優しい愛に包まれる朗読劇として人気を博す朗読劇「クローバーに愛をこめて」が、高本学と山下七海によって再び紡がれる。
二人の幼馴染の人生を丁寧に描く本作で英雄を演じる高本と、愛美を演じる山下への対談インタビューを実施。俳優と声優、それぞれの視点から見た本作の魅力や見どころ、お互いの第一印象、幼少期のエピソードなどを聞いた。
「クローバーに愛をこめて」は挑戦作
――出演が決まった際の心境を教えてください。
高本学(英雄役):純粋に朗読劇に挑戦できることがすごく嬉しいなって思いましたし、台本を読んでみたら共感する部分があったり、人生を送る上で勉強になるものがあったりしたので、この台本をお客さんに届けられると思うと、すごくわくわくして楽しみだなって思いました。
しかも今回のお相手が声優を本業としてらっしゃる山下さんということで、声優の方とお芝居をする機会ってなかなかないので、すごくたくさん勉強できるものがあるんだろうなって思いながら本読みに臨んだのを覚えています。本読みの段階からすごく感動したし、勉強になる部分も多かったので、ますます楽しみになっています。
山下七海(愛美役):普段も朗読劇をやっているんですけど、やっぱり声優さんと朗読をするっていうのが当たり前になっていたので、今回は舞台俳優である高本さんと朗読させていただくっていうことがすごく新鮮ですね。台本自体も日記型になっていて、私が今までやったことがない形での朗読になっているので、いろんな意味で挑戦なのかなと思いました。きっとファンの皆さんにも、新しい私とか高本さんを観てもらえるんじゃないかなと思うので、そういう部分でもすごく楽しみですね。
――台本を読んでみて、どんなメッセージを受け取りましたか。
山下:幼馴染二人のラブストーリーでもあるんですけど、人生に向き合うというか。一つの生涯を描いているので、自分の人生を改めて見つめ直すきっかけになる内容になっているなと感じました。ただのラブストーリーでは終わらない、自分と向き合う時間をくれるような本になっているんじゃないかと思います。
――普段舞台で活躍されている高本さんが感じる、朗読劇ならではの難しさはどんなところにありますか。
高本:やっぱり身体表現を使えないのは大きいなって思いますね。演劇ではよくセリフを身体で止めたりするんですけど、例えば手のひらをぱっと出すだけで制する意味に見せることができるとか、身体表現でセリフっぽいことをするとか。それを使わずに声だけで表現して、全ての感情を伝えて物語を全部お客さんに理解してもらって共感してもらうのってやっぱり大変だなって思います。
舞台では装置を使ったり映像を使ったり、いろんな表現方法があると思うんです。だけど、今作は純粋に山下さんの声と僕の声で朗読劇を形作っていくので、それが新鮮でもあるし、僕自身も成長させてもらえるんじゃないかなと感じています。
――山下さんは普段アニメなどのお芝居をされていますが、朗読劇の場合はどんなことを心掛けて演じていらっしゃいますか。
山下:アニメだと絵に声をつけるんですが、朗読劇だとやっぱり絵がないので、絵がないところで役になるっていうのが、アニメとはまた違ったところだなと思います。それに、朗読劇って本番一発じゃないですか!アニメの収録はNGが出たらやり直すっていうことができるんですけど、本番一発っていうところは高本さんの方が経験があると思うので…。
高本:いえいえ、そんなことは(笑)。
山下:そういう意味でも本番は高本さんのお芝居に乗っかって、よりよいものにしていけたらいいなって思っています。
――高本さんは本番で緊張するタイプですか?
高本:緊張しないですね。ゲネプロだけは緊張するんですけど、お客さんの前でやるってなると楽しみでしかないので、緊張は一切しないですね。舞台の場合は稽古をすごく積み重ねて、それから本番に行くじゃないですか。だけど、朗読劇って本を持って演じるので、それが新鮮というか。もう全部セリフ覚えちゃおっかなって、舞台俳優的には思っちゃうんですけど。
一同:(笑)。
高本:でも多分、本を持ってやる意味みたいなものを見つけていければ、作品がさらに深まるんじゃないかなと。未知の領域なので、そういうところも楽しみですね。
――山下さんは本番で緊張するほうですか?
山下:すごくします(笑)。きっと今回も本番ですごく緊張すると思います。
――とのことですが、高本さん的な緊張しないコツがあればぜひ教えてください。
山下:わ~ぜひ知りたいです!
高本:舞台をやっていると本番でいろいろなハプニングが起きるんですけど、その経験を経て絶対大丈夫だろっていう自信につながっているというか。
一同:(笑)。
高本:何があっても絶対なんとかなる、できるって思えるようになったのは、ずっと舞台をやってきたおかげかなって思いますね。失敗するのも“生モノ”だと思いますし。
山下:はぁ~なるほど。
高本:もちろん失敗しないように全力を注いでやるんですけど、急に衣装が壊れることとかもあるし、その何が起きるか分からない部分も演劇の面白いところの一つだなって感じてるので、だからこそ緊張しないのかもしれないですね。
山下:参考になりました!失敗を恐れず!その精神で本番に挑みたいと思います。
――朗読劇だと長期間での稽古もないかと思いますが、そのあたりはいかがですか。
高本:何回かの読み合わせだけで本番を迎えるので、だからこそ本番中は山下さんが演じる愛美から感情をもらえる瞬間が続いていくと思うし、その一瞬一瞬を大切に、そのときに受け取った感情を新鮮に感じながら演じていければいいなと思いますね。
――本作は優しい愛を描く作品です。やや難しい質問になってしまいますが、お二人にとって「愛」とはどんなものでしょうか。
高本:愛かぁ…(しばらく悩んでから)常に周りの人から愛を感じていますかね。応援してくれる皆さんもそうですし、親とか友達とか共演者の人とか。様々な人が愛を持って自分に接してくれているなって思います。演劇をやる上では、その作品に愛を持ってお芝居をしているので、そういう意味でも愛は自分の周りにあふれているものだなって。
山下:やっぱりファンの方が一番愛をくれているんじゃないのかなって思います。色んなお仕事をさせて頂いていますが、必ず「見るよ」って言ってくれたり、見た後は感想をくれたり。すごく無償の愛をもらっているなって思うんですよね。
ライブでステージで歌っているときも、今はお客さんが声を出せないけど、すごくキラキラした目で私のことを見てくださっているのを感じたとき、私って愛されているなって実感して、この朗読劇でも愛を皆さんにお返しできるように頑張らないといけないなって思っています。
幼馴染にまつわるエピソード
――初共演となります。お互いの印象について教えてください。
高本:第一印象はすごく芯があってしっかりしている方だなと思いましたね。本当はぽわぽわしているところとかもあるのかもしれないですけど(笑)。僕自身がすごくクールそうに見えて、天然と言われることが多く…これから山下さんの第一印象とは違うところもどんどん発見していければいいなと思います。
山下:私はすごくクールな方だと思っていて。最初ご挨拶させていただいたときも、なんだかもう眼力が強すぎて(笑)!すごくオーラのある方だなっていう印象が強いですね。そのときも全然おしゃべりをしなかったので、無口でクールな方なんだろうなって思っていたら、どうやら違うみたいなんですよ。
高本:そうなんですよ、全然クールなわけじゃないんですよ…。
――クールじゃない一面もときどき見えてきましたか?
山下:そうです…ね?
一同:(笑)。
高本:もっといじってもらって大丈夫ですよ。ちょっと人見知りなので、最初からガーッとしゃべるタイプではないんですけど、たまに抜けていたりすることがあるので、そういうときはツッコんでもらえたら嬉しいです(笑)。
山下:ってご本人が仰っているので、本番期間が終わる頃までにはなにかツッコめるようになっていたらいいなって。なにか考えておきます!
高本:いやいやいや考えなくて大丈夫(笑)!
――幼馴染にまつわるエピソードはありますか。
高本:小さい頃は女の子の幼馴染がいましたね。しっかりしている子だったので、引っ張ってもらっていた記憶があります。一緒にゲームして負けて泣かされたとか(笑)。でもそれも小学校上がるくらいまででしたかね。
山下:私は男の子の幼馴染がいて、家族ぐるみで仲良くしていましたね。小学生くらいまでは交流があった気がするんですけど、それ以降はとくに連絡をとることもなくなったので、物語の中の二人のようにはいかなかったですね。
――そう考えると、英雄と愛美の絆はすごいですね。
高本:すごく素敵ですよね。小さい頃から一緒にいて、苦労とかお互いの人生を全部知った上で、生涯を共にできるってすごく素晴らしいなって思います。
――物語の二人は5歳で出会います。お二人はどんな子供でしたか?
高本:小さい頃は率先してドッジボールとかやる、わんぱくなタイプでしたね。渡れもしない川に突入したりとか、高いところからジャンプしたりとか。あとは3つ年上のお兄ちゃんとキャッチボールをして、全然取れない速い球を投げられて泣かされたり(笑)。けっこう怪我の絶えないタイプでしたけど、中学生くらいからようやく頭が使えるようになって…。そこからは物事を頭で考えるようなタイプになったので、大人しくなりましたね。
山下:私は男兄弟の中で育って二人の兄がいたので、習い事もお兄ちゃんがやっている剣道を一緒にやるとか、男勝りな方だったと思います。あとは駄菓子とかをお兄ちゃんにおねだりしていた記憶がありますね。
――かわいらしいエピソードをありがとうございます。では最後に本作の見どころと共に、ファンへのメッセージをお願いします。
高本:素晴らしい台本で、人生が詰まった内容だし、一分一秒全てが見どころだし、人生の様々な分岐点を大切に描いているところが皆さんの目にも魅力的に映ると思うので、そこで一緒に感動したり嬉し涙を流してもらえたりとか、いろいろな感情を作品の中で味わってもらって共有できたらいいなと思います。
山下さんといい化学反応を起こしながら、この作品を届けたいと思いますので、ぜひ劇場に足を運んでください。
山下:今回、愛美と英雄という二人の人間が描かれるんですが、生き方もバラバラなんですね。愛美に関してはピアノとの向き合い方とか葛藤とかもあって、すごく辛いことも経験するし、とっても幸せなことも経験するっていう、一人の女性としての人生の物語が描かれているので、誰が見てもどこか共感できる部分がある人になっていると思います。
だから本作を聴いてくださった方は、その後に自分の好きなことと向き合ったりとか、自分の人生を見つめ直したりとか、大切な人に愛の言葉をかけたくなったりとか。そんな変化が皆さんの中に生まれるように、高本さんと一緒に頑張りたいと思います!
* * *
終始柔らかな雰囲気の中でのインタビューとなった。これまでの二人の俳優として、声優としての経験値を活かして紡ぎ出される英雄と愛美の人生は、果たして観客にどんなメッセージを届けてくれるのか。ぜひ劇場で感じてみてほしい。
取材・文:双海しお/撮影:梁瀬玉実
公演概要
■タイトル
朗読劇「クローバーに愛をこめて」
■日程・会場
2021年11月6日(土)、7日(日)
東京 浜離宮朝日ホール・小ホール
■出演
高本学、山下七海
■作・演出
大浜 直樹
■プロデュース
たちばな やすひと
■企画・協力
Nemeton
■主催
ソニー・ミュージックエンタテインメント
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