コラム

佐藤永典、演技力そのもので勝負できる実力派【演出家・吉谷晃太朗 連載コラム】

連載コラム「吉谷晃太朗のマチソワタイム」vol.34

演出家・吉谷晃太朗さんが若手俳優をランダムに紹介していく連載コラム。第34弾は佐藤永典さんの魅力に迫ります。

舞台「男水!」、舞台「文豪とアルケミスト 綴リ人ノ輪唱」などに出演してきた佐藤さん。抜群の演技力から、演出家に“引き算の見せ方”を選択肢として提供してくれると、吉谷さんは言います。

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佐藤永典について


俳優の力によって演出が変わることがある。俳優自身の演技に力があり、最大限に活かせるものをどのように作るかを考える。それもまた演出家の仕事だ。

彼と共に作るシーンでは、演技力そのものを活かしたい、そう思うことが本当にたくさんあった。俳優の名は佐藤永典くんだ。

出会う前から実力派俳優としての評判を聞いていて、出会うことをとても楽しみにしていた。実際にご一緒するとさすが評判通り、いや、評判以上に力を持っている方だと思った。

演技力と一言で言っても、声やフィジカルの表現力の多様さや、魂を燃やせるエネルギッシュさ、相手の心に栄養を与え、与えられる感受性、そして台本の分析力などがある。

佐藤くんはそれら全てにおいて高いパフォーマンスを発揮する。特にエネルギッシュさや分析力において素晴らしいものを感じた。

「男水!」でご一緒した時は、佐藤くんの元々持っているパーソナルとは大きく違った役だった。それでも自分の役割、自分の活かし方のバランスをとりながら、苦悩しながらも役を掴んでいく姿がとても印象的だった。力を持っている俳優だからこそ乗り越えられる壁だ。

そして、いつか感情を大爆発させられる、これぞ佐藤永典だという役でも会いたいと思っていた。

それは、舞台「文豪とアルケミスト」シリーズの第三弾で叶えられた。佐藤くんの力が、その舞台の最も印象的なシーンを生み出してくれた。

彼の演じる北原白秋の魂の叫び。溢れんばかりのエネルギーを観客席に飛ばしてもらいたい。彼には、敵や足枷を表現する長い布で体を引っ張られながら、思いの丈の台詞をぶつけてもらった。

体に負荷をかけることで、彼はどんどんエネルギッシュに魂を燃やしてくれる。フィジカルに負荷をかけることは、もちろん演技はしづらくなるというリスクも背負う。

しかし彼の明瞭な台詞力はシーンを壊さない。鍛えられた体幹の為、美しい佇まいも守られたままだ。

想像以上のシーンとなった。演出家冥利に尽きる素晴らしい演技だった。

また、主演の平野良との一対一のシーン。作品の中で最も重要なシーンと捉え、照明効果や音響効果をなくし、素の舞台での表現に変えた。

テーマ性も相まって、二人の演技には『演出をしない演出』が最も効果的だと思った。

こういうものは引き算の見せ方という言い方をするのであるが、引き算で作るには当然俳優の力が必要である。

佐藤永典は演出家に引き算という選択肢を与えてくれる、観客へのパフォーマンス以上の力をくれる、まさに実力派俳優と呼ばれるべき才能溢れる俳優なのである。


マチソワとは――昼公演という意味の「マチネ」と夜公演を意味する「ソワレ」を組み合わせた言葉。マチソワ間(かん)はマチネとソワレの間の休憩のこと。

※記事初出時、出演作のタイトルに誤りがありました。訂正してお詫び申し上げます。

WRITER

吉谷 晃太朗
								吉谷 晃太朗
							

演出家・脚本家
大阪府出身。同志社大学文学部卒業。高校在学中より劇団ひまわり大阪俳優養成所に入所。その後大阪シナリオスクール、伊丹想流私塾を卒業し、男性演劇ユニット「Axle(アクサル)」に脚本家、演出家、俳優として参加。人気漫画の舞台化で人気を博す。ミュージカルやショー、アクション物、新喜劇など、幅広いジャンルで活動中。

Twitter:https://twitter.com/koutaroyositani

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