大人気ゲーム「Fate/Grand Order」を原作とした舞台シリーズ「Fate/Grand Order THE STAGE」。第六章、第七章と大好評のうちに幕を閉じた本作は、ついにシリーズ集大成「Fate/Grand Order THE STAGE -冠位時間神殿ソロモン-」へ。
2.5ジゲン!!では、10月24日にスタートした東京公演に先立ち実施されたゲネプロの様子をレポート。ネタバレのない範囲で本作の魅力、各キャストの見どころをお届けする。
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「人生とは?」――“嘘のない”物語が観客に問うもの
約3時間の上演時間の中で描き出されるのは、ステージ上に生きる登場人物たち、そして、この作品を目の当たりにする観客たちの優しく儚い壮大な旅路だ。
原作ゲームをプレイ済みのファンほど、あの終局特異点の物語をどう舞台化するのだろうかと疑問を持っているかもしれない。一方、原作未プレイで舞台シリーズは本作が初観劇というファンも、「FGO」の世界観を理解して堪能できるだろうかと不安があるだろう。
シリーズ3作目にして集大成を掲げる本作は、そのどちらのファンも置いていかないという意気込みにあふれていた。
ストーリーはカルデアがいかにして終局特異点にまで到達したのか、彼らの“始まり”から描かれていく。既にそのストーリーを知る者はアルバムのページをめくるように彼らの日々を思い返し、初めて本作の世界観に触れる者は、原作の持つ膨大な情報量の中から欠かせない内容をしっかりとキャッチアップすることができるだろう。
終局特異点をメインとした本作で描かれる、“始まり”の日々。それはまるで、この旅路が“終わりの始まり”であること、またどんな旅も“始まりがあれば必ず終わりがある”ことを提示しているように思えた。
本作では、「旅」や「物語」といった単語がよく登場する。どちらも始まりがあり、終わりがあるものだ。作中で交わされるこれらの単語は、単に人理修復のための旅路を指すのではなく、マシュ・キリエライトやマスター・藤丸立香、ロマニ・アーキマンの命や人生をも指している。
カルデアの彼らのように、自分の行いが人類を左右するという局面に向き合うことになる観客はほとんどいないだろう。しかし、彼らの非日常的な現実離れした戦いを通して、自分に与えられた“物語という名の人生”について考えさせられるのだ。
自分のこれまでの日々を振り返ったとき、果たして自分はあの最終決戦を前にしたロマニやマシュ、マスターのように胸を張って言葉を紡ぐことができるだろうか。できれば自分もそんな人間でありたい。
観劇後、心地良い疲労感と共にそんな想いが胸に浮かんだ。ひとつのエンターテインメント作品でありながらも、キャスト陣が生み出す“嘘のない”物語は、その鋭利な透明感で観る者の心を深く抉ることだろう。
全キャスト見どころレポート(ネタバレなし)
さて、ここからはネタバレなしで各キャストの見どころを紹介したい。
まずはカルデアキャストだが、シリーズ初演から“カルデアのパパ”としてカンパニーを見守ってきたロマニ・アーキマン役の井出卓也。そして、その愛娘のようにかわいがられてきたマシュ・キリエライト役のナナヲアカリは、シリーズ過去作品を観てきたファンならなんの心配もなく観ることができるだろう。
前述したように、本作では“始まり”が描かれる。その中で2人がどう出会い、どんな言葉を交わしてきたのかも丁寧に描かれていく。1幕で描かれる2人の会話は、そのまま2幕へのキーワードとなっていくので、何気ない会話も聞き漏らさずにしっかりと観てもらいたい。
本作の主人公となるロマニ関しては、特にその声色に注目してほしい。初演からこの難しい役と向き合い続けてきた井出だからこそ、ロマニという人物の在り方が見事に表現されていた。詳細を語るとネタバレになってしまうので避けるが、彼の演技はまさに屋台骨として、本作を支えていたと言えるだろう。
ゲネプロは男性マスターver.の上演だったため、藤丸立香役は新里宏太が担当。まっさらなマスター候補生だった彼が、“立派なマスター”へと成長していく姿が、爽やかでいてたくましい。女性マスターver.では同役を髙石あかりが演じているので、ぜひ両バージョンを見比べてみたくなった。
カルデアにとって“パパ”がロマニなら、“ママ”はレオナルド・ダ・ヴィンチ(演:舞羽美海)だ。今作からキャストが変わっているが、シリーズ恒例となっているダヴィンチちゃんによるショータイムは健在。そのパフォーマンスでダヴィンチちゃんらしいタフさを見せてくれた。
また本作で初登場となるレフ・ライノール(演:村田充)は、振り幅のある演技で観客を魅了。一見すると地味な雰囲気漂う紳士なのだが、その初見の印象があるからこそ、中盤以降の登場シーンでは度肝を抜かれることになるだろう。実力派らしいたしかな演技力で、作品全体に重みを与える存在となっている。
ここからはサーヴァントたちについてレポートしたい。ランスロット(演:小野健斗)・オジマンディアス(演:本田礼生)は第六章に、ギルガメッシュ(演:丘山晴己)・エルキドゥ(演:山﨑晶吾)は第七章に登場していたサーヴァントたちだ。
過去2作品を観たファンなら懐かしさに思わず涙腺が緩むに違いない。シリーズファンにとってはボーナスタイムと呼ぶにふさわしい、憎い趣向の演出が随所に散りばめられていた。存分に楽しんでもらいたい。
第七章から登場する瑛(あきら)演じるマーリンは、世界を見通す千里眼の保有者らしい立ち位置で随所に登場する。彼はストーリーテラー的な役割も務めるため、特に「FGO」初心者にとっては彼の解説が肝となるだろう。
今作ではシリアスなシーンの多いロマニに代わり、マーリンがコミカルなシーンを担うことも。マーリンのひょうひょうとした掴みどころのない雰囲気は、本作でも見事に表現されている。
今回初登場となるサーヴァント、クー・フーリン役を演じているのは加藤将だ。彼の「アニキ!」と呼びたくなる背中は、まさにクー・フーリンそのもの。
詳細は省くが、実は舞台ならではの、とある仕掛けが待っている。ファンは興奮待ったなしのこの演出については、ぜひ劇場や配信でその内容を確認してもらいたい。劇場で観る場合、思わず叫び声をあげたくなってしまうかもしれないので要注意だ。
そして最後に紹介するのが神永圭佑演じるソロモンだ。ソロモンという役は、詳しく語るとネタバレに直結してしまうほど重要な鍵を握る人物である。
以前2.5ジゲン!!で行ったインタビューで、神永はソロモンという役を嘘なく演じるために苦悩していることを明かしてくれた。その暗闇の中をもがいてできあがったソロモンが、ステージ上で観客を待ち受けているのだ。
彼は、まさに終局特異点にふさわしい威圧感のある絶対的な存在としてマスターの前に立ちふさがる。観客も思わず絶望してしまうほどの彼とのやり取りの末に、ロマニは、マシュは、マスターは何を想い、何を得るのか。
それぞれの登場人物たちが選び取った“今”と“未来の結末”を、見届けてもらいたい。
また本シリーズには、質の高いアンサンブルキャストが欠かせない。もはや、アンサンブルとまとめて呼ぶことがためらわれるほど、彼らは個性を持つそれぞれの存在を生きている。その活躍にも注目してみると、より本作を楽しむことができるのではないかと思う。
「Fate/Grand Order THE STAGE -冠位時間神殿ソロモン-」は2020年10月18日(日)のプレビュー公演を経て、2020年10月24日(土)から10月30日(金)まで東京公演が上演される。
生演奏と共に生み出される、とある“人類の旅路”は壮絶でいてどこまでも優しい。その旅の一座に加わる仲間の気持ちで、ぜひその旅の終わりを見守ってみてはどうだろうか。
男女マスターver.千秋楽両公演 ライブ配信
【対象公演】
2020年10月30日(金)12:00公演(女性マスターver.)
2020年10月30日(金)17:30公演(男性マスターver.)Streaming+
https://eplus.jp/stagefate-go/
※ライブ配信、ディレイ配信はそれぞれ配信期間・販売期間が異なります。
※販売期間・視聴期限など詳しくは、各配信サイトをご確認ください。
(C)TYPE-MOON / FGO STAGE PROJECT
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