インタビュー

佐々木喜英、多くの壁を乗り越えて“未来”へ 10年の軌跡をアルバムに込めて…

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2010年にミニアルバム「SPARK」でアーティストデビューを果たした佐々木喜英。2.5次元作品では欠かせない存在となった佐々木の甘い歌声は、これまで多くのファンや観客を魅了してきた。

2021年9月にデビュー10周年を記念したアルバムを発売する彼にインタビューを実施。アルバムへ込めた想いや過去10年間の想い出、アーティストとしての今後の展望などについて話を聞いた。

10年間の進化を感じるアルバムに

――10周年の節目にアルバムを、というのは以前から考えていたのでしょうか。

もともとカバーアルバムを出したいなとは思っていて。そう考えるきっかけになったのが、2017年の舞台の本番中に怪我をして、そこから2年間のリハビリ生活です。

その間、自分が大好きだったダンスや殺陣、動くことができなくなった分、リハビリしながら声と向き合ったりとか、ピアノをもう一度始めてみたりとか、弾き語りをYouTubeに投稿したりしていて。自然と楽曲をカバーして歌う機会が増えたので、カバーアルバムを出してみたいなって思うようになりましたね。

最初は自主レーベルでやろうと思っていたんですけど、その企画を進めていくうちにマーベラスさんから「舞台の曲もどうですか」とお声がけ頂いたので、ぜひやりたいですという形で、今回は2レーベル同時リリースが実現しました。

――カバー楽曲のラインナップには、懐かしい曲から記憶に新しい楽曲まで並んでいます。選曲ではどんなことにこだわりましたか。

マーベラス盤の方は、自分が出ていた作品の中でも思い入れのある曲というか。シリーズを通して出演していて、演じる機会が多かった作品のものを選びましたね。自主レーベル盤は、Twitterでアンケートをとったので、そちらをもとに選びました。

――舞台上で役として歌うときとアーティストとして歌うとき、心境の違いや向き合い方の違いはありますか。

やっぱり違います。舞台ではそのシーンをリアルタイムで演じている上で歌っていますからね。舞台だと、歌で似せるのはすごく難しいんですが、原作のキャラクターのイメージを意識しながら歌っていることが多いです。

でも今回はアーティスト・佐々木喜英として歌いたいなと思っているので、舞台とはまた違った音色が聴けるんじゃないかと思います。

特に「エクスタシー」とか昔の曲になればなるほど、聴いて比べてほしいなって思いますね。

――「エクスタシー」を歌っていらっしゃったのが2009年なので、12年近く前なんですね。久しぶりに歌ってみていかがでしたか。

昔の音源を聴いてみると、やっぱり恥ずかしいですよね(笑)。でも恥ずかしいって思えたってことは、今は違う引き出しがあって、そこから何かを引き出してアレンジして歌えているってことなのかなって思っています。

――ご自身で聴き比べてみた感想は?

違うっていうか、別物なんじゃないかっていうくらい違いました(笑)。

新曲「灯」の込めた想いとは?

――新曲「灯」についてお伺いします。怪我をされていたつらい期間の思いを歌詞に乗せていらっしゃいますが、この体験を曲にしようと思ったのはなぜでしょうか。

普段、そんなに曲を作ったり作詞したりっていうことがなかったので、自分はそんなに曲作りに向いていないんじゃないかって思っていて、今まであんまりやってこなかったんです。

そんな中で今回、10周年で作詞をしてみませんか?ってお話をいただいて。特に10年間の後半はたくさんの壁を乗り越えた時期だったので、何かを乗り越えたからこそ書ける歌詞とか、それを歌って伝えられるものってすごく重みがあるんじゃないかって感じたんです。苦しみや悲しみだけでなく、未来につながるような歌詞も入れて、この経験をもとにしたいいものができるんじゃないかって思って、挑戦してみることにしました。

――“本格作詞”は初挑戦とのことですが。

CDデビューは2010年なんですが、デビュー前の2009年に「MEN’S DVD」というDVDの企画で、好きなことをやっていいよって言われたときに楽曲作りに挑戦したことがあって、それが作詞初挑戦ですね。でもアーティストとしての作詞という意味では、今回が初めてです。

――では今回は久々の作詞だったんですね。実際の作詞作業はいかがでしたか。

本当はもっと歌詞が出てこないものだと思っていたのですが、意外とワードが出てきたので、「あ、書けるものだな」っていう感じでした(笑)。きっとつらい経験があったからこそっていう部分もあると思うんですけど、作詞に関して、もっと挑戦してきても良かったんじゃないかなって思いましたね。

――これからの挑戦に期待しています!

そうですね、もっとやってみたいなって思いますね。

今回マーベラス盤と自主レーベル盤でそれぞれ1曲ずつ作詞しているんですけど、全部体験談とか身の回りのことから作詞したものなんです。

一人の主人公のストーリーを作って、その人物の物語を書いて作詞するっていう作り方もやってみたいなって思いましたね。もし機会があれば、いつか挑戦してみたいです。

――すごく素敵ですね! 素人からすると、創造性が問われるすごく難しい作業なんじゃないのかなと思ってしまいます。

いや、実際すごく難しいと思います。舞台でもいろんな楽曲をいただいて、その歌詞を目にするんですけど、「どうしてこの言葉が出てくるんだろう、すごいな」ってことをよく感じるので、自分もそういうストックを日々増やしていきたいなと思っています。

佐々木喜英のこれまでとこれから

――音楽活動の中で印象に残っている出来事や忘れられない出来事は何でしょうか。

この10年でたくさんのステージを重ねてきて、アンコールで感極まって涙しちゃうっていうことが最近はあまりなかったんですよ。初ライブのときとかは、思わずウルウルしていましたけど(笑)。

だけどリハビリ期間も含めて2年半くらいライブができなくって、その困難を乗り越えて戻ってきたライブが去年の11月24日のちょうど10周年を迎える当日のライブだったんですよ。初めての生配信という形でのライブだったので、そっちに対する不安が大きいこともありましたけど、泣くとは全然思っていなくって。

でも当日に音楽スタッフさんたちがサプライズを用意してくれていて。「10周年おめでとう、そしておかえり」みたいなことを伝えてくれて、大号泣しちゃったんです。それだけ2年間の壁っていうのは高かったんだなって改めて実感しましたね。

自分でもびっくりするくらい泣いちゃって。あのサプライズはずるいなって思いましたね(笑)。

――アーティストとして、そして役者としてのターニングポイントを教えてください。

やっぱり一番はリハビリしていた2年間ですね。もともと自分の得意分野だった、動きながらのパフォーマンスを封じ込められてしまったときに、一回ダンスや殺陣を置いて他のことと向き合ってみるっていうのが、その2年間だったので。

その2年間を経たことで、自分のパフォーマンスのジャンルが変わったような気がしているんです。それをこれからの舞台やライブで見せていくことが楽しみの一つでもあります。

――変化があったとのことですが、具体的にはどんな部分で変化を感じていますか。

以前はすごく動き回っていたし、それが自分にとっての武器でもあったので、「ヒデといったらダンスだよね、じゃあ振付たくさんつけるね」っておっしゃってくださる振付師の方もいらっしゃって。動き多めの演出を頂くことが多かったんです。

でも最近は、ドーンと構えるような役も増えてきたなという感じがしますね。そういった変化を見せられるのが楽しいです。

――今後アーティストとして挑戦してみたいことはありますか。

僕がYouTubeを始めたきっかけには、会えない期間に皆さんに歌を届けたいという気持ちがあって。

YouTubeって、登録者数を増やしてチャンネルを大きくするのってすごく難しいって言われているじゃないですか。そのコンテンツに自分が参加して、あまり顔を出さないっていうのも自分の中で考えてやっていたんですけど、自分の声とピアノだったり、編集した音だけで、どれだけの人が反応してくれるのかなっていうのを見てみたかったっていうのも、一つのきっかけとしてあるんですよね。

俳優として普段は顔を見せていますけど、音でどれだけの人を感動させられるんだろうっていう挑戦をしたくて、そういう(顔をあまり見せない)方向で始めたんです。それがスタートとしてあって、これからチャンネルをどうしていこうかなって今考えているところですね。

――実際にYouTubeを始めてみて手応えを感じていますか。

チャンネルを大きくするのにも色々条件があるんですが、それを一つずつクリアしていくとすごく達成感がありますね。10万人を超えると銀の盾がもらえるっていうじゃないですか。早くほしいです(笑)。まずはそこを目指したいですね。

――YouTubeだと普段舞台を観ないという人にもアプローチできそうですね。

そうですね。それはすごく感じています。

あと、初めましての共演者の方に突然「ヒデくんって歌が上手いんだね」って言われたことがあって(笑)。その方の前で一回も歌ったことがなかったんで、「え、どうしてですか」って聞いたら、「YouTube見たよ」って言っていただいたこともあって。そういうこともあるんだってびっくりしました(笑)。

――YouTubeも含め、今後の活動も楽しみにしています。それでは、最後にファンへのメッセージをお願いします。

2レーベル同時リリースということで、それぞれ違った色のアルバムになっていますし、その一曲一曲の色を感じてもらえると、僕の今までの10年間の想い出だったり、一緒に舞台で過ごした時間だったりがよみがえると思います。つらかった期間も含めて僕の10年間の丸ごとを聴いてほしいです。

「灯」という楽曲の歌詞では、つらかった部分に加えて未来へのステップみたいなものも歌詞として入れてあるので、昔があって今があって未来につながるっていう、これからの架け橋になるようなアルバムになったと思います。このアルバムをたくさん聴いていただいて、15周年や20周年につなげていけたらいいなと思っていますので、ぜひたくさん聴いてほしいです!

* * *

人気作品に名を連ねながらも、常に新たなフィールドで自分を表現していこうと挑戦し続ける佐々木喜英。穏やかな口調の半面、言葉の端々から表現することへの貪欲な姿勢がうかがえた。アーティスト10周年を記念するこのアルバムで、佐々木喜英の軌跡の一端を感じてみてはどうだろうか。

取材・文:双海しお/撮影:ケイヒカル

作品情報

Yoshihide Sasaki 10th Anniversary Album
『DIMENSION』

【初回生産限定盤(CD+DVD)】
MJSA-01317~8
〈DVD収録映像〉
「ORANGE SKY ~10th Anniversary ver.~」MV
「灯」MV
メイキング映像
スペシャルムービー「Documentary of 佐々木喜英」

【通常盤(CD)】
MJSA-01319

■発売日
2021年9月8日リリース

■収録楽曲
(初回生産限定盤・通常盤共通/曲順不同)
・勝ち鬨の歌/舞台『刀剣乱舞』より
・真影の炎/舞台『刀剣乱舞』より
・千年の夜/舞台「鬼滅の刃」より
・エクスタシー/ミュージカル『テニスの王子様』より
・足跡/「テニスの王子様」より
・共鳴進歌/『幕末Rock』より
・残響 -feedback-/『幕末Rock』より
・非常幻想 -オーバーミラージュ-(with 輝馬)/『幕末Rock』より
・ORANGE SKY ~10th Anniversary ver.~
・灯

■特設サイト
https://www.ys10th.com/

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WRITER

双海 しお
 
							双海 しお
						

アイスと舞台とアニメが好きなライター。2.5次元はいいぞ!ミュージカルはいいぞ!舞台はいいぞ!若手俳優はいいぞ!を届けていきたいと思っています。役者や作品が表現した世界を、文字で伝えていきたいと試行錯誤の日々。

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