発売以来、根強くファンに愛されているNitro+CHiRALのボーイズラブ18禁アドベンチャーゲーム「sweet pool」を原作とした初の舞台化作品、本能バースト演劇「sweet pool」が2022年3月に上演される。
2.5ジゲン!!では、主人公の崎山蓉司を演じる櫻井圭登にインタビューを実施。稽古に向けて着々と作品研究を進めているという櫻井に、本作への意気込みや共演者の印象、座長としての心境などを聞いた。
――原作をプレイされたとのことですが、感想を教えてください。
最初は普通の学園生活が始まるのかなって思っていたのですが、主人公の蓉司が違和感を覚えて、次第に自分の背負うものが分かっていって。もっと綺麗な物語なのかなって思ったら、実際はもっと深いところを描いていく物語で、人間のいろんな感情を掘り出したような内容でした。
びっくりする部分もありましたね。舞台のお話を頂いたときに、「けっこう衝撃的な作品だよ」と聞いていたので心の準備はしていたんですが、それを上回るくらいの驚きがありましたね。
――ゲーム原作の舞台に多数出演されています。今回のようにルートが分かれている作品の場合、特別意識する部分はあるのでしょうか。
ここまでがっつりルートによって違うお話をやるのは初めてなんですが、作り方はそんなに変わらないかなと思いますね。1つのルートを一つの作品だと思って作っていくので。回ごとの切り替えは大変かなと思いますが、根本の役作りの部分は変わらないんじゃないかなと。
――蓉司について、現段階でどんな人物だと捉えていますか。
けっこう自分と似ていますね。蓉司は体調が優れないのもありますが、ぼーっとしている時間が多かったり、周りに影響されて出来上がっていく真っ白な感じだったり。僕は周りを染めるよりも、周りに染まっていくタイプだと思っているので、そういうところも含め、蓉司に共感できるところがすごくあるので、これから本格的に役を作っていくのが楽しみです。今はゲームの2周目で、細かいところを読みながらプレイしているんですが、これから台本頂いて、稽古して、どんなふうに出来上がっていくのか楽しみで仕方がないですね。
――自分と似ている役どころは、芝居をしていないときも役に引っ張られてしまいそうな気がするのですが、実際はいかがでしょうか。
どの作品を作るときも僕は引きずられますね。引きずられるというか、プライベートでも役作りして、その役としていたいなって思うので。なので今回は、作品のテイスト的にも、ちょっと情緒が不安定になるというか、重くなるかなって思っています(笑)。
――すでにビジュアル撮影をされていますが、撮影時に印象的だったことはありますか。
作品に携わっている皆さんが本当にこだわって撮影してくださったので、この作品を背負う覚悟を実感できる時間でしたね。撮影をして改めて、自分が座長としてこの作品を作るんだっていう責任感を感じられる濃い撮影でした。
――座長として、どんなカンパニーを目指したいですか。
目指したいカンパニー像はないんですが、多彩なキャストさんがそろっているので支えてもらう部分が多いのかなと思います。それでも作品愛は誰よりも強く持っていたいですし、観る方にとっても、作品を作る側にとっても、心に残る作品にしたいなって思っています。
――これまで参加してきたカンパニーで、「素敵だな」と思った座長の方はいらっしゃいますか。
植田圭輔くんですかね。懐がすごく深くて、圭輔くんにしか出せない色がちゃんと舞台に出ますし。すごく自由にやらせてくれるんですね。圭輔くんは本当になんでも受け入れてくれて、いい雰囲気のカンパニーを作ってくれるので、尊敬しているし憧れでもあります。
――ちょうど年末の作品では植田さんと共に、今作の演出を務める中屋敷法仁さんともご一緒されていますね。中屋敷さんとの作品づくりはいかがでしたか。
役者を信頼してくれる方なので、自分が(現場に)どれだけ持っていくかでクオリティも変わってくるんだと感じました。中屋敷さんの中での作品のイメージがちゃんとありながらも、なんでも挑戦させてくれる方だなと思います。演出プランを持っていったら採用してくれることもあると思うので、僕がとことん「sweet pool」を理解して提案していけば、切磋琢磨しながら作品を作っていけるのかなって思っています。
――ゲームを周回して得たヒントも稽古場で生きてきそうですね。
そうですね。採用されるかは分からないんですけど(笑)。でも持っていくことに意味があるなと思うので、挑戦していきたいですね。中屋敷さんは僕たちのことをすごく信用してくださる方ですし、同時に誰よりも作品愛が深い方なので、そこは自分も負けないくらい愛を持って稽古に臨みたいです。
――蓉司が深く関わる3人を演じるキャストの印象についてお伺いします。まずは哲雄役の砂川脩弥さんですが、今作が初共演かと思います。
撮影で2度ほどお会いしたんですが、撮影の2日目で一緒にいるときの空気感が決まったというか。自然体でも一緒にいられる方で、なんだか不思議な感じでしたね。今まで出会ったことのないようなタイプでした。僕、普段は会って2回目とかでは、全然自然体を出せないんですよ。だけど砂川くんと一緒のときは、ふと気づくとそうなっていたので、これから稽古場でディスカッションしていったらどうなっていくのか楽しみですね。
ちょっと僕たち似ているんですかね? なんだか不思議と心地いい方で、その空気感をいい意味で利用しながら役作りにも生かしていけたらいいなと思います。
――次に睦役の杉江大志さんですが、杉江さんとは共演経験も多いですね。
カンパニーにいてくれると本当に心強い存在です。僕たち同い年で、役者として一緒に歩んできたっていう感覚が強いので、久々に共演できて嬉しいし楽しみですね。お互いにやってきたものを見せ合いたいなって思います。
――杉江さんとはビジュアル撮影でお会いになりましたか?
撮影が別だったので会えなかったんですが、この前偶然、稽古場が一緒で会ったので「sweet pool」について話しました。「これからゲームする」って言っていたので、プレイ後にまたいろいろ話してみたいですね。
――杉江さんとは芝居についてもよく話されますか?
よく話しますね。同い年だからだと思うんですが、仲間意識もありますし、ライバル意識もあるんですよね。大志くんもすごく成長した姿でこの作品に挑んでくると思うので、負けないようにしないとなって思っています。
――睦ルートは、なかなか衝撃的な結末ですよね。
そうですね。睦のエンディングはとことん堕ちていくエンディングなので、稽古はこれからですが、大志くんがどう演じるのか気になりますね。睦ルートでは、あることで睦が深く傷つく描写があるんですが、そのシーンをどんな目をしてどんな顔をして演じるのか。普段の大志くんからは想像できない表情が見られるんじゃないかなって、怖くもあり楽しみでもあります。
――睦ルートではまだ見ぬ杉江さんに会えそうですね。では最後は善弥役の宇野結也さん。宇野さんも初共演となりますね。
撮影のときに挨拶だけさせていただいただけで、まだしっかりとお話はできていないんですが、大志くんが宇野さんと共演経験があるので印象を聞いていて。すごくまっすぐな方って聞いたので、たしかに善弥もある意味まっすぐだなって。大志くんが信頼できる方って言っていたので、一緒にお芝居できるのが楽しみです。
――初めましての方も多いので、稽古が始まるまで未知数な部分も多そうですね。
そうですね、ドキドキです(笑)。3つのルートがある分、普通の作品よりもたくさん話し合わないと出来上がらないなと思っているので、この3人とはとことん接していきたいなと思います。
――稽古に向けて、今楽しみなことはありますか。
中屋敷さんと前回ご一緒した作品は、アクションが多めの作品だったので、繊細な感情表現がメインとなるこの作品はどうやって作るのかなっていうのが楽しみですね。僕こういう儚い作品が大好きで。繊細で美しくて、いまにも壊れそうな世界観のお話を中屋敷さんがどう作るのか、今はまだ想像ついていないのでワクワクしています。
――そういった世界観を好きになった理由は何かあるんですか?
子供の頃からなぜか好きなんですよね。普通の明るいハッピーエンドよりも、ちょっと暗かったり、物悲しいエンディングの物語が好きなので、この「sweet pool」はまさにぴったりで、やりたかった世界観だなって思っています。
――原作ではED毎にそれぞれ違った形の幸福や愛が描かれますが、最近「幸せだな!」と思ったエピソードがあれば教えてください。
最近オフの日があると、丸一日「sweet pool」を大画面に映してプレイしているんですけど、その時間は幸せですね。役作りをしている時間が本当に好きで、役と一緒に普段の自分が歩めない人生を歩んでいる気がして。このご時世の中、舞台をやらせていただける幸せも感じながら、「sweet pool」をプレイしています。
――本能バースト演劇にちなみ、本能でついついやってしまうことや、これだけは我慢できないというものはありますか?
なんですかね…洗濯物が少なくても絶対コインランドリー行っちゃうことですかね(笑)。ここ何カ月も自宅の洗濯機、使ってないですね。そこのコインランドリーが大好きなんですよ。ちょっとオシャレで、しかも人が全然いないので、我慢できずに行っちゃいます(笑)。
――稽古が始まるとなかなか行く時間が取れないかもしれないですね。
でも24時間やっているので、稽古終わりにも行って、洗濯物を回しながらセリフを覚えていると思います(笑)。
――それでは、最後にファンの皆さんにメッセージをお願いします。
原作ファンの方は「あのシーン、どう表現するんだろう」って気になる部分もあると思いますし、僕もまだ分からない部分もありますが、中屋敷さんなら絶対すごいものを作ってくださるっていう信頼しかないので安心して観劇していただきたいです。原作を知っている方もそうでない方も、全ての方の心に残る作品にしたいなっていう強い思いがあるので、期待して待っていてほしいなと思います!
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ルートごとに衝撃的な展開が待ち受けるあの「sweet pool」は、果たしてどんな形で舞台上で表現されるのだろうか。まっすぐな瞳で作品への期待を募らす櫻井の姿に、否が応でも作品への期待感は高まった。本能と衝撃の海へ飛び込む覚悟を持って、本能バースト演劇「sweet pool」の幕開けの日を待とう。
取材・文:双海しお/撮影:梁瀬玉実
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