HIPHOPメディアミックスプロジェクト「Paradox Live」が2021年9月、ついに舞台化される。それぞれの目的のために賞金100億円を目指し、ステージバトルに挑む4チームの様子が、これまではドラマCDで描かれてきた。
そして新たなステージとして「Paradox Live on Stage」が始動する。2.5ジゲン!!ではBAE・朱雀野アレンを演じる佐奈宏紀とcozmez・矢戸乃上珂波汰を演じる木津つばさにインタビューを実施。2人が口を揃えて「挑戦」だと語る本作への意気込みやHIPHOPにまつわるエピソード、共演者との関係性などを聞いた。
挑戦が詰まった意欲作に
――まずはこのHIPHOPメディアミックスプロジェクト「Paradox Live」の印象を教えてください。
佐奈宏紀(朱雀野アレン役):僕は舞台のお話を頂いてからプロジェクトのことを知ったんですが、シンプルに曲がかっこいいなって思いました。
木津つばさ(矢戸乃上 珂波汰役):僕もお話を頂いてから作品を知ったんですけど、偶然、身近に「パラライ」が好きだっていう方がいて、その方から「すごく人気なんですよ」って話を聞いていて。実際に楽曲を聴いてみたらすごくかっこいいHIPHOPで、(不安そうに)僕ができるのかな…って(笑)。
キャラクターの個性も強いので、これを歌と芝居でどうやって表現するのか、今はまだ想像ができていなくて。なので、この作品は“挑戦”なんだろうなって感じたので、(今回のオファーは)すごくありがたいなって思いましたね。
――HIPHOPを軸としたプロジェクトですが、HIPHOPは普段からお聴きになりますか。
佐奈:僕はよく聴きますね。
木津:えっ、聴くんだ! そりゃいいね。
佐奈:聴くし、自分でも歌いますね。カラオケ行って周りが誰も知らないHIPHOPの曲を歌ったり。
木津:うわ~渋いね(笑)。
佐奈:聴くのは割と最近のものが多いですかね。日本のHIPHOPがすごく盛り上がったちょっと前の曲というよりかは、変態紳士クラブさんとかWILYWNKAさんとか、そのあたりをよく聴いています。すごく歌いやすいんですよ。
逆に「パラライ」の楽曲は、「ダダダダダ」っと入ってくる感じだったり、拍の裏を取ったりが多い印象で、普段僕がよく聴いているHIPHOPともまた違ったジャンルかなと思っていますね。
木津:僕はアニソンしか聴かないんですよ。
佐奈:“しか”!?
木津:そうだね。アニソンか、めちゃくちゃ流行っている曲が耳に入ってくるくらいで。僕も以前アーティスト活動をしていたんですけど、グループでも僕だけ本当に音楽のこと分かんなくて。正直者なので素直に言っちゃいますけど(笑)。
でも、曲の良さって実際聴いてみないと分からないものだと思うので、今回こうやってご縁があったことでHIPHOPに触れてみて、素直にかっこいいって思いましたし、これまで自分の中にあったHIPHOPに対しての固定概念がなくなったというか。
ラップでもすごくメロウな楽曲があるっていうこととか、チーム毎にこんな違いがあるんだってことを、HIPHOPのことを全然知らないからこそすごく新鮮に受け止めていますね。これをきっかけに「音楽を好きになろう」って思いました。
佐奈:根本から(笑)。アニソンの枠から出ることにしたんだ。
木津:そう、アニソンから一歩新たな世界に踏み出そうって思って(笑)。
4つのチームで切磋琢磨
――劇中ではラップを披露するシーンもあります。佐奈さんは普段から歌ってらっしゃるとのことで、自信のほどはいかがですか。
佐奈:いや~。
木津:さっき(ヘアメイク中)もずっと「パラライ」の楽曲を流していたんですけど、彼はずっと「歌えるかなぁ…」って言っていましたよ。僕も聴いていてシンプルに「むずい」って思いました。簡単に歌える気はしないですね。
佐奈:これをライブでやるっていう難易度の高さですよね。レコーディングっていうことなら時間をかければできると思うんですけど、1カ月っていう稽古期間で何曲か覚えて、それを実際に舞台上で生で歌えるのかって考えると、相当聴き込んでラップの基礎の練習をしないと…。
ただ歌の練習をしただけでは追いつけないだろうなって。とんでもないくらい頑張らないといけないなって思っていますね。実際、皆さんが聴いているのは、レコーディングされた完成された曲じゃないですか。それを違う人間が、しかもライブで歌うっていうのは、かなりハードルが高いことだなって思っています。
――HIPHOPが好きだからこそ、楽曲の難しさを感じていらっしゃるんですね。
佐奈:いや、もうヤバイですね。BAEは3人だし、掛け合いでも食って入るような感じだし。今は「本当どうしよう」状態です(笑)。演出の私オムさんとは以前からのお付き合いなので、色々相談しながらやれたらいいなって思います。
でもチームが分かれているのもネックだなって思うんです。やっぱりお互い負けたくないじゃないですか。きっとコツを見つけたらチーム内で共有すると思うし、そうしたらそのチームはすごく伸びていくし。他のチームには当然教えないじゃないですか(笑)。
――そこは教えないんですね(笑)。
佐奈:そりゃそうですよ! 負けなくないですもん(笑)。
木津:いやいや、こっち(cozmez)は2人しかおらへんのに。脳が2つしかないのよ。
佐奈:そこはやっぱり負けたくないもん。見て盗んでよ。でもやっぱり負けたくないから、稽古が始まったら切磋琢磨がすごいことになるんだろうなって思うので、HIPHOPができる・できないとか言っている場合じゃなくなると思います。
一同:(ハモって)やるしかない。
――木津さんは那由汰役の大崎捺希さんと二人三脚になりますね。
佐奈:2人、めっちゃ仲良いよね?
木津:めっちゃ仲良いんですけど、大丈夫かなって…(笑)。大崎捺希が会う度に、僕を不安をさせてくるんですよ。せめて「頑張ろうね」って言ってくれたらいいんですけど、「(小声で)大丈夫かな」っていう感じで言ってくるので、そんなん僕も不安になるやんみたいな(笑)。
cozmezには2人だけの世界があるので、そこを一緒に作ってしっかり出していければ、僕たちの“勝ち”かな、と。
まだ原作でも出ていないチームを超えた組み合わせでの会話だったり繋がりだったりが、舞台の方で出てくるかもしれないので、そういうところも原作ファンの方にも楽しんでいただきたいです。
キャラクターとチームへの想い
――ここからは演じるキャラクターについてお伺いします。稽古前ではありますが、現時点で役をどう捉えていらっしゃいますか。
佐奈:アレンは人としてのスペックが高いっていうのがまずありますよね。僕から見ると色々持っているように見えるんですけど、彼にもトラウマがあって。持つ者故の苦悩がきっと、彼にはあるんだろうなって思っていて。
自分がやりたいことと周りがやらせたいことの相違みたいな、他人にはなかなか分からない悩みを持っているタイプかなと思っていますね。それを音楽で発散しているし、音楽をやる原動力になっているので、音楽に対する熱みたいなものが腹の底からピュアに溢れ出てきているなと感じます。
木津:まず珂波汰は那由汰のことが大好き、それからスラム街育ちということで、アンダーグラウンドな性格だと思うんですよ。そういう子たちって這い上がりたいっていう気持ちがあると思っていて、2人はそういう部分での熱さを持っていると思いますね。
見た目だけでいったらかわいくて、でもダークなところもある子たちって見られちゃうと思うんですけど、内に秘めた闘志がみんなに負けないくらいあると思うので、そこもしっかりお芝居で作っていけたらいいなって思います。
――チーム毎にファミリー感や絆が強いという印象です。BAEとcozmez、チームとしての印象はいかがですか。
佐奈:3人とも、自由にやろうぜって言いながらも一緒に同じものを作っているっていう関係性がいいなって思います。矛盾しているけどハマっている感じというか。自由がいいのにルームシェアしているのって、すごくないですか。それぞれの個性は強いけど、この3人ならピタッと組み合わさって共存できる感じがいいですね。奇跡のトライアングル感が好きです。
――チームメンバーを演じる小南光司さん、立道梨緒奈さんとの共演は初めてですか。
佐奈:小南くんとは一度、ドラマと舞台で一緒になりましたが、そんなにまだ密な関係にはなっていないですね。立道さんとは初めてです。だから多分、僕のコミュ力にかかっていますね。お二人ともガツガツ前に出てくる感じじゃないのかなというイメージなので。
木津:間違いないね(笑)。
佐奈:だから「俺がやるしかない」かなと(笑)。多分それで俺、第一印象ミスって2人から距離取られちゃうかも。
一同:(笑)。
木津:cozmezは一心同体っていうイメージがやっぱり強いですね。誰も入っていけないATフィールドみたいなもので囲まれているチームなのかなって。でもアレンの曲を褒めたりできるところもちゃんと持っているので、意外と周りのこともちゃんと見ている子たちなのかなって思いますね。
――全キャラのトラウマが深堀りされていく珍しい作品です。それにちなみ、トラウマとまではいかないものの、ショックだったり衝撃を受けたりしたエピソードがあれば教えてください。
木津:書けるレベルの話ってなるとむずいな(笑)。…4年くらい前かな。自転車が欲しくて真っ白なクロスバイクを買ったんですよ。それが1日でなくなったんですよ…。
佐奈:盗まれちゃったの?
木津:そうみたい。当時10代で、そこそこいい値段のものを奮発して買ったので、めっちゃショックで。それ以来、僕ずっとママチャリです(笑)。
佐奈:盗まれてもいいように?
木津:そうそう、盗まれてもショック受けないからね(笑)。これならちょうどいいエピソードですよね!?
――ちょうどいいです(笑)。佐奈さんもいい塩梅のエピソード、なにかありますか?
佐奈:高校生のときラグビーをやっていたんですね。試合中に先輩が対戦相手からラフなタックルをされて、でも僕のポジション(スタンドオフ)からはよく見えてなくて。試合はそのまま続いていったんですけど、その先輩に「佐奈、こっちにパスくれ!」って呼ばれて振り返ったら、想像以上のケガをしていたってことがあって…僕の中では結構トラウマですね。
こんな感じでどうでしょうか(笑)!?
――ありがとうございます(笑)! では、最後にファンへのメッセージをお願いします。
木津:この作品は僕たちにとっての挑戦です。必死にステージをつくっていきますので、お客さまには純粋に楽しんでいただけるように、佐奈座長と一緒に盛り上げていけたらいいなと思っているので、よろしくお願いいたします。
佐奈:彼が言ってくれたように、今回一応座長という肩書ではあるんですけど、1チームのリーダーという意識の方が強くて、それぞれのチームのリーダーがそれぞれのチームの座長っていう感覚です。それが合わさって一つのステージになるっていう、野外ロックフェスみたいな感じなのかなって。ロックフェスに座長っていないし、いろんなアーティストが来てそれぞれにリーダーがいてっていうものなので、僕もそういう感覚でいようかなって思っています。作品自体が目指す場所を見失いそうになったときは、僕が一つの指針になれたらいいなって思っているくらいです。
本当にこの作品は挑戦ですし、今から真剣に練習してどれくらいのものが完成するのかっていうのは、今はまだ想像できていないんですが…。普段は言わないことですが、この作品は毎日全然違うと思うんですよ。常に完璧なものを毎日同じクオリティでやるべきなんですけど、この作品に対しては舞台とライブが融合したちょっと不思議な感覚があるんです。
ライブって毎日違うものじゃないですか。だからその違いもこの作品では楽しんでほしいなって思います。「昨日はこれだったんだ」って見逃しちゃうこともあると思うんです。でもそれもまたライブの面白みだと思うんで、「この日に来て、今日はこれが観られたんだ」っていう感覚を、ぜひ楽しんでいただきたいです。
* * *
「Paradox Live on Stage」でついにあの幻影ライブがリアルライブとして表現される。代償となるトラウマと向き合いながら、彼らはどんなドラマをみせてくれるのだろうか。
2人はインタビュー中、何度も「挑戦」という言葉を口にした。その挑戦の行く末を、ぜひステージで見届けてほしい。
取材・文:双海しお/撮影:梁瀬玉実
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