由緒正しき全寮制の共学高校「私立九瓏ノ主(クロノス)学園」 の2.5次元コスプレダンスユニット『アルスマグナ』(以下、アルス)。彼らが出演する『クロノステージvol.5 憧憬のConflict』が2021年8月18日より上演される。
2.5ジゲン!!では現在稽古中の小日向タケル、東郷スバル、津田ダイチ、津田リク、弓削ミコト、宇迦野リンネの新メンバー6人に独占インタビュー。取材中、彼らの絆の強さが伝わるエピソードの数々が飛び交った。
そして、なんと同作で脚本・演出を務める神生アキラからスペシャルメッセージも独占入手。ぜひ最後まで読んでほしい。
アルスマグナを“背負う覚悟”がテーマ
――vol.4から1年越しのステージですが、心境は?
東郷スバル(以下、スバル):前回はコロナの流行下にあったり、僕たちの加入もあったりと、まだ色々なことが追いついていない中で迎えた本番でした。そこから1年を通して、5人のオリジナルメンバーがこれまでやってきたことが断片的に分かってきて。それを踏まえた上で、次のスタートを切るための準備をしている最中です。
小日向タケル(以下、タケル):vol.4当時、ダンスもあってお芝居もあって、とにかく自分の任されていることをやらなきゃっていう思いがすごく強かったのを覚えています。あの時に初めて『ギガンティックO.T.N』(ギガP feat. 鏡音レン)をお客さんの目の前で披露したんですよね。アルスがずっと大事にしてきた曲だというのも分かっていたので、とにかく全力で、必死で。
津田ダイチ(以下、ダイチ):みんな言わないけど、それぞれ当時は課題を抱えていたんですよね。この6人は、ダンスが得意な人もいればお芝居が得意な人もいるんです。例えば僕とリクでいえばダンスは踊れたんですけど、「芝居ってどんな感じなんだろう?」って思っていて、その逆が得意なメンバーもいて。回を重ねるごとに意見交換をして、自分たちの足りないものを補い合いながら、なんとか6人でvol.4の本番を迎えられた感じですね。
スバル:そうなんですよね。やることに対して、じっくり向き合うとか、表現方法のバリエーションを考えるとかの前に「とにかく形にしなくては…」が先行していて毎日必死でした。
ダイチ:本当に手探りでしたね。粗削りだった分、ある意味そこに僕たちらしさがあったのかもしれません。
タケル:そう考えると今回はアキラ(神生アキラ)とケント先生(九瓏ケント)がいないので、そんな粗さも甘えも一切通用しないってことですよね。
スバル:1年経って、舞台上で表現するということに心の余裕ができ始めていて。もう少し視野を広げて、一つ一つ探っていけたらなと思っています。
タケル:その余裕があるからこそなのかなって思うことがあって。このクロノステージって僕たち(の日常)を切り取ってお芝居にしているんですよね。これまで僕らが発してきた言葉がセリフになっているんです。そのセリフの文字を追っていると「あ、このときの感情ってこうだったんだなぁ」とか、「もしかしたら当時の自分はこういう考えを持っていたのかな?」だとか、改めてそこに立ち返ってさらに深堀りできるようになりました。
少しゆとりができたからこそ、そこを楽しめるようになったのかなって思います。オリジナルメンバーと比べたら、年月も含めて6人の関係性は浅いので、本作でそこも深めていきたいですね。
――vol.4では皆さんが『アルスマグナになる覚悟』がテーマでしたが、本作のストーリーの軸となるのはどういったことでしょうか?
ダイチ:今回はアルスマグナを“背負う覚悟”がテーマです。先日、オリジナルメンバーの5人が卒業することが発表されたので、僕たちはただアルスになるだけじゃなくて、5人の今までの10年間の歴史を背負う覚悟を持たなくてはならない。初々しくて覚悟が浅い6人がこれからどうなっていくのか、その過程が本作で繰り広げられていきます。
スバル:ここからはもっと個々のパーソナリティを表現していく必要があるのかもしれません。それこそ津田兄弟の関係性だとかも。
ダイチ:前回も僕たち兄弟の関係性は少しだけ表に出ていたとは思うんですけれども、今回はどこまで言っていいのか分かんないですけど、バチバチです(笑)。僕たちは実家が道場をやっていて、その殺陣を本作で披露するんですよ。しかも自分たちが小さい頃から慣れ親しんだ道着を着て。
津田リク(以下、リク):自分たちが幼い頃からやってきたことを初めて皆さんにお見せすることができるんです。ただこの先、ダンスを取るのか、道場をとるのか…そんな心の葛藤が今回のストーリーでは描かれます。
タケル:あの形(かた)っていうの? めちゃくちゃ格好いいよね。2人の関係も何ていうか、いい雰囲気だよね。
リク:僕たち双子はずっと一緒にいるけど、僕が知らなかったダイチの一面を今回初めて知ったり、そのことへの驚きや戸惑いに気づいたりして。この稽古を通して兄弟の絆を再確認しています。
スバル:堅いんだよな! リクは!
一同:(笑)。
――ミコトさんの行動には全て「もしかして一つ一つに深い意味が潜んでいるんじゃないのか?」と勘繰ってしまいます。
ダイチ:あ、そうそう、今回ミコトパイセンが要所要所、大事な場面で出てきます。
弓削ミコト(以下、ミコト):そうなんですよねぇ。一応先輩なので、やっぱり僕は先輩として、みんなをつないでいかなくてはいけないなと思っていて。そこを本作でも見せることができたらいいな、と思います。
スバル:これまでのイベントを通してきて、一番に僕たちを見てきてくれたのはミコト先輩なのかなって思いますね。
ミコト:うーん、でも僕は一個のことしかできないので、みんなに支えてもらっているところがたくさんあると思うよ〜?
タケル:ホント、美味しい役どころですよね。
スバル:え、(このポジション)狙ってる?
一同:(笑)。
ダイチ:最後には全部かっさらっていく立ち位置ですよね。(動作は)遅いけど(笑)。
リク:確かに、行動の裏に何かが潜んでいるんじゃないかって期待してしまいますよね。
タケル:前回は配信だけだったので、きっとカメラで抜かれている部分しか皆さんにお届けできていなかったと思うんです。ミコト先輩の僕らへの影のアシストや、それと真逆のカオスな空気は多分全部は映っていないはず。今回、生で見ていただいた時に、舞台上でミコト先輩が端々でどういう動きをしているのかというのも、見どころの一つとなるかもしれません。
ミコト:ふふふ。
――メイト(ファン)の皆さんと一番目線が近いのはリンネさんなのではないかと思うのですが、いかがでしょうか?
ダイチ:そうだと思います。メイトのみんなが思っていることを…だけど言えないことを、勇気を振り絞って言ってくれて。メンバーが一度冷静になって考えるタイミングを作ってくれるんです。
宇迦野リンネ(以下、リンネ):僕はアルスマグナさんと出会う前から、ずっと見ていたんです。俯瞰(ふかん)で見てきたからこそ分かる部分もある。
それが今ではその中に僕も入って、色々なことが起こっていて。他の5人との間の溝みたいなものとかも本作では出てくるので、それをどう解決していくのか、それがリンネ自身の課題です。僕も含め、今までメイトの皆さんに見せたことのない6人の表情を見ていただけるんじゃないかって思います。
リク:みんな心の中で考えていることってたくさんあって。嫌なことも嬉しいことも。これまで胸に秘めて言ってこなかったことがリンネの口から飛び出したりもするんですよね。
スバル:リンネは1年を通して引っ込み思案な部分はだいぶ解消されてきたんだけど、まだ少し根っこの部分には残っているんだよね。
リンネ:そうですね、これでもだいぶみんなに慣れてはきたはずなんですが…(笑)。
オリジナルメンバー5人から受け取ったものを胸に
――7月1日に5人の年末卒業が発表されました。彼らとの思い出や受け取ったものなどをお教えいただけますか?
ダイチ:印象が強いこと、っていう話なんですけど。2年前くらいに初めて11人で「踊ってみた」を練習した時、覚えることが多すぎて、新メンバー6人の心と体がキャパオーバーしたんです。6人のうち、誰もついていけてなかったんです。
タケル:エグかった(笑)。
ダイチ:リンネなんてもう顔が真っ白になってて。
リンネ:実はその初練習が終わって帰る際、僕、1時間くらい動けなくって。夜に道端でボーっと固まっちゃいました。「これが、これまでアルスマグナの皆さんがやってきたことなのか」って思ってしまって。自分ができない悔しさはもちろんなんですけど、その他にも様々な感情がこみ上げてきて「この先ついていけるのか」っていう不安がすごかったんです。
ミコト:そうだよねぇ。
ダイチ:そう思わせてくれるほど、これまでにもらったものが多すぎて大きすぎて、5人に僕たちの成長を少しだけでも感じていただけたらなって。恩が大きすぎて。
タケル:キツかったことも多かったし、もらったものもたくさんあるから、その思い出全部が今のワクワクになっているというか。
リンネ:今までオリジナルメンバーの皆さんのニコニコ動画の「踊ってみた」に僕たちが参加できて、その完成品を見たときの嬉しさは忘れられないです。
タケル:今までアルスがメイトさんと一緒に大切にしてきたオリジナル曲を僕たちも披露させてもらうようになってからは、「しっかりやらなきゃいけない!」という覚悟が湧き上がって、毎回それが本番前に僕たちを奮い立たせます。自分もアルスの一員なんだという意思をしっかり持って、パフォーマンスをやらなくてはなって。
スバル:毎回メイトの皆さんの前に立つときはみんな気を引き締めて、緊張感を持って臨んでいます。あ、こうみえて一番緊張するのはタケルですからね(笑)。
タケル:え? そんなことないよ?
ダイチ・リク:いつも隙間から緊張がダダ漏れしてる。
一同:(笑)。
ファン(メイト)へのメッセージ
――「クロノステージ」のvol.5の見どころと、ファンの皆さんへメッセージをお願いします。
ダイチ:まず、今回初披露するリクとの殺陣のシーン、ぜひ注目してください! そして「アルスマグナになる覚悟」と「アルスマグナを背負う覚悟」はなんだか同じように聞こえるかもしれないのですが、中身は全然違って。ぜひ6人をよく見て、聴いていただけたら嬉しいです。もちろん、僕たちもしっかりと伝えていきます。楽しみにしていてください。
リク:ダイチと同じになってしまうのですが、僕たち津田兄弟の殺陣のシーンは情熱をたくさん注いで稽古中です。ぜひ見てみてください。6人それぞれがそれぞれの想いをぶつけ合って、形にしていくという過程を、本作では見ていただけると思います。まだまだ拙い部分もたくさんありますが、自分たちらしく楽しんでいる姿をお届けできるように頑張ります。
スバル:これまではどこかしらで一歩離れた視点からメンバーを見ることがあって。「今、自分の本心を口に出せていないな」とか「自分の気持ちはどこにあるんだろう」と思い悩んできた部分があったんです。本作ではそういった隠してきた部分も表面に出てくるので、そこも注目してみてください。
6人でどう進んでいくのか、想いや考えを共有し、再確認しながら今後につなげていきたいと思います。こういう状況下ですので、見ていただけるだけで本当に嬉しいです。もちろん感染対策を強化しています。ご来場、お待ちしております。
ミコト:僕の本作での立ち位置は“つなぐ”役目だと思っています。そういった格好いいところをぜひ見ていただきたいです。全体の見どころとしては、メンバーの結束が深まったあとに、自分たちの今後をどう切り開いていくのか、その意思表示をメイトさんにお届けできたらいいなぁと思います。よろしくお願いいたします。待ってます。
リンネ:本作は6人の素の部分が一人一人、色濃く表現されています。会場に来ていただく方も、配信の方にも、僕たちの日常を覗き見しているような感覚でいてくださると嬉しいです。そこから僕たち個々の新しい発見があるかもしれません。5人の卒業発表を受けてから初の「クロノステージ」vol.5となるのですが、今だからこそできることを全力でお届けしようと思います。どうぞよろしくお願いします。
タケル:僕たち6人を知らないメイトさんや、アルスマグナ自体を知らない方でも、関係性やキャラクターが分かりやすいお話になっています。本作が僕たちをより深く知っていただくきっかけになるような作品になるといいなと思います。ぜひ気軽に劇場に足を運んでください。絶対に楽しませます! どうぞよろしくお願いいたします!
* * *
この度、神生アキラからのスペシャルメッセージも預かった。卒業という決断をした心境とともに、新体制となるアルスマグナ6人とメイトへの想いを語ってくれた。
神生アキラ スペシャルメッセージ
2年ほど前、卒業の話が出た時、アルスマグナやクロノス学園は必ず残さなくてはという思いがあったんです。どんな人生の中でもなくなるものがあって、なくならないものもあって、全てはその繰り返しだと思うんです。その中の一つが今回の卒業でした。
この新メンバー6人は、背負っていかなくちゃという覚悟とか、想いはぞれぞれたくさんあるとは思います。ただ、今僕が話しているようなことを、10年後に彼らも自分の後輩たちに言っていてほしくて。アルスマグナという存在を僕はそういうふうに続かせていきたいんです。「10年前にああいうことがあって…」とか、思い出話になっているってことは、“残っている”ということなんですよね。今回僕がこの舞台を手掛けることが、その第一歩です。
もしかしたら卒業の件があって、これまでずっとファンでいてくださった皆さんからは「これで終わりだ」というお声もあるかもしれません。でも決してそうではなくて。新しいものが生まれる時は、必ず同じ道のスターがもうすでにいて。だからこそ上り詰めようと頑張るんですよね。できれば皆さんには「終わっちゃうんだ」ではなくて「この先の10年、どうなっていくのかな」という目でこの6人を見ていただきたいんです。
この6人は、ダンスやお芝居のどちらかが苦手かもしれない、でもそれって“今”苦手なだけだと気づいてほしくて。来年はもっとすごくなっているかもしれないじゃないですか。だからどうかメイトの皆さんには今、結果を決めてしまわないで、一緒に6人の成長を見守っていただければと思います。
空気と一緒で入れ替えがないと新しいものが生まれていかないし、人間はそこに慣れてしまうから。ずっと同じ空気でもいいと感じる人ももちろんいます。ただ僕はそこに疑問を感じていて。この壁は他のオリジナルメンバーも同じように捉えていました。「この先、どうするんだ」って。
これまで僕たち5人が得たものを…継承っていうのかな、6人がそうしていってくれたら嬉しいんです。僕らがいなかったら彼らはいないし、彼らがいるから僕たちには今がある、そして退くことができる。
長く続くものっていつかは継承が必要な時が来るはずなんです。僕たちは今を生きている分、時代は変わっていくので、いつまで経っても前時代のことをやるわけにはいかない。彼らの中に僕たちの遺伝子みたいなものがこの先も受け継がれていくはずです。本作公演も、この6人も、どうかよろしくお願いいたします。
『クロノステージvol.5 憧憬のConflict』の上演は8月18日(水)~22(日)、シアターグリーンにて。年内で卒業するメンバーの意志を継承し、これからもアルスマグナは進化をしていく。
卒業は決して“終わる”ということではない。新メンバー6人の中で5人の魂は受け継がれ、いまだかつて見たことのない新たなパフォーマンスを我々に届けてくれるはずだ。
取材・文:ナスエリカ
※記事初出時、タイトルの『アルスマグナ』の表記に誤りがございました。訂正してお詫び申し上げます。
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