2019年6月6日(木)、ファン待望の『最遊記歌劇伝ーDarknessー』が幕を開けた。
今回はゲネプロ公演の様子と、終演後におこなわれた囲み会見の様子をお届けする。
旅は再び始まる、三蔵一行新たな旅立ち
「お帰りなさい」――M1を聴いた瞬間、この思いが込み上げるファンはきっと多いだろう。
初演『最遊記歌劇伝ーGo to the Westー』は2008年9月に上演された。
あれから10年以上の月日が経ち、スピンオフ「異聞」を除く前作『最遊記歌劇伝ーReloadー』は2014年9月の作品である。
この「Darkness」の幕開けを待ち望んでいたファンにとっては懐かしい、それでいて新作の力強さを感じる作品に仕上がっていた。
なんといっても冒頭。ファンにとってはおなじみの復習を兼ねた回想シーンが入る。
今回初めて同シリーズに触れるという観客も、ここで彼らの人となりや生い立ちがつかめるだろう。
▲シリーズファンにとっては見覚えのあるシーンも……
▲玄奘三蔵役鈴木拡樹
▲沙悟浄役鮎川太陽
▲猪八戒役さいねい龍二
▲孫悟空役椎名鯛造
舞台は桃源郷。相変わらず西を目指して旅を続けている玄奘三蔵(鈴木拡樹)、孫悟空(椎名鯛造)、沙悟浄(鮎川太陽)、猪八戒(さいねい龍二)ら三蔵一行。
そんな旅の途中に、死人を生き返らせる不思議な力を持ったヘイゼル=グロース(法月康平)とガト(成松慶彦)という異国からやってきた2人組に出会う。
▲新たに旅に加わるヘイゼル(法月康平)
▲ヘイゼルの側にいるガト(成松慶彦)
その様子をどこからともなく観察し、思案を巡らせている様子の烏哭三蔵(唐橋充)と一行を見守っている光明三蔵(三上俊)。
▲怪しい雰囲気をふりまくこの人物の正体は……
▲「異聞」から続投となる三上俊による光明三蔵
原作『最遊記RELOAD』で描かれた物語が、感情に訴えかけるような楽曲とともに舞台上に繰り広げられていく。
▲玄奘三蔵とヘイゼル、2人の結末は……
かたく結ばれた絆と、新たな風
三蔵一行の日常は、相変わらず騒がしかった。
孫悟空が空腹を訴え大騒ぎし、それをからかう沙悟浄とケンカをし、「まあまあ」と笑みを浮かべている猪八戒。
最後は三蔵がキレてタバコ片手に銃を撃つ。
▲騒がしさの中心となるいつもの2人
▲玄奘三蔵(鈴木拡樹)といえばタバコと……
▲拳銃と……
▲ハリセンである
▲一行のオカン的存在・猪八戒(さいねい龍二)
しかし、いざ仲間のピンチとなれば我が身を捨てる覚悟で助けようとする。
▲それぞれの戦闘シーンも盛りだくさんだ
長い旅を経て、砂時計が降り積もるように少しずつ積み重なった互いへの情愛を感じ取ることが出来た。
これは三蔵一行としてキャスト陣がこれまで積み上げてきた関係性にも重なるのかもしれない。
シリーズのファンは、またこの顔ぶれが揃ったことへの感謝の念が劇中何度も込み上げてくるだろう。
▲過去があったからこその絆を感じる
一方、シリーズ初登場となるヘイゼルとガト。
こてこての京言葉が印象的なヘイゼルは、三蔵一行を掻き回す新たなスパイスとなっていた。
法月の歌唱力も存分に発揮されており、コミカルな持ち歌もあったので楽しみにしていてほしい。
笑顔の下に隠している本音やガトとの関係性など、まだまだ謎めいた部分が多いキャラクターである。
続編となる「Oasis」への期待を一気に高めてくれる役どころとなっていた。
怪しさという点では、鈴木や椎名と同じく初演から出演し、さらに「異聞」にも烏哭三蔵役で出演している唐橋充の怪演が目を引く。
▲気味の悪さを感じる烏哭三蔵(唐橋充)
作品全体の“影”となり、彼の存在が三蔵たちの絆をより一層浮かび上がらせていたように思う。
こちらも引き続き「Oasis」での暗躍が気になるキャラクターだ。
作品のすみずみまで行き渡っている原作への愛を、今作でも感じることができた。
原作を知っていると思わず口元が緩んでしまうような小ネタもいくつかあるので、ぜひ見つけてみてほしい。
そしてなにより、“生きる”ことや“生きたいと願う気持ち”について考えさせられるだろう。
4年の時を経てより磨きがかかっている鈴木をはじめとしたキャスト陣の熱演も圧巻。
原作の軽快なテンポをそのままに、随所でズシリと胸の奥に撃ち込まれる重い芝居を存分に味わってみてほしい。
囲み会見レポート
囲み会見には玄奘三蔵役の鈴木拡樹とヘイゼル役の法月康平が登壇した。
ーー意気込みをお願いします。
法月康平(ヘイゼル=グロース役):僕自身はこの「最遊記歌劇伝」シリーズには初参加なんですけど、本当に短い稽古期間のなかで、共演者の皆さんのそれぞれの役に対する命の吹き込み方だったり、時間がないなかでそれぞれが出来ることを探して、全員で今日を目指してきました。
お芝居をしていることがこの作品のなかでのコミュニケーションになっていて、それが居心地が良くて馴染みやすかったというか、初参加とは思えないくらい早い段階でこの世界に溶け込むことが出来ました。
「最遊記歌劇伝」のこれまでの作品は目を通させて頂いていて、今回ほどキャラクターの光と闇の部分が出てたり、陰と陽が出ている作品ってないなと思っていて、そのなかでこのヘイゼルという役をやらせていただいて本当に光栄に思っています。
このあと初日がありますが、14日まで怪我がないように頑張っていきたいと思います。
鈴木拡樹(玄奘三蔵役):ゲネプロを終えましていよいよ本番を迎えます。
この作品1番最後にやったのが4年前となっていまして、当時観ていただいた方にとっては久しぶりの公演になると思いますし、そういった意味では目標のひとつとして「懐かしい三蔵一行が帰ってきた」というものをテーマにしたいと思っています。
また新しくヘイゼル、ガトという新メンバーも加わり、ここから旅も長くお付き合いいただけるので、この新しいメンバーも含め、また新しく観て頂くお客様にも新鮮な「最遊記歌劇伝」のことをたくさん知ってほしいなと思います。
原作を通してすごく思うことなんですけど、三蔵一行というのはヒーローらしくないヒーローなので、どちらかというと毎回ゲストでくる敵キャラのほうがメインじゃないか、と毎回感じております(笑)
今回は新しくヘイゼルが(法月からは「敵キャラではないですけど」と笑顔でツッコみが入っていた)加わるので厚みも増しましたし、またここから「Oasis」編もございますので、今回を観ていただいて次回作「Oasis」のほうも楽しみにしていただけると嬉しいです。
改めて一同気合いを入れてこの旅を進めていきたいと思います。
2人の気合いを感じるコメントで、さらに本作が気になったファンに朗報。
6月13日公演のディレイ配信と、本作のDVD発売が決定した。
ぜひ公式サイトで詳細をチェックして、再び帰ってきた三蔵一行の新たな旅を見届けてみてはどうだろうか。
©︎峰倉かずや・一迅社/最遊記歌劇伝旅社 2019
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