックもアンディもグラウンドを去って行った。もはやスプリンクラーの計画どころではない。

ウィルの前に残ったのは呆れ顔を浮かべたスキップだけ。皮肉屋といわれる彼だが、一番業況を把握して必要な言葉を投げかける。そして最後に、行く末を想って希望を口にするのはスキップで、その言葉がウィルの心を前へと向ける。

抜群のルックスと深い歌声を持つ加藤だが、彼の登場とともにまず初めに意識に飛び込んできたのは「最近髪を伸ばしていたのはこのためだったのか!」ということ。これは筆者の勝手な想像になってしまうのだが、厳格な家庭で育ったであろうスキップの抵抗心や心の変化のようなものが、卒業以降に伸ばした髪に表れているのではないだろうか。この長髪は大事な小道具で、鍵であるように思う。

スキップは、面白いことがあると仲間に同調するも、どこか無気力で冷めた人間…であるのだが、加藤の手によって『人の心を救う器の大きさ』が加えられているように感じる。他の3人が感情をさらけ出す中、1人だけ事の顛末を見守る役なので、アンディとは違った手強さのあるキャラクターだと思うのだが、そこは加藤の直感力が大いに生かされ、劇中では快活に立ち回っていた。

***

今回はWEST出演回について紹介したが、他の回でもダブルキャストそれぞれの良さがたくさんあるはずだ。BROADWAY MUSICAL「GLORY DAYS グローリー・デイズ」は10月3日(日)まで上演中。

「グローリー・デイズ」とは栄光、全盛の日々。自身の心の宝石箱に眠っている、かけがえのない思い出が蘇ってくる作品ではないだろうか。

なお、10月2日(土)17:30、10月3日(日)13:00公演はライブ配信が予定されている。

取材・文:ナスエリカ/撮影:源賀津己


MUSICAL NUMBER
My Three Best Friends 三人の親愛なる友
Are You Ready? 準備はいいか
We’ve Got Girls 俺の武勇伝
Are You Ready? 2 準備はいいか2
Right Here この場所で
Open Road 開かれた道を
Things Are Different 変わったんだ
Generation Apathy 無気力世代
After All 独り気付けば
The Good Old Glory Type Days グローリー・デイズ
Are You Ready? 3 準備はいいか3
Thing About Andy アンディのこと
Forget About It 忘れよう
Other Human Beings 人間のルール
My Turn 俺の番だ
Boys 少年たち
My Next Story 僕の物語


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公演情報

タイトル

BROADWAY MUSICAL「GLORY DAYS グローリー・デイズ」

Music & Lyrics by NICK BLAEMIRE
Book by JAMES GARDINER

日程・場所

2021年9月17日(金)~10月3日(日)
東京・博品館劇場

演出

元吉庸泰

出演

矢田悠祐、日野真一郎(LE VELVETS)、加藤 将、木戸邑弥、風間由次郎、石賀和輝、ルーク・ヨウスケ・クロフォード、エリック・フクサキ

公式HP

https://glorydays-musical.com/

公式Twitter

@glorydays_mu

WRITER