連載コラム「吉谷晃太朗のマチソワタイム」vol.33
演出家・吉谷晃太朗さんが若手俳優をランダムに紹介していく連載コラム。第33弾は山沖勇輝さんの魅力に迫ります。
超歌劇『幕末Rock』シリーズ、舞台「戦国無双」シリーズ、ミュージカル「ヘタリア」シリーズに出演してきた山沖さん。芝居やダンスにひたむきに取り組むからこそ、それらからも愛されていると吉谷さんは言います。
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山沖勇輝について
今、ミュージカル「ヘタリア」で山沖くんがみんなのダンスを確認してくれている。
小学生の頃からダンススクールに通っていた山沖くんの特技はダンス。182センチの身長から繰り出されるダイナミックな動きは、ダンスシーンのみならずお芝居のシーンでも大きな武器になる。
しかも、ダンスもお芝居もクセがないことがとても素晴らしく、どんな作品でも必ず山沖くんが活躍できる場所がある。際立った個性は時に役を限定させるが、山沖くんはいろんな役をマルチのこなせるユーティリティプレイヤーだ。
今まで素直に実直にダンスやお芝居に向き合ってきたからだろう。そのような向き合い方を長い期間続けることはなかなか出来ないことだ。
彼の目標や夢への努力の継続力は本当に素晴らしい。僕には決して出来ないと思う。
お芝居もダンスも大好きで、その大好きなものに対して決して裏切ることがないから、お芝居やダンスにもどんどん愛されていく。まるで人生そのものだ。
苦労を重ねることに全く嫌な顔をせず、本当に楽しいと感じている空気を稽古場に運んでくれる。
彼は決して体育系ではないのだが、「次○○のシーンでーす」とみんなに大きな声で伝えてくれることで、稽古場に栄養を与えてくれる。
しかも、時間がなく殺伐とした空気の時でもだ。その声色は柔らかく全く嫌味がないので、とても心地よい。
もはやあの掛け声は特技と言えるのではないだろうか?
皆様には見えていない部分だが、彼が現場にいることで大きな力が働き、作品にいい空気を運んでくれている。やはりそれが、作品が愛される力の一つとなっている。
役者は人生そのものであり、人生は役者そのものである。人生に真っ直ぐ生きている彼の演技は、真っ直ぐ相手役に、お客様に届く。
彼がこの世界にいてくれることは大きな財産だ。
プライベートで父親になり、また感受性が高くなった。僕もものすごくわかるのだが、子供ができることで感性が数倍に上がる。今まで見られなかった気づくことのなかった景色を知ることが出来る。以前関わっていた頃よりも彼は明らかにパワーアップしている。
そして、どこか余裕も感じる。30歳になって、この道で進んでいく覚悟がはっきりと芽生えたのではないかと思う。
この先の山沖くんの人生と共にある演劇がどんどん愛されていきますように。いつもありがとう。
マチソワとは――昼公演という意味の「マチネ」と夜公演を意味する「ソワレ」を組み合わせた言葉。マチソワ間(かん)はマチネとソワレの間の休憩のこと。
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