レポート

ホスミュ最後の扉がいま開く。歌劇『桜蘭高校ホスト部』Fineでついに完結へ【ゲネプロレポート】

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葉鳥ビスコの漫画『桜蘭高校ホスト部』を原作とした歌劇『桜蘭高校ホスト部』Fineが12月2日(土)に開幕。シリーズ3作目にしてついに完結となる本作では、どんな物語が描かれたのだろうか。

2.5ジゲン!!では前日に実施されたゲネプロの様子をレポート。原作のどのあたりが描かれたのか、といったファンの気になる部分はネタバレせずに、本作の見どころを紹介していく。

制服以外の衣裳を着用した劇中写真もあるので、まっさらな状態で観たい場合は観劇後に読んでもらえたらと思う。

最大級の愛とおもてなしで、『桜蘭高校ホスト部』を好きでよかったと思わせてくれる。初演からブレずに貫かれてきたその『ホスミュ』のあたたかさが、フィナーレにふさわしい熱量とにぎやかさとで客席にじわりと広がっていく約2時間10分の時間となった。

高価な花瓶を割ったことで背負った借金返済のため、紳士淑女をもてなすホスト部に入部させられることとなった藤岡ハルヒ(演:山内優花)の騒がしい日々を過去2作品で描いてきた。

本作ではついに学園理事長であり須王環(演:小松準弥)の父親・須王譲(演:中村誠治郎)が登場。これまで深く語られることがなかった、元気いっぱいでおバカな環の家族の物語が語られていくことになる。

メディアミックスでは初めて描かれることになるエピソードを、漫画完結から13年を経て眼の前で浴びることができるという現実は、多くの観客の心のなかに「最高ですわ~!」と高揚する“宝積寺れんげ”を召喚することになるだろう。

須王家をめぐるドラマにくわえ、埴之塚光邦いわく“無自覚さん”たちの初恋が動いていく王道少女漫画的展開も本作の見どころだ。環とハルヒ、そして常陸院ブラザーズこと常陸院光(演:二葉勇)と常陸院馨(演:二葉要)による恋の物語は、過去2作品で蒔いてきた種がいっせいに芽吹くように大きく動いていく。

そしてそんなホームドラマでラブストーリーな展開に心を揺さぶられるだけで終わらないのが『ホスミュ』だ。

原作漫画の帯にある「波乱万丈セレブライフ」の言葉に偽りなし。やんごとなき身分のご令息ご令嬢が集う学園にふさわしい豪華絢爛(ごうかけんらん)なフィナーレが待ち受けている。誰にとっても身近な学園生活や部活動に、非現実的なセレブ的価値観が組み合わさることによって生まれる空気感はどこかコミカルで、不思議と笑顔になってしまうパワーを秘めている。

お楽しみといえば、声出し解禁&客降り演出ありのレビューショーだ。

どの楽曲が登場するのかはぜひ劇場や配信でたしかめてみてほしいのだが、レビューショーならではの演出が目白押しとなっている。この楽曲をこの人が歌うの!? や、あのキャラもダンスに参加してくれるの!? など、細部にまで込められたおもてなし精神を楽しんでみてほしい。

キャストに関しては、今回初参加となる中村誠治郎を除く全員が、2度目または3度目の出演となる。あえてハマり役と説明する必要がないほど自然とキャラクターと馴染んでいるので、安定感は当然抜群だ。

おなじみの顔ぶれではあるが、そのなかにも、ハルヒが以前よりも心を開いている様子や、常陸院ブラザーズの双子間での苦悩と葛藤、体育祭を経て一皮むけた鳳鏡夜(演:里中将道)の佇(たたず)まい、悩める後輩たちを見守るハニー先輩こと埴之塚光邦(演:設楽銀河)とモリ先輩こと銛之塚崇(演:田鶴翔吾)の包容力といった各キャラの側面が、丁寧に作り上げられていたのが印象的。

なかでも主演を務める小松の熱演は胸に迫るものがあり、太陽のような笑顔を絶やさない環の抱えるものを熱演。苦境に立たされながらも真っ直ぐさを失わない環の強さは、小松自身の持つ強さでもあるのだろう。彼の真っすぐな芝居と、山内演じるハルヒの感情豊かな歌声が交わることで、作品の核を支える人間ドラマに厚みが生まれていたように感じられた。

初参加となる中村は、つかみどころのない須王譲をスマートに演じた。笑顔の裏になにかありそうな余白を残しながらも、環とのやり取りでは親馬鹿でお茶目な一面を見せ、しっかりと客席の笑いを取っていた姿が印象的だ。

前作の体育祭では名実況コンビとして活躍した猫澤梅人(演:大海将一郎)と宝積寺れんげ(演:斉藤瑞季)も忘れてはならない。今回も唯一無二の存在感でホスト部メンバーを各方面からサポートしていた。

前作で印象的だった大きな扉の代わりに、今回は階段が四方八方に伸びた回転セットが中央にそびえ立つ。階段の上り下りが格段に増えたことで、原作の持つドタバタ感がより強調され、作品にスピード感を与えていた。

『ホスミュ』おなじみとなったシーンごとのさまざまな衣裳チェンジも加わり、「Fine」にふさわしい華やかでにぎやかで、最後まで減速しないジェットコースターのような作品になったのではないだろうか。

原作漫画やアニメ、実写ドラマを通して『桜蘭高校ホスト部』のような高校生活を夢見たファンは少なくないだろう。12月2日(土)から始まる歌劇『桜蘭高校ホスト部』Fineで、その夢の世界に足を踏み入れてみてはどうだろうか。底抜けに明るくてハッピーで、じんわり心温まるストーリーが、冬の寒さを吹き飛ばしてくれるはずだ。

取材・文・撮影:双海しお

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公演情報

タイトル

歌劇『桜蘭高校ホスト部』Fine

公演期間・劇場

2023年12月2日(土)~10日(日)
東京・天王洲 銀河劇場

原作

葉鳥ビスコ(白泉社・花とゆめコミックス)

演出

米山和仁

脚本

赤澤ムック

音楽

Yu(vague)

出演

須王環 役:小松準弥、鳳鏡夜 役:里中将道、常陸院光 役:二葉勇 
常陸院馨 役:二葉要、埴之塚光邦 役:設楽銀河、銛之塚崇 役:田鶴翔吾
藤岡ハルヒ:山内優花
猫澤梅人:大海将一郎、宝積寺れんげ:斉藤瑞季
須王譲 役:中村誠治郎

飯田寅義、内村理沙、北野真桜
木村美月、平沢奈美、若林佑太

声の出演
須王静江 役:小玉久仁子

主催

歌劇『桜蘭高校ホスト部』製作委員会

公式HP

https://www.marv.jp/special/m-ouran/

公式Twitter

@ouran_m

(C)葉鳥ビスコ・白泉社/歌劇『桜蘭高校ホスト部』製作委員会

WRITER

双海 しお
 
							双海 しお
						

アイスと舞台とアニメが好きなライター。2.5次元はいいぞ!ミュージカルはいいぞ!舞台はいいぞ!若手俳優はいいぞ!を届けていきたいと思っています。役者や作品が表現した世界を、文字で伝えていきたいと試行錯誤の日々。

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