「ペルソナ5」舞台化シリーズ2作目となる「PERSONA5 the Stage #2」が2020年10月1日に初日を迎えた。
前作では主人公たちがペルソナの能力に目覚め、生徒を虐げる教師の心の欲望を盗み出し“改心”させるという、“心の怪盗団”の始まりの物語を描き、多くの観客を熱狂させた。果たして今作ではどんな怪盗劇が描かれたのだろうか。
この記事では、初日の公演に先立ち行われたゲネプロの様子をお届けする。劇場を埋め尽くした「P5ステ」ならではのエンタメのパワーを感じ取ってもらえたらと思う。
醸成された「P5ステ」らしさ、興奮の3時間
観劇後に「パワーアップ」という言葉が思わず頭をよぎる、そんな濃厚な約3時間であった。
前作で、主人公(演:猪野広樹)と坂本竜司(演:塩田康平)、高巻 杏(演:御寺ゆき)、そしてモルガナ(声:大谷育江)は“心の怪盗団”を結成した。
前作が上演された2019年12月から約10カ月の時が流れているが、ステージ上にはそんな時間を感じさせない、あの日と地続きの時間が流れている。その変わらない空気感は、「あの世界に帰ってきた」と強く実感させてくれた。
同時に、観客からは観えないところで、主人公たちは日常を重ね、関係性を紡いできたことも感じさせてくれたのだ。もし舞台上で彼らのパラメータが確認できるなら、きっと前作より確実に上がっているだろう。
「どこがどうパワーアップしたのか」。そんなことを考える余裕もなく、観客はすぐに彼らの“進化”を体感することになる。演技やアクション、演出、ダンスなど、作品を構成する隅々にまで、「2作目だからこそ」の並々ならぬ情熱が溢れているのだ。
特に印象的なのが、ダンスシーンだ。先日2.5ジゲン!!で実施した主演・猪野広樹のインタビューでもあったように、今作はダンスが効果的に取り入れられている。苦悩や葛藤を、ダンスというマンパワーで表すことで、観客はより登場人物の心の輪郭を感じ取ることができるだろう。
痛快なアクションやド派手な映像シーンだけでなく、こういった心情を描くシーンが丁寧に作られていることで、原作の“ジュブナイルRPG”という核がブレることなく見えてくる。それこそが、本作が原作ファンに支持されている理由のひとつなのだろう。
そして前作も好評だった、スリルとスピード感がクセになるアクションはもちろん今作も健在だ。物語開始時点ですでに“心の怪盗団”は結成済み。そのおかげで、冒頭から“パレス”でのアクションシーンが堪能できる。
3人と1匹から、ストーリーを追うごとに1人ずつ仲間が増えていくが、その都度少しずつ戦い方が変わっていく。誰がどんな役目を担って、どう協力して、トドメはどうするのか。メンバー編成による戦い方の違いを楽しめるのも、メンバーが増える2作目ならではだろう。
もちろん今作も、戦うモナが最高にかわいいことは言うまでもない。猫キャラに目がないという人は、間違いなく至福の時間となるはずだ。
「ペルソナ5」らしさは、前作も今作も共通している。しかし、今作は1作目を経たからこその“舞台ならではの味付け”がより濃くなっているように感じた。「ペルソナ5」らしさに加えて、「P5ステ」らしさが生まれているのだ。
独自に醸成された「P5ステ」らしさは、約3時間の上演時間もあっという間に感じさせてくれるだろう。
個性際立つ登場人物たち。明智吾郎もついに…
前作の終盤でお披露目されたメインキャラクターたちが、本作でついに本格的に合流。舞台上で動く姿に、「やっと会えた!」。そんな気持ちになるファンも多いことだろう。
1幕のメインキャラとなるのは小南光司演じる喜多川祐介、2幕では七木奏音演じる新島 真が、怪盗団の新たな仲間となる過程が描かれていく。
小南は、芸術家ゆえに周りとはズレた感性の持ち主である喜多川を好演。端正な顔立ちと9等身並の抜群のスタイルに、思わず視線を奪われてしまう。その容姿と突飛な発言との奇妙なミスマッチが、独特な存在感を生み出していた。
フォックスとして戦うアクションシーンでは、日本刀での殺陣を披露。鞘を使っての二刀流や刀のリーチを活かした攻撃は、舞台とも相性が良く、“パレス”でのアクションに華を添えていた。
生徒会長として主人公たちに関わっていく真は、本作が初登場となるキャラクター。真を演じる七木もスタイル抜群で、その華奢な身体のどこから出てくるのかと思うほどの力強さを発揮していた。
その容姿とは裏腹に、クイーンとしてバイクをふかし、メリケンサックで敵をボコボコにする姿はなんとも言えない不思議な光景だ。一方で、怪盗団の紅二点として杏と女子高生らしい会話をしている姿は思わずキュンとしてしまうほどかわいい。2.5次元作品で活躍する女性キャラが好き、という人にとっては、杏に続きたまらないキャラといえるだろう。
そして、まだ底の見えない高校生探偵・明智吾郎を演じているのが佐々木喜英だ。ようやく本作で、明智と怪盗団との間に細い糸が繋がり始める。
ミステリアスな役どころに定評のある佐々木は、この明智役でも安定したクオリティの芝居を見せてくれた。余裕のある笑みを見せる明智にとっての“正義”は、どんな形をしているのか。「はやく彼の心の内が知りたい」、そんな欲を掻き立ててくれた。
原作の展開を知らないという人はもちろん、既に知っている人も、「P5ステ」での両者の関係がこれからどうなっていくのか、じっくりと見守ってみてはどうだろうか。
「P5ステ」で忘れてはならないのが、怪盗団のターゲット役だ。前作で高木 俊が演じたあの強烈な鴨志田 卓が脳裏に焼き付いて離れないというファンも多いだろう。
今作では新たに斑目一流斎(演:高松 潤)と金城潤矢(演:宮下雄也)が登場。
軽妙なトークとアドリブに定評のある宮下は、ゲネプロでも果敢に笑いをとっていた姿が印象的だ。“パレス”のシーンでは彼の一挙手一投足に目を奪われているうちに、肝心のアクションシーンが終わっている……ということも起こり得るかもしれない。それほどインパクトのある仕上がりになっていたので、見どころのひとつとして楽しみにしていてほしい。
そして、これだけ個性を放つキャラたちの後ろで、ときに気配を消し、ときに主人公として魅せるのが主演・猪野広樹だ。本作の主人公役は、いわゆる主人公キャラとは少し違った立ち位置にいるキャラなだけに、絶妙な存在感が求められる役だろう。
影が薄いようでいて、センターに立つ姿に「この人が間違いなく主人公なんだ」と思わせるカリスマ性。それを見事に表現する猪野の姿に、今回改めて彼がこの役を演じる意味を見出したように思う。
日常と非日常が交差する、エンタメの新境地
ついに本格的に動き始めた“心の怪盗団”の姿を描く「PERSONA5 the Stage #2」。ひとつの“欲望”を“改心”させる度、彼らは自分たちが追い求める正義の形と向き合っていくことになるが、最後はどんな“オタカラ”を手にすることになるのだろうか。
思春期らしい熱さと未熟さを味わうと同時に、鮮やかで強烈な生の躍動を感じさせてくれる「PERSONA5 the Stage #2」は、2020年10月1日(木)から4日(日)まで横浜・KT Zepp Yokohama、10月17日(土)・18日(日)に大阪・サンケイホールブリーゼで上演。
ライブ配信・ディレイ配信も予定されているので、ぜひこの機会に“心の怪盗団”にハートを盗まれてみてはどうだろうか。
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