コラム

大平峻也、一瞬の悲哀で感じさせる“役の深み”【演出家・吉谷晃太朗 連載コラム】

連載コラム「吉谷晃太朗のマチソワタイム」vol.32

演出家・吉谷晃太朗さんが若手俳優をランダムに紹介していく連載コラム。第32弾は大平峻也さんの魅力に迫ります。

音楽劇「金色のコルダ Blue♪Sky」、「ミュージカル封神演義」シリーズなどに出演してきた大平さん。持ち前の人懐っこさで演じる役と適切なコミュニケーションを取り、キャラクターに深みを与えていると吉谷さんは言います。

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大平峻也について


実は…と言うか、僕はとても人見知りで、初めて出会う俳優にはとても緊張して接してしまう。

緊張していることを誤魔化す為にローテンションな感じで接してしまうことが多いのだが、大平くんに関しては初対面の時にめちゃくちゃ親密に話しかけてくれて、非常に気楽で心地いいクリエーションが出来た。まさに人懐っこいとはこのことだなと感じたものだ。

俳優にとってそういった性格は武器となり得る。

お芝居は人を作り上げる作業なので、俳優の人柄や佇まいは、そのまま役に反映されることが多い。適切で気持ちのいいコミュニケーションが取れる人は、相手のことを見たり感じたりできる人なので、自分の役とも会話が出来、役を感じることができるのだ。

役ときちんとコミュニケーションの取れる大平くんの性格は、例え演じる役が悪役でも、役から愛されることが多い。役から色々なものを教えてもらえる。奇しくも僕が関わらせてもらった時の役も、いわゆる悪役といったポジションだった。

悪役に存在する悲哀こそ人間の本質的なものであり、また、人間の悪の部分を認めてこそ演劇は存在し、成り立つものである。

大平くんを見ていて、ある一瞬の悲哀のようなものを瞬間的に出せる人だなと思った。余計な描写は要らず、そのキャラクターの中にも深い愛情やその役に到達するまでの人生なども感じさせることが出来るのだ。

まさに役の深みであり、深みのあるものを演じられる俳優は、やはり観客に何か傷跡を残していく。もちろん悪役でなくてもそうなるだろう。

また、出会う前にビジュアルを拝見して、ユニセックスでどこか妖艶な印象すら感じる俳優と思っていたが、実際は少年まっしぐらな印象だった。彼の内面は素直で、きっと涙脆く感受性も豊かだ。

彼の演技に、素直な表現というものはここまで安心して見ていられるのか、と感心したことがある。物語の中の役の中にいて、繊細で傷つきやすく、でも切替能力の高い人は表現者にとても向いている。

大平くんは武器をたくさん持っている俳優だ。

彼のもう一つの武器として、攻撃的だけど柔和な声が上げられると思う。

とても特徴的な声の持ち主という印象であるが、不快な音声ではなく、キャラクターの印象を残しつつ、聞き取りやすい美しい声だと思う。歌声に説得力を感じられるのもそのためだ。

まだ若い彼、未来が非常に楽しみな俳優の一人である。


マチソワとは――昼公演という意味の「マチネ」と夜公演を意味する「ソワレ」を組み合わせた言葉。マチソワ間(かん)はマチネとソワレの間の休憩のこと。

WRITER

吉谷 晃太朗
								吉谷 晃太朗
							

演出家・脚本家
大阪府出身。同志社大学文学部卒業。高校在学中より劇団ひまわり大阪俳優養成所に入所。その後大阪シナリオスクール、伊丹想流私塾を卒業し、男性演劇ユニット「Axle(アクサル)」に脚本家、演出家、俳優として参加。人気漫画の舞台化で人気を博す。ミュージカルやショー、アクション物、新喜劇など、幅広いジャンルで活動中。

Twitter:https://twitter.com/koutaroyositani

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