独自の“パズルライドシステム”と役者の肉体で生み出す本気の熱量で人気を博している舞台『弱虫ペダル』シリーズ。2022年からスタートした新シリーズは、2024年3月上演の舞台『弱虫ペダル』THE DAY 2で3作品目を迎える。
2.5ジゲン!!では、主人公・小野田坂道を演じる島村龍乃介と鳴子章吉を演じる北乃颯希にインタビューを実施。過去2作品を振り返りながら、「THE DAY 2」での挑戦や役作りについての話を聞いた。
――まずは1作目「The Cadence!」、インターハイ1日目を描いた前作「THE DAY 1」を振り返ってみて、印象に残っていることを教えてください。
島村龍乃介(小野田坂道役):「THE DAY 1」では小野田の成長した部分をすごく感じることができたので、僕自身も、もっと成長しないといけないなと思いました。すごく印象に残っているのが、やっぱり100人抜きのシーン。あのシーンで1人になったときに、「The Cadence!」で本当に皆さんに支えられていたんだなっていうのをすごく感じて。
だからこそ、支えられてばかりじゃいけないって思ったんです。「THE DAY 1」ではそこを課題として頑張っていたので、「THE DAY 2」もそれを活かして頑張っていきたいなって、今は思っています。
北乃颯希(鳴子章吉役):「The Cadence!」は個人戦という形が多かったのですが、「THE DAY 1」になって、総北メンバーが6人そろって、チームとして箱根学園(ハコガク)や京都伏見と戦えたっていうのが印象的でした。
最初はライバル意識もあって、学校vs学校みたいな面もありましたが、最終的には「1つのいい作品を作ろう」ってチーム間の壁なく支えあうことができたのも、「The Cadence!」からの1つの成長なんじゃないかなって思います。
――インターハイに挑むにあたって、1年の信号機(島村・砂川・北乃)でどんなことを話し合いましたか。
北乃:自然と信号機が集まるけど、特に芝居のことを話した記憶はないですね…自然と話していたのかもしれないけれど、印象に残るほどっていうのはあんまりないなあ。
島村:そうですね。鳴子くんだったらスプリンター、小野田だったら100人抜き、今泉くんだったらエースを引いていくっていうそれぞれの役目があったので、各々が自分の芝居に集中している感じでした。
北乃:だから“信号機として”って感じでは話していないけど、自分以外のシーンを観て、お互いにいろいろ言うっていうのはあったし、それはすごくおもしろかった。
「あれ、今(走っていた)“道”は、どこ行ったんだろう?」とか。「あそこ、もうちょっとケイデンス落としても大丈夫ちゃう?」とか、「斜めに曲がるところでちょっと道が見えづらくなっているかも」とか。
島村:自分だとわからない部分を俯瞰で観てもらって話し合って、ということは多かったですね。
北乃:「The Cadence!」を経験して仲も良くなっているので、意識せず自然とそういったことを話せていた気がします。
――上級生役の3人との関係性はいかがでしたか。
島村:(滝川)広大くんもそうですけど、やっぱり(川﨑)優作くんが本当に部長みたいな立ち位置にいてくれて。総北が「THE DAY 1」でこれまで以上に一致団結したシーンも、優作くんの存在がすごく大きかったんです。
北乃:優作くんって、基本はめちゃくちゃふざけるんですよ(笑)。だけど、部長としてしっかり締めてくれる人で。稽古で「総北が負けているよ、ハコガクの方が状態がいい」って言われたのが、めーっちゃくちゃ悔しくて。(島村に向かって)な?
島村:あれは悔しかったですね。
北乃:何したらいいか、何が負けているのかも分からなかったんですよ。その時、ツール・ド・フランスの実際のレース動画を僕らのグループチャットに送ってくれて「何分何秒のところが、今、俺らに足りてないものじゃない?」と。
本人に聞いたら、(演出の)鯨井さんに相談した結果らしいのですが、あれはすごく部長として、なにかが芽生えたなって思いました。(山本)涼介は基本的にないっすね(笑)。
一同:(笑)
北乃:なんやかんや頑張っている姿をこっちに見せてくる。
島村:分かります! なんかずるいというか要領がいいというか(笑)。
北乃:「涼介が頑張っているなら、俺はもっと頑張らないと」って思わされる存在ですね。毎回稽古終わりにやっている体幹トレーニングも、あいつだけ絶対やらなくて。だけど前回の勾配がきつい坂道のレースもしっかり仕上げてくる。
そんな涼介を見て、毎回「俺らももっと回せる」って頑張れました。そんな総北全体を、僕らのママである滝川広大が見てくれているって感じですね。
――インターハイに入って、滝川さんの“ママ度”は…?
島村・北乃:めっちゃ上がりました!
北乃:稽古で疲れてきたタイミングで「おにぎり大会しようぜ」って盛り上げてくれたり、総北がプライベートで集まった時も、デリバリーみたいなでっかいカバンにわざわざ料理の仕込みをしてきてくれて、レンタルルームで手料理を振る舞ってくれたり…紛れもないママでした(笑)。
――ここからは最新作「THE DAY 2」についてお伺いします。本作ではどんなことがご自身にとっての挑戦となりそうでしょうか。
島村:みんなに支えてもらっての「The Cadence!」から「THE DAY 1」を経て、「THE DAY 2」ではがむしゃらに頑張って、その背中でみんなを引っ張っていきたいなっていう気持ちがあります。これは僕の中ではすごく大きな壁であり大きな課題であり、できたらいいなと本当に思っていて。それくらいの勢いで頑張りたいなと思っています。
北乃:僕は今回、自分がメインとなるレースはないのですが、「THE DAY 1」で金城が鳴子に言った「お前1人で走ってるんじゃないんだ。お前には頼もしい仲間が5人いる」っていうセリフの通り、サポート役に徹して周りを支えたい。支える側の経験が浅いので、そういう意味ではそれが挑戦になるのかなと思います。
――3作目にこれから挑みますが、役作りのこだわりや公演を重ねたことで新たに見えてきたものがあれば教えてください。
島村:僕が初めて原作を読んで自分自身で感じたことを、そのままお客さんに伝えたいというのが自分のなかには変わらずにあって。その思いでこれまでの2作品、小野田坂道と向き合ってきましたが、正直まだ答えっていうのは見つけ出せていないです。演じていても、まだ小野田には読めない部分があるんですよ。
例えば、100人抜くって、もうありえないじゃないですか。僕だったら諦めちゃうかもしれないけれど、小野田はそれを「やる」って言える。どうしたらそう思えるんだろうとか、小野田の細かな感情について、これからもずっと向き合って考えていくことになるんだろうなと思います。
北乃:鳴子ってレースに勝てていないんですよ。自分は幼い頃からずっと芸能をやってきて、鳴子がレースで勝てていないのと同様、役者としてまだ大成功できていない。そういう意味で通じるものがあって。
負けた悔しさを次につなげるとか、1つの舞台で得たものを次に生かそうとか、そういう部分が鳴子の役作りにもなっているなと感じています。お客さんの思い描く理想の走りも凌駕(りょうが)するくらい、「ペダステ」1番の理想の走りをしたい。それが鳴子を演じるうえでのこだわりです。
――共演も3作目となります。お互いに「打ち解けたな」と実感した瞬間は?
島村:これといったきっかけは、あまりないんですよ。「The Cadence!」は信号機のシーンばかりだったから、自ずと3人で集まるようになって、3人で話すようになって。帰りも3人一緒なことが多くて、気づいたら仲良くなっていましたね。
北乃:ですね、きっかけはないです。初めて会った3人の役者が、自然とそのまま信号機になっていった感じで。これは多分言葉じゃなくて感覚だと思います。あえて言うなら「芝居で仲良くなった」ですかね。
島村:芝居で仲良く…かっこいいですね。
北乃:「芝居で仲良くなった」は大きく書いておいてください(笑)。コロナ禍ということもあって、初演時も食事会とかができなくて。でもそういう場がなくても、稽古場でちゃんと関係性ができたじゃん! という感じでした。
――改めて信号機の3人からにじみ出る雰囲気のよさに納得がいきました! では最後に、ファンへのメッセージをお願いします。
島村:「The Cadence!」から出演させていただいて、僕自身、本当にどの舞台よりも熱すぎる舞台だと感じています。それこそこの冬にぴったりなのかなと思いますし、「ペダステ」ってなんかもう部活じゃないですか。それを観ているだけでぐわーって熱くなって「僕ももっと頑張ろう」って思える。
お客さまにもそう感じてもらえるような作品になっていると思いますし、観にきてよかったなって思ってもらえるような作品に絶対しますので、ぜひお越しください!
北乃:暗い気持ちも吹き飛ぶような作品になっていると思います。魂と魂がぶつかり合う男子高校生たちの泥臭くて熱い青春を、ぜひ身1つ空っぽな状態で来ていただければ、観劇後には「熱くていいものを観れたね」っていう気持ちを持ち帰ってもらえるかと思います。
2024年3月の作品ですが、1年を振り返ったときに1番いい作品だったと言ってもらえるような「ペダステ」にしたいと思うので、ぜひ観にきてください。
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熱狂のうちに幕を閉じたインターハイはいよいよ2日目に。2人とも小野田と田所が2人で歌う「恋のヒメヒメ☆ぺったんこ」が楽しみだと、「THE DAY 2」への期待をふくらませると同時に、笑顔をこぼしていた姿が印象的だ。新たなキャストを迎えての舞台『弱虫ペダル』THE DAY 2は、3月1日(金)にスタートを切る。
取材・文:双海しお/撮影:ケイヒカル/ヘアメイク:渡邉真夕
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