舞台『血界戦線』Beat Goes Onが2020年11月20日(金)に開幕。初日公演前に行われたゲネプロのレポートと舞台写真が到着した。
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オフィシャルゲネプロレポート
舞台はバンドの生演奏で始まる。モノトーンで統一されたセット、中央には盆回りの舞台装置。その一段後方の左右がバンドメンバーの定位置である。ドラム(KEN‘ICHI)、ピアノ(安島萌)、ウッドベース(玉木勝)、サックス(丹澤誠二)がメロディーを奏で、そこに今作から新たに加わったヴァイオリン(ソンイル)の音色が重なった。
その間に一人現れたのが、本作の主人公であるレオナルド・ウォッチ(百瀬朔)、通称・レオ。
レオが、この世界の説明……異界と人界とが交差して一晩で変わり果てた、かつてニューヨークと言われた街「ヘルサレムズ・ロット」の成り立ちを語り終え、笑顔で「ハロー、ミシェーラ」と離れて暮らす妹・ミシェーラに呼び掛けると、それがオープニング・スタートの合図となる。
レオがカメラを構え、シャッターを切る音に合わせてキャラクターたちが次々に登場。バンド演奏に乗って、異界のものたちが軽やかにステップを踏む。にぎやかでスタイリッシュ、胸が高まるオープニングだ。
第一幕の序盤は、初演の際にはスピーディーに展開した「魔封街結社」のエピソードを丁寧につづっていく。
世界の均衡を守るために活動する「秘密結社ライブラ」と、人間違いをキッカケに接触したレオは、リーダーのクラウス・V・ラインヘルツ(岩永洋昭)やザップ・レンフロ(猪野広樹)、チェイン・皇(長尾寧音)と出会い、自身の過去を打ち明ける。
半年前に異界のものと遭遇したレオは、計り知れない能力を持つ「神々の義眼」を与えられた。だが、それは同じ場に居合わせた妹・ミシェーラが自ら視力を差し出したことと引き換えだった。
その後悔に苛(さいな)まれていたレオだったが、クラウスたちと出会った直後に起こった魔神による無差別襲撃事件を彼らと共に解決したことで、その一員として迎え入れられることになる……。
バトルシーンはキャストたちの身体能力はもちろん、スモークや轟音、照明がさらにその場を盛り上げ迫力満点。リボンや蛍光テープなど、趣向を凝らした演出も視覚を惹き付ける。シンプルに見えてギミック的なサプライズのある舞台装置も楽しい。“何が起こるか分からない”街、「ヘルサレムズ・ロット」の住人として彼らの活動を目の当たりにしている気分だ。
映像の使い方もバラエティ豊か。ステージを駆け回るキャラクターたちとの融合によって、単純な「背景」以上の効果を見せている。魔神を始め、登場する異界のものたちの造形も素晴らしい。
『血界戦線』の世界を舞台に立ち上げるのだ! というこだわりが各所から感じ取れると同時に、前作以上のものを届けようという気概も伝わってくる。
初演からパワーアップしたのは、キャスト陣も同様。
「魔封街結社」では、クラウスの力強さに説得力を与える岩永の風格や、ザップの騒がしさに愛嬌を滲ませる猪野の巧みさが際立っていた。長尾演じるチェインのキュートさと小生意気感もアップしている。
続く「王様のレストランの王様」のエピソードでは、最高級のレストランを訪れた「ライブラ」メンバーたちの新たな一面が見どころとなるが、特に久保田秀敏が演じるスティーブン・A ・スターフェイズの様子は必見。安藤彩華が演じるK・ Kと共に、スマートなビジュアルとのギャップがすごい。
テーブルに座って食事するという本来は静かなシーンが、巧みな演出とふんだんな遊び心によってとびきり楽しいシーンに仕上がっている。
今作で初登場となった堕落王フェムトは、人智を超えた能力を持つ稀代の怪人。演じる山本一慶は、退屈しのぎに何をしでかすか分からないフェムトの不気味さと、親近感にも似た不思議な憎みきれなさを見事に表現。ただの理解不能なキャラクターではなく、芝居をもって見応えのある場面を作り上げていた。
ギルベルト・F ・アルトシュタイン役の萩野崇が、物静かな佇まいと底知れぬ怖ろしさでドラマを見せる「とある執事の電撃作戦(ブリッツクリーグ)」、ツェッド・オブライエン役の伊藤澄也が細やかな仕草で情緒を伝える「鰓呼吸ブルース」など、どのエピソードにも『血界戦線』特有の格好良さと楽しさが詰め込まれている。
これらのエピソードをまとめている、レオ役・百瀬朔のバランス感覚の良さも特筆すべき点。一見すると凡人のレオだが、実は「神々の義眼」と合わせて強い信念も備えている。その内に秘めた熱さとフラットなスタンスを両立させ、個性豊かなキャラクターや物語の間を取り持つ役割をしっかりとこなす、彼の能力の高さにあらためて驚かされた。
原作ファンにも人気のエピソード「Don‘t forget to don’t forget me」や「ザップ・レンフロ 因果応報中!!」、「ライツ、カメラ、アクション!」も描かれ、盛りだくさんの第二弾。
劇場及び配信で、ぜひ多くの方に「ヘルサレムズ・ロット」の“超常日常”を満喫してもらいたい。
同舞台は、内藤泰弘の漫画「血界戦線」が原作。西田大輔が演出・脚本を手掛け、2020年11月20日(金)~29日(日)まで東京・天王洲 銀河劇場、12月3日(木)~6(日)までメルパルクホール大阪で上演。
なお、DMM.comでは、11月20日(金)18:30公演、11月29日(日)17:00公演、12月6日(日)17:00公演がライブ配信(ディレイ配信付き)、11月20日(金)18:30公演、11月29日(日)12:00・17:00公演、12月6日(日)12:00・17:00公演がアーカイブ配信される。
なお、キャストコメントは追って紹介する。
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