※編集部注:このインタビューは、長谷川芳明さん、紀ノ貴紀さん降板決定前に取材したものです。
2022年7月30日(土)、31日(日)に東京・MARRYGRANT AKASAKAにて、『オドルンパッ!企画』第4回公演『グルメ戦隊 クラックスW』が上演される。
本作は「お客様と、心躍るような、あっと驚くような、そんな作品を一緒になって楽しむひと時を創りたい」をコンセプトに、声優で俳優の五十嵐雅が主催し、立ち上げた企画だ。
2.5ジゲン!!では、第4弾となる本公演で、初の演出を手掛ける横井翔二郎にインタビューを実施。演出家デビューにあたっての意気込みや、主催・五十嵐雅との絆について聞いた。
初演出にチャレンジ 五十嵐雅の言葉が背中を押す
――『オドルンパッ!企画』第4弾『グルメ戦隊 クラックスW』で、演出に初めてチャレンジされますね。
僕は普段、プレーヤーとして舞台に立たせていただいていますが、毎回思っている以上にたくさんの人たちに助けられていると感じています。最近、以前は当たり前のようにやっていた舞台の仕込みを手伝うとか、チケットのもぎりをするといった機会がなくなっていました。ただ舞台に立っているだけだと「いろいろな人たちに支えられている」という感覚を忘れてしまいそうだな…と思ったんです。
自分の中で特に興味があったのは、演出助手というポジションでした。演出助手は、とにかく大変で、超絶重要なんですよ。時には演出家より評価されなければいけないと僕は思っているんです。なぜなら演出家がオーダーしたことを全部把握して、演出家の一歩先を行き、稽古を進めていったり、稽古のスケジュールを頭の中で考えたりして、演出家と音響や照明を担当する人たちとの懸け橋になっています。
僕は一度、演出助手という仕事を経験してみたいと思っていました。そうすれば、自分がプレーヤーとして舞台に立った時、そうした仕事に携わる人たちの大変さがより理解できると思ったんです。
――ところが今回は演出助手ではなく、いきなり演出を担当することになりましたね。
前回公演の『全身全霊!オドルンジャー!』が終わったあとに、今話したようなことを(五十嵐)雅さんに言ったんです。そしたら何を思ったか「分かった。じゃあ次は演出やって」と。
僕はびっくりして「雅さん、話聞いてました? 僕は演出助手がやりたいって言ったんですけど…」と答えたのですが「演出やって」と、全然話を聞いてくれなかったんですよ(笑)。
たぶん俳優を続けていたら、いつかは脚本を書いたり、演出をしたりすることになるんだろうと思っていました。そのタイミングが今来たのかなと。しかもそれが雅さんの企画なので、安心してできると確信したので「OKです!」と引き受けました。
この間、改めて雅さんになぜ僕に演出を依頼したのか理由を聞いたんです。「今の翔二郎に必要な経験値や見たい景色は、たぶん演出家としての目線だと思う」とおっしゃったんです。それ、先に言ってよ! って思いました(笑)。
雅さんは「たくさん失敗しよう」と言ってくださるスタンスです。愛を持って導いてくれる人なので、本当にうれしいですし楽しみです。
――五十嵐さんとは、長いお付き合いなんですか。
5年近いお付き合いになります。舞台『KING OF PRISM』シリーズで共演させていただいて、その時、同じチームでした。僕、あんなに愛が深い人、見たことがないんですよ。こういう時に器という言葉を使うんじゃないかなと思うんですが、僕からみると、雅さんは器のでかさが尋常じゃないんです。本当に心から尊敬しているし、ありがたいと思っています。
『オドルンパッ!企画』で、好きなことに関わっていた生活を思い出してほしい
――改めて、『オドルンパッ!企画』というのは、どういう公演でしょうか。
俳優で声優の五十嵐雅さんが主宰のイベントで、今まで3回公演しています。僕は3回目に演者として出演しました。『オドルンパッ!企画』は、そのタイトルにもあるように観に来てくれた人の心を躍らせるということがコンセプトとなっています。
前回公演は、会場がライブハウスでした。昨今、劇場もそうですが、ライブハウスの方々もいろいろ大変な思いをしている中、人を動かすことでライブハウスの人たちにも何かを還元し、人とつながり続けていくものを作っていきたいという想いを、僕は雅さんから感じています。ただやりたいことをやるというよりは、人とのつながりや広がりを大事にしているのかなと。
――壮大なコンセプトですね。
そうですね。すでに公言していることですが、いずれ武道館でやろうという話はしています。いつになるかは分かりませんけど(笑)。
まだまだ大変なことはあるけれど、ガイドラインを守った上で、そろそろコロナ禍前のように、好きだったことに関わっていた自分を皆さんに思い出していただきたいと思うようになりました。それは僕自身が『オドルンパッ!企画』Vo.3に出演した影響が大きかったと思います。
――ビジュアルを拝見すると、出演者の皆さんは料理人の扮装をしています。第4弾は、どんな公演になりそうですか。
雅さんが書く脚本は、表面だけをみると、ただポップで楽しいものという風にも見えますが、実はきちんとしたテーマがあるように感じています。
今回も劇場となる式場と台本のテーマが=(イコール)です。もしかしたらどっちかが欠けたら全くの別物になるかも。
そして物語の根幹にあるドラマ、前回公演から始まったヒーローもの、そして何よりもお客さんがいろいろなことを忘れて楽しめるといったすべてのことが融合した、ハイブリッド感がある作品になると思います。
ネタバレをせずにお話するのは大変なんですが、少なくともこの会場だからこの作品をやるし、ならではの楽しみ方が出来るようなものになるかなと思います。
自分から出てくる言葉や景色を大切に演出したい
――初演出をするにあたり、参考にしている演出家や作品はありますか。
(力強く)そこなんですよ! 今まで演者として脚本を読んできたので…。正解はないんでしょうけど、演出家としての脚本の読み方が、分からないんですよ。全部「自分が演じるなら…」になっちゃって。それでもいいのかもしれませんが、もっとバーンと、大きな流れを見ることができるようになればと思っています。
今まで衝撃を受けた舞台はありますが、それを参考にしようと思っても、この作品と合うかどうかという問題があります。ただ、少なからず自分が今まで演じてきた役の積み重ねはありますから、そういった面を大事にしたいです。結局、言葉や景色は自分から出てくるものしかないので、そこは正直にやろうと思っています。
実はこの間、出演者の皆さんに会う機会がありました。その時に「心の底から出てくる何かであればそれだけで面白いはずだから、とにかく嘘はつかないでくれ」という話はしました。
――今回の出演者で、どんな作品が出来上がると思いますか。
どういう作品になるかは、この作品に向けてどういう稽古をしていくか、その姿勢次第だと思っていますが、全員が遠慮しなければ、少なくとも観に来てくれた人は幸せな気持ちになる作品になると思います。
(大見)拓土と(長江)崚行、雅さん、(紀ノ)貴紀さんは共演経験がありますが、大見洋太くんとは、今回初めてなんです。ただ何回か会って話したこともあるし、何より拓土との共通言語があるだろうから、絶対大丈夫だろうと。
表現することにルールはないということを、僕は尊敬するいろいろな方から感じています。せりふを上手くしゃべることができるとか、器用に声色を変えられるかではなく、場に流れているグルーヴ感そのものが、表現する上で1番大事なものだと信じているので、そういうところをみんなと共有していけるようにしたいです。
僕、日本人が絶対忘れちゃいけないと思うのは、スーパーマリオブラザーズとドラクエ1だと思っているんです。あれって、とんでもない縛りプレーの中、命をかけて作って世界を変えたじゃないですか。
僕はあんなにすごいものは作れないけれど、ミニマム感の中で出てくるものや「ここはこれで何とかしよう」ということを、みんなで楽しみながらやれた時にすごいものができるんじゃないかと思います。
――Twitterを拝見しても、カンパニーの仲の良さが伝わってくるので、素敵な作品になりそうですね。
そういう雰囲気は、全部雅さんが作ってくれるんですよ。5年前に舞台で共演した時も、雅さんがいてくれたから、僕たちのチームが一致団結できたというのは、間違いないことなんです。雅さんの稽古場での振る舞いや情熱、想いは、その時の僕たちに与えた影響はめちゃくちゃ大きかったですから。
――改めてファンの方々へ意気込みと公演の見どころをお願いいたします。
今回生まれて初めて演出をさせていただくことになりました。ありがたいことに気心知れたメンバーとチームを雅さんが用意してくださったので、楽しいことしか待っていないだろうな…と思っています。
ただ同時に、自分の中で何がしんどいことなのか考えるのは自分次第ということも、雅さんから与えられた宿題だと思っています。それを楽しみつつ、たくさん失敗して、でもそれすらもみんなで楽しみながらやっていけたらいいなと思います。
前回公演もそうでしたが、今は1つの場所に大勢の人間が集まって何かをするということは大変なことです。でもいろいろなことに気を付けて、いつもどおり過ごしていかなくては、人生に潤いを与えられない。与えてもらえるのを待っていたら一生与えられないと僕は思っています。
皆さんができる範囲でいいので、会場にいらっしゃれる方はぜひ来ていただいて、来場できない方は遠くから僕たちのことを応援していただければ嬉しいです。
僕は今回演出家という立場ですので、出演者の皆さん、特に雅さんにメッセージを送ってくだされば力になると思います。何卒ご声援のほどよろしくお願いいたします。
取材・文:咲田真菜/撮影:井上ユリ/ヘアメイク:穂戸田優子
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