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小西成弥、“静”の佇まいが発する「心の内側」【演出家・吉谷晃太朗 連載コラム】

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連載コラム「吉谷晃太朗のマチソワタイム」vol.41

演出家・吉谷晃太朗さんが若手俳優をランダムに紹介していく連載コラム。第41弾は小西成弥さんの魅力に迫ります。

ミュージカル「ハートの国のアリス」シリーズ、舞台「文豪とアルケミスト」シリーズなどに出演してきた小西さん。一見すると演劇的な熱気とは無縁のようだが、内に秘める情熱と演劇人としての深みを感じさせると、吉谷さんは言います・

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小西成弥について


出会った時、彼はまだ10代だった。透き通った少年という印象で、いつも物静かに佇んでいる。その姿は当初、どこか演劇的な熱気溢れる世界とは無縁な感じがした。

それでも長年付き合ってみると内に秘める情熱を感じることが多々あり、まさに燃え盛るエネルギーを内包させて封じ込めている感じがした。

自身の情熱を外熱的に放出する俳優が多い中、まるで文壇に存在しそうな小西くんは異色なキャラクターと私は感じた。それが小西くんの持ち味であり、純粋で内側に情熱を持つ役柄を演じさせたら一級品である。

「ハートの国のアリス」では、ボリス=エレイという「チェシャ猫」の通り名を持つ青年を演じてもらった。快活で人当たりが良く、性格は自由奔放。役柄だけを見ると一見、小西くんとは乖離した性格のようにも思えるが、物静かな中の純粋さという原点を小西くんが持っている故に、ただ自由奔放なだけでなく、主人公のアリスにとって、彼は心の内側はどこか寂しがり屋で守ってあげたくなる存在という役柄をリアルに演じ、より恋愛ストーリーとしての深みを作ってくれた。

これが10代の頃の話であるので、彼の個性が卓越していることはよく分かるだろう。

それから何年か経ち、「文豪とアルケミスト」で再会したわけであるが、彼の若々しさは全く衰えていなかった。それに加え、やはり彼の佇まいは文豪を表現するのにぴったりと合っていると思った。

そんな中で演出と俳優の関係性の中でぶつかることもあった。芝居を通じて演技の中で本当はこうしたい、こう動きたい、こう発言したいという意欲が内側から垣間見えるのである。

演出家にとっても、そういった俳優側の発信をキャッチすることの重要性をあらためて感じさせてもらったし、観客の皆さんは演劇の世界では物理的なだけじゃない、心の内側も感じ取ってもらっているわけであるから、そのようことを思わせてくれる彼の心の内側は、彼に演劇人としての深みを感じさせる。

また声優としても活躍している彼の声は、柔和で優しく心地良い声で、そこにスピード感溢れる身体能力が加わる。その動きの中にもどこか静を感じる。

武士道の世界にも通じる『静動一如』。

平常心ともいうべき心の状態こそが、状況に即したパフォーマンスを導くということだが、物語と向き合い、常に物事を考えたその先に彼のパフォーマンスが生み出されると思った。

決して演劇の世界に無縁ではない。演劇の世界こそ天職である、そう感じさせる小西くん。

これからも「心」を感じさせる舞台での活躍に期待したい。


マチソワとは――昼公演という意味の「マチネ」と夜公演を意味する「ソワレ」を組み合わせた言葉。マチソワ間(かん)はマチネとソワレの間の休憩のこと。

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WRITER

吉谷 晃太朗
								吉谷 晃太朗
							

演出家・脚本家
大阪府出身。同志社大学文学部卒業。高校在学中より劇団ひまわり大阪俳優養成所に入所。その後大阪シナリオスクール、伊丹想流私塾を卒業し、男性演劇ユニット「Axle(アクサル)」に脚本家、演出家、俳優として参加。人気漫画の舞台化で人気を博す。ミュージカルやショー、アクション物、新喜劇など、幅広いジャンルで活動中。

Twitter:https://twitter.com/koutaroyositani

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