コラム

崎山つばさ、“本物の芝居”を客席に届けるために【演出家・吉谷晃太朗 連載コラム】

連載コラム「吉谷晃太朗のマチソワタイム」vol.29

演出家・吉谷晃太朗さんが若手俳優をランダムに紹介していく連載コラム。第29弾は崎山つばささんの魅力に迫ります。

10月22日(金)に開幕を控える、吉谷さん脚本・演出の音楽劇「キセキ -あの日のソビト-」に出演する崎山さん。稽古を通して抱いた彼への思いを、吉谷さんがリアルタイムに綴ります。

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崎山つばさについて


今、崎山くんと同じ現場にいる。

最終稽古直近にあって、生歌やダンス、バンドとの合わせ、たくさんのきっかけ、感情的なお芝居と様々なことを準備をしないといけないことがある、このバタバタした環境の中で、どうしても彼の魅力をリアルタイムに伝えておきたくなった。

このコラムがアップされるのは最終通し稽古終わりあたりの時間である。目の前で読まれると気恥ずかしいので、どうか崎山くんが稽古場を出るまで、このコラムを読んでくれないことを望む。

崎山くんとは「キセキ -あの日のソビト-」で初めてご一緒する。

以前より噂には聞いていて、とてもいいお芝居をするとの触れ込みだった。このコラムの初回に紹介させてもらった植田圭輔くんとも仲が良く、きっと圭輔に聞いたら「めっちゃいいっすよ、あいつ!」とか熱く語ってくることだろう。

一緒に稽古する中で、なるほど、崎山くんの評判がいいのはとても良くわかると深く納得させられた。

稽古に向かう姿勢や準備、台本の分析力、客観的な視点、感性、感情的な芝居へのスイッチ、人間関係の構築…どれをとってもハイパフォーマンスでバランスが良い。ここまでバランス良く、能力が高い俳優はなかなかいない。恐れ入る気持ちでいっぱいになった。

その姿勢で作られたキャラクター、本人の人柄がファンに好まれ人気があるのも頷ける。

また自身の演技だけでなく、周りへの配慮も抜群で面倒見も良い。作品の為に生きていないとなかなか出来ないことだ。

それはお客さんへの責任感から来るものであり、かつ本物志向である彼のプロ意識に紐づくものと思う。

今回の舞台でも気になったことは伝えに来てくれるし、逆にこちらがここはどうしてもこうしたいという意志も汲んでくれる。

演出家と俳優の領域をそれぞれわかってくれていながら、わかっているからこそ、たまに領域の間に立つ意見を出してくれる。

線引きがわかっている人間は、その線を消すことなく、たまに訪問してくれるのだ。

お客さんを楽しませる意識が高い崎山くんであるが、「楽しませる芝居」と「芝居を楽しませる」は似て非なるものである。

崎山くんのお芝居はエンターテインメント精神から来るものというよりも、本物のお芝居をエンターテインメントに昇華させる力を持つと感じた。

今回、たくさんの段取りがある中、どうしてもその場の感情的な部分を重視したくて、演出方針も変えたことだってある。その方が良いと思わせてくれるし、実際その方が良いシーンとなった。

崎山くんが出演してくれることで、必ず作品の質が大いに高まる。どんな作品も、ぜひ期待して崎山つばさを見に来てもらいたいと思う。

文末にて勝手ながら僕の思いを劇中に出てくる台詞になぞらえて伝えておきたいと思う。

「君は俳優になる為に生まれてきた男だよ」


マチソワとは――昼公演という意味の「マチネ」と夜公演を意味する「ソワレ」を組み合わせた言葉。マチソワ間(かん)はマチネとソワレの間の休憩のこと。

■音楽劇「キセキ -あの日のソビト-」公式サイト
https://kisekistage.com

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