マンガ誌アプリ「ジャンプ+」で人気を博した賀来ゆうじの忍法浪漫活劇「地獄楽」。アニメも話題となった本作を原作とした、舞台化シリーズ完結となる舞台「地獄楽-終の章-」が2024年2月15日(木)に開幕。2023年2月に上演された初演から約1年の時を経て、極楽浄土の島“神仙郷”での仙薬をめぐる戦いに決着がつくこととなる。
2.5ジゲン!!では、初日を前に実施されたゲネプロと、画眉丸役の木津つばさら7人が登壇した囲み会見の様子をお届けする。
「地獄楽」は無罪放免の権利を得るため、死罪人たちが極楽浄土の島で不老不死の仙薬をめぐる戦いを繰り広げるという物語。死罪人には1人ずつ、監視役として打ち首執行人の一族・山田家の者が同行している。
前作では、神仙郷で巻き起こる不測の事態に対処するなかで、画眉丸(演:木津つばさ)ら死罪人や、山田浅ェ門 佐切(演:白本彩奈)ら打ち首執行人は、それぞれの目的や志を胸に絆を結んでいった。
極悪人である死罪人の手にかかって上陸早々に絶命した者もいれば、師を助けるために自らの命を犠牲にした者もいる。そうした死闘の末にようやく掴みかけた仙薬の前には、天仙というあまりに強大な敵が立ちふさがる。それでも、画眉丸の“妻に会いたい”という心が折れることはなく――といったところまでが前作で描かれた。
そこから続く天仙との最終決戦を描くのがこの「終の章」だ。もともと上陸していた者たちが共闘体制で天仙を討とうとするなか、追加派遣される山田浅ェ門 殊現(演:小南光司)や山田浅ェ門 十禾(演:松田岳)、画眉丸の故郷である石隠れ衆の里からやってくる忍・シジャ(演:櫻井圭登)が、物語をさらに混沌とさせていく。
ラスボスである天仙との最終決戦を描くとあって、序盤から怒涛(どとう)のアクションが続く。息をつく暇もないとはまさにこのこと。
前作からさらに美しさが増した映像との融合によって、この世とは一線を画した美しき楽園と、そこで繰り広げられる無慈悲な暴力とのコントラストが鮮やかに浮かび上がった。
物語序盤からペアとして行動する画眉丸(演:木津つばさ)と山田浅ェ門 佐切(演:白本彩奈)は、前作で培った絆で作品の格子を組み上げていく。2人の信念を曲げない姿は、強大な敵を前にした際に漂う絶望感を、希望で塗り替えていった。心を奮い立たせるように、全身を震わせ熱演する座長・木津の芝居は、本作の熱量そのものを体現。前髪の隙間から覗く瞳で語る、画眉丸の覚悟と生き様はぜひ劇場で受け取ってみてほしい。
▲画眉丸役の木津つばさ
▲前作からの1年で感受性の成長を感じるという佐切役の白本彩奈
多様なペアの絆を楽しめるのも、本作の見どころだろう。亜左弔兵衛(演:佐奈宏紀)と山田浅ェ門 桐馬(演:田淵累生)は兄弟の絆を、山田浅ェ門 士遠(演:中村太郎)とヌルガイ(演:吉浜あずさ)は師弟の絆を、民谷巌鉄斎(演:郷本直也)と山田浅ェ門 付知(演:宮崎湧)は戦いの中で育まれる絆を、杠(演:太田夢莉)とメイ(演:高乘蒼葉※)は姉妹のような優しい絆を見せてくれた。(※メイ役は澤田理央・高乘蒼葉のWキャスト、ゲネプロでは高乘が出演)
極悪人とそれを裁く者という単純な二項対立では括れない、矛盾を抱えながら生みだされていく、いくつもの関係性が、本作の人間ドラマとしての一面に厚みを持たせている。
弔兵衛を演じた佐奈は本作からの新キャストとなる。囲み会見で「(前作で同役を演じた松島)勇之介の意思も背負って」と意気込みを語った佐奈は、桐馬を演じる田淵の優しさのおかげで、すぐにいい関係性を築けたと語る。一方で新キャストとして難しかった点を問われると、「桐馬との関係性に必死過ぎて、他のキャストの皆さんと全然絡めなかった」と笑いを誘い、会見を盛り上げた。
弟役の田淵も負けじと、稽古中に2人で動作がシンクロしたことを挙げ、「兄弟を超えて双子かと思った」という仲良しエピソードを披露。
▲シンクロシーンを再現する弔兵衛役の佐奈宏紀と桐馬役の田淵累生
カリスマ性感じる一振りで、佐切も憧れる試一刀流二位の実力に説得力を持たせたのは山田浅ェ門 殊現を演じた新キャストの小南光司だ。
会見ではカンパニーの雰囲気を「仲がいい」と言おうとするも噛んでしまい、隣の木津から「嘘やと思われるから」とツッコまれてしまう一幕も。そんな小南のおすすめシーンは松田岳の登場シーンだそうで、「がっくん(松田岳)が出てくるところは全部おもしろい」と太鼓判を押していた。
▲人見知りだがすぐにカンパニーに馴染めたと語る殊現役の小南光司
当の松田は、ひょうひょうとしていて掴みどころのない山田浅ェ門 十禾を実に楽しそうに演じていた姿が印象的。自身の手の内は最後まで明かさない十禾の底知れぬ大物感を、狂言回しの役割を担いつつ見事に表現していた。
ある目的のために画眉丸に近づくシジャを演じた櫻井は、歪(いびつ)な愛情表現で客席を不穏な色に染める。仙薬奪取とは別の目的で動く彼の存在は、最終決戦に向けて突き進んでいく物語における格別なスパイスといえるだろう。
ラスボスが魅力的というのは、それだけで作品の武器となる。この「地獄楽」もそんな作品の1つだ。雌雄同体ゆえにほぼ不老不死を実現している天仙を、今回初参加となる佐々木喜英と立道梨緒奈が演じる。
▲天仙役の立道梨緒奈
▲天仙役の佐々木喜英
2人は同じ役を演じるうえで、稽古場でセリフの割り振りについてもいろいろと話し合ったそう。佐々木からは「(立道から)ヒデさん大変な方をお願いしますって言われるんです」という天仙役ならではの秘話も飛び出した。
天仙は複数の分身体を持つ。いくつもの芝居の引き出しと、それらを瞬時に切り替えられる高い技量を持つ佐々木と立道だからこそ実現できたであろう、妖艶で神々しい七変化をお楽しみに。
最後に、主演を務める木津は、本作を「死と隣り合わせの作品であり、それぞれの理想や夢や目的が感じられる人間味のある作品」としたうえで、「この作品でしっかり舞台『地獄楽』というものを完結させていただけていると思います。皆さんもぜひ期待して観に来ていただけたら」と、物語完走へ向けての意気込みを語った。
今作は客席通路を使ってのアクションや演出が格段に増え、ステージ上だけでなく劇場全体が“神仙郷”の一部となっている。劇場という非日常的な空間で、“神仙郷”を肌で感じてみてはどうだろうか。舞台「地獄楽-終の章-」は、2月18日(日)まで東京・シアター1010にて、2月23日(金)~25日(日)に大阪・クールジャパンパークTTホールにて上演される。
(C)賀来ゆうじ/集英社・エイベックスピクチャーズ
公演情報
公演名
舞台「地獄楽-終の章-」
日程・会場
2024年2月15日(木)~18日(日)
東京・シアター1010
2024年2月23日(金)~25日(日)
大阪・クールジャパンパークTTホール
原作
「地獄楽」賀来ゆうじ(集英社ジャンプコミックス刊)
演出
加古臨王
脚本
SpacenoidWriters’Room(月森葵、野ノ栖千晶、会沢青)
出演者
【画眉丸】木津つばさ
【山田浅ェ門佐切】白本彩奈
【亜左弔兵衛】佐奈宏紀
【山田浅ェ門桐馬】田淵累生
【杠】太田夢莉
【山田浅ェ門士遠】中村太郎
【ヌルガイ】吉浜あずさ
【民谷巌鉄斎】郷本直也
【山田浅ェ門付知】宮崎湧
【山田浅ェ門殊現】小南光司
【山田浅ェ門十禾】松田岳
【シジャ】櫻井圭登
【メイ】澤田理央・高乘蒼葉(Wキャスト)
【天仙】佐々木喜英・立道梨緒奈
〈アンサンブル〉
片伯部浩正、藤原儀輝、小林聖尚、福島悠介、小川丈瑠
栁原華奈、市川絵美、岡本真友、山田美貴、中込萌、中野紗耶可
主催
エイベックス・ピクチャーズ
公式HP
公式Twitter
取材・文・会見撮影:双海しお
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