インタビュー

“エゴイストになる…” 牧島 輝の新境地 名作舞台「オーファンズ」稽古場に密着

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1983年にロサンゼルスで初演以来、国内外で何度も上演され続ける名作「オーファンズ」。

本作は、凶暴な性格の兄・トリートと内向的な弟・フィリップの孤児兄弟、そして、2人の前に突然現れる男・ハロルドの介入によって、価値観の崩壊と新しい未来の到来を描く傑作戯曲だ。

フィリップ役にミュージカル『刀剣乱舞』やMANKAI STAGE『A3!』など人気2.5次元舞台で活躍する牧島 輝、トリート役に劇団温泉ドラゴンの中心的俳優・いわいのふ健、ハロルド役に劇団唐組の看板役者・稲荷卓央と、世代を越えた異色の3人が集結。

本記事では演出・シライケイタとキャスト陣に、本番へ向けての取り組みや意気込みについて聞いていく。

演劇スタイルの異なる3人が集結

――今回のキャスティングがとても特徴的だと感じました。

シライケイタ(以下、シライ):そうですね。世代もバラバラで。

もともと、僕と稲荷さんの間で「いつか一緒に何かやれたら良いね」と話していて。稲荷さんと同じ事務所で、将来有望な(牧島)輝を呼ぶこととなり、「じゃあこの2人でやるならどんな作品がいいか」ということになったんです。

稲荷卓央(以下、稲荷):2.5次元舞台で活躍している輝くんを普段とは異なる作風の舞台に出したらどうなるのかというお話があって。

シライ:稲荷さんと一緒にやるとなると親子の設定になるのかな…と考えつつ作品を探していたら、稲荷さんが「オーファンズ」というすごく面白い作品を見つけてきてくれたんですよね。

じゃあ兄であるトリート役を誰に任せるかと思った時に、劇団温泉ドラゴンでずっと一緒にやってきていて信頼が厚いいわいのふくんに声を掛けて、このキャスティングとなりました。

老舗のアングラ劇団の中心俳優と、新しい演劇のスタイルである2.5次元舞台のスター、長いこと演劇界に関わってきた稲荷さんと僕が揃った異色コラボはすごく面白いんじゃないかなと思いまして。

――牧島さんは同世代の俳優に囲まれての公演が多い中、今回、年上の皆さんと共演をされることになります。

牧島 輝(以下、牧島):年齢もそうなんですが、いつもは大人数で出ることが多くて。今回の舞台は人数的にも僕が今まで出演した舞台の中では一番少人数で、毎回の稽古がすごく濃いと感じています。

演劇界で活躍されてきたお2人と共演するということで、毎日すごく刺激をいただいています。

いわいのふ健(以下、いわいのふ):僕ももらっていますよ!

一同:(笑)。

――皆さんの雰囲気がとても素敵で、初共演ということに驚きました。顔合わせの時の印象はどうだったのでしょうか?

牧島:僕…正直はじめはすごく怖かったです…。皆さん大ベテランでビビりますよね(笑)。

いわいのふ:稲荷さんはな、怖いよな(笑)。

稲荷:そんなことないよ、怖いのは顔だけだよ(笑)。

いわいのふ:稲荷さんと事務所で会ったりしてたんでしょ?

稲荷:事務所でも会うし、輝くんが僕の舞台を観に来てくれたりもあったよね。ただ、しっかりと話したのは今回の舞台がはじめてでした。

いわいのふくんともお互いの舞台をそれぞれ観ていて、いつか一緒に(舞台に)立てたらなぁと考えていて。

いわいのふ:見知っているんだけど、お芝居を一緒にやったことはなかった3人です。

牧島の存在がフィリップの純真さを際立たせる

――過去上演された「オーファンズ」では、兄弟役の俳優2人の年齢が近いものが多いように感じました。

いわいのふ:最初、本読みの時に「ここはこう変えたほうがいいんじゃないか」って思うくらい、僕が一番年齢を気にしていて。

シライ:確かに他のキャスティングをみると、兄弟の年齢は近かった。

でも兄弟の年齢差が開いていることで、フィリップの天真爛漫さだったり純真さが際立つのかも知れないね。他では観ることができなかった『オーファンズ』になるんじゃないかな。

いわいのふ:確かにそうですね。そうなると、よりリアルなお芝居を皆さんにお届けできるかもしれない。

僕は最初のイメージでは、まだ10代だったり、若い子たちがはじめて社会に出て壁に直面して戦っている物語だと受け取っていました。

でも徐々に、大人になっても同じような局面に立たされている人は世界の片隅に結構いるんじゃないかと感じて。

何かしらに抗っている人間は、年齢、性別問わず常にいると思うから。そういった人たちに共感してもらえる部分も物語の中にあるかも知れない。

キャスト全員に“クサいセリフ”の免疫があった!?

――本作は翻訳劇ということで、特質なセリフはありますか?

稲荷:一言一言がすごくダイレクトだなと感じましたね。男らしいというか、キザっぽいというか…セリフがクサイというのかな。

シライ:今思うと、稲荷さんはポエティックな人物を演じた経験が多いし、僕の脚本も割とクサいセリフが多いから、いわいのふくんはそれに慣れているし。

輝も2.5次元舞台でキャラの根底にあるキメゼリフみたいなものを表現したりするし、もしかしてみんなこの作品の“クサいセリフ”に全く照れてないんじゃない?(笑)

一同:確かに!(笑)

稲荷:抵抗ないんだ、俺たち。

シライ:それでいうと、楽でしょ? 今回。

いわいのふ:すっごく楽(笑)。

シライ:俺が普段用意するセリフの方がクサいもん。みんな「オーファンズ」のセリフの手の内が読めているってことだね。

牧島:僕、今言われるまで「このセリフがクサい」なんて思ってもみなかったです(笑)。

シライ:最初から扱いこなしているから違和感を覚えないんだよ。

牧島:僕は2.5次元舞台の中でもそういった役が多いんです。

「愛してる」とか「好き」とか自分の気持をまっすぐ伝える役とか、クールだけど「あ、ここで一歩前に出てカッコつけてそういうの言っちゃうんだ?」って役とか(笑)。だからかな。

シライ:このキャスト全員に免疫があったってことですね(笑)。

“エゴイストになる”という意識がもたらす実り

――牧島さんは「オーファンズ」を通して何か変わったと思うことはありますか?

牧島:実は僕、俳優になる前は「お芝居が好きだから俳優をやろう」と思っていたわけではなくて。

もともとアニメや漫画が大好きで、それを見て育ってきたんです。それで2.5次元舞台にすごく憧れを抱いて、そこからこの世界に入ったので、最初はお芝居や演劇のことについて何も知りませんでした。

だけど、色々な作品に関わらせていただくことが年々増えてきて、お芝居がどんどん好きになってきたんです。

2.5次元作品だと舞台上で、キャラとして「ここではこういうパスを出して…こう表現して…。あともう少しこういうふうに動いたほうがいいのかな…」と意識しがちで。できないなりに周りや環境を意識してバランスを取ろうとしてしまうことが多くて。

今回のような現場に出させていただくと、いろんなものを持ってらっしゃるベテランの皆さんの中で「自分がエゴイストにならなきゃいけないな」と考える時間がすごく楽しくて、この純粋な気持ちが舞台の表現に反映されたり、コミュニケーションに繋がったり…。

僕はまだ25歳になったばかりで、徐々にそういう視点が自分の中で生まれてきました。

“2.5次元”は自分の中でかけがえのないものでもあるし、勉強にもなる。

一方で「オーファンズ」のような違った環境でお芝居に触れるということも、自分の中ですごく実りになるなと感じるようになりました。

ありがたいことに素敵な現場ばかり体験させていただいているので、得られるものがたくさんあって、今すごく充実しています。

本番への意気込み、観客へメッセージ

――最後に改めて観劇する皆さんへのコメントをお願いします。

いわいのふ:ありがたいことに、現時点でチケットがほぼ完売しているんです。今回観ることができないという方には本当に申し訳ない気持ちでいっぱいです。

このメンツに出会えたこと、ケイタさんとまたご一緒できたことは僕の人生にとってとても幸せなことです。

人生を懸けてこの舞台を楽しんでやろうと思います。そして観に来ていただく皆さんにも同じくらい「あぁ、良い時間を過ごしたな」と感じていただけるように頑張ります。

稲荷:シライさんとご一緒したいという前々からの願いがやっと成就しました。

そしてずっと共演したかったいわいのふくんと、同じ事務所の輝くんと、ついに同じ舞台に立つことができます。

この「オーファンズ」を観た後に、「こうだったね、ああだったね」と内容について大切な人と話をしてみてください。

ハロルドのセリフに「触れ合えないなんて悲しいじゃないか」というのがあるんです。まさにその通り。この舞台が人と触れ合うきっかけになっていただければとても嬉しいです。

そして、そんな舞台にできるように、一同、全身全霊で臨みますので、どうぞよろしくお願いいたします。

シライ:演劇って舞台の上で“ギリギリ”で生きている俳優を見るものだと思うんです。でなきゃ面白くないし、それがエンターテインメントというものだし。

ギリギリっていうのは本当の意味でギリギリ。毎回、舞台上で命を擦り減らして、いろんな人の人生を生きて。

この作品なんてまさにそう。人生の断崖絶壁に立っている男たちの話です。

今後どんどん高く羽ばたくであろう牧島 輝が、純真無垢で新しい世界に飛び出そうとするフィリップを演じます。そういった俳優と役のシンクロニシティも魅力の一つになるのではないでしょうか。

俳優たちそれぞれのバックグラウンドと生きざまが板の上にのっていくというのは素晴らしくて、でも、そのためには半端な生き方では皆さんに響くものをお届けできないとも思います。

その覚悟を胸に抱えて精一杯生きている男たちの姿を、ぜひ劇場に確かめに来てください。
どうぞよろしくお願いします。

牧島:僕は自粛期間中に外に出れなくて、死ぬかと思うくらい“出たい欲”というのに駆られて、心が沈んでしまって。

でも逆に、その環境の中で些細だけど新しいことを見つけられた時、心が躍る瞬間があったんです。

たった数ヶ月外に出なかった僕でさえこうなんだから、何年も閉じこもっていたフィリップは、一体どれだけの恐怖や新しい体験への喜びを感じるんだろう…と考えさせられる毎日です。

いつも応援してくださるファンの皆さんには、そんな“新しい牧島 輝”をお見せできるのではないかと思います。

たくさんの人に満足していただける作品になるよう、一生懸命頑張ります。

* * *

減摩された心を愛によって癒やしてくれる舞台「オーファンズ」。

きっと観た後、すぐに大切な人と連絡を取りたくなるほど、人と人との繋がりのかけがえのなさを教えてくれるはず。

本作は2020年11月18日より公開。崩壊した世界で必死に生きる男たちの姿を、ぜひその目に焼き付けてみてほしい。

取材・文・撮影:ナスエリカ

公演概要
【公演タイトル】舞台『オーファンズ』

【日程】2020年11月18日(水)~23日(月・祝)

【会場】東京・中野 ザ・ポケット

【脚本】ライル・ケスラー

【演出】シライケイタ

【翻訳】谷 賢一

【キャスト】
フィリップ:牧島 輝
トリート:いわいのふ健
フロイド:稲荷卓央

【舞台監督】青木規雄(箱馬研究所)
【照明】奥田賢太(colore)
【照明オペレーター】南方悠里
【音響】和田匡司
【美術】松村あや
【衣装】藤田友
【演出助手】森菜摘

【宣伝スチール】宮坂浩見
【宣伝ヘアメイク】進藤祐子
【宣伝スタイリスト】手塚陽介
【デザイナー】西本恵理子

【制作】田代伸也
【主催】株式会社 A4(エーヨン) 志村哲郎

【公式サイト】http://a4produce.co.jp/ofans.html

【公式Twitter】https://twitter.com/A4produce1

【公演に関するお問合せ 】
株式会社A4/MAIL:orphans2020.11@gmail.com

抽選で3名様にサイン入りチェキをプレゼント

【応募期間】
2020年11月15日〜2020年11月21日正午
※必ずTwitterキャンペーン応募規約をよくお読みいただき、同意の上ご応募ください。

【応募方法】
STEP 1. 2.5ジゲン!!のTwitterアカウント(@25jigen_news)をフォロー
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