レポート

佐藤流司・福澤侑・spi・心之介「ZIPANG OPERA ACT ZERO」ライブレポート

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様々な音楽アプローチで日本の“和”の世界を表現する「ZIPANG OPERA ACT ZERO 〜暁の海〜」が6月17日(木)〜20日(日)に東京国際フォーラム ホールCで開催中。2.5ジゲン!!では18日18:30回の様子をレポートする。

本記事では一部ネタバレ要素を含むため、新鮮な気持ちで楽しみたい方はライブ後に読んでいただきたい。

数々の舞台で活躍中の人気俳優・佐藤流司、福澤侑、spiとボーカリスト・心之介の4人で結成された「ZIPANG OPERA(ジパング オペラ)」。全く新しいジャパニーズポップを世界に向けて発信することを掲げた音楽パフォーマンスユニットだ。

アーティストプロデューサーを務めるのは植木豪。多様なジャンルを組み込んだ楽曲と演出は、類を見ない世界観作り上げている。

ジャパンロックの新領域へ到達

徹底した感染対策を講じた会場では、女性コーラスによる神秘的な音楽が流れていた。開幕前の会場の雰囲気から「これからどんなパフォーマンスが繰り広げられるのだろう」という期待感が募っていく。

定刻、ついにライブがスタートする。1曲目「Cherry Blossom」は琴のような旋律に重低音が重なった伴奏、そこにラップが加わった斬新なメロディだ。なお、全曲のセットリストは後述する。

斜幕が上がると、和とロックのテイストが調和した衣装を身にまとった4人が現れる。

それぞれの衣装は特徴があり、佐藤はクールに、spiはクラシカル、心之介はポップカジュアル、福澤はダンスが映えるストリート系のフォルムと、それぞれに基調とするテーマがあるようだった。

続いて「DRAGON FIREWORK」「Higher Ground」と曲は続くのだが、ここで日本刀を使ったパフォーマンスへと移る。

しなやかな太刀筋と鋭いリズムが融合した殺陣は、普段の舞台やミュージカルでは見ることができない新鮮さがあった。

ここで注目してほしいのは、佐藤とspiが並んで納刀するシーン。鍔が鞘に納まるまでの、コンマ数秒の間のとり方が実に美しく、短い時間ながら、舞台のエンディングシーンを切り取ったかのような迫力が伝わってくる。

ストーリー性が詰まって見応え抜群

序盤の和ロックの世界に余韻を残しつつ、ストーリー性の強いソロパフォーマンスへと繋がってゆく。

プロジェクションマッピング効果を駆使し、ニューヨークのような街並みや荒廃したSF都市など観客をあらゆる世界線にいざなってくれる。

照明の演出にも趣向が凝らされており、放射線状に照らした何本ものスポットライトを客席まで届かせることで、会場全体に立体感が出て、舞台・客席全てがまとめて一つの空間に見えるようにしていたのが印象的だった。

先程までのロックなイメージからシーンが変わり、一室で朝を迎える福澤。寝坊をしてしまって慌ただしく起きるところから彼のソロパートがはじまる。

有名舞台で振付師としても活躍する福澤は、パントマイムと音ハメを組み合わせた難易度の高いダンスを披露。細かい感情変化をステップに組み込み、運動量が多いにもかかわらずブレることのない広音域の歌声に圧倒された。

甘く寂しくバラードを歌い上げるのはspi。澄んだハイトーンボイスは胸が締め付けられてしまいそうになるほど切なさが込み上げてくる。

ソロパートではどこか放っておけない人間像を表したが、あとに続くポップな楽曲では一転。誰よりも陽気で軽快に踊って歌い、率先して明るいムードをつくり会場を沸かせる。

佐藤のソロパートでは苦しさを感じるほど、一単語ごとを丁寧に歌い上げながらも、聴いている側を突き刺さすような鋭利さを孕んでいた。その声の表現方法は唯一無二だ。声だけでなく自身を取り囲む空間もうまく利用し、床もストーリーを形作る道具の一つとして使っていたのが目を引いた。

メンバー最年少の心之介はスイートな歌声で、EDM、エレクトロ・ポップ、ラップなど幅広いジャンルを巧みに操り存在感を大いに発揮。

自身のソロ曲では、静まり返ったシーンから突如、アコースティクギターを弾き語り、彼の透明感のある歌声を会場内に響かせる。

「HATE DISTANCE」は 自身作詞作曲の楽曲で、爽やかさと疾走感がある曲調だが、歌詞の内容には日々のジレンマや率直な感情が込められているようだ。

アクシデントから伝わる信頼関係

ライブ最終曲の「鳴音」に差し掛かった場面で、佐藤のヘッドセットマイクにアクシデントが。

それに気付いたspiがすかさず駆け寄り、自分のマイクを取り外して佐藤へ差し出だそうとした。ライブであるからこそ、不測の事態は必ず発生するものなのだが、ほんの一瞬で行動に出たspiの卓識に驚かされる。

そしてさらに、spiに大丈夫だと合図をおくり、すぐさまにハンド(ヘルド)マイクを取り出した佐藤の判断力の速さ。瞬時に切り替えて何事もなかったかのようにパフォーマンスを再開していた。

驚く出来事はここで終わらない。

ハンドマイクによって音の反響が変化し、より重くなったことで、終盤の佐藤の太いシャウトがすさまじい威力を発揮したのだ。

脳を直接揺さぶられるような、まるで催眠術にかけられているかのような、肌がビリビリする魅惑のトリップ感を味わえた。

いっそ、「最初から計算されていたのでは?」と思ってしまうほど、観客には嬉しいハプニングだったのではないだろうか。

こういったアクシデントを乗り越えられるのも、実力はもちろん、お互いにカバーできる信頼関係とスタッフ陣の事前準備、細部の気配りがあるからではないだろうか。

アンコール後のファンサービス

最後に他のレポート記事では書いていないであろう、アンコール時の話を入れたいと思う。

アンコールでは「OVERGROUND」と各曲のメドレーが披露される。

4人は本ライブTシャツを身にまとい、この日の最後にさらに熱い盛り上がりを見せる。特にメドレーでは、出演陣が左・右・中央と会場の隅から隅まで手を振りながら歌声を届けてくれるのだが、その際のサービスがすごいのだ。もちろん、ライブ本番中もすごかったのだが。

spiは溢れんばかりの笑顔にポップな動きを添えて、心之介は可能な限りステージの端から端へと走りまわり、福澤は誰よりも速く駆けつけ声を投げかけ、佐藤はコミカルなアイコンタクトを交えて終演の最後の最後まで楽しませつつ…と、4人全員から、観客一人一人に届くようにという強い想いと、親近感と、手厚さが伝わってくる。

* * *

もし次回公演があるようならば、その際はぜひ現地でこの衝撃と感動を味わってみてほしい。

「ZIPANG OPERA ACT ZERO 〜暁の海〜」は6月20日(日)まで上演。6月20日(日)の公演はシアターコンプレックスで6月27日(日)までアーカイブ配信。

文:ナスエリカ

「ZIPANG OPERA ACT ZERO 〜暁の海〜」配信概要
■配信対象
1.6月20日(日)13:00公演
定点映像 / 終演後生コメント
https://theater-complex.jp/movie/detail/1753
2.6月20日(日)17:00公演
スイッチング映像 / 終演後生コメント
https://theater-complex.jp/movie/detail/1754
■販売期間
2021年6月27日(日)21:00まで
■見逃し期間
ライブ終了後~6月27日(日)23:59まで
※見逃し配信準備に時間かかる場合がございます。

「ZIPANG OPERA ACT ZERO 〜暁の海〜」セットリスト
M1:Cherry Blossom
M2:DRAGON FIREWORK
M3:Higher Ground
M4:Last Quarter
M5:WELCOME TO NEW WORLD
M6:I Believe
M7:Alter Ego
M8:HATE DISTANCE
M9:Breath
M10:DRAMA
M11:Happy Feeling
M12:開華
M13:鳴音

E1:OVERGROUND
E2:メドレー

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公演情報

タイトル

「ZIPANG OPERA ACT ZERO 〜暁の海〜」

日程・会場

2021年6月17日(木)〜20日(日)
東京国際フォーラム ホールC

構成・演出

植木豪

出演者

佐藤流司、福澤侑、心之介、spi

公式サイト

https://ldhrecords.jp/zipangopera/

公式Twitter

@zipang_opera

(C)ZIPANG OPERA PROJECT

WRITER