インタビュー

【台詞の中の軌跡】田口司「誰かの力になれるなら僕も頑張れる」 ぶれない軸と新たな覚悟を持って

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ミュージカル『テニスの王子様』3rdシーズン・10代目 菊丸英二役で脚光を浴び、以降も舞台『魔法使いの約束』シリーズのホワイト役、ミュージカル『薄桜鬼 真改』 シリーズの山崎烝役などで活躍する田口司。

得意のアクロバットを生かした無重力な動きと芝居とで、多くの観客を作品の世界へと惹き込んできた。2024年には新ミュージカル「スタミュ」や舞台『弱虫ペダル』THE DAY 2への出演も控えるなど、まさに飛ぶ鳥を落とす勢いだ。

2.5ジゲン!!では、11月にフリーでの活動を発表したばかりの彼に単独インタビューを実施。これまでの軌跡を振り返りながら、フリー転向への思いや今後の展望など、その心境をじっくりと語ってもらった。

――田口さんのこれまでの歩みについてお伺いします。子役時代から活動されていますが、最初にこの世界に足を踏み入れたきっかけを教えてください。

子どもの頃に音楽番組でアイドルを観て「自分も歌ったり踊ったりしてみたい」って思ったのが、最初の願望でしたね。そのあと、小学校4年生の秋頃だったかな…当時やっていたゲームの舞台が渋谷だったんですよ。それで、学校がお休みの日に両親に渋谷に連れて行ってもらったんです。

そのときに「じゃあ、このままスカウトされに行っちゃおうか」みたいな感じで原宿に行ってみたら、実際に声をかけてくださった方がいて。もともと僕もやってみたいって言っていたので、両親も「じゃあ、やってみれば」っていうところから芸能界に入りました。

なので、きっかけは音楽番組なのですが、そのゲームをやってなかったら渋谷には行っていなかったと思うので、それもきっかけの1つかなと思っています。

――そこから子役として映像を中心にキャリアを積まれていますが、当時はどんな思いで仕事に取り組んでいたのでしょうか。

当時はとにかくオーディションを受けまくって、受かったものに出演させていただくっていう感じで。自分でどうにかするっていうよりかは、演技レッスンだったり、ダンスだったり歌だったりを、ただがむしゃらにやっていたという感じですね。

スキル向上がメインでしたけど、それが性質に合っていたのか、大変という感じはなく楽しくやっていました。

――進学のタイミングなどで芸能のお仕事を続けるかどうか、悩むことはありましたか。

中学校に入るタイミングでは「まだ始めたばっかりだから続けよう」って思ったし、高校に上がるタイミングでも、ありがたいことにお仕事があったので続けようって思いましたね。

芸能学校に通っていたのですが、高校生の時には一度考えました。少しよくない言い方ですけど、「自分の人生に保険をかけるのか、かけないのか」。結局、別の道もあると自分がそれを逃げ道として使ってしまうかもしれない、それなら芸能に絞って、「僕はもうこれをやる」って覚悟を決めることにしました。

――2018年『テニミュ』出演をきっかけに活動の幅が舞台へと広がりました。『テニミュ』に出演した1年半はどんな時間となりましたか。

言葉にすると当たり障りない感じになってしまいますけど、本当に幸せな時間でした。20代前半に改めて青春を感じられたっていうのがすごく嬉しかったですし、チーム一丸となって作る時間がとにかく楽しくて。

長い間一緒にやっていると、喧嘩とかもするんですよ(笑)。作品を作るというより、部活に近い部分があるから、ときには衝突もして。でもその喧嘩も、最終的には作品を作るうえで大切な時間になっていて、今思えばすごく得難い時間でした。

まあ、最初の最初は本当にガチガチでしたし、なんなら震えていたと思います(笑)。もとの経験が映像メインだったので、たくさんのお客さんの前でお芝居や歌を披露するっていうことが初めてでしたし、『テニミュ』という大きい作品でのプレッシャーも当然ありました。その緊張にも慣れて楽しめるようになるのに、1年くらいかかった気がします。

――以降も人気作品への出演が続きますが、役者人生におけるターニングポイントを挙げるとすると?

やっぱり『テニミュ』ですかね。最初は舞台に関して、本当に右も左もわからなかったんですよ。舞台は映像作品と違って稽古があるから、そこでの人との関わり方も、どうしたらいいのか正直わからなくて。舞台に立つうえでの基盤ができあがった作品が『テニミュ』だったので、自分の中で本当に大きい存在ですし、いまでも“家”みたいに感じていますね。

――菊丸もそうですが、田口さんといえば、かわいかったり、元気だったりする役の印象が強いです。今後挑戦してみたい役柄はありますか?

「黒執事」の時に、悪役というかちょっと性格悪い役をやらせていただいたんですが(ミュージカル「黒執事」~寄宿学校の秘密~のモーリス・コール役)、それがまあ楽しくてですね(笑)。正義や主人公サイドの役が多いので、そういう悪役だったり、狂気感じるサイコパスだったりを演じてみたいですね。

――それはイメージができないのでぜひ観てみたいですね。ちなみに、これまで演じてきたなかで、役作りで1番苦労したのはどの役でしょうか。

う~ん。また『テニミュ』になっちゃうんですけど、菊丸英二かもしれない。当時、僕の菊丸を観たプロデューサーに「オープン・ユア・ハート」って言われまして(笑)。菊丸って本当にポジティブで、すっごく明るくて、天真爛漫なキャラで。自分ではそう演じているつもりだったのですが、きっとどこか、根が暗い自分が出てきちゃっている部分があったんだと思います。

そこの作り方が本当にわからなくて。たぶん、いろんなことに追われすぎていて、キャラに近づかなきゃというのもそうですし、ちゃんと作品を作っていかなきゃとか、余計なことを考えすぎてたと思うんです。

でも、途中でパッと「あ、これじゃない」と気づいて。純粋に“菊丸として”その場を楽しむことを大切にし始めた時から、「オープン・ユア・ハート」は言われなくなりました。

菊丸のおかげもあってか、可愛い系や元気系なキャラクターを演じさせていただくことが多いのですが、菊丸で学んだことはすごく大きくて。今も自分の基礎の部分に菊丸がいる感覚ですね。

――そして先日、フリーへの転向を発表されました。どういった気持ちで決断されたのでしょうか。

今後、新しいことに取り組んでいく時に、環境や速度に囚(とら)われることなく、役者だけに限定せず、クリエイティブに挑戦していきたいなって思ったことがきっかけですね。役者をやりつつ、好きな歌や写真も含め、いろんな方面に活動を広げて頑張っていけたらなと思っています。

――フリー転向後も続々と出演作品が発表されていますね。目指している役者像や今後の展望について教えてください。

目指している役者像は、本当になんでもできて臨機応変に対応できる役者、ですかね。これって役者として普通のことなのかな? きっと普通に求められることではあると思うんですけど、自分はまだまだ足りないことが多いと思っていて。

現場で色々な人に「この人、こんなすごいところがあるな」って気づくことが多いんですね。そう思うってことは、きっとそこは自分に足りていない部分だと思うので、これからも経験を積む度に、周りからも盗んで吸収して、成長していきたいなと思います。

――ここまで役者を続けてきてよかったと実感した瞬間はどんなときですか。

ファンの方から「活力になりました」とか「明日からも頑張れそうです」って言っていただける瞬間は、やってきてよかったなって思いますね。というのも、僕はそんなに自己肯定感が高いタイプじゃなくて、なんなら低めなくらいで(笑)。でも、こんな自分でも、誰かの生きる力になれているんだなって思うとすごく嬉しくなりますし、誰かの力になれるなら僕も頑張ろうって思えるんです。

あとはカーテンコールですかね。みんなでいろんな試行錯誤をして作った作品に対して皆さんからいただく拍手は、本当に毎公演「よかった」って思っています。

――逆にどうしようもなく辛くなった瞬間はありますか。

これが、最近は本当になくてですね。ちっちゃい頃はオーディションに落ちると、幼いながらにメンタルに来ていた部分はあったんです。だけど今は、オーディションにたとえ落ちたとしても、何が悪かったのか分析して次に活かそうってポジティブに考えられるようになりましたね。

昔はすごくネガティブだったんですけど、こうしてポジティブな考えができるようになったのも、演じさせていただいたキャラクターがポジティブだったり元気だったり、明るい性格の持ち主が多かったおかげかな、と。そのキャラクターを演じる上で、自分自身もネガティブからポジティブになっていけたんだと思います。演じた役たちからは、めちゃめちゃいい影響をもらっています。

――芝居に限らずいろいろな表現をしていきたいとのことですが、「ぜひここを見てほしい!」という“田口司の一面”はどんなところですか。

僕の一面で見てほしいところですか!? え~、なんだろうな。(しばらく悩んでから)…写真ですかね。僕、言葉で伝えるのが得意じゃないタイプで。言葉にするより、写真を撮ってそれで伝える方が得意なんだと思います。

よく風景を撮るのですが、自分の気持ちと照らし合わせていることが多くて…。って、これもちょっとうまく説明できている気がしないので、伝わっているのかわからないんですが…。

――大丈夫です! 田口さんが言葉以外で表現したものにも、田口さんの内面が反映されているから、ぜひそこも見逃さないでほしい、ということですよね?

そうです、そうです! まとめていただいてありがとうございます!

――そういった表現も含め、今後の活躍を楽しみにしています! では最後にファンへのメッセージをお願いします。

まず、ここまで記事を読んでいただいて本当にありがとうございました。こんなに自分のことを話したことってないんじゃないかなというくらい、いろいろお話させてもらいました。この記事を読んでいただいて、また1つ、新しい田口司の一面を知ってもらえたら嬉しいなと思っております。

さっきも言った通り、応援してくださる皆さんに、作品だったりイベントだったりを通して、少しでもね、日々の生きる活力を与えられる存在になれればいいなと思っていますので、ぜひぜひ、今後とも田口司の応援、よろしくお願いいたします!

***

インタビューの締めの言葉とともに深々と頭を下げる姿に、彼が長年この仕事に真摯に向き合ってきた姿勢が重なった。直後に「(記事では)伝わらないけど」とお茶目に笑う姿も含め、これはファンの皆さんに伝えねばと使命感に駆られたのは言うまでもない。この記事もまた、彼を応援するファンにとっての糧になっていれば嬉しく思う。

取材・文:双海しお/撮影:梁瀬玉実

各種概要

■出演

・新ミュージカル「スタミュ」
那雪透 役

2024年1月19日(金)~28日(日)
東京・品川プリンスホテル ステラボール

2024年2月3日(土)、4日(日)
京都・京都劇場

・舞台『弱虫ペダル』THE DAY2
水田信行 役

2024年3月1日(金)~10日(日)
東京・天王洲 銀河劇場

・ミュージカル『薄桜鬼 真改』土方歳三 篇
山崎烝 役

2024年4月13日(土)、14日(日)
兵庫・AiiA 2.5Theater Kobe

2024年4月19日(金)~4月29日(月・祝)
東京・天王洲 銀河劇場

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WRITER

双海 しお
 
							双海 しお
						

アイスと舞台とアニメが好きなライター。2.5次元はいいぞ!ミュージカルはいいぞ!舞台はいいぞ!若手俳優はいいぞ!を届けていきたいと思っています。役者や作品が表現した世界を、文字で伝えていきたいと試行錯誤の日々。

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