『Dancing☆Starプリキュア』The Stageの公演に先立ち、鷲尾天(スーパーバイザー)とほさかよう(脚本・演出)の対談インタビューが公開された。
――男性キャストによる「プリキュア」初の舞台公演。企画をお聞きした時のお気持ちをお聞かせください。
鷲尾:実は私が言い出しっぺなんです。プリキュアシリーズの20周年に色々やりたいねと話している中で、プリキュアを見てきた人たちが集まれるような場所を作りたいという思いから始まりました。
昔を思い出して「プリキュアって楽しかったな」と思える場所がリアルな舞台だったらおもしろいのではないかと考えたのですが、最初は周りの人に話してもリアクションが薄かったんです。
ですが意見を聞く中で2.5次元舞台を観に行くことがあると耳にして、「じゃあ、若手俳優さんたちで男子プリキュアがメインの舞台をやったとしたら?」と尋ねたら、目の色が変わりました。それで可能性を感じて色々な方にご相談させていただき、実現に至った次第です。企画を聞いて驚いたというより、驚かせる側にいました(笑)。
ほさか:僕は驚いた側です(笑)。子どもの頃からアニメが大好きだったので、プリキュアの初代も見ておりました。そのプリキュアを男性キャストで舞台化すると聞いた時は大変おもしろそうだなと思うと同時に、「誰が言い出したのだろう?」と気になって。
プリキュアを作られている方々はこの企画をどのように感じるのだろう……と思ったら、その方からのご発案なの!? と2度驚きました。
鷲尾:(笑)
ほさか:ですがそれを知って安心したところもあります。プリキュアが「固定観念を壊す」というテーマで始まっているということも伺ったので、今回の舞台でも成し遂げねばならないことの重圧を感じつつ。鷲尾さんを始めとするプリキュアを作り上げてきた方々同様に、愛情を持って作っていかねばと思っております。
――『Dancing☆Starプリキュア』The Stageのテーマは「ダンス&バトル」。ダンスに情熱をかける男子高校生たちがプリキュアとなり、困難に立ち向かっていきます。
鷲尾:舞台プロデューサーの方々からいくつか設定や要素をご提案いただき、相談しながら今回のテーマが決定しました。舞台のことは私には分からないので、全部お任せしますとお伝えしています。
一点だけ、登場する彼らが日常の生活を大事にして一生懸命生きているからこそ、変身して戦うファンタジーのパートにジャンプアップするシーンは意図してほしいとお願いはしましたね。特に初期のシリーズは主人公たちがふつうに生活している中でファンタジーの状況が舞い込んでくる始まり方だったので、そんなイメージが今回の舞台にもあるといいのではないかなと。
ほさか:彼らはダンス部なので、日常の中にダンスがある子たちなんです。上達していく過程やチームとして息を合わせていくところなど、必然的に部活の日々も描くことになるだろうと思います。
ただ難しいのが、戦いをダンスで表現すること。アクションの最中に歌や踊りを挟むわけではなく、ダンスそのものが彼らプリキュアの力になるので、各セクションの方にも知恵を絞っていただいてともに頑張らないといけない…と、プレッシャーを分散させておきます(笑)。
鷲尾:キャストの方々とはまだお会いしていないのですが、ダンスが上手な方ばかりだと聞き及んでいますので楽しみです。どんなことに興味があるのかとか、得意なことであったり好きなものであったり、私がインタビューしたいぐらい。
ほさか:この舞台のオファーを受けたからには、プリキュアへの愛と覚悟は必ずあるでしょう!
――舞台化の情報解禁時は「男子プリキュア」がSNSでトレンド入りするほど大きな注目を集めました。
鷲尾:そこは私も気を抜いていたところがありまして。プリキュアは誰からも注目されていないような状況で立ち上げた作品でしたから、皆が思っているものと違うことをやる時は、それほど注目を集めないだろうと思っていたんです。それでコソッとやっちゃおうみたいなつもりだったんですけど、コソッとできなかったですね(笑)。
でもやるべきことは今までと変わらないです。「プリキュアってこういうことじゃないかな」というものをほさかさんと考えていくので、きっと実際のステージを観ていただければご納得いただけるんじゃないかなと思います。…今、ほさかさんにすごくプレッシャーをかけてしまいました。
ほさか:ヒシヒシと感じます(笑)。でもこうしてお話ができて良かったです。繊細な作業にはなると思いますが、身構えたままでは結局何もできないで終わってしまう気がするので。スクラップ・アンド・ビルドじゃないけれども、あまり恐れずに「これはどうでしょう! 違うか、じゃあコレ!」と、どんどん出していければと思います。「繊細にやっている場合じゃない、まずはやろう!」という意気込みです。
鷲尾:もちろん、お任せしています! 私自身が散々色々なものを壊しておいて、今さら人に「壊すな!」と文句を言うわけないですから(笑)。
――鷲尾さんがスーパーバイザーとして監修を務められ、キャラクター&ストーリーはオリジナルで展開されます。
鷲尾:アニメシリーズのキャラクターたちを舞台で女性に演じてもらうことを想像した時、ステップを上がった感じがしなかったんですね。それでは既存のものと変わり映えしないような感覚があって。
なので「男子プリキュア」をやるのであれば、がっつりこのステージのためのものである、と言い切った方が絶対に面白くなるし、現場の皆さんもやりやすいだろうと考えました。川村敏江さんが新たにキャラクターを描き起こしてくださったのですが、そのデザインとキャストの方々の完成ビジュアルを見て驚きましたね。再現度や華麗さなど、本当に感心しました。
ほさか:僕もとても素敵だなと思いました。変身後はどんな格好になるのか気になっていたのですが、絵も彼らも一目で「プリキュアだ!」と分かる。とても秀逸なデザインだなと感じました。
――ビジュアルからすでに“プリキュアらしさ”がほとばしっているように思います。おふたりが感じるプリキュアの魅力、プリキュアらしさはどんな部分にあると思いますか?
鷲尾:これは自己矛盾を抱えてしまうので大変難しい。番組開始当初は「男らしく」「女の子らしく」を否定したところから始まっているので、“らしく”という言葉は非常に使いづらいんです。ですが、あえてその言葉を当てはめるものがあるとすれば、常に何かに抗い続けていた結果だろうと思います。
“らしくある”ことに対して、常に違う形で答えを出していく。それが20年、20作品連なると、「プリキュアってそういうことだよね」と見てもらえるのかなと思っていて。1つひとつは“らしさ”との戦いだったのではないかと思いますが、常に疑問を持ち、抗い続けることによってシリーズとしてひとつの作品に見えているのではないかなと。今回の舞台も、その流れの一環としては全く自然なものだと私は感じています。
ほさか:僕にはプリキュアに携わっている歴史がないので個人的な感覚になりますが、プリキュアの魅力は「かわいい!」に尽きます。もちろん人によって色々なニュアンスでその魅力を表現されていると思いますが、カッコイイとかキレイとか、ちょっと大人びた表現とはまた違った「かわいい」という言葉が、自分の感性としてはしっくりくる“プリキュアらしさ”かなと。
そして言葉にするのは難しいのですが、「これもありだし、あれもありだよね」という優しい哲学のような揺るぎない信念をシリーズからは感じます。それが鷲尾さんがお話をされた、“らしくある”に何かを狭めていかないことなのかなと思いますね。
台本を執筆するにあたりプリキュアシリーズを見まくっているのですが、どれも面白いんですよ。最初こそ「子ども向けで作られているものでしょ」なんて穿(うが)った見方で見始めるものの、気が付けば夢中になっている。子どもが喜ぶシーンもあれば、大人にも響く瞬間がある。その懐の深さを舞台でも目指したいなと思っています。
――今後の展望を含めて、お客様にメッセージをお願いします。
鷲尾:この企画は私のような素人が舞台をやりたいと言い出し、男性キャストでやってみようと皆さんに問い掛けて、やることになった大変無謀な試みです。しかし皆さんのご尽力のおかげで絶対に素晴らしいものになると思っています。
願わくはこれがきちんと皆さんに届いて、1つのシリーズとして立ち上がるぐらいになればと…あまり今の段階で欲をかいてはいけないのですが(笑)。私としてはそれも願いながら、お客さまにはステージを楽しみにしていただければと思います。
ほさか:今まで皆さんがご覧になっていたプリキュアとはきっと違うプリキュアだけれども、これもちゃんとプリキュアだと思っていただけるステージにします! ご期待ください!
文:片桐ユウ
(C)Dancing☆StarプリキュアThe Stage製作委員会
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