MANKAI STAGE『A3!』~AUTUMN 2020~が2020年1月18日(土)初日を迎える。春組から始まった単独公演も夏組を経て、ついに秋組へ。今作では原作ゲームで上演された第2回公演「異邦人」と第3回公演「任侠伝・流れ者銀二」とともに、秋組にフォーカスした物語が描かれる。
今回は品川ステラボールでおこなわれたゲネプロ及び初日前日会見の様子をお届けする。
旗揚げ公演を経たからこそ見えてくる、それぞれの成長と育まれる絆
エーステの面白さはいくつもあるが、やはり登場キャラクターたちがそれを演じる俳優たちと同じようにステージを立つ舞台俳優という点だ。舞台に立つまでの苦悩、作品が完成に至るまでの葛藤、そしてステージのうえから見える最高の景色。キャラクターと演者との間で共感できるものが多いのだろう。今作も、役者が役者を演じる面白さが随所に散りばめられていたのが印象的だ。
▲OPから秋組の持ち味であるワイルドさが全開
秋組としての初演を経て、2作目・3作目へと挑む劇団員たち。初舞台を経てひとまわり大きくなった彼らを待っていたのは、まだ決着をつけきれていない自身のなかに封印した思いだった。
秋冬公演では、秋組結成からひとつの組として形を成していくまでが描かれた。本作では、彼らがより深いところで絆を深めていく過程が、2つの公演を通して描かれていく。
第1幕では、劇中劇「異邦人」主演の伏見臣(演:稲垣成弥)、そして準主演の七尾太一(演:赤澤遼太郎)が観客の心を揺さぶる。秋冬公演ではとある出来事のせいで心から仲間たちと笑うことができなかった太一が、今作では臣に過去と向き合う勇気を与える。
▲初登場となる新庄リョウ(里中将道)にも注目だ
▲会見の赤澤のコメント「太一の魅力は光」を感じられるワンシーン。帰り道、つい黄色いシールを買いたくなるはずだ
序盤は劇中劇の女性役に苦戦する太一のシーンなどをコミカルに描き、エーステらしい爽快さを入れつつも、臣の決して軽くはない過去がずしりと心に刺さる。
▲「異邦人」ゼロ役に苦戦する七尾太一(演:赤澤遼太郎)
その流れから始まる「異邦人」では、2人の熱量がステージからほとばしっていた。皆木綴(演:前川優希)の「2作目として挑戦したいこと」が込められた、そんな公演に仕上がっていたといえるだろう。
前作で見せた荒削りながらも熱量あふれる劇中劇とはまた違う。さらに進化している。そう感じさせてくれる変化を見逃さず堪能してほしい。
▲第2回公演「異邦人」
圧巻!藤田 玲が魅せる、古市左京という“漢”の物語
第2幕では古市左京(演:藤田玲)主演、兵頭十座(演:中村太郎)準主演の劇中劇「任侠伝・流れ者銀二」が上演される。1公演ごとに絆を深めた秋組は、この第3回公演を前にしてさらに“誰が欠けても秋組じゃない”という思いを強めていく。
そこには寝食をともにし、最高の舞台を作り上げたいと、ひとつの目標に向かって突き進んできた彼らの時間の積み重ねを感じ取れることだろう。ただの劇団の団員仲間、そんな関係を超えたところにまで5人の絆は到達していることを痛感する第2幕となっている。
全編を通じて秋組リーダーの摂津万里(演:水江建太)の成長を大きく感じられるだろう。秋冬公演の万里からは聞けなかったであろう言葉を、このエーステで生で聞く破壊力は絶大である。表面上はそうは見せないが、彼がいかに秋組を、そしてMANKAIカンパニーを大事に思っているか、ぜひ肌で感じてみてほしい。
▲ぶつかり合いながらも、お互いを認め合いつつある摂津万里(演:水江建太)と兵頭十座(演:中村太郎)
▲皆木綴(演:前川優希)、向坂椋(演:野口 準)、皇天馬(演:陳内 将)、雪白東(演:上田堪大)は今回みんなの良き相談相手に
そしてもちろん左京の主演にも期待をして観劇に挑んでほしい。藤田の魅せる圧巻の芝居は、そのまま古市左京という男の覚悟であり生き様である。
▲秋組の劇団員たちに背中で語る。その役目をしっかりと果たす古市左京(演:藤田 玲)
▲第3回公演「任侠伝・流れ者銀二」は、「異邦人」とはまた違う世界観で楽しませてくれる
このステージには、コーチとして彼らに檄を飛ばす鹿島雄三もしっかりと息づいていた。彼もこのカンパニーの一員として、きっと監督さんとともにこの公演をどこかで観ているのだろう。
たくさんの思いが詰まったこのMANKAI STAGE『A3!』~AUTUMN 2020~。監督として彼らがまた新たな花を咲かせる瞬間を見守ってみてはどうだろうか。3月1日(日)にはライブビューイング、またDMM.comでのライブ配信も決定している。
初日前日会見レポート
――明日の開幕に向けてのコメントをお願いします。
水江建太(摂津万里役):明日の初日に向けて、いままで稽古で積み重ねたものを全力でぶつけていきます。
中村太郎(兵頭十座役):明日の初日に向けて秋組らしくぶちかましていこうと思います。
赤澤遼太郎(七尾太一役):春・夏と単独公演を重ねてきてお客さんの期待も大きいと思うんですけど、それをはるかに上回る秋組単独公演になっていると思います。みなさま、楽しみにしていてください。
稲垣成弥(伏見 臣役):今回1幕は劇中劇で主演なのでいままでやってきたことを存分に出して頑張っていきたいと思います。2幕は2幕で左京さんが主演なので、それを支えられるようにやっていきたいと思います。
藤田 玲(古市左京役):春組夏組と単独公演が続いてきてみんなが必至にバトンをつないできてくれたので、秋組がしっかり冬組に引き継げるように僕らの仕事したいと思います。
劇中劇の主演は臣と左京です。みなさんの期待を超えられるような劇中劇になっていますので、楽しみにしていてください。
里中将道(新庄リョウ役):初の舞台ですごく楽しみで、秋組と一緒に出させていただくので、しっかり支えていけるように、秋組と一緒に1公演1公演頑張りたいと思います。
――本作の見どころをひと言キーワードで教えてください。
赤澤:ひつまぶし!
と元気よく答える赤澤に、「それ秋冬公演(での会見のコメント)だね」「懐かしいね」と会話が弾んだ。
水江:写真と家族……ですかね。
藤田:じゃあ家族写真だね。まとめちゃうと。
左京の言葉には逆らえない……ではないが、一同「それいいですね」と藤田の言葉に同意を示していた姿がなんとも可愛らしかった。
――今回演じてみて、改めて見つけた自分の演じるキャラクターの魅力があれば教えてください。
水江:秋冬公演と春単独公演と出させていただいて今回で3回目なんですけど、圧倒的に万里はかっこいいと思っています。それが魅力かなと思います。
中村:秋冬公演と夏単独に出させていただいて、十座がちょっと成長した部分をみせられたらいいなと思います。
赤澤:1年前の秋冬公演をやって、そのときは人間らしい欲求であったり、いろいろなものを抱えていたところが太一の魅力だったんですけど、今回はそういうものを背負っている太一だからこそ出せる光だったり、人に与えるエネルギーがある子だなと思っています。そういうところが魅力です。光です!
稲垣:臣の魅力って全部だと思うんですけど、今回は臣の魅力が裏目に出てしまうところがあって、最終的にはまあいい形にはなるんですけど……なので、トータル的に全部が魅力です。
藤田:クールで笑顔も少ないキャラクターなんですけど、誰よりも実は人間らしいんじゃないのかなっていうのが今回はすごく出ていて。秋組もそうですし、他の組とも打ち解けあうことで、カンパニーへの愛が一番強いっていうのが魅力のひとつなんじゃないかと思っています。
里中:初登場なのでどこまで話していいかわからないんですけど。すごく真っ直ぐでピュアな男なんじゃないかなと。それは観ていただいたらわかるかと思いますので、よろしくお願いいたします。
――初参加となる里中さんから見た秋組の魅力を教えてください。
里中:まず秋組の第一印象はかっこいいですね。かっこいいですし、他の組よりも男っぽいというか。そういうところが男の子が観ても面白い舞台になっているので、観ているうちに憧れとかそういうものに変わるんじゃないかなと思います。そこが魅力だと思います。
「かっこいい」と連呼してもらい、「嬉しいね」とニコニコする秋組の面々がなんとも微笑ましいワンシーンとなった。
――劇中劇の魅力をそれぞれ主演のおふたりから教えてください。
稲垣:「異邦人」の魅力はですね……。(と、ここで赤澤から「全部」はナシだよと釘をさされてしまう稲垣)全部って言いたいんですけど(笑)、1幕始まってから劇中劇までがひとつのパッケージだと思っていて、「異邦人」がそこに至るまでの話も盛り込まれたゴールだと思ってます。臣が変わった瞬間をみせられたらなと思っています。
藤田:任侠ものなんですけど、昨今ではあんまり見る機会ないじゃないですか。そういう古き良き感じだったり、多分いままでのエーステの劇中劇のなかで一番トライしてる、挑戦している、「ちょっとはみだしてるんじゃねえか」くらいのところが魅力です。そのシーンは「ここか」って観ていて分かると思うので、それを楽しみに来てくれたらと思います。
――役者であるみなさんが役者を演じるなかで、改めて発見した役者としての面白さがあれば教えてください。
水江:僕はこの現場で育ててもらったので、このステージを楽しむことが直結してるのかなって思います。エーステって僕にとってそういう場所で、ここでトライし続けることが今回の面白さでもあるし、僕個人の役者としての面白さかなって思っています。
秋組としてもエーステとしても新たな挑戦とその成果を目の当たりにできるMANKAI STAGE『A3!』~AUTUMN 2020~は、2020年1月18日(土)からの東京公演を皮切りに愛知・兵庫と続き2月には東京凱旋公演が上演される。ぜひ監督として劇場に足を運んで、彼らの開花の軌跡の目撃者になってみてはどうだろうか。
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