2021年9月8日にアーティストデビュー10周年を記念したアルバム「DIMENSION」の発売を控えている佐々木喜英。今回、「非常幻想 -オーバーミラージュ-」のレコーディング現場を独占取材した。
収録へ臨む姿は、舞台で見せる表情とはまた違った真剣な雰囲気が漂っていた。佐々木は自身初のセレクト作業(数パターン収録した楽曲から、どのテイクを採用するかを聴き比べて選ぶ作業)にも参加し、フレーズごとに数テイクを聴き比べ、時間をかけて10周年の集大成となる楽曲を丁寧に作り上げていた。CDを手にした際には、きっとファンも新たにお気に入りとなるフレーズが生まれるのではないだろうか。
佐々木が沖田総司役として出演した超歌劇『幕末Rock』シリーズで歌った「非常幻想 -オーバーミラージュ-」への思いに加えて、当時のエピソードや収録秘話などをお届けする。
――「非常幻想 -オーバーミラージュ-」収録を終えての率直な心境を教えてください。
「非常幻想 -オーバーミラージュ-」を最後に歌ったのが、2017年の「超歌劇『幕末Rock』絶叫!熱狂!雷舞(クライマックスライブ)」以来なので、懐かしいなっていう気持ちとともに、当時ライブで歌ったことを思い出しながら楽しくレコーディングできたと思います。
――今回のアルバムには懐かしい楽曲が多数含まれていますが、歌っているとやはり当時のことを思い出すものですか?
そうですね。「非常幻想 -オーバーミラージュ-」はスタジオレコーディングだったんですけど、自宅に本格的な録音機材があるので、宅録で収録した楽曲も実はいくつかあって。家で1人で録りながらも、「この曲のシーン楽しかったな」とか思い出しながら作業していましたね。
――収録の際に裸足になられていましたが、佐々木さん的ルーティンなんでしょうか?
いや、特にそういうわけではないんですけど(笑)。でも靴を履いていると高さがあって、踏ん張るときに余計な力が入っちゃう気がして。本当に気持ちの問題で、必ずやるこだわりっていうわけじゃないんですけど、今日はなんとなく脱いでいましたね(笑)。
――他にレコーディングの際のルーティンは何かありますか。
水分をよく摂ることと、あとはレコーディングに関わらず、お芝居するときもそうなんですけど、高いキーの曲を歌うときだったらそれに合わせて喉を温めるのと、温かい飲み物を飲むのと、ちょっと脂っこいものを摂取すると喉が保湿されるので、本番前にそういったものを取り入れたりはしますね。
逆にキーが低い歌があったり、お芝居で荒っぽい役とかドスの利いた声を出したいときは、逆のことをしています。前の日にお酒を飲んでちょっと喉を枯らした状態でお芝居に挑むと、すごくハマるんですね。
自分にしか分からない程度の変化だとは思うんですよ。聴いた人は「そんな変わったの?」っていう感じだと思うんですけど、自分の中での若干の違いっていうのが、演じる上や歌う上で安心できる要素になるので、意識してやっている部分ですね。
――そういった細かいチューニングをされているんですね。ちなみに「非常幻想 -オーバーミラージュ-」に関しては特別なことはされましたか?
この曲はないですかね。すごく高いわけでも低いわけでもないので、特別な準備をせずに歌うことができました。
――舞台でも何度も歌ってきた曲です。身体に染み付いているような感覚もあるのでしょうか?
それも大きいですね。普段のレコーディングだと、曲が出来上がってから割とすぐにレコーディングに入るっていうことが多いので、こんなに何年も前から歌い続けている曲を改めてレコーディングするってなかなかないですよね。だから本当に安心して安定して歌えたような気がします。
――それはこのアルバムならではかもしれないですね。「非常幻想 -オーバーミラージュ-」にまつわる印象的なエピソードなど何か覚えていますか。
初演のときは(佐々木が演じた)沖田総司が上からゴンドラに乗って降りて登場するっていう演出だったんですね。そのスタンバイをしなくちゃいけなかったんですけど、その場所が照明とかあるすごく高いところで、ものすごく暑いんですよ。そこに暫くの間スタンバイしなくちゃいけなくって、それが暑かったし怖かったっていう想い出がありますね(笑)。
本当にすごく暑くて、ボソボソと「暑い…暑い…」ってつぶやいていたんですけど、それを音響さんが聞いていて、「ヒデ、頑張れ」って励まされていました(笑)。
――この楽曲はゲストで輝馬さんが参加されます。2人でのデュエットがCDになるというのはいかがですか。
嬉しいですよ、本当に。以前僕のイベントで「非常幻想 -オーバーミラージュ-」を歌ったことがあって、そのときに輝馬がサプライズゲストで歌いにきてくれたことがあったんですね。そのときファンの皆さんがとても喜んでくださって。サプライズで登場したとき、こんなに歓声くるの? ってびっくりするくらい盛り上がったんですよ(笑)。
多分今回のデュエットはファンの皆さんも待ち望んでいてくれたものだと思うので、それがCDという形に残せるというのは嬉しいですね。
――今回は歌のセレクトにも参加されていましたね。
今までやってきたことのない作業だったんですよ。いつもはレコーディングが終わったあとは、プロのスタッフさんにお任せする形だったので。
でも怪我のリハビリ中に音響機材を揃えて、家でレコーディングできる環境を整えたということもあって、自分でテイクを選ぶ作業っていうのを日常的にするようになったので、スタジオレコーディングでも自分もそういう作業に参加したいなって思って今回からやっています。
――セレクト作業でこだわった部分はありますか。
テイクを選ぶときは、縦の線が合っているかどうかっていうのが重要なのでリズムを重視していたのと、あとは言葉のニュアンスを大事にしていましたね。「母音や子音のニュアンス」とか「息の抜け方」とか。言葉の印象ですかね。そういったものってそのままCDに乗る部分なので、慎重に選びました。
――一音一音こだわって選びぬかれたものがCDという形になるのが待ち遠しいです! それでは最後になりますが、CD発売を楽しみにしているファンへメッセージをお願いします。
レコーディングが進むにつれて、なんだか欲がすごく出てきていて(笑)。特に宅録の楽曲は録った次の日に聴いてみて「ここは別のテイクに変えようかな」「ニュアンス変えてもう一回歌ってみようかな」っていう部分が色々と出てきて録り直してみるっていう作業をしているんですね。より良いものを、っていう欲がどんどん出てきてすごく作り込んでいるんですよ。
今まではスタジオで1日で録ったら、スタッフさんにお任せして終わりだったので、レコーディングで日々のステップアップをするのって初めてなんですね。多分、今までの僕のCDを持っている人が今回のアルバムを聴いたら、「すごい変わったな」っていう印象を感じられるんじゃないかと思います。
今回収録を進めてみて改めて、10年前の音源や当時の舞台の音源と聴き比べてほしいなって思いました。10周年を迎えていまだから歌える歌い方っていうのを、昔と比べながら楽しんでほしいなって思います。
* * *
インタビュー中にはスタジオ入りした輝馬と顔を合わせて笑顔を浮かべる場面も。レコーディング中の肌がひりつくような緊張感漂う表情とは打って変わって、柔らかな笑顔を浮かべて挨拶をしていたのが印象的だ。
舞台で歌っていた楽曲を、こうして時を経てから改めて新たな音源で聴ける機会というのは滅多にないことだ。佐々木の歩んできた役者としての軌跡に想いを馳せながら、アーティスト10周年という一つの節目をこのアルバムとともに堪能してほしい。
取材・文:双海しお/撮影:ケイヒカル※メイン写真のみ
作品情報
Yoshihide Sasaki 10th Anniversary Album
『DIMENSION』【初回生産限定盤(CD+DVD)】
MJSA-01317~8
〈DVD収録映像〉
「ORANGE SKY ~10th Anniversary ver.~」MV
「灯」MV
メイキング映像
スペシャルムービー「Documentary of 佐々木喜英」【通常盤(CD)】
MJSA-01319■発売日
2021年9月8日リリース■収録楽曲
(初回生産限定盤・通常盤共通/曲順不同)
・勝ち鬨の歌/舞台『刀剣乱舞』より
・真影の炎/舞台『刀剣乱舞』より
・千年の夜/舞台「鬼滅の刃」より
・エクスタシー/ミュージカル『テニスの王子様』より
・足跡/「テニスの王子様」より
・共鳴進歌/『幕末Rock』より
・残響 -feedback-/『幕末Rock』より
・非常幻想 -オーバーミラージュ-(with 輝馬)/『幕末Rock』より
・ORANGE SKY ~10th Anniversary ver.~
・灯■特設サイト
https://www.ys10th.com/
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