メディアミックスプロジェクト「擾乱 THE PRINCESS OF SNOW AND BLOOD」。2021年4月からアニメが放送され、そのダークな世界観が話題となった本作は、今年10〜11月に舞台「擾乱 THE PRINCESS OF SNOW AND BLOOD ~陽いづる雪月花編~」として東京・明治座で上演される。
2.5ジゲン!!ではアニメ・舞台で中村浅陽役を演じる伊藤彩沙にインタビューを実施。浅陽役は「挑戦」だと語る彼女の想いや役作り、舞台への意気込みなどを聞いた。
浅陽に感じた「希望」「未来」
――プロジェクトへの出演が決まった際の心境をお聞かせください。
今まで挑戦したことのないような題材のお話だったので、すごく楽しみだし、しっかりと人間ドラマを描いていく作品なので、自分自身もこの作品に参加することで芝居の部分でより成長できたらなと思いました。
――作品の印象はいかがでしたか。
本当に“ドラマ”でした。登場人物一人一人に「生きる」ことへの向き合い方があって、私自身も「生きる」ということについて考えさせられる部分がありました。収録も毎回すごく印象的で、収録時期は本当に濃い時間になりましたね。
――具体的にどんなことが印象的だったのでしょうか。
アフレコのマイクが普通と違ったんです。普通は目の前にマイクがあるんですけど、「擾乱」では天井にマイクがあって、頭上から音を拾うっていう形のもので。私はその収録方法が初めてだったのですが、より体を動かして表現できたり、繊細な音を拾ってくれるような感覚で。
なので浅陽を演じながら、感情の赴くままに体を動かしてみるということもできたので、自分自身に浅陽を取り込んで演じているような感覚がすごくありましたね。それが挑戦でもあり、印象に残っています。
――挑戦という言葉もありましたが、ご自身の芝居を聴いてみて手応えはいかがでしたか。
(アニメの)最後のシーンで浅陽が成長したところが描かれていて、そこのシーンに向けて改めてボイトレに通ったりもして。「擾乱」のお芝居は静かな情熱というか、淡々とお話する作品なので、私自身の声はポップな部類という印象があったので、ボイトレで深くて渋い発声の仕方を改めて勉強し直してみました。実際にオンエアを見て、ちょっとは近づけたんじゃないのかなと思いました。
――浅陽の魅力はどう捉えていますか。
浅陽は幼いのにすごく強い子だと思っていて。とても明るく振る舞っていますが、両親は亡くなっていますし、その両親にもつらいことをされていて、それでも気丈に振る舞っていて、私も浅陽から学ぶことがすごくありました。彼女の健気に生きる姿っていうのは、作品の中でも大切な存在だなと思いました。
――浅陽という役はご自身が今まで演じてきた役と比べて、どんな役になりましたか。
作品の中のポジションとしてもそうですし、私の中でも「希望」とか「未来」とか、そういった役になったと思いますね。浅陽に出会って、お芝居の難しさと、工夫してつくっていく面白さっていうのを改めて気づかせてもらったなと思うし、もっと(お芝居を)追究していきたいなって思うきっかけになったので、そういうところにすごく「希望」とか「未来」を感じています。
舞台では「可能性を広げたい」
――そんな浅陽を今度は舞台で演じます。どう役作りをしていこうと考えていますか。
声と舞台だと全然アプローチも違ってくると思うんです。視覚から得るものって舞台はすごく多いじゃないですか。だから目からの情報として、子供の浅陽が動いているって思ってもらえるように、小さな子供の研究をしなくちゃなって思っています。
――アニメやゲームのキャラクターを舞台やライブで演じる際、大切にしていることを教えてください。
舞台で演じるときって、自分がそのキャラクターのビジュアルになるから、ふっと気を抜いたら、キャラクターにちょっと自分自身が混ざった声になってしまいそうなので、感覚的に自分の後ろでそのキャラクターが動いていることをイメージしながら演じるように意識しています。やっぱりそのキャラクターが好きで観に来てくださる方がいらっしゃるので、そこは大切にしています。
――役作りの上で、舞台ならではのアプローチはありますか。
可能性を広げたいなと思っています。アニメやゲームで描かれた部分だけじゃなくて、「この子はこういうこともするんじゃないかな」「そういうところあるよね」って、舞台を観ることでそのキャラクターへの可能性がもっと広がっていくようにできたらなって思いますし、私自身もたくさん想像するようにしていますね。
――ファンの方の想像を補完するような役作りをされているんですね。
そうですね! ゲームやアニメと舞台、どちらもやることでキャラクターの解像度が上がって輪郭がはっきりしていく感覚があって、それがすごく楽しいです。
――浅陽は伊藤さんの新たな引き出しを感じさせる役になりました。この経験を踏まえて、今後挑戦してみたい役はありますか。
いろんな役に挑戦してみたいんですが、いっぱい会話したいですね。しっかりと会話をするような作品とかキャラクターに挑戦してみたいなって思います。
――ちなみに、声優に限らず伊藤さん自身が挑戦してみたいことは何でしょうか?
ミュージカルを作りたい!
――出演ではなく、「作りたい」なんですね!
ミュージカルもそうですが、宝塚歌劇団が好きでよく観劇もしているんですが、作る側も楽しそうだな~って思っていて、いつかやってみたいですね。
――具体的に構想も考えているんですか?
具体的にはまだないんですけど、「こういう人に出てほしいな~」ってちょっと妄想したりしています(笑)。
――ミュージカル作品への出演はいかがですか?
それはもう、やれるならやってみたいですね。ミュージカルの歌の感じがすごく好きなので、いつか壮大なオーケストラで歌うような作品にも挑戦してみたいです。
――宝塚を好きになったきっかけはあったんですか。
祖母に連れて行ってもらったのがきっかけですね。初めて観た作品(「アルジェの男」)がすごすぎて、その衝撃にやられてガッとハマっていきました!
主演・三森すずことの“美味しい関係”
――『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』で一緒だった三森さんについて、共演で楽しみなことなどあれば教えてください。
舞台でまた共演できるのも楽しみなんですけど、みもさん(三森)はいつもご飯を持ってきてくれるから、それを食べるのが楽しみです(笑)。でも作中では浅陽がご飯を作ってあげる側なので、今回は私もみもさんに何か持っていけたらなって思います。
――アフレコ現場での三森さんとのエピソードはありますか。
みもさんとは毎週スケジュールが同じで、一緒に帰らせてもらうことが多かったんですけど、そこで「擾乱」の次の展開についてとか、「いい作品だよね」みたいなことをよくお話していました。あとスタジオの近くに美味しいパン屋さんがあって、「そこのパン、美味しいよね」って話していたのが印象に残っています(笑)。
――舞台についてもお話されましたか?
しました! 私よりも先にみもさんのビジュアル撮影があったので、「こんな感じだったよ」って写真見せてもらったり、「(浅陽の前髪が)オン眉なんですけど、私、大丈夫ですかね。子供に見えますかね」「身長も低いから大丈夫だよ」みたいなやり取りをしていました。
――アフレコで他によく一緒になる方はいらっしゃいましたか?
(月城真琴役の)蒼井翔太さんとか(花風エレーナ役の) Raychellさんとか、(葛原仁役の)小林親弘さんはよく一緒になりました。でも収録ブースが3人と1人に分かれている形で、最初の頃は私だけ別室のことが多くて…。収録の合間の皆さんの会話を、私は一人別室で聞いていることが多かったです。皆さんがしているハマっているゲームの話とかを耳にしながら、「私も混ざりたいな」って思っていました(笑)。
――皆さん舞台に続投されますが、舞台で楽しみにしていることがあれば教えてください。
まずは皆さんのビジュアルが楽しみですね。それぞれすごく個性的で素敵なキャラクターなので、それがどんなふうになるんだろうなって。あとは皆さんが戦うシーンが楽しみですね。浅陽はさすがに戦うシーンはないのかなって思うので、日常的な部分で皆さんとやり取りできるシーンがあったらいいなって思います。※取材はビジュアル解禁前実施。
――舞台オリジナルキャラクターのキャストも出演されますね。
凰稀かなめさんとの共演が、もう…! それこそ先程お話した初観劇の後、次はいつ行けるんだろうって調べて、翌月くらいに観に行ったんですね。その作品に凰稀さんが出演されていて、凰稀さんに恋をしてすぐブロマイドを買ったくらい大好きなタカラジェンヌさんで。
まさかその凰稀さんと共演できるとは、っていう驚きが大きくって。すごく緊張しちゃうと思うんですけど、せっかくご一緒できる機会なので少しでも多くのことを学べたらなって思います。
――「擾乱」は刻一刻と変化していく大気の乱れを指しますが、伊藤さんにとって変化していくものはどんなことでしょうか。
え~なんだろうな…。常に変化していくもの…お部屋ですかね。きれいにしたと思ったのに、気づいたら乱れているんですよ。
――模様替えをよくしているということではないんですね!(笑)
そうです、そうです! 気づいたらものが増えているし、片付けたところが乱れているし、3日経つともう「あれ?」ってなるんですよ。だからお部屋に刻一刻と乱れていく「擾乱」を感じます(笑)。
――ありがとうございます! では、最後にファンへのメッセージをお願いします。
アニメ「擾乱」はとても濃厚な作品で、私も毎週手に汗握る思いで見ていましたし、自分にとってもとても大切な作品で、スタッフさんもキャストさんもとても愛に溢れていて、キャラクター一人一人が大好きになりました。そんなキャラクターたちに“リアル”で会えるということで、私もワクワクでいっぱいです。
「擾乱」は考えさせられるポイントがたくさんある作品なので、ぜひ皆さんもアニメをもう一度見ながら、舞台上演を楽しみに待っていていただければと思います。
* * *
アニメ「擾乱」ではこれまでのイメージをいい意味で裏切る芝居で視聴者を楽しませてくれた伊藤彩沙。舞台では役どころをどう魅せてくれるのか、ますます楽しみになった。アニメの予習復習をしながら、舞台「擾乱 THE PRINCESS OF SNOW AND BLOOD ~陽いづる雪月花編~」の開幕を待とう。
取材・文:双海しお/撮影:梁瀬玉実
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