インタビュー

松田凌「生きるって理屈じゃないよな、と」 信頼と憧れで描くムビ×ステ第5弾『仁義なき幕末』

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映画と舞台との挑戦的な融合を掲げる東映ムビ×ステ第5弾となる『仁義なき幕末』。

令和に任侠の世界で生きる男たちが幕末へタイムスリップ、裏社会に生きた男が日本の夜明けを実現させるべく奔走する姿を描くタイムスリップ歴史スペクタクルストーリーが展開される。

3月25日(土)より映画『仁義なき幕末 -龍馬死闘篇-』が公開中。4月27日(木)からは舞台『仁義なき幕末 -令和激闘篇-』が上演される。

2.5ジゲン!!では、映画で主演を務める村田恭次役の松田凌、舞台で主演を務める大友一平役の和田琢磨をはじめ、映画のみの出演となる高梨明役の矢崎広、両作に出演する沖田総司役の本田礼生にインタビューを実施。

日本中が湧いたWBC決勝戦の話題にも脱線しつつ、撮影時のエピソードや、作品や役への思いなどを和気あいあいと語ってもらった。

――撮影時の印象的なエピソードで、まだどこにも出していないお話があれば、ぜひお伺いしたいです。

本田礼生(沖田総司役):僕からいいですか? 撮影中に1度だけこの4人で話す機会があったんですが、その時、実はめちゃめちゃ緊張していました。

松田凌(村田恭次役):俺の撮影初日のときだっけ?

本田:そうです、そうです。先輩方同士で話しているところを初めて見たから「あ、こういう関係なんだ。皆さん」と思って緊張しながら混ざっていました。

――その緊張は皆さんには伝わっていましたか?

和田琢磨(大友一平役):僕は皆さん実は共演自体は初めてで。もちろんお名前は知っていたんですが、作品で一緒になるのは初めてだったので、僕自身も探り探りでしたね。

本田:そうだったんですね。

松田:全然そんなふうに見えなかった(笑)。

和田:同世代だし、皆さん活躍されているのを知っていたので、そういう意味では、ぱっと見ただけで楽しそうな座組だなとは感じましたね。

――それに対して松田さんと矢崎さんは以前から共演経験もありますが、撮影現場ではどんな雰囲気だったのでしょうか。

松田:ありがたいことに昔からご一緒させていただいて、公私ともに仲良くしていただいてる(矢崎)広くんからは、今回想像もし得ない役柄だと思います。役柄的にそういう広くんを初めて見たな、と。

矢崎広(高梨明役):なるほど。

松田:後輩のような立ち位置で、どちらかというと自分が共感できる振る舞いが多い役柄を演じている広くんが見られたので、すごくギャップを感じました。新鮮だなと。そういう広くんはなかなか見れないでしょうし。

――矢崎さんはいかがでしたか。

矢崎:ほどよく緊張感もありながらでしたけど、(松田)凌も僕も「ムビステ」を以前経験していて、知っているキャストもいて。今回が初めましての方もいましたけど、自分的に知っている心強いキャストがたくさんいたので、ムビステがさらにパワーアップするだろうし、自分自身もいろんなチャレンジができる現場なんじゃないかなと思って、すごくワクワクしながら現場にいましたね。

あと、すごく話しやすいメンツばかりでしたね。「あのシーンこうしたいね」みたいな話が、1歩先で話せる人たちばかりだったので話が早かったし、監督もそれを汲みながら撮影してくださったので、「すごくいい現場だったな」と振り返ると思います。

――橋本一監督からかけてもらった言葉や演出などで印象的なものはありましたか?

松田:それ知りたいです! 俺は出ているシーンが多かったんですけど…。

和田:一緒のシーンは多くなかったよね。

松田:そうなんですよね。3人は新選組側で、僕はそことは相反する役柄っていうのもあって、(和田)琢磨くんとはありましたけど、とくにお2人(矢崎と本田)とはほとんどご一緒するシーンがなかったので、どういう感じで監督とセッションしていたか知りたいです。

矢崎:僕が印象的だったのは、道場のシーンですね。台本を読んで「ここはきっと上裸になるだろうな」みたいなところがあったんですね。で、どうするのかなと思っていたら、監督と制作さんがぶわーっと走ってきて、「矢崎さん、ここちょっと脱いでもらえますか?」って言われたのがすごい印象的で(笑)。道場の稽古でみんな熱くて脱ぐ、みたいなことをその場で演出してくださったんだと思うんですが、僕の上裸の確認をすごく熱心にしてくださって。

これは舞台挨拶とかで話すと、変な切り取られ方するかもしれないから言うのをどうしようかなと思っていたんですけど、思い切って言っちゃうと、もう本当に監督の熱意にここは脱がされました(笑)。

松田:それ監督もおっしゃっていましたよ。

矢崎:マジで?

松田:はい。筋骨隆々な男たちを見せたかったんですって。新選組の強さとして。人数も少ないし、どうやって表現しようってなったときに、みんな体がしっかりしているから「これ脱いでもらった方がいいな」ってなったそうです。

矢崎:そうなんだ。あのときはもう急いでその場でパンプアップしましたね(笑)。

本田:新選組っていろんな解釈の仕方が作品によってあると思うんですが、僕はまず台本を読んで文字から読み取ったときに、結構無邪気な解釈の沖田総司だと感じたんですね。なので、「それをそのまま受け取るのか」「新選組の男らしい集団っていうのを抽出した方がいいのか」っていうのを最初に監督と話して。

そうしたら、感じた通り子どもっぽくやってほしいっていうことだったので、新選組隊士たちが熱く剣を振って稽古をしている感じの反対をいけばいいのかなって意識していました。今回の作品で表現されている新選組の中では“異分子っぽさ”があるような演じ方をしてほしいっていうことだと僕なりに汲み取って演じていました。

松田:監督、(本田)礼生のことも言ってたよ。

矢崎:ちょこちょこ出てくるな、凌からのサブエピソード(笑)。

松田:あ~でも、これはちょっとここでは内緒にしておこうかな。オーディオコメンタリー上映というのがございまして。そちらを見ていただくと、そのあたりのエピソードをもっと深く知れると思いますので、ぜひ(笑)!

本田:あと撮影でいうと、撮影現場でやった(松田)凌くんとの殺陣の稽古が印象的でしたね。

松田:あったね! 撮影現場に稽古場があってね。ていうか1個、どこにも出してないエピソードがありました。私、今作、主演を務めさせていただいておりますが、え~…初日に大遅刻をいたしました。

一同:(爆笑)

矢崎:そうだ! めちゃめちゃ覚えてる(笑)。

松田:「あっはっはっはっは」と書いておいてください、ぜひ。撮影ではなかったんですけど、殺陣稽古がありまして。

矢崎:そうだ、そうじゃん!

松田:(神妙な面持ちで)はい、あのー、起きたときにはもう始まっていまして…。

本田:ちょうど僕との合わせの日でしたよね。

松田:そう。もう、太秦の撮影所のコンクリートの地面に頭をすり付けて、謝ったのを覚えております。

――極秘エピソードをありがとうございます! 和田さんは監督との作品づくり、いかがでしたか。

和田:撮影中に監督から細かい指示みたいなものは、今回あんまりなくて。

矢崎:たしかに。本当に生かしていただいたっていう感じですね。

和田:おそらく監督の気遣いでもあるんだろうなって思ったのは、最初に幕末へタイムスリップするシーンから撮ってくださって。僕は太秦の撮影所が初めてでしたし、座組自体も参加するのが初めてだったので、それがちょうどいい具合に重なりました。町をキョロキョロしている感じとか、そこから体が馴染んでいく感覚とか。

そういうところを、もしかしたら監督が合わせてくださったんじゃないかな、というのを感じました。

――これからご覧になる皆さんにぜひ見てほしいシーンやお気に入りシーンをそれぞれ教えてください。

松田:“血”です! 各々ご覧になって感じる部分はあると思うんですが、血ってすごくグロテスクなものであるし、心にダイレクトに来てしまう表現方法だったりもすると思うんですけど、今作においては、そこに「生き様」みたいなものが見えるし、監督のこだわりもすごく伝わってくるんです。なので、ただ血が飛び散っているとか、流れているっていうものじゃなくて、あたかも美しいものに感じてしまう瞬間があったりもしたので、そういった部分は着目していただきたいポイントの1つかなと思いましたね。

現代において生きている中で、血が飛び交うことってないですし。任侠の世界にいた自分たちが時代を超えて、幕末で奮闘している。その生き様というのが血にすごく如実に表れていると思います。

矢崎:1番のおもしろみは、やっぱり任侠ものらしい戦いと、それが時代劇的な世界観にタイムスリップしてしまうという、ある種、夢のコラボだと思うんですよね。そこを、僕ら若いキャストも含めて挑戦させてもらったっていうこともおもしろい企画だなと思いますし、すごくそのコラボがいい感じにおもしろさに昇華されているなと思います。

そもそもそういう作品だといってしまえばそれはそうなんですが、やっぱりそこが1番のおもしろみじゃないかなと思っています。仁義に生きる男たちが時代劇で生きてどうなってしまうのかっていうところを結構強く描いてるのかな。

そこに、それぞれの人物ごとにルートが変わってくる。特に、僕の演じた高梨という男は、任侠の世界だとあんなに強がってたのに、幕末に入ってしまうと気迫に気圧されてしまう、という役だったので、僕を通して、その対比とかを見ていただくのもおもしろいのかなと思います。

本田:それでいうとやっぱり殺陣ですかね。時代が違う人たちがいる中で、殺陣にどう説得力と思いを込めるかっていうのを考える時間が1番長かったです。現代からやってきた人たちが刀を持っているのと、幕末の刀に生きた人たちが持っている質感の差というのが、僕は演じていておもしろいと思っていました。

和田:多少個人的なことになってしまうんですが、太秦での撮影も初めてでしたし、いつかご一緒してみたいなって方々と今回ご一緒できたし、東映のプロデューサーの方が、時代劇を撮りたいと言ってこの作品が作られたそうで。そういった自分のやってみたい場所だったりとか、作風だったりとか、共演者の方とかがこの1つの作品に集まっていて、ものすごくぜいたくに感じてます。普段から共演したり、お互いにリスペクトし合ったりしている仲間同士で作った作品なので、そういった役者同士の掛け合いも楽しんでいただきたいなと思います。

――最後に、ご自身の役に込めた思いやこだわりとともに、ファンへのメッセージをお願いします。

本田:僕は今回、新選組を演じるのが初めてで。やっぱり新選組って1つの憧れで、ずっと憧れがあって、でもなかなかご縁がないなって思っていたんです。今回こうして演じることができて、夢が1つ叶いました。その中で「沖田総司」という役に対する責任感と、説得力をどう出すか。そこに1番重きをおいて演じさせていただきました。刀の振り方1つなど細かいところに思いを込めているので、そういうところを見ていただけたらと思います。

矢崎:さっきと少し重複しちゃうんですが、高梨っていう役自体が現代と時代劇の対比というか、僕が1番時代に馴染めてないっていう役なので、そこをまず1番に重点を置いて演じました。馴染めないまま去っていく役にどうしてもしたくて。多分監督もそこを汲んでくれて、僕の芝居も活かしてもらいながらやったので、そこがうまく伝わればいいなと思います。

和田:僕は高梨に慕われる役だったんですが、逆に時代にだんだん馴染んでいくんですね。最初に幕末にタイムスリップしたときの表情と、それから最後、結末に近づくときの表情がある種の覚悟を決めたような顔付きになっていたり、心持ちの変化だったり…そういうのをイメージしながらやったので、注目していただければなと思います。

松田:すごく臭いこと言ってしまうと、僕、今日WBCですごく勇気をもらいました(取材日はWBC決勝戦当日)。俺すごくいいなって思ったんですよ。

矢崎:なんの話してるの!?

和田:一旦、一旦聞きましょう(笑)。

松田:いや、やっぱり夢を持つっていいなと思ったんですよ。すごくそれが愚かだとしても。男女問わずだと思うんですけど、やっぱり男のロマンっていうものがあって、それこそ仁義なき戦いだったり任侠の世界であったり。時代劇とか、その歴史を生きた人たちに思いを馳せるんですよ。

さっき広くんの言葉にありましたが、そんな夢のコラボレーションに、琢磨くんが言ってくれたように、やりたかった、そして、信頼してきた仲間たちと一緒になって作品を作れて。で、礼生が言ってくれたように、憧れた存在を僕たちはお芝居としてできるんです。俺、それってすごく夢があると思うんですよ。

どういう形で受け取るかは皆さまの判断にお任せするのですが、自分の役は夢っていうすごく大きな力に負けて、人生が全部狂っちゃったんです。そういう男って愚かだし、なんかかっこ悪くも見えるかもしれないけれど、俺はそれでいいんじゃないかと思っていて。そう生きる人生があっていいし、「生きるって理屈じゃないよな」みたいなことを僕はこの役で感じていただけたら、うれしいなと思います。

もちろん、そこにはいろんな人が関わっていて、時代が関わっていて、っていう作品のおもしろさがあるんで、そういうのも含めて見ていただきたいですが、個人の思いとしては、大口を叩くと、夢を持ってどうしようもないぐらい無我夢中になって生きてもいいんじゃないかっていうのを感じてもらえたら、すっごく幸せです。

***

情熱的に前のめりに語る松田と、柔和な雰囲気のなかに熱さを感じさせる和田とのコントラストが印象的で、そこに先輩としてまとめる矢崎、3人への敬意をにじませる本田と、絶妙なバランス感の座談会となった。ここで話してくれた撮影秘話なども思い出しながら改めて鑑賞してみると、さらに作品の持つ“ロマン”を感じられるのではないだろうか。

取材・文:双海しお/撮影:ケイヒカル

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公演情報

映画タイトル

映画『仁義なき幕末-龍馬死闘篇-』

公演期間・劇場

2023年3月25日(土)公開

脚本

毛利亘宏(少年社中)

監督

橋本一

出演

松田凌、和田琢磨
矢崎広、鈴木勝吾、赤澤燈、荒川ちか
石黒英雄、本田礼生、小野健斗、岡宏明、江戸川じゅん兵
本宮泰風/剛力彩芽

タイトル

舞台『仁義なき幕末 -令和激闘篇-』

公演期間・劇場

2023年4月27日(木)~5月7日(日)
東京・サンシャイン劇場

2023年5月18日(木)~5月21日(日)
大阪・梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ

作・演出

毛利亘宏(少年社中)

出演

和田琢磨、松田凌
水谷果穂、石黒英雄、本田礼生、小野健斗、木津つばさ、吉田メタル、荒川ちか
岡宏明、柏木佑介、赤澤燈、鈴木勝吾

公式HP

https://toei-movie-st.com/jinbaku

公式Twitter

@toei_movie_st

(C)2023 toei-movie-st

WRITER

双海 しお
 
							双海 しお
						

アイスと舞台とアニメが好きなライター。2.5次元はいいぞ!ミュージカルはいいぞ!舞台はいいぞ!若手俳優はいいぞ!を届けていきたいと思っています。役者や作品が表現した世界を、文字で伝えていきたいと試行錯誤の日々。

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