「天才てれびくん the STAGE~てれび戦士REBORN~」が、2020年1月23日から26日までヒューリックホール東京、2月1日、2日にCOOL JAPAN PARK OSAKA WWホールで上演される。
本作は、放送開始27年を迎え、長く愛されているNHKの子ども番組「天才てれびくん」の初の舞台化作品。「天才てれびくん」、この番組名を知らない人はいないのではないだろうか。
筆者は幼少期、テレビにかじりついて天才てれびくんを見ていた記憶がある。同年代のてれび戦士たちがさまざまな企画に挑戦し、多くの“楽しい”を発信してくれる姿にはいつだって勇気をもらっていた。
テレビ番組の舞台化とは一体何だろう。まったく予想がつかない、でも楽しみで仕方がない。情報が発表された当初、筆者はそんな気持ちになった。
天才てれびくんは、今も昔も、私たち視聴者・観客をわくわくさせてくれるコンテンツなのだと実感し、感慨深いものがあった。
今作品で登場するてれび戦士たちは、主演の前田公輝をはじめ、現在も各ジャンルで活躍を広げている長江崚行、鎮西寿々歌、ド・ランクザン望。また、劇中には飯田里穂も声で出演をしており、当時の天才てれびくんを知る人たちにとってはこれ以上ないほどの豪華なメンバーが勢揃いしている。
きらきらと眩しい少年時代を過ごしていた彼らも、今ではすっかり立派な大人になっている。
子どもだった彼らだからこそ見えていたもの、見えなかったもの、そして大人になった今初めて見えるもの。そこに気が付いたてれび戦士たちは、観客に何を見せてくれるのだろう。期待が膨らむばかりである。
今回2.5ジゲン!!では、初日挨拶とゲネプロ公演の様子をお伝えさせていただく。
さすがのチームワーク! 和やかな初日挨拶の様子
――今回の公演にあたって、一言ずつお願いします。
前田公輝(前田公輝役):前田公輝役を務めさせていただきます、前田公輝です!今日から千秋楽まで、無事に駆け抜けられるように頑張りたいと思います。よろしくお願いします。
長江崚行(長江崚行役):長江崚行役の長江崚行です!最後まで皆さんと楽しんでいけるような作品に仕上げたいと思いますので、よろしくお願いします。
鎮西寿々歌(鎮西寿々歌役):鎮西寿々歌の鎮西寿々歌です。唯一の女性キャストということなので、男性陣に負けないようにパワフルに頑張りたいと思います。最後までよろしくお願いします!
ド・ランクザン望(ド・ランクザン望、工場長役):ド・ランクザン望、工場長役のド・ランクザン望です。天才てれびくんは僕の原点でありスタート地点なので、初心に戻ってシンプルに楽しんで楽しませるというのを思いきりやりたいと思います!よろしくお願いします。
高野洸(高野洸・テレゾンビ党党首役):高野洸です。テレビ戦士の仲間として、ここに立てることをすごくうれしく思います。時間旅行をした気になれると思うので、ぜひ楽しんでください!
多和田任益(悪役刑事役):悪役刑事役の、多和田任益です。自分は悪役も刑事も初めて演じる役なのですが、以前自分が経験したヒーローショーにも通じるものがあると思っていまして、この作品を通した魅力を子どもから大人まで楽しんでいただける内容にして、みんなでも楽しんでいけたらと思っています。よろしくお願いします!
松村優(テニス・キング役):テニス・キング役の松村優です。老若男女誰が見ても楽しめる作品になっていると思います。キャスト一同最後まで怪我無く駆け抜けていきたいと思いますのでよろしくお願いします!
麿赤兒(てれび仙人役):てれび仙人役の麿赤兒です。美男美女に囲まれて幸せに過ごしております。これからも幸せになります。よろしくお願いします。
横山だいすけ(てれび兄貴、歌の鬼さん役):てれび兄貴、歌の鬼さん役の横山だいすけです。本日はだいすけお兄さんファミリーコンサートにお越しいただき…。
(「違います!」とここでキャスト一同からツッコミが入る。続けて「今日は小さいお友達が少ないな~と思って!」「面白いこと言えって言われたんですよ!」と笑いを誘う横山。仲の良さが伝わってきて微笑ましい。)
横山:このメンバーと共に、天才てれびくんの舞台を作れたことを幸せに思います。今も面白いことを言ったらメンバーがつっこんでくれるような、和気あいあいとした空気で稽古に臨んでおりまして、出演者だけではなくチーム一同一丸となって今日を迎えるにあたり全力で頑張ってきました。来てくれる皆さんに楽しんでもらえるようにしたいと思います、よろしくお願いします。
――最後に、来場される皆さんへ、前田さんから一言お願いします。
前田:天才てれびくんが、まさか舞台になると思っていなくて…。当時僕らが出ていた時には、素でやっていたようなところからドラマを始めるみたいな番組だったんですけども、今回は新しい皆様と一緒に違う色の天才てれびくんが作れたんじゃないかなと思っていますので、当時のライブ感と芝居のハーモニーを楽しんでいただけたらと思っています。千秋楽まで頑張りますので、よろしくお願いします。
始終和やかな様子で初日挨拶は進んだ。てれび戦士たちのチームワークに、本編への期待が高まる。続けて、ゲネプロ公演の内容をお伝えさせていただこう。
※本編の見どころも含むため、まっさらな気持ちで天才てれびくんの世界に飛び込みたいという方は、観劇後に読むことをおすすめする。
記憶を奪われたてれび戦士たち。世界はどうなる?
<あらすじ>
てれび戦士――それは「楽しいこと」を届ける選ばれし子どもたち。彼らの歌声は全宇宙の人々を魅了していた。しかし、「楽しいこと」を奪おうとするテレゾンビ党が地球に襲来し、てれび戦士たちは敗北。全宇宙が「つまらないこと」に支配されてしまった!
てれび戦士たちはテレゾンビ党に記憶を奪われ、やがて大人になった。すべてを失って……。だが、希望は失われてはいなかった。彼らが謎のリモコンを手にしたとき、てれび戦士としての記憶がよみがえる!
『天才てれびくん』を復活させ、楽しいテレビを取りもどせ!大人になったてれび戦士たち!(公式HPより引用)
▲主役の前田公輝
今回、キャスト陣は前田公輝役の前田公輝、といったように、それぞれの役を本人が演じている。
等身大の彼らが見せてくれるステージは、笑いあり、涙ありの展開が目白押し。幕が上がり、休憩なしの110分の舞台となるが、筆者の体感時間は0.2秒だった。
テレビと同じように「楽しいこと」がぎゅっと濃縮された脚本は、小林雄次によるもの。
あらすじを見て、「テレゾンビ党!? なんだそれ!?」と困惑した方もいるかもしれないが、安心して欲しい。そんな困惑を吹き飛ばし、天才てれびくんの世界に一気に引き込んでくれるストーリーもこの作品の魅力のひとつだ。
物語は、「天才放送局」の屋上、てれび神社から始まる。
てれび仙人(演:麿赤兒)とてれび戦士の前田公輝、長江崚行、鎮西寿々歌、ド・ランクザン望たちは今日も「楽しいこと」を発信していた。
▲てれび戦士のメンバー リモコンをあしらった武器が個性を際立たせている
▲てれび兄貴の横山だいすけ 笑顔と歌声に癒される
そこに、テレゾンビ党の幹部・悪役刑事(演:多和田任益)とテニス・キング(演:松村優)、そして党首(演:高野洸)が登場。
戦いの末、てれび戦士とてれび兄貴(演:横山だいすけ)たちは記憶を奪われてしまう。全宇宙は、テレゾンビ党の支配下へ……。
「楽しいこと」を取り戻すために、戦うてれび戦士たち
10年の時を経て、「楽しいこと」を禁じられた世界はすっかり荒廃してしまっていた。町には、顔が石のように固まり死に至るという奇病も蔓延している。
記憶を失ったてれび戦士たちは、つまらないテレビ番組を作ったり、テレビ放送局の地下で労働を強いられたりしていた。
▲つまらない番組を作らされているディレクターの崚行とアナウンサーの寿々歌
▲工場長の望と、健康器具で筋肉を疲弊させる罰を受ける公輝
そんな中、公輝は謎のリモコンを見つける。リモコンを手にしたことをきっかけに、記憶を取り戻すてれび戦士たち。
世界に再び「楽しいこと」を発信するために、てれび戦士たちはそれぞれの戦いを繰り広げる。物語の行く末を左右する戦いが続くわけだが、さすが天才てれびくん。
シリアスなシーンの中にも、思わずくすっと笑ってしまうコメディ要素もふんだんに盛り込まれているのでぜひ注目してほしい。
▲悪役刑事VS崚行
元俳優の悪役刑事VSディレクター崚行、そしてテニス・キングVS工場長望の戦いからは目が離せない。
「セットチェンジ!」「はいカーット!」「コートチェンジ!」「下町の工場だって、ロケットを飛ばせるんだ!」など、それぞれの立場に合わせた台詞も笑いを誘う。
▲歌の鬼さんVS寿々歌
続く戦いは、「テレゾンビのど自慢大会」テレゾンビ党との戦いにより、歌のお兄さん――改め、歌の鬼さんとなってしまった横山。
歌の鬼さんVS寿々歌の戦いは、コミカルながらも思わず涙腺が熱くなってしまうシーンとなっている。
横山は、かつて寿々歌に歌を教えてくれた憧れの存在だ。そんな相手との戦いに臆する寿々歌だが、心のこもった歌が横山の心を動かす。
「楽しいこと」が、人の心を動かす。人を笑顔にする。
そんな天才てれびくんの魅力を、観客の胸にしっかりと届けてくれる歌は必聴である。
数々の戦いを経て、本来の自分を取り戻すテレゾンビ党。
最後の戦いは、公輝と洸の熱いバトル。15年前、彼らに一体何が起きたのか?
▲公輝VS洸の最終決戦 殺陣も見どころ
公輝の熱い思いが、洸はもちろん、観客の胸を打つ。この戦いの終着点はどうなるのだろうか――……?
物語の結末は、ぜひ劇場で見届けていただきたい。
天才てれびくんが、私たちに教えてくれるもの
ゲネプロ公演を観劇して、筆者が抱いた素直な感想は「楽しかった!」である。
今作は、「楽しい」「笑顔」「つまらない」というシンプルな3つの言葉がテーマとなっている。そのシンプルさがまっすぐと観客の心に届き、感動を与えてくれる作品に仕上がっていた。
ここまで手放しで筆者が楽しいと思えた理由のひとつは、役者たちが芝居を楽しんでいる姿である。
演じる側が楽しんで、その楽しいが観客側にも伝わってくる。「天才てれびくん the STAGE~てれび戦士REBORN~」は、舞台の理想の姿を見せてくれたようにも思う。
難しいことを語る必要はなく、ただただ楽しかったと言わせてくれる今作品は、多くの人に愛されている天才てれびくんの魅力を十分過ぎるくらいに発揮していた。
今作は、「大人になった君たちへ――」というキャッチコピーも印象的だ。大人になった観客が何を受け取るのかは、それぞれ違っていると思う。ただ、胸に残るものがきっとあるはずだ。
演技、演出、脚本、全部ひっくるめて楽しいと思える今作品を、たくさんの方に観て欲しいと思う。
胸を張ってお伝えしたい。天才てれびくんのことが、私は今も昔も、そしてこれからもずっと、大好きだ。
この作品が、どうか一人でも多くの方のもとに届くようにと願っている。
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