コラム

糸川耀士郎、変わらぬ少年性に秘める本物の強さ【演出家・吉谷晃太朗 連載コラム】

連載コラム「吉谷晃太朗のマチソワタイム」vol.48

演出家・吉谷晃太朗さんが若手俳優をランダムに紹介していく連載コラム。第48弾は糸川耀士郎さんの魅力に迫ります。

超歌劇『幕末Rock』で吉谷さんと出会い、12月にはAction Stage「エリオス・ライジングヒーローズ」を控える糸川さん。彼は、どこか少年性を感じさせながらも本質的な思慮深さを持つと、吉谷さんは言います。

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糸川耀士郎について


今まさに彼がアクション稽古で飛んだり跳ねたり殴ったり蹴ったりしている。その姿を見ていて改めて思う。テンションMAXで元気いっぱいの役柄がこんなにハマるとは。

テンションMAXという言葉を体現できる俳優は、いそうでいない。それに拍車をかけるように彼の声紋はどこか少年性を感じる成分があり、成長曲線にいる役柄と非常に相性がいいと思う。彼の全身の表現と声を持ってすれば、たとえ大人の男性を演じていても、そこに若々しさや危なっかしさ、セクシーさを残すにも一役買うと思う。そんな俳優、糸川耀士郎くんだ。

糸川くんとの出会いは超歌劇『幕末Rock』という作品だった。当時若いながらも、主人公・良知真次くん演じる坂本龍馬役のバディとなる高杉晋作を見事に演じていた。

私は再会したのがそれ以来で、出会った頃に比べて随分と成長したなぁと思った。現在稽古場で、細かな心情の積み立てを相手役に対して率先して意見を出している彼の姿は、今作の座長(主演)としての責任感もそうだが、自身の劇団で演出担当をしたこともある彼の経験値を物語っているようだった。

あの頃は、色々なことを現場で学び続けているという印象の彼であったが、今は伝える側に立っているのも感慨深い。こちらからのオーダーに対してはニュアンスをキャッチする感覚が早くなり、当時も感じさせてくれていたセンスに磨きをかけている。稽古もまだ中盤である。もっともっと本気になった時の彼のお芝居が楽しみだ。

一方、あの頃には気づかなったことを今の稽古で感じることがあった。彼は元気いっぱいの役柄のように気持ちで引っ張っていくというより、自分のやるべきことを、つつがなく粛々と行うことで周りに信頼されていくタイプなのだと。そういう意外性も彼の魅力なのだろうと思う。

糸川くんを見ていて、そんな彼のパーソナルキャラクターを生かしたものを作りたいと思わせてくれた。

俳優の魅力とはそういうところにある。

そう言えば、彼の前職は美容師だったらしい。元美容師の俳優と言えば私にとっては、私が信頼する俳優・久保田秀敏くんだ。彼も細やかで大胆で、思慮深いお芝居をする。美容師はお客さんの要望に応えながら、繊細で時には大胆な仕事をする方々だ。その経歴が生かされ、今表現者として舞台に立っているのか。

彼には今、感情のメリハリ(強弱や高低など)を主に要求している。それを要求するのは、きっと彼ならば細やかな心情表現をしながら、力強さは担保してくれるに違いないと思っているからだ。強弱の弱に振り切ったとしても、本人の本質的な強さは落ちることがないと確信している。

今作はヒーロー物語である。元気いっぱいで思慮深い、信頼する糸川くんとともに敵に打ち勝ちたいと思う。


マチソワとは――昼公演という意味の「マチネ」と夜公演を意味する「ソワレ」を組み合わせた言葉。マチソワ間(かん)はマチネとソワレの間の休憩のこと。

WRITER

吉谷 晃太朗
								吉谷 晃太朗
							

演出家・脚本家
大阪府出身。同志社大学文学部卒業。高校在学中より劇団ひまわり大阪俳優養成所に入所。その後大阪シナリオスクール、伊丹想流私塾を卒業し、男性演劇ユニット「Axle(アクサル)」に脚本家、演出家、俳優として参加。人気漫画の舞台化で人気を博す。ミュージカルやショー、アクション物、新喜劇など、幅広いジャンルで活動中。

Twitter:https://twitter.com/koutaroyositani

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