ネット上で話題となった漫画「こんなに危ない!? 消費増税」を原作とした社会派青春映画「君たちはまだ長いトンネルの中」が6月17日(金)に公開を迎える。日本の未来を問う高校生たちの青春が詰まった一作だ。
2.5ジゲン!!では、主人公・アサミのクラスメイト・安倍晋太郎を演じる北川尚弥へインタビューを実施。フラットに挑んだという役作りの話から、北川自身の10代のエピソード、さらに役者として目指す未来について話を聞いた。
――脚本を読んだ際の感想を教えてください。
「お~」と思いましたね。政治や税金の話を映画にするんだって、まずは驚きました。だけど読み進めてみたら、高校生たちが少しずつでも世の中を変えていこうって奮闘する青春ストーリーでもあって。「高校生やるんだ」って、懐かしい気持ちにもなりました(笑)。なかなかお金や政治っていうテーマは映画の題材にするのは難しいんじゃないのかなって思ったんですが、完成した映画を観てみて、これから若い世代の人にも楽しんでもらえるし、勉強もできるし。一石二鳥な素敵な作品だなって思いました。
――安倍晋太郎を演じる上で、どんな風に役作りをしましたか。
安倍くんもお金や政治のことを知らない役で、僕自身も特別詳しいわけではないので、アサミ(演:加藤小夏)からの言葉を視聴者目線で聞ける役だなと思いました。だから僕も、純粋に質問して学ぼうと思って、フラットな状態で挑みました。撮影が進んでいく中で、僕自身も北川尚弥として分からないことは聞いていたし、「あ、そうなんだ」って知識が増えていったので、それがいい具合に安倍くんとして作品の中でも表現できていたらいいなと思っています。
――勉強になる現場だったんですね。
そうですね。僕自身も映像作品への出演はそれほど多くないので、そういう意味でもたくさん学ばせてもらえる作品でした。舞台だと360度観てもらえる環境ですけど、映像だと切り取った部分でしか伝えられない。それに進み方も、台本の1ページ目から順番に進んでいく舞台と違って、映像だと飛び飛びでシーンを撮影するので、頭の中でしっかりつなげながら演じないといけないので、勉強の連続でしたね。
――撮影中の印象的なエピソードを教えてください。
撮影が夏で、めちゃくちゃ暑かったんですよ! 汗だくで撮影していたら、加藤さんがカットがかかった瞬間、扇風機の風を当ててくれて。なんていい子なんだろうと思いましたね(笑)。加藤さんとは今回初共演だったんですが、初めて共演したとは思えないくらい自然に接してくれたので、高校時代に戻ったような気分で撮影に挑めました。終始楽しかったな~っていうのが印象に残っています。
あとは(定本)楓馬くんとか(蒼木)陣くんとか(高橋)健介くんも一緒で、休憩時間に一緒にご飯食べたりもしましたね。やっぱり知っている仲だから僕も安心できたし、みんなで和気あいあいと過ごしました。
――高校時代の北川さんと安倍、共通点はありますか。
高校生の頃はどちらかというアサミのようなタイプで、自分で行動できる性格だったんですが、中学生の頃までは周りと一緒じゃないと不安で、自分からは行動できないような内気な性格で。なので、中学生の頃の自分は割と安倍くんと似ているなと感じましたね。そういった意味では彼に共感できたので、役作りっていう部分ではすごくやりやすかったです。
――学生時代は警察官になるのが夢だったそうですが、当時はどんな未来を思い描いていましたか。
そうなんですよね、高校卒業まで警察官になりたいと思っていたので、当時の自分は人前に立つ仕事を将来するなんて想像もしていなかったんですよね。警察官になりたい理由は具体的にあったわけじゃなくて、漠然とそう思っていただけなんですが…。あとは父が電気工事士の仕事をしているので、なんとなく父と同じ仕事をするのかなって思っていましたね。だけど全く違う道に進んでいて、気がついたら役者でした(笑)。だから当時の自分に今のことを伝えたらすごく驚くんじゃないかなって思いますね。
――この先、役者としてどんな未来を目指していますか。
やっぱり長く続けることが難しい業界だと思うので、少しでも長くこの仕事を続けていきたいと思うと共に、いろんな作品に出演して憧れてもらえるような役者になっていけたらいいなと思います。
――今後挑戦してみたい役はありますか。
う~ん、なんだろう。あんまりやったことがない熱血系ですかね。真面目な子だったり、変わり種の役だったりが多いので、熱血系な役は一度やってみたいです。あと年齢的にも26歳になったので、上の年齢の役柄にも挑戦してみたいですね。
――でも高校生役が全く違和感ないというのも大きな武器ですよね!
30代でも高校生になれる世界なので、もちろん年下が似合う役者でもいたいですし、同時にちょっと大人な役もできる幅広い役者になりたいですね。渋い役とかにも挑戦してみたいんですが、髪切っただけで「若くなったね」って言われるので、まだしばらくはこっちかもしれません(笑)。
――タイトルにちなみ、なかなか抜け出せない悩みを持ったらどうするタイプですか?
僕は割とずっとトンネルの中にいますね(笑)。昔はそんな自分が嫌で、悩んで締め付けられている感じが苦手だったんですが、今は「答えが見つからないものは仕方ない、いつか出られるだろう」って楽観視するようになりました。食べることが好きなので美味しいものを食べたり、あとはスーパー巡りをして料理をしたり、無心に野菜を刻んだりしてリフレッシュしています(笑)。
――考え方が変わったきっかけがあったんですか?
23歳くらいの頃かな。具体的に何かあったというよりも、不意にそういう考え方ができるようになったというか。それまでは完璧主義だったんですよ。だから一つうまくいかないと全部だめな気がしちゃっていたんですが、考え方が変わってからは、いい意味で諦めがつくようになりました。諦めるところは諦めるけど、ちゃんとするところはちゃんとして、っていう切り替えができるようになったので、自分としてはいい変化だったなって思っています。
もちろん仕事は仕事なのでちゃんとやらなきゃいけないのは当然なんですが、やっぱり楽しめないと結局は苦になっちゃうので、楽しむことを大切にしていますね。でも、悩んで抱え込んじゃうこともすごい大事だと思うんですよ。役の深みにも関わってくると思うし。そこのバランスを取りつつ、最終的には楽しめるだけの気楽さを持ってやっていきたいなって思いながら、日々取り組んでいます。
――では、最後に本作の見どころとファンへのメッセージをお願いします。
この作品を通じて勉強しつつも、青春ストーリーを楽しんでもらえたらと思います。みんなが観終わったときにハッピーな気持ちになってくれていたらいいな、と。若い世代の方に映画を観てもらって、楽しみながら学んでもらえたら、それはそれで新しいジャンルが確立できるのかなと思っています。まずは観てもらって、明るい未来に向かって晴れやかな気持ちになってもらえたら嬉しいです!
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瑞々しい作品にぴったりな、爽やかな笑顔で終始受け答えをしてくれた北川尚弥。彼自身も多くを学んだという映画「君たちはまだ長いトンネルの中」と共に、自身の未来に思いを馳せてみるのもいいかもしれない。映画「君たちはまだ長いトンネルの中」は6月17日全国順次公開。
取材・文:双海しお/撮影:井上ユリ/ヘアメイク:平笑美子/スタイリスト:RYUSEI MORI(DEXI)
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