インタビュー

稲垣成弥の活躍に迫る 「嘘をつきたくない」境界線をなくした先にある自分という存在

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MANKAI STAGE『A3!』(伏見臣役)や『Paradox Live on Stage』(征木北斎役)、演戯『ヴィジュアルプリズン-月世饗宴-』(ディミトリ・ロマネ役)といった人気舞台に出演するほか、ドラマや映画でも頭角を現す俳優・稲垣成弥。今年6月上演の舞台『死神遣いの事件帖 -幽明奇譚-』では、市村松之助役で出演が決まっている。

今回は2.5ジゲン!!による独占インタビューが実現。稲垣のこれまでの歩みの数々を紐解いていく。撮り下ろしたたくさんの写真とあわせてぜひ読み進めてみてほしい。

「自分にもお客さんにも嘘をつきたくない」

――スチール撮影やストレート舞台、映像作品、2.5次元作品、それぞれ出演される際に気をつけていることがあればお聞かせください。

全てにおいてとにかく心から楽しくあること。そして僕は舞台の稽古というものは、役と向き合って挑戦することを何回しても大丈夫な場であると思っています。「やってみてなんぼだろう」という思いが常にあるんです。「挑戦をしていく」という意識を強く持つ。その意識があれば空気感やセリフの言い方、立ち居振る舞いが大きく変わるんですよね。僕は舞台上で嘘をつきたくないので、そんなふうに挑戦しながら自分の演技の中の気持ちの悪いところを解消して本番を迎えます。

映像のお仕事は舞台のお仕事と比べるとまだあまり経験がないのですが、この前出させていただいた映画の撮影では一つ一つのシーンの準備がとても重要で大変なんだなということに気づくことができました。スチール撮影の場合は、「ここをこうして」といった具体的なイメージを固めることはとくにしないですね。感じたままに動いて探っていきます。

――エチュードやアドリブシーンの方向性はどのように決められているのでしょう。

物語の大筋に乗っているけれど、関連したものに(役や芝居を)派生させていくことを念頭に置いて動いています。突拍子もないことはしないですね。自分の中に一本の軸があって、そこから話の繋がりに乗じて枝分かれしていくような考え方です。あと何より大切なのが周りのキャストとの関係性。これがちゃんと築けていないと物語の本筋に戻れないし、相手に「何だこの人」と思わせてしまう。

稽古場で色々と試してみるんですよ。ギャグみたいなところから始めてみて、その中で(キャストとの)距離感を見極めていく。作品の内容と全然関係のないエチュードを休憩の合間にやってみたりして「あ、このフリはいいんだ、この出方は違ったな」だとかを確認していく時間を設けるんです。

相手の反応がそれぞれ違うからこそお芝居って面白いなって感じます。稽古場でどんどんぶつかって、ここにくるまでに自分で培ってきたものを出して、喋っていかないと、本番でギクシャクしてしまうんです。そのギクシャクした雰囲気が客席にも伝わってしまうからこそ共演者との距離感を見極めますね。

――2.5次元舞台に出演するにあたって意識されていることは?

プロの方々がビジュアルを作り上げてくださるわけじゃないですか、2.5次元作品って。身なりはしっかりとそのキャラクターに仕上げてもらった分、あとは歩き方だったり、仕草だったり、細かい動きの部分を表現していくのは僕たちの仕事になってくる。

実際は2.5次元舞台もストレート舞台もそこまで大きな違いはないと考えているんです。本当に正直なところ、原作という説明書があるという点では親切だと感じることもあります。こんなにも説明書というヒントがある中で演じさせていただくからこそ、見えないところをどれだけ追求していくかにかかってくるんじゃないでしょうか。例えば原作には登場していない、キャラクター同士の些細なやり取りだとか。ソファに座って2人で話すシーンがあったとして、ト書き(脚本)には書かれていない日常の中の何気ないやり取りを自然に表現するためには、そのキャラクターがすでに自分に馴染んでいる必要がある。2.5次元舞台ではそういうところを上手く表現するのが一番芯の通った演じ方だと僕は考えます。

――どのようにしてキャラクターをご自身に落とし込んでいるのでしょうか。

一度セリフを全部(頭の中に)入れてしまいますね。そのあと外で歩きながらセリフを繰り返し口に出しています。夜にやるとまるで不審者みたいですよね(笑)。

全てのセリフが体に馴染まないと、“嘘”になってしまうんです。繰り返しつぶやきながら、キャラクターの感情の変化や話すときの動作、スピード感を身につけていく。自分の中で事前に作っておくべきことを、歩きながら見つけていきます。そうじゃないと僕は落とし込めないんですよね。

――そういった役の作り方や考え方に至る、ターニングポイントはどこにあったのでしょうか。

初主演舞台の劇団TEAM-ODAC第18回本公演『真っ白な図面とタイムマシン』(2015年再演)のときですね。あれほどたくさんのセリフをそれ以前はいただいたことがなかったし、最初から最後まで舞台に出ずっぱりの作品というのも初めての経験で。四六時中ずっとその役のことを考えていたんです。そこからですね、セリフを繰り返し外で歩きながらつぶやくようになったのは。このやり方を見つけたことで、本番に何が起きようと動じなくなりました。

あと、この作品に出演するまではセリフを噛んでしまったら「ダメだ」とずっと思っていました。でもよくよく考えると、人が話すときに噛んでしまうのは当たり前な動作なわけで。噛むことがいけないんじゃなくて、噛んだことで役が一度途切れて“稲垣成弥”に戻ってしまうことがいけなかったんだと気づかせてくれたんです。

僕が板の上で役を保つことができるようになると、たとえセリフを噛んだとしても共演者の方々がそれを拾って、面白おかしくアドリブを利かせてくださったんです。すごく勉強になった作品でした。
そうやって反復や挑戦をしながら役を自分に染み込ませることができるのが舞台作品の醍醐味ですよね。

――舞台は複数公演あるからこそ毎回違ったアプローチを模索できるわけですね。

映像にもアプローチの楽しさがいっぱいあると思うんです。だけど今の僕にはそれにチャレンジするだけの経験がまだ少ないと思っています。カメラの画角だったり、映像ならではのアングルの切り替え方、カット前のシーンの繋がりなど、勉強になることが結構ありました。生きている現場だからこそ、様々なところから情報をもらえるとは思うんです。でも何も考えずにやってしまうと、何が正解なのかがわからなくなってしまう。映像作品の基礎知識をつけておかないと芝居に100%集中することができないと思うんですよね。

それに映像作品って、自分がNGを出してしまうと時間が押してしまうし、大人数が動いている現場で何十カットも撮り直しをすることはできないから、きっとどこかで「じゃあ今のカットでいいよ」って妥協されてしまうんです。映像ってそのシーンをもう二度とやれないんですよ。一回で全てに集中しないといけないから舞台と違った難しさがありました。正直、いっぱい経験して慣れていくことが必要ですね(笑)。

「人気作品」という言葉に溺れない姿勢

――舞台『フルーツバスケット』に引き続き、舞台「死神遣いの事件帖 -幽明奇譚-」(以下、しにつか)でご一緒される脚本・演出の毛利亘宏さんの現場の印象は?

すごく物腰の柔らかい方で。まだそこまでお話しをさせていただいたわけではないのですが、俳優のやりたいことを尊重してくださる印象でした。『しにつか』でははじめましての共演者の方も多いので、僕の演じる市村松之助という役も含め、とても楽しみだし緊張もしています。

――『しにつか』は東映ムビ✕ステの人気作品でもありますね。

人気作品に出演させていただくのはとても光栄なことだと思っています。ただ、僕個人としてはどんな舞台作品であろうと、その現場と空気感を最優先に大事にしたいなと。だからいただいたお仕事は、どの作品でもまっすぐに応えていきたいし、お客さんにも一番良いものを届けたいと思うから、人気作品かどうかというよりも、目の前の課題を一個一個クリアにして万全の状態で本番に臨んでいきたいですね。共演者の皆さんに迷惑をかけないよう、精一杯頑張ります。

――ビジュアル撮影の現場はどんな雰囲気でしたか?

その場の皆さんがとても褒めてくださいました(笑)。たくさんの人に松之助のビジュアルを見ていただきたいです。この作品は和装で出演するのですが、前回の『フルーツバスケット』のときに着物の衣装だったこともあり、和服を着ることにも慣れてきたように感じます。

――和装ならではの所作も見どころになってくるのでしょうか。

まだ未定ですが本作では殺陣のシーンもあるかもしれないので、多くのことを稽古場で覚えていきたいです。

――役者ではなくプライベートな稲垣さんは、客観的に見てどんな人物?

一人になる時間が欲しいタイプです。本を読んだり筋トレしたり。人と会うことももちろん好きなのですが、一人でいるときも好きなんです。

色々な人と関わっていく中で最近気づいたことがあるんです。昔は「家族といるときの僕」「友達といるときの僕」「〇〇さんといるときの僕」だとか、少しずつ違った僕が存在していたんですよね。その人に合わせた人格…というのかな。そうやって会話や接し方を人ごとに変えることに疲れてしまって、「もういいや」って開放的に考えることにしたんです。カテゴリーに分けるから良くないんだなって。「上下や枠組みなんてそもそもないし、境界線をなくして一つの円の中にみんなを入れちゃえ」って。それが一番裏表もないし、一番真摯な在り方じゃないのかなって。

――他にも考え方を変えてみたことはありますか?

昔はルーティーンがあったりしたんですが、それも手放しましたね。「本番30分前にはうがいをする」「この順番で着替えていく」など、本番に向けてスイッチを入れていく方法がありました。でもそのうちの一つが実行できなかったとき、自分の中の集中力が途切れて邪念が入ってしまうんです。先程お話したように、そうやって集中力が切れた時点で“稲垣成弥”に戻ってしまうんですよね。役を作って高めようとしているのに、自分自身に戻ってしまっているという矛盾に気づいてしまった。だから全部やめてしまいました。

――今この瞬間をすごく見据えてらっしゃる印象を受けました。

今をしっかりと生きないと。この先、5年10年どころか、1時間後でさえ何があるかわからないんですもん。だからこそ今を精一杯楽しく生きていたいと思うんです。

――改めてファンの皆さんへのメッセージをお願いします。

いつも応援してくださる皆さん、本当にありがとうございます。6月の舞台『しにつか』はまだどんな役どころなのか明らかになっておらず「ここを見てください!」とは言えないのですが、皆さんに楽しんでいただけるような作品にできるように頑張ります。

そして、5月21日に稲垣成弥の生誕祭イベントがあります。皆さんにお会いできる時間は僕にとってとても大切。ぜひ一緒にお祝いしてくださると嬉しいです。ここまでお読みいただきありがとうございました!

* * *

稲垣の言葉は自身の考えを貫くだけの確証と責任感に溢れていて、聞き手の予想を遥かに超えてくる。そんな彼を見ていると「そうか、人と人との関わり方にはこういった道もあるのか」と新しい発見がいっぱいだ。ファンや自分に嘘をつかず、今という瞬間に焦点を当てながら作品に携わる稲垣。きっとこれからさらにたくさんの活躍の場を引き寄せるに違いない。

取材・文:ナスエリカ/撮影:大木慎太郎(fort)/スタイリング:手塚陽介/ヘアメイク:山田久美子

稲垣成弥 出演情報
■稲垣成弥生誕祭2022
日程:2022年5月21日(土)
https://inagaki-seiya.com/contents/518021
※参加者二次募集の際は、稲垣成弥オフィシャルサイトで告知される

■東映ムビ×ステ 舞台「死神遣いの事件帖 -幽明奇譚-」
日程:2022年6月9日(木)~6月19日(日)東京公演/2022年6月23日(木)~6月26日(日)大阪公演
https://shinitsuka.com/
・5月6日(金)よりチケットFC二次先行(抽選)開始
https://inagaki-seiya.com/contents/516290

■Paradox Live on Stage THE LIVE ~cozmez×悪漢奴等~
日程:2022年7月30日(土)
https://paradoxlive-stage.jp/

SNS
・Twitter
@SeIyA__InAgAkI
・Staff Twitter
@s_inagaki_Staff
・Instagram
inagaki_seiya
・FAN CLUB SITE
http://inagaki-seiya.com
・稲垣成弥OFFICAL STORE
http://inagaki-seiya.com/products

その他
・『稲垣成弥のまずやる!チャンネル』
https://www.youtube.com/channel/UC1KLhec7W0U1MswLcraOmCg
・ニコ生公式番組 「稲垣成弥の他力本願」
http://ch.nicovideo.jp/inagakiseiya

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