「朗読劇 ドラゴンギアス Another~再生のための物語~」が2021年4月7日(水)に開幕。前日に行なわれた場当たりの写真と共に、同作のエグゼクティブプロデューサー・安藤匠郎氏のインタビューをお伝えする。
演劇ユニット「アメツチ」が手掛ける同作。イシイジロウが原作・世界観監修を務めるボードゲーム『ドラゴンギアス』がオリジナルストーリーの朗読劇として上演される。
――まず「アメツチ」についてご紹介をお願いします。
僕は元々映像の人間で、演出の山田(英真)は友達なんだけど、あと広報も1人いて。3人は元々役者なんですよ。最初はその3人が出演する映画を作ろうとしていて、それが「アメツチ」という名前だったんです。でも、本を書いた結果、これ舞台っぽいということになってたんですよね。
それで、色々とやっていこうというプロジェクトになり、舞台というのがハマっていたのかな。劇場を抑えるとそこに向けてみんなで作っていくという形が。それが、演劇ユニット『アメツチ』になるわけです。
――昨年の延期された公演(舞台「あやかしむすび」)について教えてください。
今回は、昨年延期した舞台「あやかしむすび」と同じ場所でスライドしたんですけど、キャストもスタッフの調整も難しかったので、「ドラゴンギアス」をやろうということになったんですよ。
当時は稽古を1回やって辞めるつもりはないということで進め、細心の注意を払ってやるつもりだったんですけど、劇場の都合などもありまして。延期になってお金もかかっていたりしているので次をどうするか…と。ただ、自分たちでやるって決めたので、流したくないという思いもあり、今回は旗揚げ公演第2回と銘打ってやらせていただくことにしました。
次回には延期した「あやかしむすび」を旗揚げ第1回という公演のつもりでやろうと思っています。あくまで言葉だけかもしれませんが、その言葉が大事だと思いますし。
――今回朗読劇ということですが、舞台ではない理由はありますか?
元々、想定パターンとしては色々あったんですが、コロナ禍ということも踏まえ、朗読劇は割と公演を許されているんですよね、稽古期間や接触的な意味で。また、自分が元々映像から舞台にきた、ということもあり、他ジャンル同士の化学反応というのが好きで。今回は俳優と声優を混ぜてやりたいなということがあって、それだったら朗読劇がありかな、となりました。
ただ、普通に座ってやるだけなのはしないようにしています。主人公とヒロインはピンマイクでやるので、ちょっとした移動や動きは混ぜつつ、ただ、朗読劇というのをどう“外さない”かということも意識しています。朗読劇だけど動きのある…、例えばマヂカルラブリーの漫才なのかコントなのか、みたいなね。
稽古などは興味深かったですよ。声優さんは作るのが早いんですよ、稽古の時点で読むことに関してはほぼほぼ仕上がっている。逆に役者は徐々に作り上げていくって行程なんですよね。と思ったら、動きなどをつけてくると声優さんの方がとまどったりして、とか。
野津山(幸宏)君とかは声優ですけど、芸人をやっていたりと器用ですが、純粋に声優としてやっている人は戸惑ったりしていました。でもポジティブに捉えてやってくれています。休憩中に俳優側と声優側が意見交換をしていたり、「俺はこういうのが見たかった」って思いましたね。
――衣装とかもかなり凝っていらっしゃいましたよね。
そうなんですよ、やりすぎちゃうんですよね、僕。プロデューサーなんだけど、演出家の山田と関係性がちょっと逆で。彼は慎重派で費用とか抑えようとするんだけど、僕が色々とこだわっちゃうんですよね(笑)。
――今回、題材がボードゲームの「ドラゴンギアス」になった理由を教えてください。
その理由は分かりやすくて。自分は原作者のイシイジロウさんが好きで。一昨年かな、偶然知り合いになることができまして。
(※余談ですが、イシイジロウさんの好きなゲームをお伺いしたところ「428 〜封鎖された渋谷で〜」「3年B組金八先生 伝説の教壇に立て!」等を挙げていただきました。話が盛り上がりました。)
そして、そこからやりとりをしていて、舞台化する際の原作をいくつか紹介していただいたんですよね。その中で「ドラゴンギアス」があって、でも「これが一番向いていないかな…」って仰っていたので、そう言われたら…やりたくなるじゃないですか(笑)。
この作品は設定として、アニメやビデオゲームに向いている世界観なんです。舞台だと難しく、さらに朗読劇となると、どう表現しようかなということを考えるのが、面白いと思ったんですよ。もちろんその他の要因もありますけどね。
――ボードゲームに物語性があるというのも珍しいですよね。
そうですね。でも、設定を聞いた時、作品としては広げやすいなって思ったんです。原作は原作の設定がありつつ、この世界では、こういったドラゴンとへクスギアスの争いが他でも起きているんじゃないかって。朗読劇ではそれを描こうと思ったんです。
ちなみに、ボードゲームの原作の設定よりも前の時代設定のつもりです。他の国といった方がいいかな。服装の材質とか原作版はドラクエで、今回はFFみたいな雰囲気と思っていただければ分かりやすいかな…分かります?
――原作ボードゲームは遊ばれました?
遊びました。普段、ボードゲームは遊ばないんですけど、新しいルールを探り探りしながら遊んでいくのは好きなので、色々と戦略を考えながら遊んでいましたね。それと、キャストも遊んだんですよ。そのあたりの模様は動画でアップしているので、ご覧いただきたいです。
――今回の朗読劇の見どころを教えてください。
キャスト組み合わせがめちゃくちゃ多いです、8公演なのに7パターンがあるので。見ていくと、相手によって演技を変えるというのが伝わりやすいんですよね。同じシナリオなのに組み合わせ次第で芝居がまるまる変わっているというのもあるんですよね。見ていて面白いですよ。
とある国の少年少女たちがドラゴンに挑むという物語を描いているんですけど、ドラゴン自体が何十年に1回しか襲ってこないという設定なんですよね。少し飛躍する例えになるけど、今の僕たちにもそういった状況になっているわけじゃないですか。現実として新型コロナウイルスが来ていて、そんなことがあるなんて考えずに生きてきたわけで。
「自分たちだったらどうする」という思いを持って見ていただきたいです。「ある種の希望」的な物語になっていると思います。
――長時間インタビューありがとうございました。
ボードゲーム『ドラゴンギアス』
・ゲームデザイン:川崎晋
・原作:イシイジロウ
・キャラクターデザイン:西村キヌ
竜と人類、2陣営のミニチュア駒で戦うボードゲーム。駒には「強大な力を持つが思い通りには操作できない駒」と「意図通りに操作できるが非力な駒」の2種類があり、それによる心理戦・戦略戦が同一盤面で繰り広げられる。なお、クラウドファンディングでは1500万円以上の支援があった。
アメツチ
2019年、プロデューサーの安藤匠郎と主宰・演出・脚本の山田英真により結成された演劇プロジェクト。映像演出からストレートまで、表現方法に拘らず物語を演出する上での最適解を模索する、マルチモーダルエンターテイメントを掲げている。
文:木皿儀隼一
撮影:ケイヒカル
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