2013年に初演が上演されて話題を呼んだ音楽朗読劇『MARS RED』。2021年4月からは同作を原作としたアニメが放送され、さらに6月にはロックミュージカル『MARS RED』が上演される。
2.5ジゲン!!では、主人公・栗栖秀太郎を演じる太田基裕にインタビューを実施。本作へ懸ける想いやミュージカル作品の魅力、役者としての変化などについて話を聞いた。
生バンド×ストーリーに注目
――まずは出演が決まった際の心境を教えてください。
大正時代を舞台にヴァンパイアが登場するお話ということで、チャレンジしたことのない時代背景の作品で、シンプルに面白そうだなって思いました。
――原作のある作品に取り組む上で、役作りなどに影響することはあるのでしょうか。
違いは特にないですね。渡された台本の中でどう膨らませるかっていうことだけだと思うので。漫画やアニメが原作だと、もちろん絵というものがあるんですが、(その有無は)自分としてはあまり大きな差ではないです。
もちろん原作はヒントにはしますが、そもそも演じる人が違うので、僕がその人になろうというわけではないです。
――ミュージカル作品に多数出演されています。ミュージカルの魅力ややりがいはどんなところに感じていますか。
歌があると単純に華やかですよね。ミュージカルはストレートよりも、より“ひとつのエンターテインメント”という感覚が得られるので、そういう意味ではすごくお客さまにとっても劇場に足を運んでエンタメを感じられたと体感できるものだと思います。
そういうところがすごく面白いなって思いますね。普段の生活とはちょっと違う感覚を味わえるという面白さがありますね。
――さらに今作はロックがテーマになっています。これまでも「ROCK MUSICAL BLEACH」や超歌劇「幕末Rock」などに出演されていますが、ロックミュージカルはいかがですか。
もともとロックが好きで音楽もやっていたので、親和性はあると思いますし、楽しみですね。どういう楽曲が来るんだろうなっていうのもそうですし、今回は生バンドなので、どうストーリーと絡めて表現していくのかという部分も楽しみです。
これまでオーケストラの生演奏とともに芝居をしたことはあるんですが、バンドとしっかり一緒にやるっていうのは初めてなので。
役者としての変化とブレない軸
――演じる栗栖秀太郎についてお伺いします。作品に触れてみて、現時点ではどう演じたいと思っていますか。
コミックとアニメ、台本を読ませていただいて、そこから得た第一印象みたいなものを膨らませるという作り方をいつもしているんですが、今は稽古前なのでざっくりと役の印象を捉えたところですね。
現時点での栗栖の印象は、いい意味で地味だなっていうのと、だからこそお客さまに一番近い存在だなって。他のキャラクターがそれぞれぶっ飛んでいたり個性がすごく濃いので、割と現実味がない。
山上さんと栗栖は非常に現実的で、人間臭いところがあるので、そこは色濃く表現していきたいし、それがちゃんとできればいい意味で他のキャラクターと差別化ができると思うし、この作品に深みが出るんじゃないかなと思っています。
――栗栖にとって、“変化”というのがひとつのキーワードになるかと思います。太田さんにとって役者として変わった部分、また変わらない部分はどんなところでしょうか。
栗栖はたしかに変化はしますが、それがゴールじゃない。ずっと葛藤しながら生きていくし、どこかで完成するというわけでもない。
それは自分も一緒で、いろんな矛盾や葛藤がある中でそれとどう向き合って、今の自分に何が必要なのか、必要じゃないのかっていうのを、その時々で選択をしていく感じなので、変わったというよりも常に変化し続けているなっていう感じはありますね。思考もそうだし価値観もそうだし。
かといって本質的なもの…それは言葉にできない抽象的なものなんですけど、筋みたいな大切にしているものはあるなって思いますね。でもそれが一体何なのかって言われるとすごい難しいんですけど(笑)。感覚的に、自分の中で一本通っている軸みたいなものがある気はしますね。
――今まで出演されてきた作品ともまた一味違った作品になるかと思います。本作で役者として挑戦したいことはどんなことでしょうか。
毎回課題は稽古に入るとたくさん生まれるんですけど、今回は生バンドということもあるので、音楽とのコミュニケーションみたいなものは緻密に作っていきたいですね。
音楽って重要な世界観を作品に与えるものなので、そこは今回、音楽を作ってくださるYOSHIZUMIさんと話しながら繊細に共有して作っていけたらいいなと思います。
意外にも? 西田大輔氏との初仕事
――次にカンパニーについてお伺いします。今回は座長となりますが、座長を務める際、大切にしていることがあれば教えてください。
その作品の品とか世界観は主演によって変わってくるな、というのは常日頃感じているので。主役かどうかに限らず、自分が出ることの意味とか、作品の品を大切にしたいなと思っています。
なので今作も、そのあたりを見極めながらやっていければ自然と作品の質も上がるだろうし、座長としては高級感とかクオリティを自分が率先して保っていかないといけないなって思っています。
――脚本・演出の西田大輔さんとの作品づくりはいかがでしょうか。
西田さんの作品はボリュームがあるという噂は耳にするんですが(笑)、実際にご一緒するのが実は今回が初めてなので、全部が未知なんですよね。
――お二人が初めてというのはすごく意外ですね!
皆さんそう仰るんですよね! だからそんな意外なんだ!? って(笑)。でも未知だからこそ、僕としてはすごく楽しみです。お互い知らないからゼロから積み上げていかなきゃなんですが、時間が足りるかちょっと心配です(笑)。
――西田作品といえば手数の多いアクションも魅力ですよね。アクションも含め本番を楽しみにしています! 今回、共演が楽しみなキャストはいますか。
山上さんとは役としてペア感があるので、(山上を演じる元劇団四季の)柳瀬大輔さんとの共演は楽しみですね。どうやって2人で共有していけるかなって。
――役としても、稽古でも柳瀬さんとは一緒にいることが多くなりそうですね。
本当ですね。でも先日お会いしたとき、すごく優しくていい感じの方だったので、すごく楽しみになりました。
栗栖と山上さんの人間臭さは作品の肝にもなってくると思うので、話し合いながら歌唱指導していただきながら、楽しみながらやりたいなって思います。
――これから始まる稽古で楽しみにしていることはありますか。
久しぶりに会う方もいるし、初めての方もいらっしゃるし、どんな風にみんなで作っていけるのか楽しみですね。歌はもちろんですけど、アクションもありますし。ご迷惑をかけると思いますが、頑張りたいと思います。
だってもう絶対大変になるのが目に見えてますから! ミュージカルは、そういうものじゃないですか(笑)。そこに生バンドの要素も入ってくるし、盛りだくさんな作品になると思います。そこが上手くまとまれば、熱のこもった良い作品になると思いますし、そうなるように頑張りたいですね。
――最後にファンへのメッセージをお願いします。
「MARS RED」という作品の独特な世界観を音楽と共にお伝えできたらいいなと思っています。こういうご時世なので劇場に足を運ぶのはすごく勇気のいることだと思いますが、来ていただいたからには何か素敵なものを持って帰っていただけるように頑張りたいなと思います。お待ちしております。
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ダークな世界観とロックが融合するロックミュージカル『MARS RED』。観客に一番近い存在だと語る栗栖秀太郎を、太田はロックの音色と共にどう演じるのだろうか。2021年6月、ステージ上で彼らの物語が奏でられる瞬間を心待ちにしておこう。
文:双海しお/撮影:ケイヒカル/スタイリスト:小島竜太/ヘアメイク:大貫茉央
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