2.5次元舞台の世界でたびたび耳にするファンサという言葉。ここでは原作がある舞台ならではのファンサの魅力について語っていきたいと思う。
「ファンサってどう楽しいの?」そう思っている人が思わず「ファンサを受けてみたい!」と思ってくれることを願いながらしたためてみる。
舞台のファンサってなに?
ファンサことファンサービスは、多くはアイドルのコンサートや握手会などの文脈で用いられる言葉だ。アイドルがファンに向けて笑顔や動作を振りまきサービスをしてくれる。その行為自体をファンサと呼んでいる人が多いだろう。
このファンサという言葉、実は2.5次元舞台の世界でも近年定着している。舞台にあまり行かない人からすると、舞台は観劇するものであってファンサービスを受けるものではない、と違和感を感じるかもしれない。
だが、いまとなっては2.5次元舞台でのファンサはひとつの文化として定着しつつある。それだけファンに受け入れられているということだし、求めるファンが多いということだ。
いわゆるお芝居を想像していると、どのタイミングでファンサービスをするんだ……? と思うかもしれない。たいていの場合は、ファンサが出来るような楽曲が流れ、その時間がファンサタイムと化す。
こういった楽曲が用意されているのはなにもアイドルをテーマに描く作品だけではない。
2.5次元舞台の元祖ともいえる「テニミュ」こと「ミュージカル『テニスの王子様』」でも、ラストはキャストとファンが一体になるカーテンコール曲が用意されている。
ファンへのお土産のようなものと考えてもいいかもしれない。大団円の物語のあと、最後の楽曲で会場全体で一体となって盛り上がり楽しい気分のまま劇場をあとにする。幸せな思いに浸ったまま、帰路につくことができるのだ。
アイドルのファンサと舞台のファンサ、何が違う?
アイドルのファンサと2.5次元舞台のファンサ。どこに違いがあるのだろうか?
筆者が思うに、それは「本人であるかどうか」だろう。
アイドルのファンサは、アイドル自身からもらうものである。一方で、舞台でのファンサはその役を演じている“役者”ではなく、あくまで“演じている役”からもらうものだ。
本人のようで本人ではない人物からファンサをもらう。この特殊性が舞台でもらうファンサとそれ以外のファンサとの差ではないかと思う。
たたでさえ特殊な舞台でのファンサだが、そこにさらに価値を付与しているのが、ファンサをもらうチャンスが限られているという点だ。
アイドルなど定常的に活動している人たちからのファンサは一度もらえなくても、また次があると思える。
対して2.5次元作品で上演されるのはロングランや大型作品を除けばだいたい10公演から20公演程度だろう。その数少ないチャンスのなかでどうしてもファンサをもらいたい、となると、ファンサをもらうための戦いが勃発してしまうのも納得だ。
舞台のファンサはどうやってもらうの?
ファンサをもらうための戦いと書いたが、これはなにも大げさに言っているわけではない。わりと本気で戦いだと筆者は思う。
まず第一に席運が必要だ。通路席を手に入れられれば、たとえ後方席でもファンサがもらえるチャンスがある。
つぎにアピールをする必要がある。ここで、作品ごとに規定されている範囲内で用意した応援グッズが活躍する。
ただ席が良くても応援グッズに気合いを入れても、もらえないときはもらえない。一にも二にも、運。それがファンサの世界なのだ。
会えるはずのなかったものに会える、それが2.5次元
原作がある2.5次元作品。原作はアニメやゲーム、漫画といった2次元作品だ。
2次元のなかのキャラクターは妄想をフルで働かせば頭の中で動き回ってくれるだろう。それはそれで滾るし楽しいし、2次元にいてくれるからこその良さもあるだろう。
しかし触れ合うことはできない。そこを可能にしてくれるのが2.5次元作品のファンサだ。
このキャラクターならファンサで大サービスしてくれそう、逆にこのキャラクターはファンサが苦手で絶対塩対応だけど照れながらしてくれそう……などなど。
想像していたファンサを、目の前で自分に向けられたらどうだろうか?
筆者は大興奮してしまう。
ときどき、ファンサをきっかけにそのキャラクターが気になりだしたという話を耳にする。推すまでいかずとも、好感度が上がるきっかけには十分だろう。
このようにファンを惹き寄せる力を持つファンサだが、諸刃の剣でもある。なぜなら、あくまでキャラクターのファンサであるべきだからだ。(演出の意図として役ではなく本人としてファンサをする場合はもちろん除く)
受取手によって、キャラクターの解釈は千差万別だ。ファンサを受けたとき、たまたまその役者が演じたファンサの内容が、自分の解釈とは合わないこともあるかもしれない。
そうなると、熱心なファンほどモヤっとしたなんとも言えない気持ちを味わってしまう可能性はある。
と、脅しのようなことを言ってしまったが、あまり心配せずにファンサを楽しんでもらいたいと思う。筆者は運良くファンサをもらえたとしても、その場で理性が弾け飛んでしまうので、正直解釈違い云々を考える余裕がないタイプだ。
「ファンサとかなんか未知で怖い……」と尻込みしてしまう気持ちも分かるが、ぜひ一度あのきらめきを直接浴びてもらいたい。次元を超えて表現されたキャラクターからもらえるファンサの味は格別である。
ファンサの魅力が少しでも伝わっただろうか? ライブ感の強いファンサなら「ツキステ。」シリーズがおすすめだ。一風変わった甘い刺激を求めるなら「私のホストちゃん」シリーズで、口説きという名のファンサを味わうことができる。
2.5次元作品のファンサといっても種類は様々ある。メインはもちろん本編だが、あわせて糖分たっぷりなファンサも楽しんでみてはどうだろうか。
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