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高い身体能力、繊細な心情を歌う楽曲。舞台「チア男子!!」の虜になった、あの日のこと

今までたくさんの作品を見てきたけれど、その中でももう一度劇場で見たかったと思う作品がある。その中の1つが2016年12月に上演されたLive Performance Stage「チア男子!!」(チアステ)だ。

私がこの作品を観劇したのは2016年12月18日の昼公演。夜の千秋楽を控えた前楽だった。見終わった私は一緒に見に行った友人とカフェに入り、「夜公演の当日券…」「行く…?」という短い会話をして千秋楽の当日券販売の列に並んだ。

運の悪いことに、何度でも見たいと願っても見られるのは最後の1公演だけ。だからこそ、もう一度劇場で見たいという思いが強く残っているのかもしれない。

今回はそんな私の思い出に強く残っている作品について魅力を紹介したい。

迫力あるアクロバットとパフォーマンス

チアステは朝井リョウによる小説「チア男子!!」を原作にした舞台化作品だ。通常は女子または男女混合チームがほとんどのチアリーディングに、男子のみのチームで挑もうとする大学生たちの青春ストーリーで、2016年にアニメ化、舞台化され、2019年5月からは実写映画も公開される。

チアステの一番大きな見所は実際にキャストたちが舞台上でチアリーディングのパフォーマンスを行うことだ。

チアリーディングにはバク転や宙返りを含めたアクロバットやスタンツと呼ばれる組体操の要素もある。実際に出演するキャストは事前練習でこうしたチアリーディングの要素を練習し、劇中で披露している。

主演の坂東晴希を演じる本田礼生はダンスやアクロバットにはもともと定評があったが、本作でも遺憾無く発揮されている。

スタンツでは土台になる人の手の上に立ち、その状態から空中にジャンプして1回転して下りてくるという技を見事に決め、観客席を沸かせた。

他のキャストもダンスに定評のある人たちばかりで、劇中では美しくバク転を決め、キレのあるダンスを披露する。ここまで身体能力の高いキャスト陣が一堂に会す機会もそうないだろう。

物語や演じたキャラクターを離れたアンコールパフォーマンスでは、そんなキャストたちの個性が爆発したパフォーマンスが楽しめる。

男子チアリーディングという馴染みのない競技だが、キャストたちの熱演によってその魅力が観客席に届く。私は観劇前に原作を読んでいたのだが、小説の世界が3次元に広がる様子に、舞台化されて本当に良かったと感じた。

繊細な心情を歌う楽曲

迫力あるチアリーディングの演技とは対照的に物語は登場人物の心情を丁寧に描いている。主人公のハル(本田礼生)は柔道一家に生まれたが、姉のように強くなれない自分には才能がないと感じている。

そんなハルをチアリーディングの世界に引き入れたのが、幼馴染のカズ(古田一紀)だった。何をするにも一緒だった彼らは男子チア部を作り、部員の勧誘を始める。

なんでもそつなくこなせるイチロー(才川コージ)と才能豊かな彼に引け目を感じている弦(福澤侑)のように、どのメンバーもチアリーディングに挑む中で自分の抱えている問題と向き合うことになっていく。

カズとハルも仲の良い幼馴染の2人だが、カズはハルたちをチアリーディングに誘うにあたって秘密を抱えており、それが劇中で2人の関係を波立たせることになる。

チームメンバーたちがそれぞれに悩み、苦しみながら前を向こうという心情を表現するのが歌だ。

2幕のクライマックスに向かう「WALLS」という曲では、それぞれの悲痛なソロが雨の中に響くところから始まる。しかし、最後に雨はやみ、雨上がり日差しを思わせるスポットライトの中でそれぞれの声が重なる。

もつれた関係が解けて、チームが1つになる様子が1曲の中で表現される舞台の楽曲の中でも大好きな音楽だ。

この他にもラップ調の曲や元気になるようなテーマ曲など、チアステの音楽はどれも魅力的。キャストたちの演技やパフォーマンスを盛り上げている。

DVD・Bru-ray、動画配信なら何度でも楽しめる

もしも私が最初に見た公演が前楽でなかれば、もっと劇場に通っただろう。

知り合いに声をかけてチアステのよさを広めただろう。けれど、残念ながらどうやっても私が見られたのは2公演だけだった。

劇場で見ることはもうできないが、チアステは映像化されている。DVD・Bru-rayであれば何度でも作品を楽しむことができるし、特典映像では事前のチアリーディング稽古の様子も収録されていて、この作品にどっぷりハマった身には嬉しい。

さらに動画配信サービスでの配信も行われている。実写映画の公開に合わせて定額見放題サービスのラインナップにも入っているので、見るなら今がチャンス。

前述の通り、身体能力の高い「これしかない」キャストで上演された本作は再演を祈ってはいるものの難しい気がしている。けれども、この舞台の良さは映像だからと言って失われるわけではない。

まだ見たことのない方は是非一度この作品を体験して欲しいと思う。

WRITTER

ゆうり藍
 
								ゆうり藍
							

2.5次元舞台をはじめとしたサブカル系コラムライター。舞台遠征でも観光を忘れないくらい旅行も好き。観劇がもっと楽しくなる記事をお届けできればと思います。

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