まもなく平成が終わり、新元号・令和を迎える。俳優たちの口からも「平成最後の舞台」「令和1発目の出演作品」といった言葉が聞かれるようになった。せっかく元号が変わるという大きな節目である。
平成の時代に新たな文化を築いた2.5次元作品というジャンルの歴史を振り返ってみよう。
もくじ
2.5次元ブーム前史
漫画や小説を原作とした舞台は、実はけっこう昔からある。1974年の宝塚歌劇団による『ベルサイユのばら』が大ヒットし、以降同劇団では定期的に漫画などを原作とした作品が上演されている。
アイドル界に衝撃を与えたのは1991年、SMAP主演のバンダイスーパーミュージカル『聖闘士星矢』だろう。デビュー前のTOKIOのメンバーも数人出演していた、いまとなっては夢のようなキャスティングの作品である。
この作品、実は2.5次元作品を語る上で外せないマーベラスエンターテイメントの片岡義男氏とネルケプランニングの松田誠氏が企画したいわゆる2.5次元作品の第1段。
現在の流れの源ともいえるのだが、残念ながら映像化はされておらずいまから観ることはできない。
1993年には「セラミュ」ことミュージカル『美少女戦士セーラームーン』が始まる。タキシード仮面役で城田優や浦井健治が出演していたのは有名な話である。
2.5次元作品ブーム、幕開け〜テニミュの誕生〜
読者の大半が思い浮かべるであろう2.5次元作品像ーー2次元コンテンツが原作で、若手イケメン俳優がキャストの大部分を占め、女性の観客がメイン。2003年、その歴史の幕開けといえる「テニミュ」ことミュージカル『テニスの王子様』がスタートする。
2003年から2010年にかけて1stシーズンが上演され、原作コミックス全42巻分のストーリーを上演。その後2011年から2014年で2ndシーズン、2015年からは原作3周目となる3rdシーズンが2019年現在も上演中である。
2.5次元作品の代名詞となった「テニミュ」だが、初演の初日は客席がガラガラだったのは有名な話である。そのまま千秋楽まで客席が埋まらない状態だったら、おそらく再演や続編の話はなく、いまの2.5次元ブームは起きていなかったかもしれない。
ifの話ではあるが、いち2.5次元作品ファンとして、当時口コミを聞いて劇場に足を運んだ人々には感謝の気持ちでいっぱいである。
ちなみに、1stシーズンには城田優や瀬戸康史、斎藤工、加藤和樹、相葉裕樹、古川雄大、宮野真守、2ndシーズンには志尊淳といった現在各ジャンルで大活躍している人物が出演していた。
「テニミュ」を経て、特撮や東宝系ミュージカルに進む人、テレビの道に進む人も多く、若手俳優たちの育成機関的な役割を担っているともいえる。
観せ方の多様化〜ペダステと薄ミュ〜
「テニミュ」の大成功を受け、2000年代は少年漫画の舞台化が相次いだ。
【舞台『弱虫ペダル』】
『BLEACH』や『エア・ギア』のミュージカルが上演され、2012年に「ペダステ」こと舞台『弱虫ペダル』シリーズがスタートした。ハンドルだけを用いたパズルライドシステムという演出はファンに衝撃を与え、2019年現在もシリーズが続いている。
【ミュージカル『薄桜鬼』】
2012年、もうひとつ人気シリーズが生まれた。それが「薄ミュ」ことミュージカル『薄桜鬼』シリーズだ。原作の攻略ルートごとに舞台化し、これまで2.5次元作品に興味が薄かった新たな層を引き入れた。こちらも現在まで続く人気シリーズとなっている。
『黒執事』や『NARUTO−ナルト−』、『黒子のバスケ』、『ハイキュー!!』といったアニメ化もされた人気漫画の舞台化、独自のファンを獲得している『忍たま乱太郎』、『戦国BASARA』やサイバードの「イケメンシリーズ」といったゲーム原作の舞台化も続々おこなわれた。
2.5次元作品の新時代〜刀剣乱舞旋風〜
【ミュージカル『刀剣乱舞』】
2016年、2.5次元界に新たな一大ジャンルが登場した。それが「刀ミュ」と「刀ステ」、ゲーム『刀剣乱舞』を原作とした2軸の作品シリーズである。
ミュージカル『刀剣乱舞』は正確には2015年にトライアル公演を上演している。翌年から本公演として1作目「阿津賀志山異聞」が上演された。この作品に出演した佐藤流司、黒羽麻璃央、崎山つばさらは一躍ブレイク。
その後、アーティスト活動にバラエティ番組出演と活躍の場を広げている。
「刀ミュ」はさらに、地上波の音楽番組出演(出陣)や『紅白歌合戦』への出場(出陣)も果たし、若手俳優界隈だけでなく世間一般での知名度も高いのが特徴だ。
【舞台『刀剣乱舞』】
鈴木拡樹や荒牧慶彦が出演する「刀ステ」も高い人気を誇り、ほぼ同一キャストが出演した映画『刀剣乱舞』も大きな話題となった。
とりわけ鈴木拡樹への注目は高く、2.5次元界を代表する俳優として紹介されることも多い。
平成最後の一大ムーブメント〜劇団員を描くエーステ〜
平成ラストの大きなトレンドとして人気アプリ『A3!』原作のMANKAI STAGE『A3!』、通称「エーステ」が誕生した。
徹底したキャラクタービジュアルの再現で原作ファンの支持を得たうえに、劇団員の成長を見守るという観劇ファンと親和性の高い設定が受け、チケットが取れない大人気シリーズのひとつに数えられている。
2.5次元ブームが生まれた平成が終わり、新たな元号が訪れる。令和にはどんな作品が生まれるのか。いち観劇ファンとして新たな時代に期待が高まるばかりだ。
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