インタビュー

橋本真一、自身を構成する99%は「表現すること」 戦い続けた10年と俳優としての矜持

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2021年12月17日に俳優活動10周年を迎える橋本真一。

2.5次元の人気タイトルをはじめ、ブロードウェイミュージカルやストレート作品と多岐にわたる舞台作品へ出演。近年はギタリストとしても活躍している橋本は、10周年という節目に何を思い、この先をどう見据えているのか。

2.5ジゲン!!では橋本にロングインタビューを実施。これまでの10年を振り返りながら、ターニングポイントや目指す役者像などを聞いた。

* * *

――まずは10周年おめでとうございます。こうして10周年を目の前にした今の心境はいかがですか?

ありがとうございます。あっという間の10年でした。改めて10周年という事実を目の前にしてみると、驚きの部分と必然の部分があるんですが、まずはやっぱり驚きが大きいですね。役者を始めるまで、もともと勉強して進学してしっかりとした会社に就職してっていう家庭で生きてきたので、まさか自分が芸能界で俳優という仕事をするということ自体も信じられないことだったし、30歳を超えても役者をしている自分を俯瞰で見てみると、「人生何があるか分からないな」という驚きがありますね。

良いのか悪いのかは分からないんですが、昔から、遠くに目標を置いて、そこに向かっていくというよりかは、目の前の作品や課題に一つ一つ取り組んでエネルギーを割いてきたタイプで。視野が狭くなっちゃうぐらい目の前のことに集中して課題を乗り越えてきた感覚が強くて、だから10年という実感も実はあんまりなくて、一つ一つを積み重ねてきた結果かなと思っています。

今の橋本真一にとっては何かを表現するということが自分の人生の全てで、仕事でもあり趣味でもあり生きがいでもあるんです。他に趣味があるわけでもなくて、自分を構成する99パーセントは本当に芝居や歌や表現のことでできている状態で、今こうして役者でいることがすごく自分にフィットしているなと思えるので、そう考えると10年続けてこられたことは必然でもあるのかなと思っています。

――もう役者ではない人生は想像できなさそうですね。

そうですね。(別の仕事を)やったらやったで頑張るとは思うんですけど、今の自分を考えると、他の道にどれだけ自分の生きがいや存在意義を見出せるのかは自信がないです。それくらい今の仕事に生きがいを感じていますね。そういう意味でも、やっぱりこの仕事をしている自分が必然なのかなって思います。

――いろんなことがあったと思いますが、この10年を一言で表現するとどんな年月でしょうか。

いろんな思いがあるので難しいのですが、「自分との戦い」だった10年というか。ずっといいワードないかなって考えていて、「一人バトルロワイヤル」みたいな(笑)。

いろんな人に支えられて、いろんな作品や役に出会って、ここまでやってこられたということは大前提なんですが、自分で自分を許せずに戦ってきたなぁと振り返ってみるとすごく思います。

たとえば、作品の初日までにここまで持っていきたいっていう自分の中で設けたハードルがあって、でもそれがいろんな要因が重なってそのハードルに負けそうになっちゃう時もあるんですね。そんな苦しい時、応援してくださる方の存在があるからなんとか踏ん張って頑張れるんですけど、常にそういう窮地に立っている状態で10年過ごしてきた感覚があるというか。心にも時間にも体力にも余裕のある時期がなかったなって思うんです。時間に余裕があるとメンタル的にきつかったり、常に何かしらが切羽詰まっていて、心も体も完全にオフにできた状態ってこの10年の中でほとんどなかった気がするんです。

要領がそんなによくない人間なのにもかかわらず、全部ちゃんとやりたいってこだわって時間をかけちゃうし、うまく力を抜けばいいところにも想いを込めてエネルギーを使っちゃうし、自分が想像する到達点に居ない自分がどうしても許せなくなっちゃうんですよね。振り返ってみると、常にオンでいる状態が続いているので、自分と戦い続ける10年だったのかなって思いますね。

――その戦いは今後も続いていきそうですか。

変わることはないかなと思います。自分の性格によるところも大きいと思うので。自分のことを許せないっていうのは、表現する上での責任感だと思うんです。板の上に立ってお客さまに届ける上で、このレベルに達していないと自分を許せないって思うことは、この先も永遠に続くと思います。ただ大人になって経験を積んだことで、心と体をオフにすることの大事さにも気付けたので、今後はうまく切り替えてやっていくっていうのも課題の一つだなって思っています。

――多くの作品に出演してきた10年ですが、ターニングポイントとなる役や作品について教えてください。

2つ挙げたいんですが、まずは「テニミュ」(ミュージカル『テニスの王子様』)です。養成所時代にアンサンブルでの舞台出演はあったのですが、役付きで出演して多くの方に知っていただけた作品はやっぱりテニミュなので、この作品が僕の中ではデビュー作だと位置づけています。六角公演の初日が2011年12月17日で、今回の10周年もそこから数えて10年としています。

もともとドラマや映像作品が好きで、そういった作品に出たいという想いで役者を志したので、ステージに立つことへの憧れはそこまで強くなかったんです。でもテニミュに出演したことで、舞台に立つことの魅力や楽しさ、演劇という場で表現することの喜び、応援していただけることのありがたさを知りました。この作品があったからこそ今があると思いますし、これがなければ始まってなかったかなって思うので大事な作品ですね。

もう一つは「メサイア」(『メサイア -刻-』シリーズ)です。タイミング的にも、自分が役者として悩んでいた時期に出演が決まった作品でした。当時注目されていたプロジェクトで、出演させていただいたことで役者としてレベルアップできた作品であり、役の作り方でも大きな影響を受けた作品ですね。

それまでは、人の言動というのは過去の経験からきているという考えのもと、台本にない部分のバックボーンをきっちり作って、それに基づいて役を作っていくっていうやり方をしていたんです。

でも「メサイア」っていう作品は、自分の役がこの先どうなるのか分からないし、後から思わぬ設定が出てくるし、自分では決めて作れなかったんですよ。なので、今までの自分の役の作り方が通用しなくなっちゃって。それに、それまで明るい役柄が多かったのに対して、「メサイア」の小暮洵はクールで笑顔がない役柄で、演じたことのないタイプの役だったんです。この作品で、いかに自分が役者として未熟かというのを痛感したんです。それまで、「自分ならできる」っていう根拠のない自信を若さ故なのか漠然と持っていて。だけどそれが全部崩れ去ってしまって(笑)。共演者は同年代だけどすごい役者ばっかりだし、自分は思うように演じられないし、すごく思い悩みましたね。

その経験を経たからこそ、役者としても違う角度で物事を考えられるようになったし、役作りの仕方も変わりました。万全の準備をして演じるというやり方から、板の上に“ただ居る”。そして、その場で起きることを受け取って、感情を動かしていく。演じるための準備ももちろん大事ですけど、それだけじゃなくて、リアルタイムで今生きていくことっていうのを重要視するようになりました。「メサイア」で新しい芝居のあり方を学べたので、役者としても人としてもキャリアとしても、すごくターニングポイントになった作品かなって思います。

――「メサイア」は大変だったと語るキャストさんが多い印象ですが、橋本さんもそうだったのでしょうか?

しんどかったし、つらかったですね(笑)。先が分からないというのがやっぱりしんどくって。でも、先が分からなくて自分で完結できることがあまりにも少ないからこそ、メサイア(パートナー)である雛森千寿(演:山本一慶)に対して想いを向けることができたし、ちゃんと寄りかかり合って芝居を作り上げることができたと思います。俳優としては相手と芝居を作り上げることってすごく大事なことだと思うので、それを意図せずやれたというか、やらざるを得なかった作品なのかなって思いますね。

――役者として変わった部分、変わらない部分を教えてください。

変わってない部分は、舞台の上で表現することへの責任ですね。極論を言えば、たとえ僕が演じる事や届ける事に対して全力を出さなかったとしても、観に来てくださる方はいるかもしれません。ですが、そんなことはあってはならないと思っています。

僕がちゃんと責任を持ってチケット代やその時間、お客さんの想い以上のものを届けるからこそ観に来てもらえる。自分の心持ちとして常にそう在りたい。真摯に誠実にお届けするという部分は、今まで変わらずにやってこられたと思うし、これからも変わらずにいたい部分です。

逆に変わったことは、「メサイア」に出た20代半ばごろまで、自分をどう見せるか、自分の表現をどうするかという部分を重視していたんですが、このあたりから相手をどう活かすかとか、作品の中での自分の役割は何なのかっていうのを考えるようになりました。経験と年齢を重ねる中で、作品の中での役割をどう全うするかっていうのを強く意識するようになったし、ちゃんとそれをやっていくと評価してくれる人が増えていくんだなっていうのも感じるようになりましたね。

※後編を12月14日(火)に掲載。

取材・文:双海しお/撮影:梁瀬玉実

「橋本真一 10th Anniversary〜from here〜」
■日程
12月17日(金)
本編:20:00~
FC限定配信:21:30~
■出演
橋本真一
Guest:小笠原仁、日向大輔
Pianist:今安志保
■配信
ツイキャス プレミア配信
■特設サイト
https://shinichi-h.bitfan.id/contents/39864
■チケットリンク
・本編
https://twitcasting.tv/kusuguruproject/shopcart/115253
・FC限定配信
https://shinichi-h.bitfan.id/contents/37402

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WRITER

双海 しお
 
							双海 しお
						

アイスと舞台とアニメが好きなライター。2.5次元はいいぞ!ミュージカルはいいぞ!舞台はいいぞ!若手俳優はいいぞ!を届けていきたいと思っています。役者や作品が表現した世界を、文字で伝えていきたいと試行錯誤の日々。

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