レポート

「イケメン戦国THE STAGE 番外編」ゲネプロレポート 過去から今へとつながる“はじまり”描く前日譚

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「イケメン戦国THE STAGE 番外編~はじまりの物語~」が2019年12月26日(木)、初日を迎える。

「イケメン戦国THE STAGE」はこれまで真田幸村編・毛利元就編・織田信長編・上杉謙信編と4作を上演してきた。

いずれも戦後時代にタイムスリップするヒロインと、メインとなる武将との関係を軸に描く作品として展開。原作ゲームファンを中心に熱狂的に支持され、ここまでシリーズが続いてきた。

そして第5弾となる今回、シリーズ初となる番外編が描かれることに。そこに描き出される物語は、彼らが“彼ら”として生きてきた証。ファンが知る彼らの4年前を描く前日譚となっている。

今作はこれまでと違いヒロインが不在。そして演出家も伊藤マサミに変更となっている。果たしてどんな世界が描かれたのか。ネタバレなしでゲネプロで上演された「鬼と魔」ルートの様子をお届けする。

折り重なった日々のうえに形成されていくキャラクターたちの芯を感じ取れる約2時間

▲「鬼と魔」ルートメインのひとり、顕如(演:中村誠治郎)

▲もうひとりの主人公・織田信長(演:小笠原 健)

まず印象的なのが、彼らの“培ってきた日々”を感じられる部分だろう。本編シリーズでは、すでに関係性が出来上がった状態からスタートするが、今作はそうではない。この4年間で新たに出会う者たちや、関係性が深まっていく者、逆に運命がねじれていってしまう者。まさに現在進行形で構築されていく関係性の目撃者となれる作品だ。

原作ファンがゲームで、そして戦ステファンが過去4作で出会ってきた彼らよりも4年分若い姿を、顕如役の中村誠治郎を筆頭に実力ある俳優たちが好演。

▲彼が猿飛佐助(演:早乙女じょうじ)と名乗るまでのエピソードも

▲思わず様づけをしたくなってしまう上杉謙信(演:橘 龍丸)は今作も健在

幼いとまではいかないが、若さゆえの青さ、未成熟な部分も垣間見える。観客が知るキャラクター像とはほんのわずかに違う表情。そういった細かい表現がみてとれた。それらはパッと観てわかるような大げさなものではないので、観劇する際は気になるキャラクターの一挙手一投足に注目してほしい。

とくに本作で、顕如との出会いから厳しい運命に身を投じるまでが描かれる森 蘭丸(演:星元裕月)や、戦国の世で生きていくことになる猿飛佐助(演:早乙女じょうじ)は、冒頭と終盤で、まとうオーラが変わってくるので必見だ。

▲森 蘭丸(演:星元裕月)と顕如の間には優しい空気が流れる

▲猿飛佐助は白衣から忍び装束へ……

もちろん「鬼と魔」ルートでメインとして描かれる顕如と織田信長(演:小笠原 健)の、数奇ともいえる運命は見応え抜群。本来知ることのない、キャラクターの“らしさ”が形成されるまでの過程を、激しくそして哀しく描き出している。シーンごとに、彼らが武器を手に取る理由を考えていくと、ほんの少しだけ彼らが抱いている信念や願いを共有してもらったような気持ちになるだろう。

2人の関係は、“敵”のひと言には集約できない。複雑な思いの交錯と、そこから生まれる新たな感情。刀を交えることで、より一層深まっていく溝をダイナミックな殺陣とともに表現している。なによりも殺陣の実力の高い2人だからこそ、観客も胸がひりつくほどの命のやり取りを実感できるのだ。

▲顕如と信長の命を燃やす戦いの結末は……

▲さまざまな主従の関係が浮き彫りになる。武田信玄(演:横山真史)と真田幸村(演:荒 一陽)

今回は「鬼と魔」ルートだったが、「龍と虎」ルートではまた違った景色が楽しめるだろう。

セリフのようにキャラクターの色を表現する多彩な殺陣

戦ステの見どころのひとつは、やはり殺陣アクションだ。今作も怒涛の殺陣は健在なので、ぜひ期待をしていてほしい。

本シリーズでは殺陣が各キャラクターのアイデンティティを表現する役割を担っているのではないかと思う。ストーリーのメインとなっていないキャラクターであっても、殺陣の見どころが多く、まんべんなく活躍する姿を楽しむことができる。さらに、彼らが武器を振るう理由、根底にある思いが、殺陣の動きや表情から感じ取れるのだ。刃と刃が交わる一瞬に、キャラクター毎の感情を受け取りながら観ていくと、より「戦ステ」の世界に浸れるだろう。

▲甲斐の虎との一騎打ちが迫力満点の徳川家康(演:木原瑠生)

▲信長のまっすぐに信じる豊臣秀吉(演:滝川広大)

▲織田軍のなかでの扱いに思わずにやっとしてしまう石田三成(演:天野眞隆)

▲凍てつくような視線がハートに刺さる明智光秀(演:橋本全一)

▲初登場の帰蝶(演:秋沢健太朗)の企みとは……

▲二刀流での戦闘後、納刀する際の所作があまりにかっこいい伊達政宗(演:松村 優)

▲信玄と謙信との関係性を描くエピソードは濃厚、ハンカチのご用意を

▲親方への愛は4年前も変わらず貫いていた真田幸村

▲憂いを帯びた色気は今作も健在。今川義元(演:竹石悟朗)が戦う理由とは?

見どころという意味では、会見でも小笠原が挙げていたが、日替わり要因として活躍する織田勢にも注目だ。まっさらな気持ちで観劇してもらいたいので、「違う舞台観に来ちゃった!?」と思ってしまう、とあるシーンの写真は掲載していない。このシーンでは織田勢のお茶目でキュートで色っぽい姿(!?)も楽しめるかもしれないので、ぜひお楽しみに。

▲こちらはシリアスで格好いいほうの織田軍

「イケメン戦国THE STAGE」の世界で巻き起こる戦国乱世では、それぞれの思いが乱れ立ち並び、時代のうねりを生み出している。絆と縁と運命が絡み合う世界で、あなたはなにを受け取るだろうか。

本作は番外編としての作品なので、これまでのシリーズファンが楽しめるのはもちろんだが、一方でこれまでシリーズに触れていないファンにも入りやすい作品といえるだろう。2019年を締めくくる作品に、この「イケメン戦国THE STAGE 番外編~はじまりの物語~」を選んでみてはどうだろうか。

なお本公演は好評につき追加チケットの販売が決定している。気になっているがまだ手元にチケットがない……。そんな人は公式HPをチェックのうえ、ぜひ追加チケットを狙ってみてほしい。

囲み会見全コメントレポート

最後に、6人のキャストが登壇した囲み会見の様子をお届けする。

ーー初登場となるお2人は参加してみていかがでしたか?

秋沢健太朗(帰蝶役):シリーズが続いていてそのなかで新キャラクターとして入らせていただくということで緊張しました。先んじている先輩方のチームワークのなかに入っていけるか不安で……。

稽古初日に、(中村)誠治郎さんが殺陣稽古をしていまして、めちゃくちゃ速くてうますぎて、「あ、俺死ぬな。怖い現場に来てしまった」と思っていたんですね(笑)。もともと知っている役者仲間もいたので、話しやすくて仲間を受け入れるような環境が整っていたというか、そういう方が多くてすごく助かりました。そのなかで、あの誠治郎さんに話しかけたらどうなるのか、と心配しながらあるきっかけがあって話しかけてみたんです。そしたら「嬉しい」って。

そんな感じで、普段はチャーミングな方々が多いんですけど、いざ稽古だと鬼気迫る感じで、ギャップがありまして。そんな作品に携われたので、負けないように頑張ろうと稽古に臨みました。

中村誠治郎(顕如役):この座組はすごく若い座組で、僕ダントツ年上なんですけど、稽古場では年齢は関係なく、みんなキャラを愛してるなという印象が強いですね。覚えもはやいし、レベルの高い稽古ができたのではないのかなと。場当たりを終わって初日ということで、客席とかで観ていても、すごく質の高い作品になってるんじゃないかと思います。なので、しっかり初日をいい形で終えて千秋楽まで駆け抜けたいと思っています。

ーー今作は「鬼と魔」「龍と虎」の2つのルートがありますが、それぞれにメインキャラクターがいらっしゃいます。それぞれの見どころをお聞きしたいと思います。まずは「鬼と魔」エンドの小笠原さん、お願いします。

小笠原 健(織田信長役):今回は、前回までとはちょっと違って、エンドの違いによって戦い方とか愛の形が変わったりはしないんですけど、ストーリーが異なった2ルートがあります。僕と誠治郎さんが「鬼と魔」ルートを担うんですが。圧倒的にこのルートのほうが面白いんで。

真顔で自身がメインとなるルートを絶賛する小笠原に、橘からは「おーいおいおい」とツッコミが入った。ここからは両ルートの陣営によるバトルのような会見に。小笠原が念を押して「鬼と魔」ルートをおすすめすると、すかさず橘が「龍と虎(ルート)も!」と、軽快なやりとりが続き、キャスト・マスコミ一同大きな笑いに包まれた。

小笠原:お客様にはぜひ両方観てもらって、どっちのほうが面白かったか、どっちが好きだったか。そうやって楽しんでもらえたらいいんじゃないかなと思います。まあ、「鬼と魔」のほうが面白いんですけどね。そういうところでもバトっていけたら面白いかな、と。

ーー続いて、「龍と虎」ルートの早乙女さんお願いします。(と、なぜかインタビュアーの代わりに話を振る小笠原)

早乙女じょうじ(猿飛佐助役):この作品のあとにヒロインが来るわけなんですけど、両方ともそこにつながるお話です。なぜ謙信と信玄が同盟を組んだのか。そのへんがこちらのルートでわかるので、そういった部分では「龍と虎」ルートのほうがいいんじゃないかな、って思うんですけどね。

橘 龍丸(上杉謙信役):今回「出会い」ということがいっぱい積み重なって、ストーリー上でも描かれるんですけど、「龍と虎」エンドに関しましては、それぞれの主従のあり方だったりお互いの主従がどんな思いを抱いてその場にいるのか。そのあたりが鮮明に描かれているので、胸アツな展開もあったりして、私としましてはこの「龍と虎」ルートのほうが面白いと思います。

すると、すかさず「それならこっちのルートも……」と小笠原が食いつき、お互いの見どころを熱く語り合う状況となった。小笠原は、「鬼と魔」ルートじゃないと観られない顕如の過去がおすすめポイントのようだ。

中村:「鬼と魔」ルートほうが「はじまりの物語」というサブタイトルにものすごくあてはまる内容なので、まあこちらがいいかと思いますが……。「龍と虎」もそれはそれで、別の違った「はじまりの物語」という見どころがありますので、「龍と虎」もおもしろいのですが、でもA「鬼と魔」のほうがおもしろいので(笑)。よろしくお願いいたします。

ーーそれぞれキャラクターとしての見どころを教えて下さい。

中村:今回は「イケメン戦国」の顕如がどう生まれたとかという話です。いままでゲーム原作のキャラクターを演じるときは、模倣もしてたんですが、今作に関してはゲームとはまた違う顕如で。どうやってゲームの顕如になったのかというのを強く意識して役作りしたので、そこが見どころです。

早乙女:猿飛佐助が戦国時代にタイムスリップするところから始まるんですけど、そこからもう見どころですよね。原作では描かれていないところが最初っから描かれているので、佐助としてははじめから全部いいシーンというか。謙信との出会いなども描かれているので、そこも観てもらいたいです。

星元裕月( 森 蘭丸役):蘭丸といえば史実では信長の小姓として存在してますが、この作品ではオリジナルの設定があって、顕如様と行動を共にしています。じゃあ、なんで顕如様と一緒にいるのかという部分について、今までもすごく考えてきました。そこについて、今回すごく鮮明に描かれていますし、現実では語られることのない特別なストーリーが描かれていますので、「イケメン戦国」ならではの特別感、空気感を感じていただければなと思います。

秋沢:帰蝶という役が登場することで、その後、各キャラがどういうふうに影響されていったのか。この役が存在したことで、その後なぜ顕如がこうなったのか、とかストーリーに影響を及ぼす役だと思っています。なので、ほかのキャラクターの心情が移りかわる様が見えたら、そこが帰蝶の見どころになるかな、と。帰蝶自身というよりかは、帰蝶が登場してストーリーがどう展開していったか。“その後”を想像してもらえるくらいお芝居で見せられたら、僕の勝ちというか、目的が達成できるんじゃないかなと思っています。それが見どころです。

橘:初演から携わらせていただいてきて、僕のなかでは顕如は過去になにかあったという部分で、ヒール的なポジションだと思っていたキャラでした。でも、この作品で「なんて根っこは……」と思うところがあって、感慨深いといいますか。初演から顕如役をいろんな方が演じられていて、顕如がやられたときに必ず誰かしら彼に対して寄り添うようなセリフを与えていたのが、ここにつながっていたのか、と。過去の作品からつなげてもう1回観てもいいな、と思えるくらい、今回素敵な作品だと思いました。みなさんも新しい「イケメン戦国THE STAGE」を盛り上げてほしいな、と思います。

小笠原:今回の見どころとしましては、恋愛要素がないというところが初めてのチャレンジです。そこがどういうふうにお客様の心に届くのか不安でもありますし、楽しみでもあります。

僕個人としては、初演からなぜこんなに顕如に恨まれているのか、なぜみんなから信長倒したいと言われるのか分からなかったんですが。今回その理由がわかって、「なるほどな」と。そういう過去があったんだなってわかるので、お客様にも共感してもらえるかと思います。

織田軍でいいますと、「あれ?これは他の舞台かな?」そんなシーンがありまして。僕ら織田軍はコメディ担当だったんだなと思えるシーンがありますので、そこにぜひ期待していただいて。日替わりがありますからね、スベるのかウケるのかは分かりませんが。そういうのを楽しんで、お客様をわかしていけるように頑張っていきたいです。

ーー最後に中村さん、メッセージをお願いします。

中村:この作品はチケットがすぐ完売したと聞いております。すごく注目されている作品だと思いますので、観に来てくださるお客様のために全力で演じて、役として生きて、少しでもお客様に伝わるように演じていきたいと思いますのでよろしくお願いいたします。

▲メインキャラクター全員集合ショット。こちらは真面目に1枚

▲2枚目はわちゃっと仲のいい雰囲気が伝わるショットに。本編ではなかなかみられない笑顔を堪能してほしい

“はじまり”をキーワードに描かれる本作は、新年を迎えようとする年の瀬にぴったりの作品だ。追加チケットも用意されているとのことなので、ぜひ原作ゲームでも描かれていない前日譚を楽しんでほしい。

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公演情報

タイトル

舞台「イケメン戦国THE STAGE 番外編~はじまりの物語~」

公演日程

2019年12月26日(木)~12月30日(月)
全9公演 @銀座 博品館劇場

キャスト

顕如役:中村誠治郎
猿飛 佐助役:早乙女じょうじ
森 蘭丸役:星元裕月
帰蝶役:秋沢健太朗
武田 信玄役:横山真史
真田 幸村役:荒一陽
石田 三成役:天野眞隆
豊臣 秀吉役:滝川広大
徳川 家康役:木原瑠生
伊達 政宗役:松村優
今川 義元役:竹石悟朗
明智 光秀役:橋本全一
上杉 謙信役:橘龍丸
織田 信⾧役:小笠原 健

公式サイト

http://legendstage.jp/ikemen-sengoku/

公式ツイッター

@LSikemensengoku

原作

CYBIRD「イケメン戦国◆時をかける恋」

企画・制作

レジェンドステージ

主催

イケメン戦国 THE STAGE 製作委員会

©CYBIRD/イケメン戦国THE STAGE

WRITER

双海 しお
 
							双海 しお
						

アイスと舞台とアニメが好きなライター。2.5次元はいいぞ!ミュージカルはいいぞ!舞台はいいぞ!若手俳優はいいぞ!を届けていきたいと思っています。役者や作品が表現した世界を、文字で伝えていきたいと試行錯誤の日々。

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