舞台「銀河英雄伝説 Die Neue These ~第三章 嵐の前~」が2019年10月24日(木)、Zeppダイバーシティ東京にて幕を明けた。
「2.5ジゲン!!」では、ゲネプロの様子及びゲネプロ前におこなわれた初日舞台挨拶をお届けする。
第一章・第二章と紡がれてきたこの銀河での物語が、大きくうねり始める第三章。果たして今作ではどんな“伝説”が生まれるのだろうか。
幕開けからクライマックス! 息つく暇のない怒涛の展開に飲み込まれる
物語はクライマックスからスタートする。
前作で難攻不落といわれるイゼルローン要塞を攻略した自由惑星同盟のヤン・ウェンリー(演:小早川俊輔)。
これをきっかけに帝国領を侵略するという、ヤンも呆れる愚策が原因で、同盟軍は疲弊していき……というところまでが前作のストーリーである。
今作はこの続き、疲弊した同盟軍に対して、“常勝の天才”ラインハルト・フォン・ローエングラム(演:永田聖一朗)が一気に攻勢に出るというシーンから始まる。
本来なら舞台終盤のクライマックスのシーンにもってきてもいいほど、見せ場のシーンだ。
ヤンとラインハルトの知略を巡らせた頭脳戦を目の当たりにし、一気にZeppダイバーシティ東京にいる観客のひとりから、双方の緊迫した命のやり取りを見つめる銀河の片隅の石ころ一欠片になるような気分を味わうだろう。
今作も、アニメ版を彷彿とさせるナレーションが用意されていた。
宇宙を舞台にした壮大な戦いとあって、規模の大きさに理解が追いつかなくなるかもしれない……。
そう不安に思うファンもいるかもしれないが、ナレーションやメモ魔のダスティ・アッテンボロー(演:伊勢大貴)、ユリアン・ミンツ(演:小西成弥)らが随所で情勢をまとめておさらいしてくれるので安心してほしい。
“個”にスポットを当てたストーリーに見出す、それぞれの人生
今作はサブタイトルにある「嵐の前」という言葉が、両軍勢の状況を的確に表現している。
開幕直後から激しい火花を散らす同盟軍と帝国軍の戦いに加え、水面下で動き始めるいくつもの思惑が同時並行的に描かれていく。
そして失われていく命ーー。
150年の間続いてきた2国間の戦いを、今作はより“個”にクローズアップして描いている印象を抱いた。
艦隊戦で失われていく命があり、自身の信念を曲げなかったがゆえに奪われる命がある。
戦いのそばには必ず死があること、そしてこの死がまた新たなうねりに繋がっていくのだろうと予感させる展開に、第四章への期待がふくらむファンが続出するだろう。
ネタバレなし! メインキャラクター見どころレポート
超名作「銀河英雄伝説」が原作とあってその顛末を知っているファンも多いかもしれないが、この舞台シリーズで初めて作品に触れるファンもいるだろう。
ここからはメインキャストたちの見どころをレポートしていこうと思う。
<自由惑星同盟>
3作出演しているキャスト陣はまさに“安定”の2文字。小早川の演じるヤンは相変わらずひょうひょうとしており、頭をぽりぽりと掻く姿が板についている。
キャラクターのままでのカーテンコールでは、少し猫背気味にした背中を掻きながら階段をのぼる姿がまさにヤン。
とある式典で相対したヤンとジークフリード・キルヒアイス(演:加藤 将)のシーンは、2人の根っこにある人のいい性格が共鳴し合っているようで印象に残っている。
ヤンを取り巻くアレックス・キャゼルヌ(演:米原幸佑)やアッテンボロー、ユリアン、フレデリカ・グリーンヒル(演:福永マリカ)、ワルター・フォン・シェーンコップ(演:大高雄一郎)といった同盟軍の面々は、揃うとアットホームな空気に包まれる。
なかでもヤンが保護者代わりを務める“息子”ユリアンとのやりとりは、本作で屈指の癒やしシーンだ。とにかくユリアン(15歳)がかわいらしく、小型犬を思わせる人懐こい笑顔に心撃ち抜かれるファンは多いだろう。
第三章にして初お披露目となった軍服姿のユリアンにもぜひ注目してほしい。
今作からはさらにオリビエ・ポプラン(演:碕理人)が登場。碕は第一章ではジャン・ロベール・ラップとして出演していた。その経験も生きているのか、オリビエ・ポプランもこの舞台の世界観にとても馴染んでいるように感じた。
多くの民衆の心を動かすジェシカ・エドワーズ(演:汐月しゅう)のスピーチも健在。武器も持たずただその場に凛と立っているだけで、誰よりも強く見える。そんなジェシカの芯の強さを見事に表現していた。
<銀河帝国>
ラインハルトとキルヒアイス、“双璧”のオスカー・フォン・ロイエンタール(演:畠山 遼)とウォルフガング・ミッターマイヤー(演:釣本 南)、そしてパウル・フォン・オーベルシュタイン(演:藤原祐規)。
こちらも同盟軍キャスト同様、前作からの続投キャスト陣だ。
思うように事が運んでいるときはとても冷静だが、ふとしたキーワードをきっかけに感情を露わにするラインハルトが印象に残っている。
孤高の指揮官といった“常勝の天才”らしい空気をまとっているが、その仮面の下は案外人間くさいところがある。それを永田が瞳の些細な演技によって見事に表現していた。
唯一無二の幼馴染であるキルヒアイスとのシーンでは、培ってきた2人の絆が感じられた。厳しい視線でこの先の未来を見据えるラインハルトを、ぬくもりのこもった表情で見つめるキルヒアイス。2人の信頼と対比を感じられるシーンは、ぜひ見逃さないで欲しい。
ロイエンタールとミッターマイヤーは、前作よりもぐっとアクションが増えた。白兵戦に自ら身を投じ、己の実力で道を突破していく。前作では感じられなかった勇猛さを楽しめるだろう。
そして、最後にこの人に触れないわけにはいかないだろう。ラインハルトの傍らに常に立っているオーベルシュタインだ。前作から登場したオーベルシュタインの不気味さは、さらに磨きがかかっていた。
彼が発言する度、次はどんな策を提言するのか。思わず見入ってしまう、魔力のような引力をその演技に感じた。
同盟軍と帝国軍、ヤンとラインハルト。双方、内部に混乱を抱えながら、さらに激流へと身を投じていく過程が描かれた舞台「銀河英雄伝説 Die Neue These ~第三章 嵐の前~」。
2019年10月24日(木)〜27日(日)まで東京公演、11月2日(土)・3日(日)にZepp Nambaにて大阪公演が上演される。
大スクリーンに映し出される迫力ある映像と、キャストたちの演技。その組み合わせで浮かび上がる「銀河英雄伝説」の世界をぜひ劇場で楽しんで欲しい。
初日舞台挨拶コメント
ゲネプロに先立ち初日舞台挨拶がおこなわれた。メインキャストがずらりとそろった舞台挨拶の様子を、全員の全コメントとともに楽しんでもらいたい。
小早川俊輔(ヤン・ウェンリー役):
「第一章・第二章では同盟軍・帝国軍の軍事的行動だったり内部情勢が描かれていたんですけど、今作ではヤンとラインハルトの直接対決が激しくも緻密に展開されていってると思います。
その戦果が両国にどう影響するのか。まさに激動の始まりを感じさせる物語になっていると思いますので、ぜひ楽しみにしていてくたさい」
米原幸佑(アレックス・キャゼルヌ役):
「ちょうど1年前に初演を迎えて今回で3作目。僕自身は3回目になるんですけど、今回からのメンバーだったり前回からのメンバーだったりの力が集結して、この3回目を迎えることができました。
個人的には、この3回目は派手な戦闘シーンや白兵戦もたくさんあるので、一番今回が派手なんじゃないかと思っています。楽しみに観に来てくれたら嬉しいです」
伊勢大貴(ダスティ・アッテンボロー役):
「おはようございます!(いい笑顔といい声で)
今回3度目となりまして、(アッテンボローの)メモ帳もだいぶくたくたになってきまして味が出てきました。アッテンボローのすごくいいやり方なので、これが育っていくのがすごく嬉しいです。
今回過去最大の人数なので、稽古場も大変でしたけど、みんなで力を合わせて「銀河英雄伝説」の世界観を作ってきたので、ぜひ楽しみに劇場に来て欲しいです」
小西成弥(ユリアン・ミンツ役):
「一章二章とやってきて、(ユリアンは)ずっと私服だったんですけど、今回からこうして軍服を着られるということで本当に嬉しく思っております。
まだ慣れてないなという感じもありますけど、大切にユリアンを演じられたらいいなと思います」
碕 理人(オリビエ・ポプラン役):
「第一章でジャン・ロベール・ラップ役として出演させていただき、第二章は残念ながら参加することができず……そして第三章ではオリビエ・ポプランという役で戻ってこれたことを嬉しく思います。
また新たな「銀河英雄伝説」のメンバーと一緒に、新鮮な気持ちで第三章を全力で楽しみながら演じることができたらいいなと思いますので、ぜひ皆様劇場に足をお運びください」
汐月しゅう(ジェシカ・エドワーズ役):
「軍人たちの戦いがメインに描かれている作品ではあるんですけど、その後ろにいる民間人たちの姿や信念を描く役割が自分にはあると思っています。
ジェシカはヤンの友人ですけど、きっとすべての人物の後ろにこういう(ジェシカのような)存在がいたのかな、って感じていただけることで、作品に奥行きを足していけるように頑張りたいと思います」
大高雄一郎(ワルター・フォン・シェーンコップ役):
「引き続きこの「銀河英雄伝説」の世界を生きられることを嬉しく思っています。
戦艦シーン・白兵戦のシーンが多いんですけど、それだけじゃなくて戦艦のなかに暮らしている人の日常とか何気ない部分も描かれているので、そういったシーンも楽しみにしていただけたらなと思います」
福永マリカ(フレデリカ・グリーンヒル役):
「ここに立っている出演者はもちろんなんですが、ここに立っていない出演者の活躍が凄まじいです。
色んな人の人生が描かれているので、すべての人に注目して観ていただけたらと思います」
永田聖一朗(ラインハルト・フォン・ローエングラム役):
「今作はサブタイトルに「嵐の前」とあるんですけど、本当に次に繋がるための作品だと思っています。
ラインハルトとしては、実権をついに握っていくところのお話になるんですけど、第一章・第二章を経て、追加キャストの皆さんも迎えてさらにさらにパワーアップした作品になっているのではないかと思います。
迫力のあるシーン・見ごたえのあるシーンが多くて、初めて観る方でも楽しんで頂けると思います。原作小説のト書きを表現することを努めていますので、原作を知っている方はぜひ原作を一読してから観ていただけたらまた違う楽しみ方ができるんじゃないかなと思っています。
応援のほど、よろしくお願いいたします」
加藤 将(ジークフリード・キルヒアイス役):
「やってまいりましたよ! 前回はプロージット(乾杯)で終わって、艦隊戦で艦隊がぐぁーっと出てきためちゃくちゃいいところで終わってるんですよ!」
と、自己紹介を済ませる前から怒涛のテンションで話し始めた加藤。隣の畠山から冷静な指摘をもらうと「あ、これはあとで言おうと思ってました! 改めまして、ジークフリード・キルヒアイス役の加藤 将です」と自己紹介し、笑いを誘っていた。
ここからは、加藤らしさを爆発させているコメントを、なるべく現場の雰囲気が伝わるように伝えていきたい。
「さあ、やってまいりました!(さっきも聞いたよ、というツッコミは無視して)前回艦隊戦の「さあ始まるぞ」っていうめちゃくちゃいいところで終わったんですよね。その続きが観れるということは、みなさん考えてくださいよ。頭からド迫力の戦闘シーンが行われるということです。
しかもね、同盟軍と帝国軍がバチバチに戦うわけですよ。前回とかでもね、アスターテ会戦とかありましたけど、それ以上に迫力があって。映像もそうですし、たくさんのキャストが出てくるシーンもあってすごく迫力があります。
そしてキルヒアイスとしては、ラインハルト様とどうなっていくのかという見どころもありますので(と、永田を見つめる)。そこも注目してください。
それとね、さっき福永マリカさんが言ったようにここ(舞台挨拶)に出ていないキャストもたくさんいます。その人達も僕たちと一緒で、その人の人生を一生懸命生きて、1公演でその人の人生を描いてくれているんで……。
やっぱこの「銀英伝」目が1つだけじゃ足りないと思うんですよ。なのでたくさん観ていただいて……(指を1本立てて1つをアピールする加藤に対し、永田からは「2本」というツッコミが入り)目はもちろん2つありますけど(笑)。目が2つじゃ足りないです! ラインハルト様、ありがとうございます!」
「目が2つじゃ足りないんで、たくさん観ていただいて色んな人の人生、その人が死ぬまで観ていただきたいなと思います!
……あれ? 何言ってるかわかんなくなってきちゃった。(こらえきれず次々と笑い出すキャスト陣)
そうですね、この聖一朗も言っていたように、第一章・第二章・第三章とシリーズが続いていくからこそ素敵な作品だと思いますので、僕はジークフリード・キルヒアイスとして最後まで生きていけたらいいなと思いながら演じていきたいと思います。
(一度役名を噛んで、さらに笑いを誘ってから、キメ顔で)ジークフリード・キルヒアイス役加藤 将でした!」
畠山 遼(オスカー・フォン・ロイエンタール役):
「今までの第一章・第二章は、僕とミッターマイヤー役の釣本 南くんは艦隊に乗らずにずっと銀河帝国内で過ごしていたんですけど、今回からやっと艦隊に乗ることが出来て、作中最強ともいわれるオフレッサーとの白兵戦もあります。なので今までで1番見どころがあるんじゃないかなと個人的に思っています。
「銀英伝」を愛してやまない演出家の大岩(美智子)さんをもとに、スタッフの皆さん・キャスト全員で最高の「銀河英雄伝説」の世界を作り上げていきますので、どうぞ皆さん銀河の歴史を見届けていただけたら嬉しいなと思います」
釣本 南(ウォルフガング・ミッターマイヤー役):
「相方・畠山 遼から話があったように、新しいことにチャレンジしている作品だと思っています。僕等にしか出来ないことをやるために準備してきたつもりですので、また今日から千秋楽まで駆け抜けていけたらなと思います」
君島光輝(ヒルデガルド・フォン・マリーンドルフ役):
「今回この作品に初めて参加させて頂くんですけど、この歴史があり長きに渡って愛され続けている作品に出させて頂くことが本当に嬉しくって。
第三章でヒルダは初めて登場するんですけど、私以外にも今回から初めて登場するキャラクターもいますので、新しく加わるキャラクターによってこの物語がどう展開していくのか。楽しみにしていただけたらと思っています」
藤原祐規(パウル・フォン・オーベルシュタイン役):
「僕は第二章からの参加になるんですが、この第三章は帝国側としてはついにラインハルトが実権を掴むために動き出す、という話になっておりまして。オーベルシュタインとしてもとにかく暗躍しているという。
良くも悪くもオーベルシュタインの参加によって話が進んでいくのがついにこの回だなと思います。お話としても大きく動くので、ぜひ楽しみにしていて頂きたいと思います。
皆が言ってくれてたんですけど、大規模な艦隊戦から始まって、あとうちの双璧がオフレッサーとの激しい戦いをおこないますので、エンタメ的にも強く打ち出している見やすい舞台になっていると思いますので、そちらも楽しみにして頂きたいと思います。
舞台はやっぱり生がいいと思いますので、ぜひ劇場に来ていただければと」
ぜひこの舞台挨拶のコメントで想像を膨らませ、期待を胸に劇場に向かって欲しい。そこには壮大な「銀河英雄伝説」の世界が待ち受けているだろう。
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