原作の熱いストーリーを演劇ならではの熱量と演出で表現し、「ヒロステ」の愛称で愛されている「僕のヒーローアカデミア」 The “Ultra” Stageシリーズ。
最新作となる「僕のヒーローアカデミア」 The “Ultra” Stage 最高のヒーローのメインビジュアルは、「憧れの、その向こうへ。」というキャッチコピーとともに対峙する緑谷出久(みどりやいずく)と爆豪勝己(ばくごうかつき)の姿が印象的だ。
2.5ジゲン!!では、初日公演を控えた田村 心(緑谷出久役)と小林亮太(爆豪勝己役)にインタビューを実施。2人が「過去1しんどい」と語るシーンへの思いや今作の見どころ、稽古場での様子などを聞いた。
――お2人が自分たちで演じたかったというエピソードがついに描かれる今作。実際に稽古が進んだいま、作品への手応えはいかがですか。
田村:稽古に入る前から予想はしていたけど、めちゃめちゃ大変。「ヒロステ」だけじゃなくて、これまでやってきた作品を全部含めても、過去1でしんどいかもしれない…。
小林:そうだね。俳優としては、僕たち2人にあれだけ舞台上を託してもらえるっていうのは、すごくありがたいなと思うんですけど。なんていうか、このエピソードは本当に自分たちにとって“大きい”。
田村:大きいね。だからこそ、手応えっていうのは今の段階だと難しいかも。稽古場でも、2人ともへばってヘロヘロになりながら戦ってるのが、いいって言ってくれる人もいれば違うんじゃないかっていう意見のキャストもいて。僕らも周りも、今はまだどれが正解かわからない。
とはいえ、自分たちも実際に人間だから、体力にも限界があるしへばることもある。それをどこまで役として物語に昇華できるか、はちょっと未知数な感じです。「手応えがあります!」とはまだ言えないね。
小林:本当に模索中ですね。今回は全体を通して、演出の元吉さんが“作って壊す”っていうのをテーマにしていて。前回は、「1回作って、そのまま劇場に持っていって、公演数を重ねていく中で育っていく」っていう感じだったんです。
だけど今回は、稽古期間が前作の1.5倍ぐらいあることもあって、僕ら2人のシーンも含めて1回やってみて、そこから漫画にはこのセリフがあるけど、実際に対面してやってみたらこう変えたほうがいいね、とか元吉さんと相談しながら作っているところです。
田村:漫画では100点の構成でも、それを舞台でそのままやろうとするとうまくいかない部分も出てくるしね。
小林:漫画もおもろいし、アニメもおもしろい。でも、やっぱり僕らは「演劇がやるとこうなるんだよ」っていうのを作っていかなきゃいけない。それはたぶん、初演だったら怖くて踏み込めない領域かもしれないのですが、今の僕らならできる。
やっぱり「4年やってきた」っていう自信は大きくて、思い切って舵を切れているのかなという気はしますね。
――前作で描かれたオールマイトの引退を受けて、本作でのデクとかっちゃんの関係性も注目ポイントになるかと思います。今作での2人の関係性をどう捉えて向き合っていますか。
田村:関係性は今作の2人のシーンを経て変わる部分もあるけど、デク(緑谷)としては「最近あんまりかっちゃん(爆豪)と喋ってないな、あの事件からかっちゃん静かだな」ぐらいのテンションかな。
かっちゃんの中では大きく渦巻いているものがあると思うけど。
小林:演じてみて感じたことなんですが、2人が夜に対峙するあのシーンを初めてやったとき、すごく怖くて。それはたぶん、俳優としての怖さもあったと思うんですよ。
だけど、彼(爆豪)としてもデクと話すことで、今まで見ないように遠ざけて避けてきた真実に向き合わなきゃいけないっていうのが分かっていたと思うので。デクに対するその感情を言葉にするのは難しいんですけど、その日は2人きりになってデクから話を聞くのがすごく怖かったんです。
でもきっとそう感じられたのも、4年分の積み重ねがあったからだと思うので、あとはもう田村 心を信じてやっている感じですね。だから2人の関係性として深く考えずとも、4年も一緒にやってきたパーソナルな部分も入ったうえで、舞台上で“デクとかっちゃん”の関係性に見えれば1番いいな。
そうなれば、僕たちがやる意味もあると思うので。
――2人のシリアスなシーンも見どころだと思いますが、本作では全寮制になったり、仮免試験があったりと、新たな仲間も増えた1年A組でのシーンもとても楽しみです。毎回目が足りなくなるのですが、「ここはお見逃しなく!」というお気に入りのシーンやキャラがいたら教えてください。
田村:日常シーンで言うと、見せ場があるじゃない。爆豪勝己じゃなくて、小林亮太の1番の見せ場が。
小林:小林亮太の(笑)。でもたしかに、僕はこの公演を重ねると、どんどんテンションが落ち込んで戻らなくなっちゃうんじゃないかと思って。なので、「ちょっとこれやりたいです」っていうのを元吉さんに提案して、兼役…と言うか、楽しさを見出だせる部分も作ってもらっています。
田村:あれって兼役!?
小林:いや、僕もよくわかんない(笑)。詳しくはまだ言えないんですけど、この意味は観てもらったらわかると思うので楽しみにしていてもらいたいです。
あと、日常シーンは舞台上の人口密度が高い! 新メンバーも楽しそうにいきいきしてるよね。
田村:うん。やっぱり「A組がそろう」っていうのは、注目ポイントかな。全員いるからこそ難しい部分もあるけど、そろったのはすごく嬉しいし、今回は敵(ヴィラン)組がいない分A組で士気を高めてやっていかなきゃなと思いますね。
小林:1クラス分の人数がいたら、モチベーションの差って絶対あると思うんですよ。人の数だけそれぞれのキャパシティがあると思うし。でも、それをカバーできるのもこのA組のメンバーだと思うし、クラス内の“人対人”な部分もぜひ観てほしいですね。
それに、A組みんなの存在があるから、最後に待っている戦いを頑張れる部分もあって。そういうのが見ている皆さまにも伝わったらいいなって思います。
――今作では士傑高校が初登場となります。稽古場での士傑キャストの雰囲気はいかがですか。
田村:3人だけの士傑LINEグループがあるっていうのは聞いてます(笑)。
小林:夜嵐(よあらし)イナサ役の(白柏)寿大くんは、僕たちのシーンを観て、感想をくれることが多いですね。
田村:俺は現見(うつしみ)ケミィ(役の竹井未来望)と関わりが多いから一緒に練習することもあるんですけど、すごく器用な方ですね。しっかり自分で考えた芝居のプランがあるし、兼役も上手にこなすし、素敵な役者さんだと思います。
小林:(肉倉精児/ししくらせいじ 役の今井)俊斗くんに対しては「もっと出してこい」って煽っています(笑)。実年齢で言うと僕が1歳上だけど、役では逆なので。
先輩とか年上の人に対して、役として上から圧を与えるってすごく難しいんですよ。彼自身、多分すごく葛藤しているだろうし、そういうときは寿大くんが相談に乗っているみたいで。士傑もすごくいい雰囲気ですね、衣裳装もかっこいいし!
――A組が今作から寮制になることにちなみ、A組キャストで寮生活をするなら、隣部屋は誰がいいですか?
田村:隣になりたくない人ならいる(笑)。松原 凛(常闇踏陰/とこやみふみかげ 役)と、池田 慎(瀬呂範太/せろはんた 役)と…。
小林:奥井那我人(峰田 実/みねたみのる 役)の3人! この3人の楽屋は公演期間中に“地獄部屋”って言われるくらい、ずっと騒がしいんですよ。
田村:その3人以外なら別に誰でもいいです(笑)。
小林:うん、誰でもいいな。そういう子たちがいてくれるから、自分たちも楽しめているんだけど、自分がそっち側のタイプじゃないから、ちょっと離れたところから微笑ましく眺めていたい感じですね(笑)。
田村:騒がしくない人ってところだと、(轟 焦凍/とどろきしょうと 役の)北村(諒)さんがいいな。落ち着いてる。
小林:俺は(飯田天哉/いいだてんや 役の)の武子(直輝)くんがいい。作ったご飯をおすそ分けしてもらいたい(笑)。
――「ヒロステ」は毎回、元吉さんによる愛と考察がつまった演出も魅力的です。今回、とくにグッとくるシーンを教えてください。
田村:毎回やっている「I want to be a HERO」という楽曲のスペシャル演出はぜひ注目してほしいですね。
小林:わかる。多分、元吉さんの中ではこのテーマ曲は、社会の状態を提示するナンバーという位置づけだと思うんですけど、今回の演出は「本当の意味でどう見せていくべきなのか」「どうすれば原作ファンの人にも、今回初めて“ヒロステ”を観る人にも楽しんでもらえるのか」っていう部分で、悩みがいのある演出になっていますね。
田村:今回本当にいろんなものが「I want to be a HERO」に詰まっている気がする。
小林:あとは僕ら2人の回想シーンもあるんですが、その演出がきっと初演から観てくださっている方にとっては「あ~」ってなってもらえるかもしれない。すごくぼかしましたけど、観てもらえたらわかると思います!
――ほかに、配信を駆使して何度も見返してほしいシーンはどこでしょうか。
小林:今回は今まで以上にナンバーが多いので、それぞれの動きに注目して引きで見ても面白いし、逆に細かくニュアンスの違いや各キャラの視線の見つめる先とかを感じ取ってもらえたら嬉しいですね。
田村:みんなすごくいい顔してるんで、本当にそれは配信のアップで観てほしいし、「ヒロステ」は引きで観た時に気づける発見もたくさんあると思うので、それも楽しんでほしいです。
小林:僕らも配信で観て「そんな表情してたんだ!」って思うこともあるし。あと今って「こんなにきれいに映すの?」っていうくらい鮮明に映してくれるので、汗っかきだからメイク維持を頑張らなきゃなって思っています(笑)。
――そこもぜひ配信で注目したいと思います! それでは最後に、公演を楽しみにしているファンへのメッセージをお願いします。
小林:今僕ができる全部を注いでやるので、本当に楽しみにしてもらえたら嬉しいです!
田村:まだ稽古中ですが、みんな並々ならぬ覚悟を持って臨んでいます。「ヒロステ」は目に見えない力がたくさんある作品だと思っているので、それを劇場に体感しにきてほしいし、劇場に来られない方は配信で受け取ってもらって、とにかくたくさんの人に観てもらえたらと思います。
***
作品が掲げる「プルスウルトラ」の言葉通り、新作を上演する度に最高のその先を行く景色を見せてくれる「ヒロステ」。初演から緑谷出久、爆豪勝己として舞台に立ち続ける2人の言葉の端々から伝わる信頼関係と作品愛に、今作もまた「プルスウルトラ」な作品が浴びられることを確信した。
初日公演含め、今作もU-NEXTでのライブ配信実施が決定しているので、マルチアングル配信を駆使しながら、本作が放つメッセージを受け取ってみてはどうだろうか。
取材・文・撮影:双海しお
ライブ配信概要
■対象公演・チケットリンク■販売期間
・2023年5月21日(日)13:00公演
・2023年5月21日(日)18:00千秋楽公演
2023年4月17日(月)10:00~5月28日(日)20:00まで■販売価格
各3,700円(税込)■ライブ配信時間
各公演開始30分前~ライブ配信終了まで(予定)■ディレイ配信期間
・2023年5月21日(日)13:00公演
・2023年5月21日(日)18:00千秋楽公演
準備が整い次第~2023年5月28日(日)23:59※公演開始30分前からライブ配信視聴ページに入場可能となります。
※ディレイ配信とは、公演の映像を後日期間限定で視聴出来るサービスです。
※詳しい視聴デバイスに関してはサービスサイトをご覧ください。
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