葉鳥ビスコの漫画『桜蘭高校ホスト部』を原作とした『ホスミュ』シリーズが、12月上演の歌劇『桜蘭高校ホスト部』Fineにて、ついにフィナーレを迎える。
主演である須王環役の小松準弥を筆頭に、はまり役としかいいようがないキャスト陣が集結し、華やかで明るく心温まる物語が綴られてきた。そのフィナーレはどんな作品になるのだろうか。
2.5ジゲン!!では初演から出演する須王環役の小松準弥、鳳鏡夜役の里中将道、藤岡ハルヒ役の山内優花にインタビューを実施。過去2作品の思い出などを振り返りながら、今作への思いや仲のいいカンパニーの様子などを聞いた。
――『ホスミュ』の最後の冬がやってきます。まずは過去2作品を振り返って印象に残っているエピソードを教えてください。
山内優花(藤岡ハルヒ役):今、ぱっと浮かんだのは、第二弾公演の千秋楽後の光景ですね。セットの扉をみんなで閉めて終わるシーンだったんですけど、その扉を閉めてお客さまから見えなくなった瞬間に、みんな自然にわーっと集まって円陣みたいになって。「やったね、走り切れたね」って、みんなで喜んだのをすごく覚えていますね。
やっぱり初演が走りきれなかった(※大阪公演が中止となった)というのもあって、みんなのなかで「乗り越えられたね」っていう達成感が強くて、絆みたいなものを感じた瞬間でしたね。
小松準弥(須王環役):その話を聞いていたら、将道の泣き顔思い出しちゃった(笑)。いろんな瞬間の泣き顔があったもんね。
里中将道(鳳鏡夜役):これまでいっぱい泣いてきましたね。みんなにすっげえ泣いてるの見せてきたし。そういうところも含めて、みんながみんなのことを分かっている状態なので、第三弾公演がよりいいものになるのは確信しているというか。
初演も第二弾公演も、毎回全員とハグしてから本番に臨んでいたのですが、それが本当に自分の勇気になっていました。「それをやらないと始まらない」みたいな感じで、裏でのそういうみんなでのやり取りは、大切なものとしてずっと胸の中に残っていますね。
小松:いま将道が言ったように、ずっと「みんなで目合わせよう」って言ったりハグしたりしてきたんですね。それで気合いも入るし、本番中も目を合わせることによって、つながってるなっていうのをすごく感じていて。「今ちょっと緊張してるのかな」とか、「こっちにぶつけてきてくれてるな」っていうのが、目を見るとお互いに伝わるんですよ。
そういうふうにずっとつながっている感覚があるからこそ、僕も優花ちゃんが言った「よしっ走りきった」っていう瞬間は印象に残っているし、ここまでつなげてきた時間が僕たちの絆を強くしてくれたんだなって、いますごく実感しています。
――いよいよ今作がフィナーレです。「Fine」を控えた現在の心境を円グラフで表現するとどうなりますか?
小松:僕は楽しみ100%です。
山内:うわ、すごい!
小松:すごいだろ~(笑)。今朝起きてここに来るまでは寂しさが勝っていたんですよ。多分寂しさ65%、楽しみ35%くらい。でも今日こうやって2人と話していて、そのグラフが話題ごとにくるくる変わるんですよね。
そう考えると、寂しい思いっていうのもその瞬間にしかない大切な思い出になるだろうし、いろんな感情になれるってこと自体が僕は楽しいんだなって。だから全部楽しみです!
里中:僕は楽しみ50%の寂しさが30%で、あと10%がプレッシャーですかね。
山内:90%…あと10%足りないよ。
里中:じゃあ、寂しさ10%増しでお願いします。
一同:(笑)
山内:私は楽しみ60%、寂しさ38%ぐらい。あと2%が緊張っていう感じですかね。
小松:2%の緊張はもうほぼないじゃん!
山内:いや、でもその2%が結構大事なんだって。
小松:なるほどね(笑)。
――役作りについてお伺いします。今作ならではのアプローチや、過去2作を経たからこその変化などはありますか。
小松:環はまっすぐでピュアで愛すべきおバカで、陽のエネルギーがすごく強い。それこそが環なんですが、そんな彼が抱えている裏側も胸に抱きながら初演、第二弾公演と演じてきました。
今回の「Fine」は、その裏側が描かれるエピソードにもなっているので、これまで明るさの裏でずっと引っ張ってきてたものを表に出す時に「どのように繊細に表現するべきか」っていうところは今回の挑戦だし、これまでとはまたちょっと違った表現になるのかなと思っています。
でも、考えれば考えるほど、最終的にはそういう下地を作ったうえで、あとはみんなから素直に受け取ればいいのかなっていうところに行き着くような気もしていて。僕らも3回目っていうことで心から信頼しあっているので、その瞬間、瞬間を、環として本当に生きていればそれでいいかなって思っていますね。
里中:僕も今回は、より人からもらったものをエネルギーにして、鏡夜のクールさのなかに厚みを持たせるような役作りをしていきたいなと思っています。ホスト部や環への思いを、皆さまにもしっかり届けられるようにしたいですね。
山内:今回の顔合わせのときに、「今まで以上にちゃんと言葉で伝えて、深くみんなと関わっていきます」っていう宣言をしたんですね。ハルヒとしてもう一歩、みんなの中に入れるように、普段の行動からみんなともっとつながる選択をしていきたいなっていうのが、役へのアプローチの変化だと思います。
――初演時の小松さん・里中さんへのインタビューでは、“動物園のような”カンパニーになりそうとのことでしが、実際の『ホスミュ』カンパニーは皆さんにとってどんなカンパニーですか。
小松:動物園って言ってたのが懐かしい! いまもその表現通りかはちょっとわからないですけど…。
山内:大正解だよ。
小松:大正解か(笑)。でも、あの頃から変わらないというか、さらにお互いのことを知って“スーパー動物園”みたいにはなってますよね。
里中:普段は楽しく明るくワイワイ、たしかに動物園みたいにやっているんですけど、でもいざ始まるとみんなが作品をよくしようと思う気持ちを演じるなかでも感じるので、今回は過去2作に比べてもう1段階、みんなの気持ちがぐっと上がったのを感じていますね。
山内:私から見た男性陣はまさに動物園なんですよ。みんなでワチャワチャしてるから、「男子ぃーやるよー」っていうのが私の役割です(笑)。
でもこのカンパニーのいいところって、例えば私が追い込まれてガタっと崩れたときに、みんながぐっと立ち上がって支えてくれるようなところで。素直な人が多いから、1人にすごく影響されるというか。悩んだり立ち止まってしまったりしている人がいたら、周りが自分たちにできることを考えて動くようなところが、すごく『ホスミュ』らしいなって思います。
――今回は初のレビューショーもあるとのことで、みなさんのシリーズを通してのお気に入りの楽曲を教えてください。
里中:僕は初演の「袖口にカフス~変身~」ですね。曲やパフォーマンスが好きっていうのもあるけど、メインテーマ明けてすぐの曲だから、この曲から始まった感じがしてエモさを感じます。
山内:たしかにね。
里中:まあ全部エモいんだけどさ。
山内:私は初演の最後に環と歌った「はぐくまれていくもの」かな。振り返ったらホスト部がいて、「ホスト部が大切な場所になったんだな」ってすごく実感する曲だったので好きですね。パフォーマンス全体を含めると、第二弾公演の体育祭の「JUST TIME NOW」!
里中:あれめちゃくちゃ好き。
山内:あの曲は滾るよね。
小松:滾るね。
山内:あの曲はもう1度青春を感じられてすごい好きでした。
小松:僕も体育祭かな。いやもうね、全部大事すぎて…大事なんですよ! でもあの体育祭の曲やパフォーマンスは『ホスミュ』のエネルギーとか、みんなの思いが1つに凝縮されている感覚があって大好きですね。
――懐かしい楽曲も飛び出して、ますますレビューショーでどんな曲が聴けるのが楽しみになりました! では、最後に公演を楽しみにしているファンへのメッセージをお願いします。
山内:キャストもスタッフもこの作品を愛して丁寧に誠実に向き合って作っていますし、お客さまも作品をすごく大切に思って観にきてくださると思います。どうか私たちを信じて、劇場に来てください! 人生後悔はしてほしくないので、絶対に観ておいた方がいいんです。
なかには観に行くことを悩んでる人もいるかもしれませんが、(声を張り上げ)どうか来てください! 幸せな気持ちで帰ってもらえる自信があります。私たちがそれを確約するので、来てもらえたら嬉しいなと思います。頑張ります!
小松:出た、営業(笑)
里中:(声にならない笑い)
山内:大丈夫? これ以上に宣伝してね。
里中:いやいやいや(笑)。でも、本当にこれぐらいの気持ちを1人ひとりが持っているので、今まで作り上げてきたみんなとの絆やホスト部の愛を、ぜひ最後に観にきてほしいですね。最後まで見届けてもらいたいですし、皆さんの中に残るものをしっかりお届けしますので、幸せな気持ちになりに来てください!
小松:この愛、この気持ちの強さ、皆さんに伝わったでしょうか。
山内:あとひと押し!
小松:オッケー、あとひと押しね。そうですね。シンプルに、めっちゃ楽しんでもらえる作品です。僕自身、この『桜蘭高校ホスト部』という原作や『ホスミュ』の空間が、悩んでることを消化するきっかけになっているので、そういうものを皆さまにも『ホスミュ』を通してお伝えできたらなって思っています。
「自分の幸せってこういうことかな?」と彼らから学ぶことってすごくたくさんあると思うので、僕たちはそこに魂を込めて真摯に向き合って最高のおもてなしをしますので、楽しみにしていてください。そして必ず来てください! よろしくお願いします。
***
小松の締めのメッセージのあとに、山内・里中が合いの手を入れたり、撮影中に互いのソロショットを褒め合ったりと、まさに文字通り“和気あいあい”とした取材となった。本作にてシリーズが完結してしまうのは寂しいが、歌劇『桜蘭高校ホスト部』Fineでその集大成を見届けてみてはどうだろうか。
取材・文:双海しお/撮影:泉健也
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