「あなたにとっての幸せは、なんですか?」ーーそんな問いかけに満ちた物語、2.5次元ダンスライブ「ツキウタ。」ステージ第9幕「しあわせあわせ」が2019年10月30日(水)に幕を開けた。
「ツキステ。」9作目は、8作目のツキノ帝国の壮大な世界観から一転、どんな人もきっとひとつは持っているであろう“すぐそばにある幸せ”にスポットを当てた内容となっていた。
今回は、本作のゲネプロ公演の様子と14キャラクターの見どころレポートをたくさんの写真とともにお届けする。
あらすじ自体のネタバレはないが、ゲネプロ時の日替わりネタや劇中歌などについては言及している。まっさらな気持ちで初日を迎えたいファンは、ぜひ観劇後にこのレポートを楽しんで欲しい。
もくじ
新たなスタートにふさわしい、日常を切り取るストーリー
ひょんなことから“すってんころりん”して、“なんやかんや”でパラレルワールド的な世界に飛んでしまうことが日常茶飯事なSix GravityとProcellarum。
今回、“すってんころりん”するのは彼らではなく、シリーズ初登場となる女神候補生の2人だ。
別の世界からやってきた、Seleasの伊地崎麗奈(演:秋場悠里)と天童院 椿(演:平松可奈子)の掛け合いから本編がスタート。
おとぎ話の世界で、彼女たちはそれぞれ黒の魔女・白の魔女として生きているという。そんな彼女たちは、なにを願ってこの世界にやってきたのだろうか。“めでたしめでたし”というおとぎ話とセットで語られるキーワードを軸に、2人の魔女と12人の売れっ子アイドルたちのちょっと不思議な日常が描かれていった。
おとぎ話をモチーフにしたフェアリーテイルコレクションの衣装に身を包んで登場する12人。前作の軍服も凛々しく格好よかったが、細部まで作り込まれた今回の衣装もまた素敵だ。
もふっとした尻尾やケモミミが元から似合いそうな年少組はもちろんのこと、さらりと着こなす年中組、そして大人な雰囲気とのミスマッチが可愛さを引き立てていた年長組……と、どこを観てもファンシーな空間が広がる。
▲グラビは「ブレーメンの音楽隊」
▲プロセラは「長靴をはいた猫」
童話の世界に迷い込んでしまったかのようなオープニングから始まり、シーンはツキノ寮での日常へと変わっていく。
▲今回お当番の10月11月担当の4人
「この雰囲気、待ってました!」と思うファンも多いだろう。それぞれがCMや撮影で多忙ななか、寮や本社のちょっとした隙間時間でコミュニケーションをとる。アイドルとしてキメた表情とは違うリラックスした様子と、寮に響く笑い声。
“日常”というシンプルなシーンが、そこで行き交う彼らの感情を静かに浮かび上がらせていた。
▲オリジナルキャラクターの相田と塚原
今回はオリジナルキャラクターとして、寮の管理人の相田昭一郎(演:高橋和久)と、ツキノ芸能プロダクションの専務である塚原宏治(演:本郷小次郎)が登場する。
彼らの存在が、グラビやプロセラの過ごす日々をよりリアルなものにし、同時に“幸せに生きること”へのヒントをくれる。彼らとメンバーたちが語る言葉は、ステージの上だけで完結するものではなく、観客への問いかけやメッセージでもあった。
劇場ではその言葉に耳を傾けて、想いを受け取ってみてほしい。
14人のみどころ&ソロショット
ネタバレは避けたいけれど、キャラクターたちの見どころは伝えたい!
ということで、グラビとプロセラ、そして女神候補生2人の魔女たちについて、写真とともにその見どころを紹介していこう。
とくに今作は、新キャストが多い。日常シーンがメインに描かれるなかで、いまのキャストだからこそ観られる表情などにも注目してみるといいだろう。その人が演じるから生まれる、新たなキャラクターの魅力に出会えるかもしれない。
▲グラビのライブ衣装。担当カラーを大胆にあしらったカラフルな衣装
▲おとぎの国の王子様のようなプロセラライブ衣装
▲圧巻のフィナーレ。体感30秒で約1時間のライブが終わってしまう
睦月 始(演:縣 豪紀)
▲「ブレーメンの音楽隊」再現劇の一コマ
優しい始さん、というのが第一印象。緊張している様子もみられたが、睦月 始が睦月 始たるあの存在感は健在。柔らかな作風となった今作、彼の優しく微笑む姿がとてもマッチしていた。
細いウエストに長い手足が、“ザ・アイドル”というシルエット。ライブパートでの衣装やダンスも楽しみにしていてほしい。
弥生 春(演:松田 岳)
▲新と春、2人はとある映画を鑑賞中
▲駆の前に試練として立ちはだかる“神”とその“妻”
先日ゲスト出演していたS.Q.S(スケアステージ) Episode 4『TSUKINO EMPIRE2 -Beginning of the World-』では、始の不在で少々荒ぶっていた春は、今作は打って変わって落ち着いていた。やはり隣に始がいると、安心感が違うのだろう。
「みんなが揃っているのが嬉しい」。そんな心の声が聞こえてきそうな笑顔で、皆の顔を順に眺める姿が、とても彼らしかった。
日替わりパートでは神様として張り切っている、とても楽しそうな松田にも注目だ。
卯月 新(演:中島礼貴)
▲舞い降りた新
▲「ブレーメンの音楽隊」再現劇の一コマ
▲芝居パートの劇中歌、この曲のヒントは葉月 陽の写真を参照
新キャストの中島礼貴が演じる新。まずダンスがとても上手く、新らしい踊り方に視線が奪われた。
彼のちょっとズレた天然な部分も丁寧に演じていたのが印象的だった。今回お当番回ではないが、はじっこのほうで年中組同士でわちゃわちゃしているシーンは、目が足りないと思うがぜひ観て欲しい。「あ〜新っぽい!」という仕草がいくつも発見できるだろう。
皐月 葵(演:上仁 樹)
▲なにか考え事をしている葵
▲葵の優しい視線が印象的なワンシーン
▲ワイルドな雰囲気の理由は歌っている曲。ヒントは葉月陽。
新生グラビを、きっと彼が土台となって支えてくれたのだろう。そう思うほどの安定感が、上仁の演じる葵にはある。
メタ的な発言もちらほら飛び出す日替わりパートでは、葵自身はステージ上にいなかったが「上仁 樹」の名前が登場していた。春にそっくりな神様によると、なにやら人見知りの上仁が頑張ってグラビの新キャストに声をかけて、皆を食事へ連れていき、一生懸命チームワークの構築に努めていたそうだ。
彼自身の完成度の高さは言わずもがな、彼の貢献もあってできあがったグラビの一体感にも、ぜひ注目を。
師走 駆役(演:澤邊寧央)
▲1曲目の劇中歌でかわいいハートをキャッチ
▲客席を見渡して、駆スマイル
グラビの切り込み隊長・師走駆。その役目を果たすべく……かどうかは分からないが、果敢に日替わりパートに挑んでいた。春のような神様と、涙のような神の妻に翻弄されながら、元気にめげずに頑張る姿は、とても駆らしかった。
ツッコミ役に回ることが多い役どころなので、今後のツッコミの手腕に期待したい。
ライブパートでも、盛り上げ役はやはり駆のお仕事。キャストを盛り上げ、客席を盛り上げ、みんなを笑顔にしていた。
如月 恋(演:鈴木遥太)
鈴木は天真爛漫な恋を、ふわっとした笑顔で魅せてくれた。劇場で、彼の笑顔に撃ち抜かれる人もいるのではないだろうか。
黒年少で楽しそうにしている姿がとても可愛く、かと思えばダンスでは切れのある動きで圧倒された。
恋は感情がストレートに外に出る分、今作のテーマとなっている“幸せ”という言葉がとても似合うキャラクターのひとりだ。彼の笑顔に、ぜひ幸せをおすそ分けしてもらってみては。
霜月 隼(演:TAKA[CUBERS])
▲隼がうっとりする理由はただひとつ
▲椿とともに始LOVEを語りあい「それなー」と意気投合
今作のお当番のひとり・隼。魔王様と呼ばれる彼は、突然やってきた2人の魔女に対して何を思ったのだろうか。本編ではキーパーソンとして大活躍していた。
郁との会話では、彼のまっすぐな悩みと言葉を優しく受け止めていた姿が印象的。手を引っ張って導くのではなく、そっと背中を押す隼を好演。
椿とともに“始LOVE”を語り始めた際は、このまま暴走してどこかに行ってしまうのでは? と不安になるほどの熱量だったが、それもまた隼らしい。
ここ数作は“王様”が板についていたが、久しぶりの“魔王様”がやはり彼にはしっくりくる。
文月 海(演:平井雄基)
▲茶目っ気もあり豪快で大人な海
大人の余裕と新キャストとは思えない安定感を発揮していた平井演じる海。圧倒的“兄貴感”が感じられる役作りが見事で、豪快でポジティブ、まさに夏男らしい海に仕上がっていた。
細かいことは気にしないという性格もうまく表現していて、多少滑っても気にせず続行するギャグを披露。“静”の隼に対して“動”の海と、とてもバランスのとれた白年長という感想を抱いた。
葉月 陽(演:栗田学武)
▲年中組で歌った劇中歌は……ヒント:背後のスクリーン
「ツキステ。」シリーズ準レギュラーともいえる栗田が演じる初めての陽。これまで過去2作、同じステージの上に立っていたとあって陽をよく理解しているのだろう。それが感じられる役作りだった。
栗田自身は殺陣が得意なので、アクションありのエピソードだと一層活躍を楽しめるのではないだろうか。
きゅっと引き締まったウエストから、なにかと露出していることが多い鎖骨や肩にかけてのラインが美しいので、ぜひ注目してほしい。
長月 夜(秋葉友佑)
▲平和な2人の会話が楽しめるのも日常シーンならでは
穏やかな夜スマイルは健在。新生陽との白年中組が、寮で談笑している姿は必見だ。
付き合いの長さを感じさせる2人の空気感を感じられるのも、今作に漂うアットホームな空気感があるからだろう。
今後さらに深まっていくであろう新生白年中の絆を、この先も見届けていきたい。
水無月 涙(佐藤友咲)
▲リボンがたくさんついているフェアリーテイルコレクション衣装は必見
佐藤演じる涙は、可愛らしい笑顔を浮かべながら、しっかりプロセラを支えていたのが印象的。前にどんどん出ていくキャラクターではないが、原作の涙らしさを残しつつ、彼がこれまでつくりあげてきた「ツキステ。」の涙としてプロセラメンバーたちを引っ張っていた。
グラビの葵同様、プロセラには涙がいることで安定度が一気に高まっている。
神無月 郁(三山凌輝)
▲がんばり屋さんいっくんがたくさん頑張るお当番回
お当番回となった本作。彼の真っ直ぐな生き方に、心奪われる観客が続出するだろう。年齢の割に大人びていてしっかりしているところや、だけどまだ大人のようには器用になれないところ。そういった絶妙なニュアンスをしっかりと表現していた。
メンバーに対してはもちろんだが、おとぎの国からやってきた麗奈や椿にもとことん平等で優しく、思わず「いい子〜〜〜!」と心の中で叫んでしまったのは、筆者だけではないはずだ。
運動神経の良さを感じさせるキレッキレのダンスももちろん健在。芝居パートもライブパートも大活躍の郁から、目が離せなくなるだろう。
伊地崎麗奈(演:秋場悠里)・天童院 椿(演:平松可奈子)
今回の登場キャラクターたちが解禁された当時、女神候補生の登場に驚いたファンも多いだろう。9割以上を女性ファンが占める「ツキステ。」、果たして女神候補生の登場はどうなるのか……と。
しかし、不安に思っていたファンも彼女たちをステージで観たあとは、きっと虜になっているはずだ。端的に感想を述べるなら、「可愛い、うまい、そしてやっぱり可愛い」である。
キャラクターを掴んでいるのはもちろんだが、発声や仕草での表現が繊細で、思わず見とれてしまうのだ。
隼と一緒になって始LOVE教の布教活動をしている椿や、オタクの生態を熱く語る麗奈。そういったコミカルなシーンは軽やかでとても可愛らしい。
一方で、“幸せ”を探す魔女としての2人は、その演技で観客の涙を誘う。
隼・郁とともに立派にお当番回を務めた椿と麗奈には、またどこかで会いたい。そう思わせるほどの魅力が2人にはつまっていた。
「あなたにとっての幸せは、なんですか?」
冒頭に書いたこの一文。この作品を観ながら、そして観終わってから、筆者の頭の中に何度も浮かび上がってくる言葉である。
いまは幸せなのか、どうしたら幸せを感じられるのか。そのヒントを、この作品は教えてくれるだろう。
フレッシュな顔ぶれが多く揃うこのタイミングだからこそ、生きることの基本に立ち返った“日常”というテーマが活きているように感じた。
2.5次元ダンスライブ「ツキウタ。」ステージ第9幕「しあわせあわせ」を観て、あなたが大切にしたい“幸せ”を改めて探してみて欲しい。
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