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陳内将、ナイフのような切れ味…演技派でいてエンターテイナー【演出家・吉谷晃太朗 連載コラム】

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連載コラム「吉谷晃太朗のマチソワタイム」vol.35

演出家・吉谷晃太朗さんが若手俳優をランダムに紹介していく連載コラム。第35弾は陳内将さんの魅力に迫ります。

舞台「文豪とアルケミスト 余計者ノ挽歌」、「ミュージカル 封神演義-目覚めの刻-」などに出演してきた陳内さん。ナイフのような切れ味の台詞で人の心を動かし、また、展開に緩急を与えてくれると吉谷さんは言います。

* * *

陳内将について


俳優が台詞を吐き出す時、ナイフのようにと形容することがよくある。

相手役にとって、たとえ肯定的な言葉でも否定的な言葉でも、それは傷つく程であったり、歩みを止める言葉であったり、魔法のナイフのように相手の心が大きく変化し、人生が変わる程の衝撃的なものであったりする。

そんなナイフのような台詞を紡ぐ俳優の中で、私が最もそれにイメージする人が陳内くんだ。

その威力は凄まじく、演出席にいてもそのナイフのような台詞が飛んできて、はっとさせられることがある。

かといって常にナイフのような攻撃力があるわけじゃなく、普段は柔らかい物腰の音声で言葉を紡ぐ。だからこそいざという時の切れ味をより感じられる。

舞台「文豪とアルケミスト」の時に、あまりにも切れ味のある強烈な台詞ゆえに、「ちょっと泣きそうになっちゃうからもう少し攻撃力落として」と言った記憶がある。

言葉の切れ味だけじゃなく、陳内くんは動きに関しても超絶切れ味のある動きを見せる。瞬発力が人よりも優れているのだ。あまりにもアクションスピードが早くて、もうちょっとゆっくりしてとオーダーしたくらいだ。

つまり、陳内くんのポテンシャルに私が追いついていないだけなのかも知れない。恐るべきナイフ使いなのだ、陳内くんは。

その切れ味は相手役に影響を与えるだけじゃなく、シャープな演技はシーンの色合いをはっきりとしてくれて、場を引き締めて停滞したテンポを上げてくれる。陳内くんがいると演出家としても本当に助かるのだ。

また、彼の素晴らしいところはエンターテイナーでありながら演技派であるところだ。

ストレート舞台の人とかエンターテインメント寄りの人とか、そのように切り分けるのもどうかと思うけど、陳内くんの印象は舞台を拝見するたび、ご一緒するたびにコロコロと変わっていく。

職人のような佇まいで舞台に鎮座する。でもそれだけじゃない。

職人気質の俳優はいるけれど、陳内くんの場合は少し違っている気がする。彼本人が職人でありながら、職人そのものをかっこよく体現できる。だから重たい芝居を行ってもヒロイックでかっこいい。

きっと陳内くんは「演技派俳優」がそのままキャラクター化したような人物なのだ。言葉が少しおかしい気もするけど「演技派俳優」を擬人化したら陳内くんのような俳優になる気がする。

俳優の逆輸入のような、そんな不思議な魅力を持っているのだ。

そういや最近ご一緒していないな。また陳内くんの持つナイフに刺されたいと思う。その切れ味にはっとしたい。


マチソワとは――昼公演という意味の「マチネ」と夜公演を意味する「ソワレ」を組み合わせた言葉。マチソワ間(かん)はマチネとソワレの間の休憩のこと。

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WRITER

吉谷 晃太朗
								吉谷 晃太朗
							

演出家・脚本家
大阪府出身。同志社大学文学部卒業。高校在学中より劇団ひまわり大阪俳優養成所に入所。その後大阪シナリオスクール、伊丹想流私塾を卒業し、男性演劇ユニット「Axle(アクサル)」に脚本家、演出家、俳優として参加。人気漫画の舞台化で人気を博す。ミュージカルやショー、アクション物、新喜劇など、幅広いジャンルで活動中。

Twitter:https://twitter.com/koutaroyositani

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